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雷装した97艦攻。
昔日を偲んで http://www.warbirds.jp/senri/
15-37、「発射運動」訓練
私は谷田部空で中間練習機(赤トンボ)の訓練を受け、実用機教程は百里原空で艦上
攻撃機の操縦訓練を受けました。離着陸を修得すると次は編隊飛行そして雷撃訓練
と進みます。雷撃は艦上攻撃機の御家芸です。だから、編隊飛行以上に重要視されて
いました。最初は単機で行う「発射運動」から始めます。
離陸して高度をとりながら鹿島灘に向かいます。標的は民謡「磯節」で有名な大洗崎
の突堤です。 標的を左90度に見ながら、 高度2,000千メートル距離約10,000
メートルの位置から左に降下旋回しながら突撃を開始します。高度100メートル距離
1000メートルで魚雷発射。 そのまま標的の上空まで直進し、 次に左上昇旋回で
退避します。距離はすべて目測です。
操縦員は照準器で標的を狙い、
「発射よーい、テー!」
と呼称して投下把柄を引きます。後部座席に同乗している練習生はストップウォッチ
を発動して、標的の上空に到達までの秒時を計ります。 これで標的までの距離を
測定することができるのです。 160ノットで突撃した場合、10秒間で800メートル
進みます。1,000メートルだと12・5秒です。
雷撃で最も重要なことは、魚雷発射の際に飛行機を横滑りさせないことです。横滑り
しながら発射した魚雷は、海面に突入する際に角度が微妙に変り、標的に直進しま
せん。同じ機首角度を保ちながら横滑りさせず、真っすぐ飛びながら発射することが、
魚雷命中の必須条件なのです。
ところが、防禦側の対空砲火から見れば、低空を横滑りもせずに至近距離まで真っす
ぐに向かってくる飛行機ほど、照準し易いものはありません。だから、雷撃機に被害が
多いのは、宿命的なものなのです。
上達してくると、 高度50メートル距離800メートル程度で発射できるようになります。
高度が低いほど風の影響も少なく、標的に近いほど命中率は向上します。訓練が進む
につれて練習生だけの互乗が多くなります。教員が同乗していなので物見遊山にでも
行くように、ウキウキした気分です。
いくら低空飛行をしても、自分が操縦桿を握っていれば安心できます。しかし、他人の
操縦に身を任せるのは怖いものです。後席に同乗して高度計を読んでいるとマイナス
を指します。
「おい! 大丈夫かっ!」
と叫びたくなります。百里原航空隊の標高は30メートルです。 出発の際に高度計は
ゼロに規正しています。 だから実際にはマイナス30メートルまでは余裕があります。
ところが、当時の気圧高度計はそれほど精密ではなく、一目盛が10メートルでした。
だから、目測と勘に頼ることになります。お尻がむずむずしてきます。
後ろを振り返って海面を見て、プロペラの風圧で水飛沫が揚がっていれば、接水寸前
です。
「おい! 引き上げろっ!」
と、本音で叫びます。
もちろん教員には内緒の超低空飛行です。「発射運動」で指示されている魚雷発射の
高度は50メートルでした。 だから、計器高度が20メートルで海面の見え具合などを
会得するのです。 ところが、教員が同乗しないと途端に超低空飛行を始めるのです。
事故が起きないのが不思議なくらいです。
☆今日の一言☆
瀬を踏んで淵を知る
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