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横井1飛曹。
昔日を偲んで http://www.warbirds.jp/senri/
15-13、航空燃料「80丙」
訓練飛行の操縦員は一見楽な勤務のようにみえますが、ちょっとの油断もできない
緊張の連続でした。その理由は白菊の航空燃料に「80丙」を使用していたからです。
80はオクタン価を示し、丙とはガソリンではなくてアルコールを意味する符諜です。
精製したアルコールを燃料にして飛んでいたのです。これは当時の航空燃料として
最低の品質でした。 だから、馬力が出ないうえ、シリンダーの温度が冷え過ぎると、
エンジンが止まる恐れがありました。
飛行訓練を開始して間もない日、最終の帰投コースを飛んでいると、前方を飛行し
ていた僚機が急に高度を下げ始めました。 よく見るとプロペラが空転しています。
エンジンが停止した様子です。飛行場まで滑空するにはとても無理な距離でした。
私は増速し高度を下げながら後を追いました。近づいて見ると、横井兵曹が操縦
していました。 いろいろ応急操作を行っているようですがエンジンが回復する様子
はありません。
「おい電信員! 不時着機の位置を確認して基地に電報を打て!」
と、叫びました。
「ただ今不時着機からの発信を傍受していまーす……」
不時着機の電信員は必死になってキーを叩いているのでしょう。うまく着水できた
と思ったのですが、飛行機は転覆してしまいました。白子の沖合で、知多半島との
中間ぐらいの海上です。
上空を旋回しながら見ていると、黒いものが5個浮かんできました。全員が脱出で
きたのです。だが、乗員は4名のはずです。更に注意して見ていると泳いでいるの
は3名です。あとの2つは車輪が浮いているのです。着水の衝撃で脚が折れたらし
いのです。
訓練を打ち切り、直ちに飛行場に帰って地上指揮官に状況を報告しました。後から
分かったことですが、殉職したのは電信員でした。恐らく最後まで不時着の状況を
送信し続け、着水の衝撃に対応する暇がなかったのでしょう。エンジンが停止した
原因は明確ではありませんが、恐らく粗悪な「80丙」の関係だと思われます。
ここでの飛行訓練は、後席に同乗して訓練を受ける予備士官や練習生は、1回ごと
に交替しますが、 操縦員に交替はありません。 午前午後ともぶっ続けの搭乗で、
緊張の連続でした。しかし、「特攻待機」を解かれ、死から解放された気分は爽快で、
肉体的な苦労などは問題ではありませんでした。短期間でしたが、私の搭乗員生活
の中で最も充実した時期でした。
☆今日の一言☆
前車の覆るは後車の戒め
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