老兵の繰り言

「特攻隊」の生き残りが後世に語り継ぐ鎮魂の記録です。続いて、自衛隊草創期のうら話などを紹介致します。

15昔日を偲んで

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15-17、死ぬ時期を悟る

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            八洲隊第3中隊3小隊の勇士。


昔日を偲んで http://www.warbirds.jp/senri/ 
   
        15-17、死ぬ時期を悟る

一ヵ月にわたる、鈴鹿基地での勤務を終わり、大井航空隊に帰ってみると、空虚で、
そしてなんとなくガラーンとした感じでした。話によれば、第5航空艦隊に配属された
高知航空隊と徳島航空隊が、沖縄周辺の敵艦船に対し「体当たり攻撃」を敢行して、
ほとんど全滅した様子です。

その穴埋めのため大井航空隊で編成した、 「八洲隊」の第1中隊は兵庫県の峯山
基地へ、 第2中隊が愛媛県の石手基地へと、基地総員の盛大な見送りを受けて
進出し、第5航空艦隊の指揮下に入ったとのことです。 残るはわれわれ第3中隊
の30数機だけとなりました。いよいよ出撃の時期が近づいたのです。

沖縄を占領したアメリカ軍は、次はどこへ上陸してくるのでしょう。 九十九里浜か、
それとも駿河湾か。いずれにしても、その時こそが「八洲隊」の特攻出撃の時であり、
死ぬ時期であると覚悟を決めました。

☆孫子曰く☆  
善く戦う者は之を勢に求めて人に責めず 

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             B29 焼夷弾爆撃。


昔日を偲んで http://www.warbirds.jp/senri/ 
   
        15-16、再び大井航空隊ヘ

沖縄を占領したアメリカ軍は、次の目標として、本土への上陸を画策するはずです。
状況は更に逼迫してきた様子です。7月下旬、われわれが担当していた、偵察員に
対する錬成訓練は中止されました。そして、再び「特攻隊」の編成を命じられました。

急きょ大井航空隊へ帰還するため、身の周りの整理をしていると、空襲警報が発令
されました。 B29による夜間爆撃です。飛行場に出て、いつでも退避できるように、
防空壕の端から空を見あげました。

すると四日市の上空と思われる方向でB29の編隊から次々に投下される焼夷弾が
大空を彩っています。 火花が滝のように降り注いでいます。 怖いという感じよりも、
不謹慎ですが、打ち上げ花火のように美しいと形容したい光景でした。

悪夢のような一夜が明けました。飛行場には直接被害はありませんでしたが、終夜
の空襲で寝不足です。 手荷物をまとめて、トラックに乗り亀山駅まで送ってもらい
ました。昨夜の空襲は、四日市だけではありませんでした。亀山の町も焼夷弾で焼
かれ、あちこちにまだ煙が上がっていました。また、道路の端には牛の死骸が放置
されたままで、地獄を思わせる風景でした。

汽車に乗り、四日市、名古屋、浜松と通過します。 窓から見えるのは、焼け野原と
なった町並みだけです。人影もほとんど見かけません。いよいよ最後の時が近づい
たことを肌に感じていました。 日ごろはふざけ合う仲間も、今日はお互いに口数も
少なく、表情には出しませんが覚悟を決めている様子でした。

☆今日の一句☆  
木々はみな隙間をもてりみそさざい 

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             新鋭戦闘機「烈風」。


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        15-15、戦闘機を希望していれば

鈴鹿基地のエプロンには《キューン》と、独特な金属音を響かせる迎撃戦闘機「雷電」
が20機程度並べられていました。 だが、ここに戦闘機の部隊はいません。これは、
飛行場に隣接する工場で組み立てられた機体を、試験飛行して受領し、関係の飛行
隊に送り出しているのでした。

同じように試験飛行をしている中に、見慣れないやや大型の機体が一機ありました。
最新鋭の戦闘機「烈風」です。まだ試作機として2機だけしか組み立てられていない
との話でした。零式戦闘機の後継機として設計開発されたもので、特に優秀な性能
を持っている戦闘機とのことです。

これら新鋭機を見るたびに、谷田部航空隊での機種選定で戦闘機を希望しなかった
ことが、今ごろになって悔やまれてなりません。やはり、戦闘機を選ぶべきでした。
実施部隊に出て、つくづくそう感じていました。

敵機の空襲がある度に、艦上攻撃機は空中でも地上でも逃げ回るばかりで、戦闘機
のように、 華々しく空中戦を闘うことができないからです。 しかし、いまさらどうする
こともできません。戦闘機出身の受け持ち教員梶谷兵曹が、
「戦闘機の延長教育では、こんな生易しい罰直ではすまされぬぞー」と、
言ったことが私の進路を決定したのです。もしもあの一言がなく、予定どおり戦闘機を
希望していれば、今ごろは、これらの新鋭機に乗って、空中戦に参加しているのにと
思うと、残念でなりませんでした。

例え「特攻」を命じられたとしても、夜間よたよたと飛ぶしか能の無い、「白菊」に比較
して、戦闘機による「特攻」は、見た目にも勇ましく、戦果も充分に期待できるからです。

☆今日の一言☆  
後悔先に立たず 

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             御神刀 菊一文字則宗。


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        15-14、「菊一文字」を買う

鈴鹿基地では、天気の許す限り航法・通信訓練を、毎日のように実施していました。
1日に6時間から7時間に及ぶ搭乗でした。それでも、たまには休養外出が許可さ
れました。 ある日、せっかく近くまで来ているのだから、 伊勢神宮に参拝しようと、
数人連れで白子駅から電車に乗りました。

車中に私の受け持っている甲飛13期生が乗り合わせていました。いろいろ話を聞
いていると、彼の実家が宇治の町で旅館を営んでいるそうで、今日も帰省途中との
ことでした。誘われるままに、早速一晩お世話になることにしました。

駅に着くと、まず外宮に参拝しました。 門前町には土産屋が軒を連ね、いろいろな
土産物を売っていました。 その中で、「菊一文字」の短刀を見つけて購入しました。
房紐つきの紫色の袋に入った、なかなか立派なものでした。

私は去る5月1日付で、 1等飛行兵曹に昇任しており、航空加俸を含めると、80円
近い俸給を戴いていました。 搭乗員は特例(昭和20年官房人第76号)によって、
昇任と同時にその階級の最高額である、1級俸を支給されていたのです。

ところが、当時は外出しても開いている店は少なく、 特に飲食店などはほとんどが
休業状態でした。お金は有っても買う品物が無い時代です。その点、門前の土産店
には、喰物以外ならいろいろな品物を売っていました。

内宮は遠いからと、勝手な理屈を付けて参拝を省略し、 早々と旅館に帰りました。
そして、持参した酒で早速会食を始めました。 久しぶりに畳に座っての食事です。
旅館の方も、息子が世話になっている先輩と知って気を遣います。大御馳走を並べ
ての歓待でした。お伊勢参りの御利益は覿面に現れたのです。

☆今日の一句☆  
水に浸け草刈り終えし刃を癒す 

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             横井1飛曹。


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        15-13、航空燃料「80丙」

訓練飛行の操縦員は一見楽な勤務のようにみえますが、ちょっとの油断もできない
緊張の連続でした。その理由は白菊の航空燃料に「80丙」を使用していたからです。
80はオクタン価を示し、丙とはガソリンではなくてアルコールを意味する符諜です。
精製したアルコールを燃料にして飛んでいたのです。これは当時の航空燃料として
最低の品質でした。 だから、馬力が出ないうえ、シリンダーの温度が冷え過ぎると、
エンジンが止まる恐れがありました。

飛行訓練を開始して間もない日、最終の帰投コースを飛んでいると、前方を飛行し
ていた僚機が急に高度を下げ始めました。 よく見るとプロペラが空転しています。
エンジンが停止した様子です。飛行場まで滑空するにはとても無理な距離でした。

私は増速し高度を下げながら後を追いました。近づいて見ると、横井兵曹が操縦
していました。 いろいろ応急操作を行っているようですがエンジンが回復する様子
はありません。
「おい電信員! 不時着機の位置を確認して基地に電報を打て!」
と、叫びました。

「ただ今不時着機からの発信を傍受していまーす……」
不時着機の電信員は必死になってキーを叩いているのでしょう。うまく着水できた
と思ったのですが、飛行機は転覆してしまいました。白子の沖合で、知多半島との
中間ぐらいの海上です。

上空を旋回しながら見ていると、黒いものが5個浮かんできました。全員が脱出で
きたのです。だが、乗員は4名のはずです。更に注意して見ていると泳いでいるの
は3名です。あとの2つは車輪が浮いているのです。着水の衝撃で脚が折れたらし
いのです。

訓練を打ち切り、直ちに飛行場に帰って地上指揮官に状況を報告しました。後から
分かったことですが、殉職したのは電信員でした。恐らく最後まで不時着の状況を
送信し続け、着水の衝撃に対応する暇がなかったのでしょう。エンジンが停止した
原因は明確ではありませんが、恐らく粗悪な「80丙」の関係だと思われます。

ここでの飛行訓練は、後席に同乗して訓練を受ける予備士官や練習生は、1回ごと
に交替しますが、 操縦員に交替はありません。 午前午後ともぶっ続けの搭乗で、
緊張の連続でした。しかし、「特攻待機」を解かれ、死から解放された気分は爽快で、
肉体的な苦労などは問題ではありませんでした。短期間でしたが、私の搭乗員生活
の中で最も充実した時期でした。

☆今日の一言☆  
前車の覆るは後車の戒め 


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