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軍用たばこ「ほまれ」。
青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/
16-94、親友との再会
大井航空隊に着任すると、飛行隊の第14分隊に配属されました。 そして翌日から
早々と、先任下士官の茶野上飛曹の指導によって、機上作業練習機「白菊」による
操縦訓練が開始されました。地上で機体の構造やエンジンの性能、それに飛行諸元
などの説明を受けました。 次に、エンジンを始動して地上滑走を練習し、いよいよ
離陸着陸の訓練開始です。
「白菊」は、天風515馬力エンジンを装備した固定脚機です。後席に同乗した茶野
上飛曹から助言を受けながら、ぶっつけ本番で操縦することになりました。 艦上攻
撃機に比べれば機体は軽くて操縦は思ったより簡単でした。 スピードも100ノット
そこそこで、2〜3回も飛べば、簡単に乗りこなすことのできる安定性のよい飛行機
でした。
ところが、教員配置のつもりで転属してきたのに、 飛行隊の空気は予想とは違った
感じでした。それもそのはず、飛行学生や練習生に対する教務飛行は既に中止され、
大井航空隊は練習航空隊ではなく、実施部隊に改編されていたのです。 そのうえ、
「特別攻撃隊」を編成するとの噂がささやかれていました。
私たちと前後して、 他の航空隊からも数名の操縦員が赴任してきました。 中には
水上機から陸上機に転換した者もいました。また遅れてきた転勤者の中に、百里原
空で艦上攻撃機の教育を一緒に受け、同じ903空に配属されて大湊派遣隊にいた、
吉田実2飛曹が転入してきました。
彼とは、903空の館山本隊で別れて以来の再会でした。 ちょうどタバコを切らして
いましたので、
「おい、吉田兵曹、タバコ持ってないか?」
と、ねだりました。
「おーお、あるぞー」
そう言って、トランクの中から「光」を1箱出してくれました。早速連れだってタバコ盆
(喫煙場所)へ行き、館山で別れて以来の積もる話に興じました。
「おい吉田兵曹、百里原で一緒だった、平原と田中が同じ飛行隊にいるぞ……、
それからこれは内緒の話だが、特攻隊を編成するという噂があるぞ……」
「おいおい、変なこと言うなよ、 ここは練習機の白菊ばかりで、実用機なんかない
んだろう」 この時期、練習機で「体当たり攻撃」を実施するなどとは夢想もしていな
かったのです。
「しかし、今度転勤してきた連中は、皆操縦員ばかりだよ……」
「それは、操縦教員の配置だからだ!」
彼も教員配置のつもりで赴任してきたらしいのです。
雑談しながらふと彼の手元を見ると見ると、 指先でトントンと叩けば半分に縮まる
ような、中身がスカスカになった「ほまれ」を吸っていました。 私には取って置きの
「光」を渡し、自分はまずい「ほまれ」で我慢していたのです。
当時 「ほまれ」 は1袋 (20本入り)7銭で、「光」 は1箱 (10本入り)30銭でした。
彼はそのような人柄でした。 その後も同じ分隊で起居を共にし、お互いに交友を
深めました。
☆今日の一言☆
這えば立て立てば歩めの親心
[AOZORANOHATENI]
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