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大空の彼方へ。
青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/
16-136、無駄な犠牲者
機上では恐らくB29の上空通過を知って、 その対応策を練っているのでしょう。
それとも帰投したのが飛行場ではなくて、 機位を失した(自分の飛行機の現在
位置が分からなくなること)と思い、御前崎の上空まで引き返えして、位置の再確
認をしているのかも知れません。
後席の偵察員は一人で航法と通信を担当することになっています。 だが、夜間は
航法に重点をおくため、電信機を積んでいない飛行機もありました。例え積んでい
たとしても、 すぐに使用できる状態にあるとは限りません。
いずれにしても、オルジスによる発光信号が唯一の連絡手段です。だが、指揮所か
ら飛行機を目標に発光信号を送れば、上空を通過しているB29にも見られることに
なります。だから、指揮官は発信をためらっている様子です。
要は御前崎などの、自分の位置が確認できる場所の上空で旋回しながら待機して、
《空襲警報》の解除を待つ以外に、適当な方法はなさそうです。 例え飛行場を探し
当てたとしても、「夜設」なしでの着陸は危険を伴います。
次に問題になるのが燃料です。 満タンでも、480リットルしか積めない「白菊」で
は、朝まで飛び続ける量はもう残っていないはずです。 既に、200浬以上を飛ん
でいるのです。だから、 あと1時間半が限度でしょう。 夜明けまでには、まだ3時
間以上もあります。
「B29は爆撃を終わって帰る途中だから、夜設をつけても、 もう引き返してくるも
んか」
「引き返してきたって、もう爆弾なんか持っていないさ!」
「B29の編隊は間隔が相当開いているから、その間にうまく着陸させればよいのに」
「あの野郎、何を恐れているんだ、なんで夜設を点けさせないんだ! 毎晩飛んでい
る俺たちの身にもなってみろ、夜設なしで降りろと言うのか!」
「そーだよ、自分たちは飛ばないもんだから、いい気なもんだ……」
「自分たちの安全ばかり考えやがって、俺たちは消耗品扱いだ!」
「もーう止めた、こんな調子なら明日は上がっても予定コースを飛ばずに、エンジン
故障と言ってすぐに降りてやるから……」と、
声を潜めいろいろ批判していましたが、指揮官は何を恐れているのか、「夜設点灯」
の指示はついに出ませんでした。
その後も一度、 「白菊」 の爆音を聞きましたが、 ついに消息を絶ってしまいました。
いくら消耗品と呼ばれた搭乗員の命であっても、 これではあまりにもひど過ぎます。
まさに犬死です。当時の戦況から、空襲は予測できることで、事前に対策を講じて置
くべきでした。飛行場の場所は、昼間何度も空襲を受けているので、敵も十分承知し
ているはずです。だから、いまさら隠す必要などないのです。
また、夜間訓練の実施を秘匿したいのなら、飛行場から離れた茶畑の中か、大井川の
河原にでもバッテリーやオルジスなどの機材を運んで、飛行機と交信させる手段もあ
るはずです。夜明けが近づいたので、飛行訓練は中止されました。そして、後味の悪
い思いで飛行場を後にしました。どこかで不時着していれば、生死にかかわらず、何ら
かの連絡が入るはずです。ところが、その後どこからも情報は入りませんでした。
百里原航空隊での空中衝突事故もそうであったように、訓練計画の不備による事故が
あまりにも多すぎました。指揮官の無為無策のために喪失した人命や機材は、相当な
数にのぼると推察されます。運が悪かったと言えばそれまでですが、人知れずこの世
を去った彼らの胸中は、察するに余りある痛恨事でした。
☆今日の一言☆
後悔先にたたず
[AOZORANOHATENI]
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