老兵の繰り言

「特攻隊」の生き残りが後世に語り継ぐ鎮魂の記録です。続いて、自衛隊草創期のうら話などを紹介致します。

16青春の回想

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

イメージ 1

              名刀「菊一文字」。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-129、お伊勢参りの御利益

鈴鹿基地では、天気の許す限り前述の航法・通信訓練を、毎日のように実施して
いました。1日に6時間から7時間に及ぶ搭乗です。それでも、たまには休養外出
が許可されました。ある日、せっかく近くまで来ているのだから、伊勢神宮に参拝し
ようと、2〜3人連れで白子駅から電車に乗りました。

車中に私の受け持っている甲飛13期生が乗り合わせていました。いろいろ話を聞
いていると、彼の実家が宇治の町で旅館を営んでいるそうで、今日も帰省途中との
ことでした。誘われるままに、早速一晩お世話になることにしました。

駅に着くと、まず外宮に参拝しました。 門前町には土産屋が軒を連ね、いろいろな
土産物を売っていました。 その中で、「菊一文字」の短刀を見つけて購入しました。
房紐つきの紫色の袋に入った、なかなか立派なものです。

私は去る5月1日付で、1等飛行兵曹に昇任しており、 航空加俸を含めて、80円
近い俸給を戴いていました。 搭乗員は特例(昭和20年官房人第76号)によって、
昇任と同時にその階級の最高額である、1級俸を支給されていたのです。

ところが、 当時は外出しても開いている店は少なく、 特に飲食店などはほとんどが
休業状態でした。お金は有っても買う品物が無い時代です。その点、門前の土産店
には、喰物以外ならいろいろな品物を売っていました。

内宮は遠いからと、 勝手な理屈を付けて参拝を省略し、 早々と旅館に帰りました。
そして、 持参した酒で早速会食を始めました。 久しぶりに畳に座っての食事です。
旅館の方も、息子が世話になっている先輩と知って気を遣い。大御馳走を並べての
歓待でした。お伊勢参りの御利益は覿面に現れたのです。

☆今日の一言☆  
鳩に三枝の礼烏にに反哺の孝  
 

イメージ 1

            この上空を飛んでいました。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-128、名古屋見物ですか?

その日は、午前中に甲飛13期生の訓練を行って、午後は予備士官の訓練を実施しま
した。各配置の3名を同乗させ、4回目の航法・通信訓練に出発しました。航法担当の
河本少尉は、針路20度で最初の偏流測定を行いました。次は、110度に変針すると
予想しながら飛んでいましたが、なかなか変針の指示がありません。何をしているのか
と、後席を覗くと、航法図板の予定コースに何か計算しながら、盛んに作図しています。

思い当たるふしがあります。恐らく直前に同じコースを飛んだ同僚から、本日の風向や
風速それに偏流角などメモして渡されたに違いありません。最初に測定した偏流角が、
そのメモと一致していたので、してやったりと全コースの航跡を作図して記入している
様子です。

通信の担当は、基地と交信の真っ最中で外を眺める余裕などありません。肝心の見張
員も、ただ漫然と風景を楽しんでいる様子です。 さーて、 いつ気が付くかと思いながら、
そのまま飛ぶことにしました。四日市の高い煙突を左側に見ながら直進します。名古屋
港の防波堤が見えてきました。 入り口に相当広くて平らな埋め立て地があります。いざ
という時、不時着場所として充分使えそうです。

市内が望見されます。度重なる空襲で、焼け野原となっています。工場の焼け跡に煙突
だけが何本も立っているのが印象的でした。 こちらも物珍しく眺めていましたが、 ふと
思い直して伝声管をとり、河本少尉に声をかけました。

「河本少尉、今日は名古屋見物ですか?」
「なにっ! おおっ、これはどうなってんだ!」
「変針の指示がないので、今回から、コースを変更したのかと思って、20度のまま飛ん
でおりまーす」
と、惚けてみましたが相当に語気が荒い。すぐに右旋回して南下を始めました。三河湾
にある河和航空隊(水上機基地)を上空から眺めながら、

「河本少尉、帰投時刻は何時にすれば宜しいですか?」
「16:20だっ!」
「了解しました……」
航法図板上には、既に全行程の航跡図ができあがって、帰投時刻まで計算できていた
のです。

道草を食い過ぎて、正規のコースを飛行する時間はありません。知多半島南端から右に
旋回して飛行場に向かいました。
「河本少尉、予定コースを飛んだことにしてくださーい」

本来なら、これは彼の方が頼むべきです。階級が邪魔をしているのです。こちらが下から
でれば万事が円満に解決します。 もしばれたとしても、叱られるのは航法担当と見張員
配置であり、操縦員に責任はありません。エンジンを吹かし気味にして、時間を調整しな
がら帰投し、予定時刻ちょうどに着陸しました。列線に帰るころには、河本少尉のご機嫌
も直っていました。

☆今日の一言☆  
釣りする馬鹿に見る阿呆  
 

イメージ 1

            新鋭艦上爆撃機「彗星」。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-127、右舷後方に敵機!

電信員は機上で、暗号文の作成や基地との送受信を行います。 またこれと並行
して「実用信(訓練でなく実務の交信)」も担当します。《空襲警報発令、訓練中止、
帰投せよ》などを受信できないと大変なことになります。

当時マリアナ方面からのB29による空襲以外に、新たに占領した硫黄島の基地
から、P51戦闘機が少数機編隊で、たびたび空襲に来ていまし。だから、内地の
空といっても安全ではなかったのです。

ある日の午後、第1コースで知多半島上空に差しかかった時、
「右舷後方に敵機!」
と、見張員が叫びました。 振り向くと右後方から、低空を斜めに近づく2機編隊が
ありました。見張員は機銃に弾倉を付けて装填しています。確認する暇もなくアッ
という間に胴体の下に隠れてしまいました。太陽の反射光線で見えにくい状態で
したが、味方の彗星艦爆であると直感しました。

確かめようと左下を見るけれど、 なかなか抜け出してきません。P51のような気
もします。P51は大井航空隊で何度も銃撃を受けていました。 しかし、いつもは
下から見上げていたので、上から見下ろすのは初めてなので自信がありません。
陸軍にもあの型の戦闘機があるのですが、現物は見たことがありません。 疑心
暗鬼、尻がむずむずします。飛行機を傾けて下を覗くけれども発見できません。

「おーい! どこへ行った!」
「分かりませーん……」
「分からんで済むか! よーく見張れ!」

見張員も、機銃に装填するため目を離した隙に見失なっている様子です。撃って
こないところをみると、やはり味方機だったのでしょう。敵戦闘機であれば、練習機
の独り歩きは絶好の獲物です。見つかれば逃げられるものではありません。やはり、
最初の直感どおり「彗星」だったのでしょう。不安を抱いたまま、予定コースを飛行
して帰投しました。

ところが、帰ってみると飛行場の様子がおかしいのです。列線は撤収され飛行機
は掩体壕に入れられています。さらに《航空・短艇(飛行中の航空機は直ちに所属
基地に帰投せよ)》の旗旒信号が揚がっています。シマッター! 空襲警報だ!
「おい、電信員! 実用信は受けなかったのかっ?」
「実用信は受信しておりませーん」

着陸してそのまま、飛行場西側の掩体壕に乗り着けました。飛行機を整備員に渡し、
指揮官を探して、
「605号機、航法・通信訓練帰りました、人員機材異常なーし」
と、報告しました。
「なにっ、異常なしだと……、 敵機はどうしたんだー!」
「敵機発見の電報打ったんは、貴様の機だろ!」

どうも様子がおかしいのです。あとで分かったことですが、見張員の、
「右舷後方に敵機!」の叫び声に慌てた電信員は、確認もせず《敵機発見》の電報
を基地に発信したのです。そのことを私は知りませんでした。
 
基地ではこの電報により、《訓練中止全機直ちに帰投せよ》と、指令しました。 だが、
不幸にもわが機の電信員は、電信機を送信の状態にしたまま、次に打つべき電報の
起案にでも気を取られていたのか、この基地からの電報を受信できませんでした。

またなぜかそれ以後、 訓練用の交信も中断したままでした。電信機の故障ではあり
ません。訓練中の電信員は、他の配置と違って暗号書を引いたり電信機での送受信
が精一杯で、外を眺める余裕がありません。だから、機外の様子が分からないため
不安が募り気が転倒していたものと思われます。

《敵機発見》 を打電して1時間近くも音沙汰無しでは、 墜とされたと判断されても
仕方がありません。 それを、のこのこと帰って来たのですから叱られるのも当然で
す。敵機の確認を怠ったため、飛行訓練を中断させ、基地全体にも大変な迷惑をか
けて、誠に面目丸潰れでした。しかし、本物の敵機でなくて助かったわけですす。

☆今日の一言☆  
恥の上塗り  
[AOZORANOHATENI] 

開く トラックバック(1)

16-126、意趣返し

イメージ 1

             阿曽上飛曹。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-126、意趣返し

ある日、夕食も終わってデッキで雑談していました。すると、われわれが訓練を担当
している予備士官数名がやってきて、操縦員に整列をかけました。そして、いろい
ろと文句を並べたうえ、操縦員全員を殴りました。

彼らにすれば、いくら飛行時間が少なく経験が浅くても、れっきとした偵察士官で
ある。それに対して、下士官の操縦員が機上で間違いに気づいていながら、知らぬ
顔をして協力しないから、地上の教官に叱責される結果となのだ。下士官の分際で
生意気だ、というのが彼らの言い分です。

さーあ大変です。下士官といっても飛行兵に志願するほどの者ですから、みんな向
こう意気が強いのです。殴られて率直に言うことをきく者より、反発する者が多い
のです。日ごろから階級をかさに着て、本来なら自分たちが準備すべき落下傘など、
下士官操縦員にやらせる者もいました。だから、日ごろの鬱憤が爆発しました。

「何だ奴ら! 偏流も満足に計れんくせに、一人前の士官面しやがって……」
「本来なら一升瓶でも下げてきて、願いまーすと挨拶するのが筋だ!
奴ら礼儀も知らん!」
「格好だけは一人前だが、腕前は練公(練習生)以下だ、 あれでも士官かよ……」
「自分の腕前は棚に上げて、俺たちに当たるとはもってのほかだ……」
「飛行時間が2〜30時間じやー、まだまだヨチヨチ歩きのヒヨッ子同然だ! 
ヒヨッ子のくせに空を飛ぶとは、生意気だ!」
「よーし見とれ、明日は只では済まさんから!」

こんな調子では教務飛行が順調に行われるはずがありません。阿曽兵曹などは、
飛行前の打ち合わせの時から、
「今日は晴れていますが、上空は気流が悪そうですよー」
など気流が悪いことを前もって予告しています。ちょっとした操縦のテクニックで、
悪気流を演出するのは簡単です。これを繰り返すと顔面蒼白となり、
「ゲエー、ゲエー」と戻し始めます。

それだけではありません、
「偏流を測定するー、針路30度ヨーソロー」
と、声がかかると、
「針路30度ヨーソロー」
と復唱しながら、飛行機をちょっと右に傾けて方向舵で左に応舵をします。すると、
右からの横風を受けているのに、飛行機は右の方に流されるような芸当だってでき
るのです。これでは、正確な偏流測定など不可能です。結果は支離滅裂な航跡図が
できあがり、以前にも増して、教官からお目玉を頂戴することになります。
 
また、飛行中にACレバー(燃料混合比調節レバー)を少しずつ出していくと、燃料
はだんだん薄くなります。一定の限度を越えると、《パン! パン! パパン!》と、
異常爆発を起こして、エンジンが停止します。しかし、プロペラは空転しています。
ACレバーを元に戻すと、《プルン プルン》と、エンジンがかかります。これを
2〜3回繰り返します。

「おい! 操縦員大丈夫かっ?」
「ちょっと、エンジンの調子がおかしいですねー」
「おい、引き返せ! 早く引き返せっ!」
ところで、エンジンはどこも悪くはないのですから、引き返したのでは操縦員が困
ります。

「何とか飛べるでしょう……、しかし、悪い燃料を使っいますから、いつ止まるか
分かりませんよ……」
などと言って、「80丙」の燃料のせいにしてそのまま飛びます。
現実に《海上不時着、殉職》の実例があるので、後席の連中は着陸するまで生きた
心地がしません。

予備学生出身の士官は兵学校出身者と違い自分たちの立場を理解して、一般に穏や
かな人格者が多数でした。だから、われわれを殴ったのは一部の者に過ぎません。
しかし、こうなると一蓮托生です。殴られたお返しはなかなか厳しいのです。

☆今日の一言☆  
江戸の仇を長崎で  
[AOZORANOHATENI] 

イメージ 1

             零式水上偵察機。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/  
     
       16-125、水上機ではないぞー

上達すれば、時刻どおりに目的地の真上に到着することができるようになります。
中には目標を外れ、海の上に帰ってくる者もいます。
「おーい、ここに降りるつもりか? 水上機ではないぞー」
と、からかうことになるのです。
 
一般に偏流のプラスとマイナスの勘違いや、針路修正の加減算の間違いが多いの
です。地上での練習と違い、空中では思考力が低下するからで、地上では考えられ
ない錯覚を起こすのです。昼間の訓練飛行では、操縦員がチャートを見ながら自分
の位置を確認しているので、航法に誤差が出ても直接事故につながることはありま
せん。ところが、夜間洋上での航法誤差は命取りとなります。
 
操縦員は訓練中、航法の間違いに気づいても、知らぬ顔をして飛行します。航法担
当者が自ら気づいて修正するのを待っているのです。着陸してから、地上の教官が
航法図板を点検します。 白図に記入した予定コースと、 偏流を測定して修正した
航跡図を検討して、その適否を判定して必要な指導を行います。
 
私は甲飛13期生に対しては、後輩という意識もあり、
「おーい、針路の修正が逆じゃないのか?」
「風は右から吹いてるはずだぞー、偏流を計り直せ!」
など、機上でそのつど注意します。 だから、 大きな誤りを起こすことはありません。
ところが、学生出身の予備士官に対しては、上級者だからそのような、僣越な注意
など致しません。ただ指示されたとおりに飛ぶだけです。
 
恐らく他の操縦員もそうであったと思います。そのため、着陸して教官から叱責され
ているのは、ほとんど彼ら予備士官連中でした。搭乗員は士官も下士官兵も機上で
行う作業は同じです。だから、士官が上手で下士官兵が下手とは限らないのです。

☆今日の一言☆  
難波の鯔は伊勢の名吉  
[AOZORANOHATENI] 


.
sen*i0*20
sen*i0*20
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログバナー

Yahoo!からのお知らせ

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事