老兵の繰り言

「特攻隊」の生き残りが後世に語り継ぐ鎮魂の記録です。続いて、自衛隊草創期のうら話などを紹介致します。

16青春の回想

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16-124、航法通信訓練

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            「白菊」本来の姿。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-124、航法通信訓練

目印のない洋上飛行を主な任務とする海軍の飛行機は、いかなる場合も推測航法
が原則です。推測航法とは、風向と風速を測定して、自分の飛行機が予定コースに
対して、何度の方向に何ノット流されているかを算定し、その流された分量を修正し
ながら、目的地に到達する方法です。

飛行機は空中に浮かんで、風に流されながら飛んでいます。だから、機首方向(軸線)
と実際の飛行方向(航跡)には差異があります。 この風に流される角度を偏流角と
呼びます(風向と同一方向に飛行する場合は偏流角○度となります)。この偏流角を
異なった2方位で測定して作図すれば、風向と風速が算出できます。 この演算を簡
素化したのが航法計算盤です。

この計算手順は、地上でも練習することができます。だから、地上で充分に演練して
から機上訓練を行います。 ところが、実際に飛行しながら実施すると思わぬ間違い
が起こります。これは、空中では思考能力が激減するからです。

訓練飛行の場合、離陸して上昇しながら出発点に向かいます。予定高度に達すると、
「高度1,500メートル水平飛行、 偏流を測定しまーす、 針路30度ヨーソロー」
と、航法担当者から声がかかります。操縦員は、
「高度1,500、針路30度ヨーソロー」
と復唱し、針路30度高度1,500メートルで水平飛行を行います。航法担当者は
偏流を測定し、
「みぎー変針、120度ヨーソロー」
と、次のコースを指示してきます。

2度目の偏流測定を予定飛行コースと同じ方向になるように計画すれば、無駄が
省けます。 右に90度変針して120度で再び偏流を測定します。 偏流測定には
偏流測定儀か爆撃照準器が使用されます。

「偏流測定おわーり、 偏流プラス5度、針路を修正しまーす、 修正針路115度、
ヨーソロー」
と、航法担当者から指示があります。 この意味は、計器の示度では120度で飛ん
でいても、風のため5度右に流されている、 だから実際の航跡は125度になって
いる。 そのため、航跡を120度にするためには、 計器示度を115度に修正して
飛ぶ必要があるということです。

針路を変えて2方向で偏流を測定すれば、これを合成して、風向と風速が算出でき
ます。 1方向だけの測定では、そのコースで流されている角度だけは分かりますが、
気速(計器速度)と実速(対地速度)の差が算定できません。 風向と風速をもとにし
て実速を算出すれば、目的地までの所要時間や到着時刻が計算できるのです。

航法図板(白図)に引かれた予定コースに、解析したデーターを記入しながら、飛行
機を目的地に誘導するのが航法で、航法担当者の主要な任務です。

また変針する前後には必ず偏流を測定して、 風向風速を算出して再確認します。
コースの途中でも余裕があれば随時偏流を測定します。風向や風速は常に変化し
ているからです。

訓練飛行の場合には、操縦員は航法担当者の指示どおりに飛びながら、チャートを
て崎の突端や灯台などの著名目標の方位や距離を確認して、航法誤差がどれほど
あるか見当を付けています。

☆今日の一言☆  
馬鹿と鋏は使いよう  
[AOZORANOHATENI] 

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             横井1飛曹。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-123、「80丙」の犠牲

操縦員は一見楽な勤務のようにみえますが、一寸の油断もできない緊張の連続
でした。その理由は航空燃料に「80丙」を使用していたからです。80はオクタン
価を示し、丙とはアルコールを意味する符諜です。精製したアルコールを燃料にし
て飛んでいたのです。これは当時の航空燃料として最低の品質でした。そのため、
馬力が出ないうえ、 シリンダー温度が冷え過ぎると、 エンジンが止まる恐れがあ
りました。

飛行訓練を開始して間もない日、最終の帰投コースを飛んでいると、前方を飛行
していた僚機が急に高度を下げ始めました。よく見るとプロペラが空転しています。
エンジンが停止した様子です。飛行場まで滑空するにはとても無理な距離です。

私は増速し高度を下げながら後を追いました。近づいて見ると、横井兵曹が操縦
しています。いろいろ操作を行っていますがエンジンが回復する様子はありません。
「おい電信員! 不時着機の位置を確認して基地に電報を打て!」
と、叫びました。

「ただ今不時着機からの発信を傍受していまーす……」
不時着機の電信員は必死になってキーを叩いているのでしょう。うまく着水できた
と思ったのですが、飛行機は転覆してしまいました。白子の沖合で知多半島との
中間ぐらいの海上です。

上空を旋回しながら見ていると、黒いものが5個浮かんできました。全員が脱出で
きたのです。しかし、乗員は4名のはずです。更に注意して見ると泳いでいるのは
3名です。あとの2つは車輪が浮いているのです。着水の衝撃で脚が折れたらしい
のです。

訓練を打ち切って、直ちに飛行場に帰って地上指揮官に状況を報告しました。後で
分かったことですが、殉職したのは電信員でした。恐らく最後まで不時着の状況を
送信し続け、着水の衝撃に対応する暇がなかったのでしょう。エンジンが停止した
原因は明確ではありませんが、恐らく粗悪な「80丙」と関係があったものと思われ
ます。

ここでの飛行訓練は、後席に同乗して訓練を受ける予備士官や練習生は、1回ごと
に交替しますが、操縦員に交替はありません。午前も午後もぶっ続けの搭乗で緊張
の連続でした。だが、「特攻待機」を解かれ、死から解放された気分は爽快で、肉体
的な苦労などは問題ではありませんでした。短期間でしたが、私の搭乗員生活の中
で最も充実した時期でした。

☆今日の一言☆  
念には念をいれよ  
[AOZORANOHATENI] 

16-122、田中部隊へ

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             金近上飛曹。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-122、田中部隊へ

われわれが「特攻隊」を編成して訓練を開始してから、 既に3ヵ月が経過し、沖縄の
戦闘もついに終局を迎えました。6月25日、同期生春木茂1飛曹(菊水第3白菊隊)
が参加した「菊水10号作戦」を最後として、 「白菊」による特攻作戦は中止されまし
た。これに伴なって、われわれの「特攻待機」が解かれました。

そして、金近上飛曹以下の第13分隊に所属の下士官操縦員が、三重県鈴鹿基地
で臨時に編成された田中部隊へ派遣されました。

これは、相次ぐ「体当たり攻撃」などで、大量の搭乗員を消耗した海軍が、急速錬成
により搭乗員を補充する必要に迫られ、この訓練を担当するために臨時に編成され
た部隊です。

燃料不足で飛行訓練を中断していた、 予備学生や予備生徒それに甲飛13期生
がその訓練の対象でした。そして、通常の偵察員教育が航法、通信、射撃、爆撃な
どをすべてを習得させるのと違い、彼らに対しては、即成でその一部門のみ習得さ
せて、実施部隊へ送り出す方法がとられました。

そのため、航法担当者は航法のみ訓練を実施し通信はやりません。同様に通信担
当者は通信訓練のみに専念します。また、攻撃員は見張りと機銃操作が専門です。

ここでは、機上作業練習機としての「白菊」が本来の任務に使用されることになりま
した。操縦員は通称「馬車曳き」と呼ばれ、後席に航法・通信・見張り兼機銃操作の
攻撃員を乗せて飛行訓練を実施します。

訓練は予め指定されたコースを、航法担当者の航法に従って飛行します。通信担当
者は飛行中、機上と基地の間で交信訓練を実施します。攻撃員は見張りと旋回機銃
の操作が役目です。

☆今日の一言☆  
寝耳に水の果報  
[AOZORANOHATENI] 

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              吉田松陰の辞世。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-121、肉親に対する愛情

次に運命として諦観する方法があります。 確かに人の運命には予測できない面が
あります。それは、過去の戦闘や飛行機事故などの例で、生死は紙一重であること
を痛感していました。だから、これに運命的なものを感じていたとしても不思議では
ありません。
 
だが、これは結果としていえることで、 運命そのもで死を解決するのは、諦らめの
理論です。諦らめ切れないから悩むのであって、これが解決の手段にはなりません
でした。要するに理屈で解決するのでなく、感情的に納得できる何かを求めていた
のです。

私が死を意識して、真っ先に考えたのは、最も身近な者のことでした。 即ち、両親
や姉など肉親のことでした。自分が犠牲になることで、国家が存続し親や姉たちが
無事に暮らす事ができるのであればという、切羽詰まった考え方でこの問題に対応
したのです。

恐らく、 私以外の者の考え方も大同小異であったと思います。 この問題を解決する
のには、肉親に対する深い愛情が根本にあったと信じています。その対象が妻子で
あり、また約束を交わした最愛の女性であった者もいたに違いありません。

この肉親に対する愛情が、わが身を犠牲にして顧みない、重大な決意を可能にした
のです。また立場を変え、親の側からこれをみるとき、親もまた複雑な思いに駆られ
ていたに違いありません。

 親想う 心に勝る 親心
   今日のおとずれ 何と聞くらむ

吉田松陰の辞世を、現実に体験することになったのです。 いかに国のためとはいえ、
わが子の無事を願わない親はいません。お互いの愛情と信頼が、「特攻」という常軌
を逸した行動の原動力になったとすれば、真に非情です。

☆八洲隊の若桜☆  
さらば祖国よ山河よ 離陸のあとは何もない  

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             靖国神社。

青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/ 
     
       16-120、お神酒は飲み放題だ!

 日ごろ同僚との会話の中で、
「俺たちは、戦死すれば軍神として靖国神社に祀ってもらえるんだなあ……」
「そうだよ、靖国神社にも先任後任があるんだ、俺が先に行って待っている。
遅れて来た奴は食卓番だぞー」

「そらつくなよ、軍神が食卓番なんかするものか。毎日が上げ膳据え膳で、お神酒
は飲み放題だ!」
「そうだー、俺たちは軍神なんだ。だからお神酒だけは今から供えて欲しいなあー」
「なに言ってる。貴様の供えてもらいたいのは、おふくろさんのオッパイだろう・・・・」

などとふざけ合っていても、本心から、軍神になることや靖国神社に祀られることで
この問題を解決できた者は、恐らく一人もいなかったのではないでしょうか。

人間はどうせ一度は死ぬのだ。それなら多少とも、後世に名を遺したいという見栄
があります。そして、軍神や靖国神社は生前に予想できる唯一の死後の姿でした。
地獄や極楽など単なる幻想の世界ではありません。

立派に戦って戦死すれば、靖国神社に軍神として祀られることは、約束された現実
です。 しかし、初めからそれを目的として考えることは、 神に対する冒涜でしょう。
私たちは、国家神道を観念的には理解できても、それは、死後の姿を想定する手段
としてであって、死を解決するには別の何かを求めざるを得なかったのです。

☆八洲隊の若桜☆  
友よ笑って さあ征こう  


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