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閻魔大王。
青春の回想 http://www.warbirds.jp/senri/
16-118、死後の世界
今日は人の身明日はわが身、いつ出撃命令が出るか分からない状態で、更に死ぬ
ための訓練が続けられました。一度は死を決意したものの、夜半ふと目覚めて故郷
に思いを走らせることがあります。そして、まだ死にたくない、何とか生き延びる方法
はないものかと、生への執着に悩まされることも度々でした。
特攻隊が編成された当初は、皆一様に無口になり、決意を胸に秘めている様子でし
た。 ところが、日が経つにつれて、今度は以前にも増して快活になってきたのです。
皆それぞれ自分の死を納得したのでしょうか。 それとも、表面の快活さは、心中の
悩みを隠すための手段なのかも知れません。
心を許し合った同期生の間でも、 直接この問題に触れて話し合うことはありません
でした。 それは、他人の介在を許さない、自分自身で解決すべき問題だからです。
そうは言っても、 人生経験の浅い18歳の若者に、このような解答を出させるとは
非情です。
だが、内心の葛藤とは裏腹に、飛行機を操縦している時だけは、緊張のため雑念
も涌かず、死ぬための訓練でありながら、超低空飛行を行っても怖いというよりも、
むしろ爽快な気分を味わうことさえありました。
訓練は続き技量は上達しても、死に対する不安や恐怖は、消えるどころか益々強く
なってきます。この生への執着は、出撃命令を受けて最後の離陸の時までは、恐ら
く断ち切ることはできないであろうと感じていました。
だれでも、一時の感情に激して死を選ぶ事は可能かも知れません。しかし、理性的
に自分の死を是認し、この心境を一定期間持続することが、われわれ凡人にとって、
いかに大変なことであるか、経験しない者には想像もできないことでしょう。 日頃
大言壮語していた者が、 「特攻隊」の編成に際し、 仮病を使ってまで逃げ隠れした
事例からも判断できます。
見方を変えれば、あれが人間の正直な姿であったのかも知れません。当時のような
「全機特攻」の重苦しい雰囲気の中で、なお死から逃れようと努力する者には、それ
相当の勇気が必要であったと思われるからです。
他人の心を計り知ることはできません。 しかし、意識して皆との話の輪に加わって、
他愛ない話題に興じて、 無理に快活に振る舞っている自分の姿を彼らはどう見てい
るのでしょうか。彼らもまた私と同じような心理であったのかも知れません。皆と一緒
に談笑の輪の中にいながら、ふと脳裏を掠める不安に戦(おのの)く事も度々でした。
昼間は同僚との語らいで気を散らす事もできます。だが、夜中は自分だけの時間で
す。 眠れぬままに、古里の思い出に浸り、死後の未知の世界を想像することも再々
でした。 際限なく次々と頭に浮かぶ雑念を振り払いながら、 儚い人生につかの間の
安らぎを求めようと、 焦燥する日々がが続いたのです。
☆八洲隊の若桜☆
八幡菩薩の旗風に 地獄の使者だ俺たちは
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