|
別 杯。
陣中談議・うら話 http://www.warbirds.jp/senri/23ura/23.html
3-52、「宇垣特攻」の謎
(28)☆搭乗員整列と攻撃要領の指示。
〔吉村5〕
戦争は、終わった。が、特別攻撃機の出撃は予定通りすすめられた。
午後四時、司令部壕の外に立つバラック建ての食堂に参謀たちが集合した。
中央に宇垣司令長官が立った。コップに日本酒がそそがれ、一同別れの乾杯をした。
〔蝦名5〕
宇垣長官の出撃の時が迫ってきた。午後四時、特攻隊員宇垣長官一行との最後の、ささやか
な決別の宴が、 横穴防空壕内の、 せま苦しい司令部食堂で、息詰まるような思いのうちに
開れた。
〔酒井6〕
宇垣は時計に目をやった。針は四時半を回っていた。
滑走路では、七〇一航空隊大分派遣隊指揮官中都留大尉が出撃搭乗員に集合を命じていた。
〔日高5〕
午後四時半過ぎ――。
飛行場に黒塗りの車三台が到着した。
「中都留大尉、三機だけでよいと命じていたのに、これはどうしたことか」
「長官が特攻をかけるというのに、 三機だけとはもっての外、 私の部下一一機、全員がお供
します」
〔酒井7〕
爆音轟く中、別杯の儀式が行われた。 指揮所前のテーブルには杯とするめが一枚ずつおか
れている。
〔日高6〕
訓示が終わると、 指揮所前に準備されたテーブルの上にスルメ一匹ずつが置かれ、幕僚の
参謀たちが隊員一人一人にコップを握らせた。酒は白鹿の一級酒。――
〔豊田6〕
しかし、午後三時、司令部で宇垣長官を囲んで別杯が交わされる頃には、六機が強引に自ら
参加して、突入機は十一機にふくれ上がってしまい、(一部省略)
〔二村4〕
午後何時ごろだったか覚えていないが、「沖縄に特攻をかける」との命令がきた。 「搭乗割」
から洩れていた連中が、 同行させてくれと騒ぎだした。 黒板を蹴倒したり、男泣きしながら
隊長に詰め寄るさまを、私は選ばれた者の一種の優越感をもって眺めていた。
〔秦9〕
十三期予備学生出身の茂木仙太郎中尉は、 午後一時に非常呼集を受けて、愛機の側から
息せききって指揮所へかけつけると、搭乗員はほとんど全員が整列していた。 (一部省略)
「本日正午、玉音放送があり、わが日本帝國は降伏したのだ」 (一部省略)
肩を抱きあって泣く隊員の姿を見守っていた若い中津留大尉は、 やがて意を決したように、
「命令を伝える。 一六○○、わが七○一空は沖縄へ突っこむ。 点検を終わって集結せよ。
宇垣長官も参加される」と述べた。
〔二村5〕
「爆弾を八十番に変更せよ」との指示で、 積み替えを実施したが、 弾倉に入りきらず半ば
はみ出したまま装着した。「ガソリンも半分抜き取れ」との指示もでた。
〔松下7〕
ではなぜ、出発直前になって敢えて八○番に積み替えさせられたのだろうか。 その理由と
して考えられることは唯一つしかないように、寺司には思える。ガソリンを半分抜き取るため
の口実だったのではないか。
(一部省略) 彼等は還って来れぬように片道燃料にされたのだと考えるしかない。 事実は
八○番の爆弾に替えたからガソリンを抜かれたのではなく、ガソリンを抜くための口実として
八○番の爆弾に替えさせられたのであろう。
〔二村7〕
「本職先頭にたって、今から沖縄の米艦艇に最後の殴り込みをかける。一億総決起の模範
として死のう!」と言われ、山本五十六元帥からいただいた短剣をぐっと前に突き出された。
われわれもいっせいに、「ワーッ」 と歓声をあげ、 右の拳を突き上げた。 つづいて、
中津留大尉が、「降爆してからいったん機を引き起こし、そのあと空身で突っ込め」と、指示
された。
〔二村8〕
一番機の操縦は中津留大尉、その後席に宇垣中将と遠藤飛曹長が乗り込んだ。 一番機
に続いて二番機の私も離陸、 初めて積んだ八〇〇キロの重さで、 一、〇〇〇メートルの
滑走路を一杯に使ってようやく海面スレスレに浮上した。
〔酒井8〕
遠藤飛曹長は頑として聞き入れなかった。
「突入時刻は夜になりますので、 私のようなベテラン下士官偵察員がいなければ、迷子に
なってしまいます」
★別杯はバラック建ての食堂・横穴防空壕内の司令部食堂・指揮所前に準備されたテーブ
ルの何れなのでしょう? また、参加者は参謀・出撃隊員・それぞれ別になのでしょう?
★彗星の標準装備は、五十番一発か二十五番二発です。なぜ直前になって標準装備でも
ない八十番に積み替えさせたのでしょう。二村君も八十番での離陸は初めてだったと証言
しています。恐らく八十番での降爆訓練も実施していなかったと思われます。
★また十一機の爆弾の積み替えや、ガソリンを抜き取る作業が、果たして短時間で可能な
のでしょうか。各文献に共通する事は、幕僚や搭乗員の談話は収録していますが、出撃を
直接支援した整備員の証言が収録されていません。
★私は艦上攻撃機の操縦員で整備員ではありません。また機種も違うので一概には言えま
せんが、爆弾の積み替えは先ず、 搭載している爆弾の信管を外して爆弾運搬車に降ろし、
弾薬庫に運んで、次ぎに搭載する爆弾を積んで運搬する。その間に他の者が、爆弾投下器
の付け替えを実施します。 そして、爆弾の軸線を調整しながら装着し、 投下試験を行い、
再び装着して固定し信管を挿入します。最後に風車押さえ(信管の安全装置)で風車を固定
してから安全ピンを抜きます。射爆特技を持った整備員や爆弾運搬車の数にもよりますが、
重量八百瓩の爆弾の積み替えは短時間にできる作業ではありません。
★また、特攻本来の戦法「体当たり攻撃」ではなく「降爆」を指示したのは何を意味するの
でしょうか。
★更に、最精鋭の彗星艦爆が十一機も出撃しながら、戦果なしとはなぜでしょうか。
★中津留大尉の胸中を察するに、必死必中の「体当たり攻撃」を敢行して敵に損害を与え
ることが本意ではなく、長官に殉死することに意義を求めたのではないでしょうか。そうで
あれば、 熟練搭乗員を外して、若年搭乗員を主体に編成した理由も理解できます。また、
出撃搭乗員に対して、攻撃要領について何らかの特別の指示がなされていたものと推察
します。
|