老兵の繰り言

「特攻隊」の生き残りが後世に語り継ぐ鎮魂の記録です。続いて、自衛隊草創期のうら話などを紹介致します。

5航空自衛隊

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5-159、戦死と殉職

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               歴戦の勇士、堅田飛曹長。


自衛隊うら話    
          5-159、戦死と殉職  
         
昭和19年12月、百里原空で雷撃訓練中に空中衝突事故を起こして、同期生を含む5名の者が
殉職しました。 遠く長崎市から駆けつけて、海軍葬に出席された同期生、浅井勇三君の父親が、
「『殉職』では遺骨を持って故郷には帰れません、何とか『戦死』にして下さい……」
と、涙ながらに哀願される一幕がありました。

またこの事故で殉職された、堅田瑞穂飛曹長は甲飛4期の先輩です。航空母艦瑞鶴の雷撃機
搭乗員として珊瑚海々戦に参加され、アメリカ空母レキシントンに対して、肉薄雷撃を敢行して
抜群の功績を挙げられました。 しかし、「戦死」と違い訓練中の事故による「殉職」では、叙位
叙勲もなく、故郷に錦を飾ることもできません。

「何でこんなことで死んだ!」
そう、嘆かれた父親の気持ちには、事故で死ぬくらいなら、珊瑚海々戦で敵艦と刺し違えてでも
「戦死」して欲しかった。との願いが込められていました。

戦争中の風潮としては「戦死」は最高の名誉であるのに反し、訓練中の「殉職」はややもすれば
身の不始末と見られ、恥辱とされる傾向さえありました。だから、父親の願いは尤もなことです。
しかし、われわれにはどうすることもできませんでした。

自衛隊では、訓練中明らかに本人の不注意による事故であっても、「殉職」として鄭重に「部隊葬」
が行はれます。

5-158、水死事故の裏話

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              男は黙って泥を被る!


自衛隊うら話    
          5-158、水死事故の裏話  

第8航空団(築城基地)業務隊長の西部3佐は、私と同郷の福岡県田川郡の出身です。彼は
田川中学(旧制)から甲種飛行予科練習生を受験しました。 佐世保空で実施された2次試験
の適性検査でも私と同じ班でした。入隊も同じ鹿児島航空隊の同期生です。

彼は、上海空に渡って偵察員としての飛行訓練を受け、実施部隊は台南空に配属されました。
次に、神雷部隊として有名な721空に移って活躍したいわゆる《特攻くずれ》です。 彼の向こ
う見ずな性格は中学生時代からのものです。 その当時から「硬派」の代表格でした。だから、
彼の性格は特攻隊時代の影響とは言へません。典型的な「川筋気質」の男でした。

航空自衛隊には公募空曹1期生として一緒に入隊しました。幹部候補生は彼が半年先輩です。
その彼が、ある部隊で業務小隊長として勤務していた時の出来事です。 ある夏のこと、彼の
部下が磯遊びに行って誤って水死しました。

普通であれば、部下が公務以外で死亡した場合には、葬儀を取り仕切り、 香典を少々奮発し
て弔辞を読めば、それで上司としての任務は終了します。だが彼は、遺された遺族の将来の
ことを気遣い、ある方法で処理する事を考えました。

それは訓練中の事故として処理することです。基地業務隊長と相談して、実行に移しました。
当然、 監督責任を負うことになります。 懲戒処分を覚悟しなければできない処置でしした。
その懲戒処分も、死亡事故が対象となれば軽度のものでは済まされません。また「減給」や
「停職」などの重い懲戒処分を受けると、期末・勤勉手当(ボーナス)が減額されます。
そのうえ次期の昇任にも影響します。

当時私はこの事実を知りませんでした。だから、事故の話を人伝に聞いて「西部の奴、訓練中
に死亡事故を起こすなんて、運が悪かったんだ……」程度にしか考えていませんでした。とこ
ろが、 その後事故当時の彼の上司であった岡部3佐と同じ部隊で勤務する機会があり、この
事件の真相を聞くことができました。

全責任は自分がとるからと言って強引に実行したそうです。さすがに、義理と人情の「川筋気質」
の男です。並の人間にできる決断ではないと感心しました。

一般に事故が起きると、いかにして責任を逃れるかを考えるのが普通です。他人のために進ん
で泥を被る精神は貴重なものです。この犠牲的精神は、やはり特攻精神に通じるものがあると
思います。

5-157、趣味と実益

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               自衛官は停年が早い!


自衛隊うら話    
          5-157、趣味と実益  

私が第12飛行教育団に勤務しているとき、第8航空団(築城基地)の会計隊長は松尾3佐でした。
彼と私との付き合いは長いのです。 私が脊振山サイトに勤務しているとき、彼は下甑島サイトの
会計小隊長の職にありました。 昭和43〜5年は、 第3術科学校の教官室で一緒に勤務した仲
です。 非常に真面目な性格で、われわれがマージャンだやれゴルフだと遊んでいるのを、いつも
苦々しげに見ていました。

その彼と、木更津市の第1補給処で行われた空幕主催の「資金前渡官吏会議」で久しぶりに再会
しました。
「永末さーん、俺……、考え方を替えたよ、マージャンも覚えたしゴルフも始めたよ……」
「エッ! 何でまた宗旨替したの?」

彼の説明はこうでした。部下の空曹が停年を迎えるので、再就職の世話をするため面接に連れて
行ったそうです。 そして、その面接内容を聞いて仰天したそうです。普通の会社なら会計出身者
と聞けば、
「算盤は何級ですか?」
「商業簿記ができますか?」
などと、質問するのが常識というものです。

ところが、そこでは仕事の能力についての質問など一切なかったそうです。その代わり、
「マージャンはできますか?」
「ゴルフのハンディは幾つですか?」
などと聞かれたそうです。 これは仕事に関する事務的な能力よりも、人間の交際能力を重視した
選考の仕方です。

「それ、どこの保険屋ですか?」
人間関係を重視する以上、てっきり保険会社が外交員を選考したものだと思ったのです。
「行橋の代理店ですよ……」
「エエッ!」

今度はこちらが驚きました。代理店は代理店でも保険会社の代理店ではなく、われわれが国の予算
を預託している日本銀行の代理店なのです。もちろん、停年後の再就職ですから、保安要員か集金
業務の担当者として選考したのでしょう。

それにしても、世の中変われば変わるものです。 この事件を契機として彼も一念発起しました。
停年後の実益と趣味を兼ねて、マージャンを覚え、ゴルフを始めたというのです。 

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            会議よりこちらが大事。


自衛隊うら話    
          5-156、分任資金前渡官吏会議            

私が脊振山サイトに勤務していた時期、柳2尉(高尾山)・出水2尉(見島)・石岡3尉(海栗島)・奥村2尉
(福江島)・松尾2尉(下甑島)・後藤3尉(高畑山)がそれぞれ会計小隊長(分任資金前渡官吏)に配置
されていました。司令部の会計班長(主任資金前渡官吏)には河野2佐が任命されていました。

毎年定例的に「分任資金前渡官吏」を司令部に集めて会議が開かれていました。 年度予算の説明や
予算執行に対する注意事項、 その他の関係法令の改正などに就いての説明などが主な議題でした。
ある年のこと、夜の懇親会が終わったあと、 柳2尉の呼びかけで一卓囲むことになりました。 ただし、
真面目がとりえの松尾2尉はこの種の遊びに無縁なことは言うまでもありません。

会議も最終日となって、見島サイトの出水2尉が私の所に来ました。
「ナッ永末さん、オッお金……、少しカッ貸してくれんね……」
「いいですよ、 でも何んに使うの? お土産でも買って帰るの?」
「うーん……、チッちょっとカッ帰りの旅費が……」
と、言い渋っています。

こんなに付き合いの良い人もいたのです。 それに引きかえ、発起人であり独り勝ちの柳2尉は、ただ、
ニヤニヤと笑っているだけでした。平和な時代の楽しい交遊の一齣でした。

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            受験者だけでなく試験官も緊張します。


自衛隊うら話    
          5-155、昇任試験の試験官 

第12飛行教育団に在任中、 毎年2回実施される空曹昇任試験の試験官を命じられていました。
団司令部人事班長藤本3佐、整備補給群整備主任三原3佐、それに基地業務群では会計隊長が
なぜか試験官の指定席になっていました。

昇任有資格者はまず筆記試験を受けます。 自衛隊関係法令と一般社会常識です。これに合格し
た者が面接試験に臨みます。面接試験の当日、受験者は控室に隔離されます。試験官の質問内
容が他の受験者に漏れないための処置です。 そして、面接が終わった者から各自の職場に帰る
のです。

担当の人事係空曹が受験者を一人ずつ面接試験場に呼び入れます。
「〇〇士長入ります!」
元気よく名乗って試験場に入り、指定された席に着きます。ここまでの要領は、それぞれの職場
で先輩から教わっているので特に問題はありません。

次に、われわれ3名の試験官が順次に質問を開始します。ここからそろそろ地金が出はじめるの
です。
まず最初は、人事班長藤本3佐が質問します。
「自衛隊に入隊するまでの経歴を説明しなさい」
「家族の状況を説明しなさい」
などと、経歴や身上を確認するための質問から始まります。 これは本来プライバシーに属する
部分があるので避けるべきですが、人事班長は恒例的に質問していました。

そして、この質問は毎回同じですから、 先輩から話を聞いて腹案を持って臨んでいるはずです。
ところが、緊張のあまりトチル者が出てきます。
「……母親と女の妹が1名おります……」
などと、ご丁寧な回答が返ってくることもあります。

これに続いて各試験官が、社会問題や新聞で報道された最新の事件などに対する所見を求める
のです。 受験者はそれぞれ質問事項を予想して、回答の腹案を準備しているのです。その予想
が当たるとまだ質問が終わらないうちに、慌てて答え始める者もいます。質問を聞き終わってから
一呼吸おいて答えればよいのですが、この間の取り方が難しいのです。

また質問の趣旨を理解せずに、自分勝手な回答をする者など千差万別です。質問の意味が理解
できなければ、
「それは、……の意味ですか?」
と、聞き返せばよいのですが、それでは失礼になるとでも思っているのか、 問い直す者は殆どいま
せん。そして、的外れな回答を始める始末です。

試験官はあらかじめ準備した採点票の評価値の欄に点数を記入します。採点票には服装容儀や
言語態度その他数項目について判定するようになっています。当時の試験官は、藤本3佐、三原
3佐それに私を含めて部内幹部候補生出身者でした。

だから、自らも昇任に関する苦労や悲哀をそれぞれ体験していました。できれば全員合格させて
やりたいのです。とは言っても、昇任の枠は限られていて、われわれの力ではどうにもできない
のです。だから、試験官も大変でした。

試験官の採点は似通ったもので、あまり差はありませんでした。 まず文句なく合格点を付けら
れるのが2割程度で、後は大同小異でした。 運良く初めての受験で合格する者もいれば、2度
〜3度と試験官と顔なじみになる者もいます。

以前第3術科学校の教官時代に、3等空尉昇任予定者の特技別選考の面接試験を受け持つた
ことがあります。この受験者は長い間空曹としての実務を経験しています。だから、特技に関し
ては最高の知識と経験を持っていのです。そのうえ、年齢もすでに40歳前後であり面接に際し
て緊張する必要は全くないのです。ところが、彼らは例外なく過度に緊張し、あたかも真剣勝負
にでも臨むような感じでした。

それに比べて、空曹受験者にはそれほどの緊張感は見受けられませんでした。これは年代の
相違なのか、それとも昇任に対する期待の大小に起因するのかも知れません。

ある日、幹部会の宴会の流れであるスナックに立ち寄りました。 見ると顔に見覚えのある先客
がいました。私服を着ているけれど確かに整備隊の隊員です。 誘われるままに同席しました。
しばらく雑談を交わしていると中の一人が私に問いかけてきました。

「隊長、今年も昇任試験の試験官をされるんですか?」
「さー、多分俺に当たるだろうなあ……」
「それなら、質問もこの前と同じですか?」
「そういえば、君はこの前も受けたなあ……」
確かに試験場で見かけた顔です。   
「もう3回目ですよ!」

整備の職域には比較的優秀な者が揃っていました。ということはそれだけ競争が激しく、昇任
には不利ということになります。
「俺の質問は毎回変わらんよ……」
と、言いました。すると、
「隊長は、どうして毎年同じ質問をするんですか?」
なかなか熱心です。

君は、毎回違う質問の方が良いのかネ?」
「いやー、同じの方がいいですよ……」
「そうだろう、だから俺も変えないんだ」

私の質問は毎回同じでした。
「自衛官の心がまえについて説明しなさい」
これ一つだけです。毎回同じ質問をする理由は、回を重ねた者が少しでも有利になるようにと
願ってのことでした。初めて受験する者よりも、一度でもお茶を挽いた者から先に昇任させて
やりたいのが私の願いでした。

それにしても、昇任試験の時期になるといつも憂鬱な気分になるのが常でした。それは、空曹
と空士では身分の取り扱いに歴然とした差があるため、競争は常に熾烈だったからです。その
うえ、せっかく一定の成績を認められても、定員という壁に遮られて昇任できない者がいるから
です。


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