旧ただ若き日を惜しめ

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【12】 おわりに

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【12】おわりに

大田實少将は、沖縄に赴任する時点で死を覚悟していた事でしょう。

沖縄戦開始2ケ月前、昭和20(1945)年1月、沖縄方面根拠地隊司令の辞令が下った数日後、大田實は家族を呼びよせ、全員そろっての大田家最後の写真を撮りました。

写っているのは大田實と妻かつ、そして10人の子供達、末子の大田豊はまだ母親のお腹の中にいました。

イメージ 1
                        大田英雄著「父は沖縄で死んだ」


海軍司令部壕の司令官室に置かれていた「軍艦旗」と「少将旗」は、大田少将の愛唱歌にも歌われている「大君の御旗」に重ね合わせて大切に保管していたものと思います。
私はこれらの事から、このブログタイトルを「大田實少将、大君の御旗」としました。



太平洋戦争が終わって67年。

沖縄はいまもなお、戦争によって決まった枠組みに苦しめられています。
沖縄の土地の多くは、まだ米軍基地として使用され戻されていません。

私達は、あの日の大田司令官の思いに応えているのでしょうか。



私は、今回のこの取組の前、大田司令官の名前すら知りませんでした。
日頃、太平洋戦争に十分興味を持っていたつもりでしたからショックを受けました。

毎年、夏になると沖縄から市民が巻き込まれた、悲惨な戦いのニュースが発信されます。
ひめゆり部隊の名称は何百回もニュースや新聞で取り上げられています。

しかし、その中に沖縄戦で無念の死を遂げた軍人軍属に関する情報があまりに少ない事に気づかされました。
沖縄で戦った陸海軍の兵士達は、好き好んで沖縄に赴いたのではありません。
兵士達も、召集令状によって無理やり戦場に送り込まれるまでは普通の市民でした。
故郷に愛する家族を残し、その家族を守る為に戦い死んでいったのです。

私は、今まで大田少将の名前を知らなかった事を恥ずかしく思います。



戦争に「加害者」も「被害者」もありません。
全てが「被害者」なのです。


イメージ 3



最後に大田司令官と、沖縄県民との知られざるエピソードをひとつ紹介したいと思います。

前述の検証(9.自決場所の謎)の中で、6月15日の遺体の頭の位置が「北」に対し、8月28日の遺体の頭の位置が「南」になっていた事を記しました。
その事について触れておきたいと思います。

8月28日の遺体の様子は、大田司令官を上座に安置し一列に整然と並べられ、帽子や肩章が枕元に置かれていました。
これは明らかに敬意をもって弔っている事が分かります。

では何故この時、頭の位置が「北枕」になっていなかったのでしょうか。
礼を以って遺体を弔うのであれば、北枕に遺体を安置するはずです。


これは本土と沖縄の、死後の方角に関する風習の違いが関係していると思います。




昔から 北に頭を向けて寝ることを「北枕」といい 縁起が悪いとされてきました。
もともと釈迦が入滅したとき 頭を北にしていたことから 死者を安置するとき 頭を北にするという
習慣が生まれました。
それと 同じことを生者がするのは縁起が悪いと考えられたのです。

ところが 沖縄に行くと「西枕」が縁起が悪いとされています。
「北枕」でなく「西枕」が タブーになったのは 沖縄方言で「北」を「ニシ」と言ったことが原因のようです。
「北枕」と「西枕」が混同され いつしか「西枕」が不吉とされていたのです。

しかも 沖縄では東を太陽が昇ることから『アガリ』、西を太陽が沈むことから『イリ』と言います。
西は太陽が沈む方角というイメージが強く 死をも連想させます。
それもあって 死者が頭を向ける方角として「西枕」がすんなり受け入れられたようです。


【引用】ブログ「1日10分で100個の雑学」より。




つまり、当時の沖縄県では死者の頭を「北枕」にする風習が無かったと言う事です。

これを司令官室の方角に当てはめてみますと、部屋の配置上、頭は「南」か「北」に安置するしかありませんでした。
遺体を司令官室に移動した人物が、本土出身者なら、迷わず頭を「北」にしたと思います。
遺体の頭が「南」になっていたと言う事は、遺体を移動して弔った人、または人達が沖縄県民の可能性があるのです。

沖縄の後世を心配した大田司令官に対する、沖縄の人達の気持ちが伝わるエピソードだと思います。



最後に、私の所有している少将旗の今後についてですが、
今回、もう一枚の少将旗が発見され、旧海軍司令部での展示が決まるまでは、私も私の所有している少将旗は個人で保管すべきものではなく、旧海軍司令部壕で展示して頂き、多くの方に見てもらいたいと考えていました。

しかし、いくら少将旗が複数存在する事がありえる事とは言え、同じ資料館に大田少将旗が二枚存在すると言う事は、見学者の混乱を招きます。

昭和20年6月15日、全滅した司令部壕の丘の上に翻っていたのであれば、公式返還された少将旗が旧海軍司令部壕の資料館で展示するにふさわしい旗だと思います。

さてさて、私の旗をどうするか・・・、もうしばらく考えてみたいと思います。




イメージ 2
         遠方右手で木一本無く、丸裸となった丘が海軍司令部壕のある高地(昭和20年6月) 


末筆ながら、このブログを書き込むに当り、協力頂きました皆さまにこの場を借りてお礼申し上げます。

その中でも、大平一郎氏は、旗がスペインで行方不明となった時から親身になって一緒に探して頂き、その後の検証に当っても様々なサポートを頂きました。
ここに深い感謝の気持ちを表したいと思います。


「歴史を正しく次の世代に語り継ぐ事は、私達の義務です。」


最後までお読み頂きありがとうございました。



【追記】

正直言わせて頂きますと、現在、沖縄の「海軍軍司令部壕」で展示されている少将旗は、発見当時の由来の説明がされておりませんので、私がかつて掴んでいた園田少将旗が、太田少将旗に置き換わってしまったのではないかとの疑問はぬぐいきれません。

資料館や博物館で、所縁の品として展示する以上、その根拠となる「由来」を調査して掲示すべきと思いますが、その調査が全くなされないまま展示されている事になります。

しかし、折角日米合同の返還式がなされた以上、これに疑問を呈するという事は太田實少将の望む所ではないと考えています。

私は、私の入手した少将旗こそが、太田實少将の最期を共にした「大君の御旗」と考えていますが、個人で保管するには限界があり、せめて劣化を防ぐ為にしかるべき博物館に寄贈しようと考えました。

そして、太田實少将の思いを語り継いで頂く地として、広島県江田島にある旧海軍兵学校「教育参考館」こそが最も相応しい地と考え、旗とこの文章を江田島に持参して託してきました。

しかし後日、旗は宅急便で返送されてきました。
オークションで購入した旗は、由来が怪しいと判断されたのだと思います。

私にとって、これほど悲しい出来事はありませんでした。
全て私の力不足による結果であり、太田實少将に申し訳ないとの思いで、暫く立ち直れませんでした。
しかし、江田島の第一術科学校の司令官判断によるものであり、諦めざるを得ませんでした。

少将旗は、行き場が無くなってしまいましたが、事情を理解して頂いた海上海上衛隊OBの方のお口添えで、広島県呉市の「大和ミュージアム」寄贈させて頂く事が出来ました。

現在はミュージアムの倉庫の奥で、静かに保管されている事と思います。

この地で適切に管理され、沖縄に対する太田實少将の思いを、次の世代に永く伝えられる事を祈念します。





平成24年(2012)6月24日 沖縄全戦没者追悼式における野田佳彦首相の言葉

野田首相式典挨拶(要旨)

人間が犯してきた罪深い戦争の中でも、ひときわ苛烈で凄惨(せいさん)な戦闘だったと言われる沖縄戦から67年目となる初夏を迎えた。

沖縄の苦難の歴史に思いをはせるとき、私は、大田実中将の最期の言葉を思い起こさずにはいられない。
「沖縄県民斯(か)く戦えり。県民に対し、後世特別の御高配を賜らんことを」と結ばれた電信文に込められた、
祈りにも似た悲痛な願いだ。
私たちは、常に問い返さなければならない。
沖縄の皆さんの抱く思いを全ての日本人で分かち合おうとする格別の努力を尽くしてきているだろうか、と。

戦争の惨禍を二度と繰り返さないために、国の安全保障に万全を期すことは、国政をあずかる者の務めだ。
わずかなりともおろそかにすることはできない。

他方、現在も沖縄に米軍基地が集中し、県民に長年多大な負担をかけている事実は慚愧(ざんき)に堪えない。
基地負担の早期軽減に全力を尽くし、目に見える形で進展させることをあらためて誓う。
今日のわが国の平和と繁栄は戦没者の犠牲の上に築かれている。
祖国の未来を次の世代に託さざるを得なかった戦没者の悲痛な思いを受け継ぎ、わが国は不戦の誓いを堅持する。






end



追記
「少将旗」は個人での保管では劣化の恐れが大きいため、呉市の「大和ミュージアム」に寄贈しました。
大田實少将が「沖縄の日没」と書き込んだ「軍艦旗」は、米国のどこかで保管されていると考えられますが、現在、その所在は不明です。





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