男の背中

今日の命の燃え方はどうだったのだろう?自分の背中を感じながら。

妻のつぶやき

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妻のつぶやき 131

  矛盾
 
 妻が1歳3カ月の孫をだっこして
 教育テレビの子供の番組を一緒にみていた。
 
 時どき,孫の髪に頬を寄せながら。
 深い海のような安らかさ 
 
 私は、この女性でなければというほど愛したことがあったろうか
 心の底から喜ばしたことがあったろうか
 
 それなのに
 絵で見た聖母のような
 
 
 

夫婦のテンマツ 6

イメージ 1
   夫婦のテンマツ 6
 
 金吾が畑から帰ってきた。
 先に朝食を食べた葉子とお嫁さん、孫のなっちゃんは茶の間でテレビの子供の番組を見ている。
 
 金吾はシャワーを浴びて汗を流し、朝食のために勝手のテーブルについた。
 ハッとした。
 テーブルの上の毎日見慣れた神様向けのお盆がない。
 
 金吾は妻が神様にもお供えをしてくれたものと、すぐに悟った。
 
 それでいい、なんでもないことなんだ、と一人で胸の中でつぶやき大きく息を吸った。
 
 食べ終わって、いつものように茶の間で葉子の出してくれたお茶を飲んだ。
 生まれて2カ月のタっちゃんがぐずってお嫁さんはおむつ替えを始める。
 あと3カ月ほどで3歳になるなっちゃんは、葉子の隣でテレビのアンパンマンに夢中。
 
 のどの渇いている金吾は、2杯お茶を飲んた。
 そして、「さてお参りするぞ」と、言って立ち上がった。
 
 すると葉子は、「神様にもお供えをしておきました」と、金吾の顔を見ずにサラリと言う。
 金吾は、「ああ、そう」と、言って神棚に向かった。
 
 家族の今日の無事を祈った。
 それから座敷の仏壇で、般若心経と観音経をあげ、家族の無事と元気を祈った。
 
 なんでもない家族の一日が始まった。
 
 なんでもない、家族の様子とは?次回に紹介しよう。
 
 <写真:私の家庭菜園>
 左の塀の奥が我が家。手前から植えたばかりの来春用の玉ねぎの苗、ネギ、来春用のキャベツ、人参、大根、ピーナツ、ブロッコリー、カリフラワーが見える。その奥には来春用のエンドウ、ニンニク、ホウレンソウがあります。今、食べているホウレンソウや春菊などの野菜は息子たちの家の前にあります。明日お見せしますね。なんか自慢しているみたい?(そうなんだ〜)
 

夫婦のテンマツ 5

  夫婦のテンマツ 5
 
 金吾が食事を片付けて、居間に入る。
 すると、葉子はいつものようにテレビから目を離さないで、朝茶をいれた。
 腰をおろして金吾は一口、茶を飲んだ。
 それから長い間の二人の関係がこれで終わるかもしれない、という行き詰った苦しい思いを抱きながら口を開いた。
 
 「オレが朝食を一緒にとれないので、先に食べるおばあさん(葉子)に神様と仏様にご飯をあげてくれと頼んだ。これだけ頼んだのに仏様にしか上げてくれない。これではこの家の指揮が乱れて、家がダメになってしまう。この家には男が二人もいらない」と、金吾はふりしぼるように言い放った。
 そして、これだけ言っても葉子に通じなかったら、もう別れてもいい、と金吾は覚悟した。
 
 葉子は黙ったままだった。
 申し訳なかった、と言えるような葉子ではない。
 結婚して以来金吾は、どんなにこの言葉を願ったことか。
 もう諦めていた。
 
 どうにでもなっていいんだ、と金吾は残りの茶を飲み終えて立ちあがった。
 まだ緊張で胃の内部が小刻みに震えているような感じだった。
 居間を出て彼は、葉子が自分の思いをつらぬいて、家をでていくのだろうか?
そうはいっても病身の身、折れて金吾の言う通りにするのだろうか?と、思いめぐらす自分が未練がましくて打ち消すように首を振った。
 再びどちらでもいい、と金吾は胸の中でつぶいた。
 
 夕食時になっても葉子はいつものように家にとどまっていた。
 翌朝には、自分の部屋で眠っている葉子を感じながら、金吾は早朝の野菜づくりに出掛けた。
 
 夏から秋が始まるというのに、雨がふらない。
 キャベツとレタス、ブロコリー、カリフラワーなどの苗には、朝か夕にそれぞれに決まったように水をあげなければ苗が枯れてしまう。
 まいたばかりの白菜と大根の種にも水をじょうろでかけてやる。
 
 金吾には、家族のために消毒のない野菜づくりに精をだす、これが一番気の休まる時間だった。
 妻とのいざこざも忘れて没頭できた。

夫婦のテンマツ 

  夫婦のテンマツ 4
 
 金吾は分かってくれたものと思った。
 しかし、翌日に朝食をとりにお勝手に入ると、テーブルには相変わらず、盆の上に空の茶碗とコップが置いてある。
 神様のものは、金吾に自分でやってくれ、というのである。
 
 金吾はムカッとした。
 次に、虚しさが走った。
 どうして自分がお願いしたことを妻はできないのか?
  お願いのどこに理に合わないことがあろうか?と何回も考えた。
 
 一体、その家の中心となって働いている亭主の言葉に耳をかさない妻は、妻といえるのだろうか?と煩悶した。
 自分の言っていることがまちがったり、理に合わないことなら別だ。
 朝の農作業をしている夏の間だけ、一緒に朝食がとれないので、食事前に自分の代わりに神様と仏さまにご飯をあげてくれ、と言った。
 それなのに、実家でもしていなと言って、仏様にはあげて、神様にはあげない。
 そんなことがあろうか?
 この家にはこの家のやりかたがある。
 嫁ぐ際には、その家のやりかたに順応して生きていこうと決意してきたのではないのだろうか?
 
 一家の柱の言うことに従えないのでは、その家はもたない。
 一事が万事である。
 めん鳥鳴いて国ほろぶ、という昔からの言い伝えが金吾の脳裏に浮かぶ。 
 
 自分もたいしたこともない人間だ。
 しかし、いろいろやってきてくれた妻に感謝し、妻のためにつくしてきた、とも思った。
 気のつかないこともあったろうが、ないがしろにしたことがあったろうか?
 難病のオマエに毎月いくら治療代を払っている?約20万円じゃないか、と胸の中でほえた。
 それにイヤナ顔をしたことがあったか、と自問した。
 
 妻の老いた両親のために、土曜日ごと車を運転して様子を見につれていってるのは誰だ?
 いろいろ二人の食物を心配してくれているのは誰だ?
 お墓掃除までしている、オレは一体なんだ、と金吾は情けなくなった。
 
 一層、ここまで馬鹿にされるのなら、離婚の方がいいのかな、とも思った。
 すると、まだ若かったころに妻と口ゲンカをして、言った言葉を思い出した。
 「オレがいやで離婚したかったら、いつでもしていいよ。貯金は全部もっていっていい」
 
 ブルッとと身震いした。
 ぞ〜、とした。
 退職した今、もっていかれたら何もなくなる、通帳の管理は妻がしている。
 妻のことだから、オレの年金通帳までもっていってしまう、と金吾は思った。
 
 飯も食えなく一人茫然としている自分の姿が浮かんだ・・・・
 離婚はダメか、しかしこのままではお互いがたのしくない・・・?
 
 金吾はいきづまってしまった。
 みじめにもご飯の箸をおいた。
 茶碗をあらって、夢遊病者のように妻のいる茶の間に向かった。
 どう妻に言ったらよいか分からないが、このまま一緒にいてはお互いがつまらないし不幸になる、という思いでいっぱいだった。
 
 

夫婦のテンマツ

夫婦のテンマツ 3  
 
ちょと一言、「ごめんなさい」と言ってくれたら、どんなに気がらくになるか、いやどんなに豊麗線と小じわの中にちっちゃな両目が浮かんでいる顔といっても、可愛いなと思うことかと、金吾が地団駄しても妻の葉子から、「ごめんなさい」という言葉は聞こえない。
 
思いだすと、きりがない。
しかし、金吾の歪んだ心をおもうと、もう一つ紹介しておこう。
 
金吾は、長い間生きて生きて、自分は凡人だと自覚している。
人よりできないことが多いと、心底思っている。
できないことをクヨクヨしても悩むばかりである。
そこで彼はいつのまにか、能力以上のことは仏様や天の神様にお任せするようになった。
うまく事が運ぶと、お蔭さまですと思う。
うまくいかない時は、それは神様が目に見えない将来のために自分に一番いいようにしてくださったのだ、と思うように生きてきた。
毎朝、毎晩、家の仏様と神棚、外にでて、天の神様に手を合わせて感謝の祈りをしている。
 
春から夏には、暑くなるので金吾は家庭菜園の野菜づくりを朝の5時ころから9時ごろまでしている。
それから家に入り、神棚と仏壇に祈り、朝ごはんをいただく。
そのために、先に家族が朝食を食べるので彼は妻に言った、「食事の前に、オレに代わって神様と仏様にご飯をあげてくれや」
快い返事はなかったが、妻の顔はうなずいているように金吾には感じとれた。
 
その後、毎朝、葉子はご飯と水とお茶を神様と仏様にあげているように金吾には思えた。
だが数日すぎて、金吾は不思議な現象に気付いた。
食卓に毎朝、神様と仏さまに備える茶碗と水をいれるコップが空で盆に入れて置いてある。
あまり続くので金吾は妻に聞いてみた。
 
「この盆は?」
すると葉子は、「神様にご飯をあげるなんて、実家でもしていなし、やらなくてもいいと思う。あなくたがやって。私は仏壇だけやります」
金吾は、なるほど、毎朝、神様にご飯をあげる習慣は日本にはないかもしれない、と思った。
だが仏様だけにあげ神様にあげないことは、金吾には不公平に思え、数年前から両方にあげることにしていた。
神と仏と由来は違っても、両方とも弱い私たちを人を守ってくださるものには違いはない。
これが、彼の思いだった。
 
そう彼は妻に伝えた。
「だから、朝の農作業がおわるまで、同じものを両方にあげておくれ」と言った。
 
金吾は納得してくれたものと思ったが、そうはいかなかった。
 
翌朝、金吾が農作業を終えて食事にお勝手に入ると、仏壇にそなえたご飯とお茶はかたづけてある。
しかし、神様の供え物は空で盆に載ったまま、金吾に自分でヤレとばかりにテーブルにおいてある。

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