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こらからの生活
救急車があわただしく信夫の家の近くにきた。
彼は、何事がおこったのかと外に出た。
近くの家に止まった。
彼は近くに寄ってみた。
すると止まった家の88歳の奥さんが担架に乗せられて、運び込まれた。
奥さんといっても、息子(55歳)がまだ独身なので事実は奥さんだが、老女と言った方がふさわしい。
夫は1歳下の87歳。
信夫は、近所のことなので老女の体が衰弱してきていることを知っていた。
救急車に乗せられる姿をみていよいよ来るべき時が来たのかと、心の奥底で悲しく思った。
同時に、男二人が残って、これからどうしていくのだろうか、と余計な心配をした。
するとその時、驚く光景を目にした。
芳江(65歳前後)がその家から出てきて、救急車を見送ったのである。
彼女は、その家の息子のカラオケのパートナー、あちこちの大会で一緒に歌っている。
その上に彼女は、今でも少なくともシャクヤクの花のように男の目を惹きつける美人。
若かりし頃の彼女はいかばかりなことだったろうと、どの男も好奇心に満ちて見とれるほどだった。
息子が彼女とカラオケのコンビを組んで、もう長年歌っていることは周辺でしらない人はいない。
特に男どもは嫉妬もあり、噂話が広がっている。
しかし、しかしだ、と信夫は思った。
息子が会社にいっている留守に彼女が彼の家にいる?
彼女は老女の代わりとなって、彼の家の切り盛りをしているのであろうか?
そんなことを思いながら、信夫は家に帰った。
妻に、見たことを話した。
すると彼女は、「ずっと彼の家にいるのかしら」と、にこにこして応じた。
妻はたいして驚きもしない。
しかし、と信夫は思った。
彼女には、夫がいるはずだ。
障害のある息子も、一人いるはずだ。
家庭内はどうなってしまったのだろう?
数日後に、老女は老衰のために亡くなった。
葬儀場で滞りなく葬式は終わった。
ごく近い親類の者が式後かの家に集まり、御苦労さん会のようなものが行われた。
すると、芳江はかいがいしく台所を仕切り、お酌にまわったそうだ。
だれもなにも言わない。
その後、何事もなく、信夫のご近所の毎日は過ぎている。
信夫もりんごの木の剪定に精をだしている。
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男の言い分、女の言い分
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禁句
行きつけの散髪屋さんから聞いた話です。
私は彼に頭を差し出しながら、例の妻の「3畳一間の下宿では悲しい」と、言う話をした。
「女には、愛し合う二人で作っていく希望というものが分からない」と、結んだ。
すると散髪屋さんは、「うん、うん」と相槌を打ちながら、こんな話してくれた。
昨年42歳の同級会を東京で開いたのだそうだ。
不忍池の見えるホテルだったそうだ。
なんとも趣のある部屋だったそうだ。
思い出の彼女との夜のそぞろ歩きも、と思ってしまうような雰囲気。
旧友と飲み交わし、思いで話に花がさいたそうだ。
おとなしかった友が場を仕切るほどの元気だったり、見栄えのよかった子が冴えない風貌だったり、それぞれの人生の歩みを感じながら杯をかさねたそうだ。
そんな中、彼は中学時代に仲よくつきあっていた彼女とも二人で話ができたそうだ。
昔の彼女、今こうして再び会うと体からあふれんばかりの中年の精気と色気。
酒の酔い心地も手伝って、一瞬、どうして別れてしまったのか、と悔まれたそうだ。
そこで彼は昔の話を切り出した。
「休みの日に一回、松本城にいったよね」
すると彼女は、「あら、そうだったかしら?」と、不思議そうな顔。
「行ったじゃない、天守閣への階段がきつくて、手をつないで」と、彼は思いきって初めて手を差し出し、暗い中で二人で手をつないで登りきった時のあのむせるような感動を思い出して言った。
しかし彼女は、「そんなことあったかしら?」と極めて冷静。
彼は、あせってしまった。
まるで他人のよう、あのときの感動、今でも忘れないでいたのに・・・・
彼は彼女の心を探るように、目を見つめた。
すると彼女は、周囲の男性軍にちょっと目をやり、「シンちゃんはじめ、どの男の子も、ちゃんとしたお父さんになって」と、お姉さんのように言った。
彼はドキリとした。
そうだ、オレも一人の男の子にすぎなかったのだろうか・・・・
オレの初恋は一体どうなっていたのだろう?・・・と。
「あんたが好きだったよ」、と言わないでよかった、と彼は言った。
そして私に、「お客さん、告白は同級会での禁句です」と、彼は過去を振り払うようにつぶやいた。
私は、「男はいつまでも思い出に生き、女は現実に生きる」と、胸の中でつぶやいた。
この世の永遠の男と女のギャップを胸に、「ありがとう」と言って、私は散髪屋を後にした。
外は季節外れの雪だった。
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男の純情、女の現実
土曜日ごとに、妻の老いた両親の様子を見に訪ねています。(妻は一人娘)
妻が難病のために、私が車を運転して妻を乗せていきます。
この1カ月ほど車の道中で私は、南こうせつの「神田川」の歌を聞きながら、しっかり歌えるように練習しています。
演歌はなんとか覚えられるのですが、こういう歌はなかなか旋律にのれない。
すぐに外れてしまいます。
何回も何回も聞きながら歌っています。
私の下手な歌にも元音楽教師の妻は、道中ずっと黙って車に乗っています。
自分の両親のために、負い目を感じて耐えているのでしょうか???
ふと、私が歌詞の
♭3畳一間の小さな下宿
あなたは私の指先みつめ
悲しいかいって言ったのよ♯
と歌って、心にひっかかっていることを妻にたずねました。
「どうして悲しいのだろう?愛し合って二人で一緒にいられ、これからの希望で一杯だと思うけど?」
すると妻はこう言いました、「3畳一間のような生活はみじめ」と。
私はエエエッ?と思いました。
再び妻に、「愛し合いながら、これから二人で一歩一歩と生活を築いていくのにかね?」
妻は当然と言わんばかりに、「3畳一間の生活なんて悲しいわ」
私は????
黙ってしまいました。
女性は男の魅力に惹かれて結婚してくれるのではないんだ、生活優先なんだ?
妻はオレの?
私は前方をみつめ、まばたきもできないまま運転をつづけた・・・・
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男の居場所
(1)シャワーの時間
昼間の暑さを避けて、朝の5時から8時頃まで、家庭菜園の仕事をしています。
今は、キューリ、トマト、なす、インゲン、ピーマン、枝豆を採って、カボチャやトウモロコシ、スイカの様子を見たりして、水やりをし、順番に野菜の周囲の草取りをしております。
もう秋野菜のキャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、レタスの種をまき、苗づくりもしています。
そんなこんなで、8時をすぎてしまいます。
今朝は、朝一番で散髪屋さんに行く予定でした。
前日に、妻にも言っておきました。
6時半に畑を終えました。
家に入ります。
すると2歳半になるなっちゃんが、もう起きていました。
妻に、「先に食べて」と言って、シャワーを浴びました。
さっと体と頭を洗って、キッチンに行きました。
すると、妻は食事を終え、お嫁さんはなっちゃんの食事につきあっていました。
私は、少しショック。
「先に食事をとって」と言いましたが、当然なっちゃん以外の妻とお嫁さんは、私がシャワーから出てくるのを待っていると思ったのです。
いつもは、8時過ぎまで畑にいるので、先に食べてもらっています。
しかし、今日はちがいます。
6時半です。
私が久しぶりに家族と一緒に朝食をとれる時間帯です。
いくらなっちゃんのために、「先に食べて」と言っても、大人は待っていると思ったのです。
こんなのってあるかい?
汗かいて家族のための野菜づくりをしているのに?
こんなバカなことが・・・・
男の価値はこんなものなのかい?
お嫁さんもいるので、私はニコニコして、「なっちゃん、沢山たべてね」と言って食卓につきました。
(2)「きのう、聞きました」
食事をとりながら私は、昨日のことも思いだしていた。
一昨日に、庭の芝生に芝生用の除草剤をまいた私。
一昨日に、家族に除草剤をまいたので、「芝生にでないで」と言っておいた。
昨日に妻が庭に出ようとした。
目にした私は、「芝生に除草剤をまいたので、なるべく庭にでないで」と、繰り返した。
すると妻は、「もう昨日に聞きました」と、言い返しました。
私は、「・・・・」
私は、腹の中で、それは分かっている、忘れていてはいけないからな、と自分に言った。
それに、日常的なことではないので、きっと妻は忘れているに違いないのに、と思った。
妻が去って、ひどく私は疲れを感じた。
妻が、「ああそうね」と言ってくれたら、それだけでいいのに。
(3)明日の日程
明日は、妻の実家の両親が90歳近いので、お墓の草を刈りにいく予定です。
妻が一人娘なので、土曜日には両親の様子を見に行っている。
作っている野菜も届けてくる。
世の中、一般的に男の思いと女の思いは、いつのまにかこんなにもずれてきているように感じる。
報道などをみると、我が家だけではないように思う。
散髪屋さんに向かう車の中で私は、どうしたら自分の気持ちが楽になるのだろう、と考えた。
きっと妻も、私の言動にイライラすることが数多くあると思う。
誰が悪いというわけではない。
きっと美しい生き方と、とらえる方向が違うのだろう。
どうしたら、気持ちが楽になるだろう?
いろいろ反芻した。
そして最後に、「妻はいないものと思えば気が落になる」と思いついた。
男の最後の居場所か、と微笑した。
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どっちだったのだろう?
帝王切開で赤ちゃんを産んだお嫁さんは、順調に快復しています。
16日ごろには退院だそうです。
赤ちゃんは、生まれて体重が減り(生まれるとこうなることを初めてしりました)、今再び体重が増え始めています。
でもまだ生まれた時の2320グラムに戻っていません。
それで、1か月は病院にいるそうです。
お嫁さんは、おっぱいをあげに(届けたり)、毎日病院通いになるようです。
1か月以上早く生まれたので、当然と言えば当然です。
いずれにしろ、母子ともに順調に快復と成長をしていて、ありがたいことです。
さて話はこれからです。
赤ちゃんが誕生し、ホットしたその夜のことです。
お父さん(息子)がショートケーキを買ってきました。
夕食後に家族で食べるように、茶の間の座卓に置いてあります。
食事を食べ終えた私と妻の会話。
(息子はなっちゃんの夕食につきあっている)
私、「はは〜、息子は無事に赤ちゃんが誕生して、誕生祝いだな」
すると妻は何食わぬ顔して、「お世話になったという、感謝の気持ちでしょう」
私は、「・・・・・・・?」
私は、女はなんて自分本位なんだろう、自分たちのためにケーキを?とは、びっくり。
赤ちゃんの誕生祝いのためなら可愛いのに、と自説の正当性を再確認する私。
男と女、こんなところにも小さなズレを感じる。
し、しかしだ、息子の本当の気持ちはどっちだろう?
オレはロマンチックすぎるか?
いずれにしろ息子の嬉しい気持なので、ニコニコして私は黙っておいしくいただいた。
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