男の背中

今日の命の燃え方はどうだったのだろう?自分の背中を感じながら。

美しい母

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美しい母 113

 初雪
 
 いよいよ師走です。
 祝うかのように、初雪が音もなく降り続いておりました。
 寒い雪です。
 
 おばあちゃん(私の母)の老人ホームに行ってきました。
 洗濯物を棚に入れたり、話をきいたり。
 毎回、あれ持ってこい、これ持ってこいの要望を聞いたり。
 とにかく元気です。
 
 そして毎回のように、私は暗い気持ちになって帰ってくるのです。
 
 今回は、こんなことで;
 
 おばあちゃんは、寒いので、食事の時に着るハンテンをもってきてくれ、とのこと。
 「どこにしまってあるの?」と私。
 「それは直子さんが知っている」とお婆ちゃん。
 
 私はエエッ???
 「直子は、お婆ちゃんの部屋には入らないということを知っているでしょう」と私。
 
 (過去に、妻がお婆ちゃんのものを盗み出す、とお婆ちゃんが言い張るので、妻はお婆ちゃんの離れの部屋には入らないようにして、お婆ちゃんの一切の世話を私がしています)
 
 お婆ちゃんはまるで何もかも知っている、義男(私)は何も知らないという風に首をふって、「いいや、直子さんはしょっちゅう私の部屋に入っている」と言う。
 だからハンテンのありかも知っている、と言う論法です。
 
 私は絶望です。
 いまだに、こんなことを言っている。
 この施設に入所してからも、4年になるというのに・・・・
 
 瞬時に私は過去の呪わしいお婆ちゃんの妻への行動を思い出しました。
 もう約30年も前からです。
 
 むしろ妻は、母の誕生日とか、母の日とかによく気をつかってくれた。
 日常もお婆ちゃんの言うことを尊重してきた。
 それなのに、妻に信じられないあつかいばかりを。
 挙句に、泥棒あつかいまで。
 
 今まで何回こんな母を注意し、時にしっかりと叱りつづけたことだろう。
 それなのに、いまだに・・・
 これが我が母?
 
 再びするどい痛みが、木枯らしが吹き荒れるように私の心を突き抜ける。
 もうすぐ94歳の母が、まだ私の心をムシリとる。
 
 外は初雪、私のこころは深い森の中。
 家に帰っても、誰にもこのことは話さない、話せない。
 

美しい母 112

  おお婆ちゃん
 
 おおばあちゃん、というのは私の母です。
 93歳です。
  孫にとってはヒイばあちゃんなので、そう呼びます。
 
 誰もが自分中心に生きているものですが、おおばあちゃんはまったく自己中心に生きています。
 10年ほど前までは自己中心で幸せな人とおもいましたが、今では不幸な人と思うようになりました。
 
 今日は、家の庭の秋の紅葉を見せに、老人ホームから家に連れてきました。
 庭の前から横、家の後ろまで、しっかり見物していきました。
 
 しかし、おおばあちゃんは紅葉を楽しんでいるのではないのですね。
 曰く;
 しだれ紅葉の木が大きくなっていない。
 あのイチイの木は、義男(私)が除草剤をまいたから弱ってしまった。
 さんしゅうの木が見えないが、除草剤で枯れてしまったのか?
 
 ちょっと、オイオイ、です。
 私はニコニコしていようと思ったのですが、ついつい、「だれが庭木に除草剤をまきましたか?」とムカッ、以前にもそう言っていたが、まだ誤解している。
 いちいち腹がたつので、以後は聞こえないふり。
 
 紅葉を見てもらうためにつれてきたのに、庭の手入れの監視にきたのですね?
 こんな年齢になっても、かわいそうに。
 
 家に入っての昼食。
 前回は、好きな赤飯とお焼きを食べすぎて、ホームに帰って反吐をはいてしまったので、今回は軽い食事。
 メインはお寿司。
 副食は、私のつくった新大根の煮物とイクラの入った大根サラダ。
 
 おいしそうに食べながら、「雨がふらなくて野菜がうまく育たないと言ってたのに、よくできたじゃないか?」
 
 ああ〜、いちいち疲れる、「雨がふらないのに、大根よくできたね〜」と、言ってくれれば安らかな気持ちで接することができるのに。
 
 とにかく、元気。
 
 普通なら、家にいて静かに一緒にくらせる体なのに・・・・
 

美しい母 111

 体の髄から
 
 お婆ちゃん(母、92歳)の老人ホームに行きました。
 
 洗濯物と、家庭菜園でできたナスでつくったオヤキ(アンコのかわりに味噌を付けたナスが入っている饅頭のようなもの、北信州独特なもの)を持っていきました。
 妻とお嫁さんがつくってくれました。
 
 お婆ちゃんは、先日もっていってあげたナスの油味噌が、固かった、と開口一番いいました。
 
 洗濯物の中に、お婆ちゃんが家で使っていたタオルをもう一枚足して持って行きました。
 
 衣服は整理棚にしまい、タオルは渡しました。
 すると、「なんだ、こんな古いものか」と言いました???
 
 変なことを言うと思いました。(普段使うタオルですので)
 それからお婆ちゃんはこう言いました、「まだ新しいタオルが10枚とってある」
 
 前回もそんなことを言いました。
 「お婆ちゃんの新しいタオルは、以前に持ってこいと言うので、全部持ってきて使い切りましたよ」と私。
 するとお婆ちゃんは、「そんなことはない、それじゃ直子(妻)さんが盗んでいったんだ」
 
 「何ていうことを言うの、お婆ちゃん」と気色ばむ私。
 「まだ、そんなことを言う」とガックリ。
 
 新しいタオルが必要なら、いくらでももってきましょう。
 そんなことより、もう入所して2年目。
 2年間妻とはなれても、まだ妻をこのように見詰めている。
 
 なんということ。
 ショック。
 
 妻は病気を抱えてオヤキをつくってくれた。
 帰りの車の中で、オレの心は泣いた。
 平凡な美しい母であってほしい。
 
 
 

美しい母 110

 お婆ちゃんの勝ち
 
 お婆ちゃん(私の母、もうすぐ92歳)は、老人ホームにいます。
 とても元気です。
 
 先日、ホームのケア・マネジャーさんとの懇談がありました。 
 彼女の話では、お婆ちゃんは、まるで健康で優秀とのことでした。
 
 私は説明を聞きながら、内心ではオロオロ。
 これじゃ、お婆ちゃんは老人ホームの入所資格がないみたい・・・・?
 
 でも私には、お婆ちゃんの様子がよく分かるのです。
 なぜかというと、
 
  事例1
 ケアマネさんがおっしゃったことです。
 お医者さんの診察がありました。
 お婆ちゃんが言ったそうです、「先日、テレビをみていたら、更年期障害の話をしていた。私の症状にそっくり。いい薬をだしてほしい」
 お医者さんの返事は、さすがです、「お婆ちゃん、これからお嫁さんにでも行くつもりですかい?」
 お見事!
 
  事例2
 私が行くたびに、あそこが痛い、ここが悪い、と言います。
 「お婆ちゃん、歳からみたらそれが普通なんですよ」と私。
 
 今までに同じ言葉を何回繰り返してきたことでしょう。
 言っても聞き入れてくれません。
 それくらい自分の体に、若いときから注意を払っています。
 信じられないくらいオン身、大事。
 
 正月前の話しです。
 お婆ちゃんは、「耳が聞こえなくて困る」というのです。
 
 また、始まりました。
 私は、「お婆ちゃん、歳とともに聞こえは悪くなりますよ。でもオレとここで、この距離で話をしていても普通に話ができる。歳からみたら、ありがたいことでしょう」
 
 それでも、補聴器を買ってくれとか、何とか言い張ります。
 買っても同じことなんです。
 音は聞こえていても、話のピントが頭の中で合わないから、よく聞こえないと言う。
 
 そばに介護士さんがきて仕事を始めました。
 するとお婆ちゃんのボルテージがあがります。
 味方の出現とばかり。
 「義男、私の言うとおりにすればいいんだ」と。
 
 私は、一瞬ボウゼン。
 そしてなんという言葉、と愕然・・・・・
 
  みなさんは、きっと私がウソを言ってると思われることでしょう?
 
 私とお婆ちゃんのやりとりを聞いていた介護士さん、ニヤリとして私の耳元にささやきます。
 「お婆ちゃんの勝ち。普通は、どのお婆ちゃんも息子さんの言うことを聞くものですけどね」と、言ってまたニヤリ。
 それから続けて、「お婆ちゃんは、私たちが仲間と仕事をしている話しまで聞きたいのですよ」と。
 
  私はヒヤリ。
 このままではいけないので、介護士さんに向かってニヤッとして、「私の負け」
 二人で笑い合ってから、洗濯物を持ち帰りました。
 
 私は、お婆ちゃんと上手に話をして帰りたい。
 でも、つい真剣にいいあってしまう。
 これではいけない、と反省の繰り返し。
 
 淋しい。
 自分はどんなお爺ちゃんになっていくのだろう・・・
  
 

美しい母 109

  美しい母
 
 今日、義兄の初7日も終わり、老人ホームのお婆ちゃん(私の母、91歳)の所へ供菓子を持って、報告に行ってきた。
 
 このお婆ちゃんが難敵なんだ。
 一筋縄にはいかない。
 
 義兄が亡くなった直後にも隙間をみて連絡にいった。
 すると、香典は恥ずかしくないように10万円出してくれよ、と言う。
 
 その他に、葬儀の式場の飾り物の供物は、妹の嫁ぎ先が八百屋だから、そこに果物の供え物を頼め。
 私の父の葬儀の時に、姉の娘と息子が弔電をくれたので、私の娘と息子に弔電をださせろ、と言う。
 
 91歳で、すべて面倒をみてもらっているお婆ちゃんの言うことではないでしょう。
 私はウンザリ。
 「お婆ちゃん、私に任せておけばいいの」と、私は介護士さんなどに聞こえないように小さな声で言う。
 
 姉の親元として、私が10万円の香典を出してもいいでしょう。
 でもこの周辺では一般的に親元でも3万円くらい。
 また義兄の嫁にいった子供たちより多くだすのは変でしょう?
 私はそんなことを踏まえて7万円をもっていくつもりだった・・・
 
 供物のことまで、65歳の男にアレコレいうこともないでしょう。
 娘や息子に弔電を送れとまで、そこまで言う・・・
 
 オヤジの葬儀の時には姉の子供は中学生と高校生で、弔電は勿論ない。
 そんなことはどうでもいいけど、よくもまあ、ぬけぬけとウソを言う。
 そう言われると、意地でも息子たちには連絡したくない。
 
 私がいい返事をしないでいると、むきになって繰り返す。
 大変な人。
 お婆ちゃんのところに行くと、いつも大変。
 穏やかに帰れる時がないくらい。
 
 私はお婆ちゃんの気持ちを汲んで、香典と供物は言われる通りにした。
 
 その後、私の娘の子供が退院し通院となって、娘の家もやっと落ち着いて、私も一安心。
 息子夫婦の子供の、1歳の誕生祝の儀式も済んだ。
 義兄の初7日も、今日済んだ。
 
 ホッとしたが、お婆ちゃんのところにすぐに、人として報告に行った。
 アハハハ、勿論イヤな予感を抱きながら。
 
 行くと案の定、 「義男(私の仮名)、娘や息子に弔電を出させろと言う私の言うことをきかないでいることを、介護士さんが聞いていて、息子さんは聞いてやればいいのに、と言っていた」と、言うのです。
 
 なんていうことをよくもまあ・・・
 「お婆ちゃん、ウソばかり言って」と、私は言った。
 すると、お婆ちゃんの勢いは、アラジンの魔法のごとくスーと消えていく。
 
 兄弟の仲たがいをひきおこすようなことばかりをするお婆ちゃんです。
 姉のこととなると夢中なお婆ちゃんです。
 恥ずかしいことに、今度姉が面会にいったときには、どんな私へのウソをいうことでしょうか?
 
 美しい母、私がずっと恋焦がれている母親像です。
 それは心静かな母親の姿で十分すぎるのです。
 
 
 

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