李英愛研究

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軍事的冒険主義

① 20日のヨンピョンド(延坪島)での射撃訓練に対して、北韓(北朝鮮)は軍事的対応を行わなかった。人民の生活が青息吐息といわれ、体制のほころびを繕うことが急務であると思われる金氏王朝である。今回の推移はとりあえず韓国側の読み勝ち、ということだ。

これに関して、興味深い二つの社説を読んだ。一方は、韓国の"訓練強行"を批判し、これといった"自衛的打撃"を行わなかった北韓(北朝鮮)を評価しているようにも読める。他方は、数十年来毎月続けてきた"通常訓練"を外圧に屈することなく実行したのは当然の自衛権行使であると論じる。一方はまるで外国の研究者が訳知り顔で書いたように見えるし、他方は大韓民国の国論の統一を促している。

社説1
 「ヨンピョンド射撃訓練実施可否が国連安保理の争点にまで浮上した中でわが軍が昨日訓練を押し切った。自衛的打撃で対抗すると公言してきた北側はひとまず対応行動をしなかった。最悪の武力衝突は再演されなかったが、不安と緊張感は相変わらずだ。
 政府当局者らは今回の訓練と関連して国連安保理招集、中国・ロシアの反対、北韓の威嚇などを全部無視してひたすら天気だけを考慮したと説明する。こういう、‘断固とした態度’を堅持した結果、自尊心も満足させて自らの任務を成功的に遂行したというところだ。北側が事前公言と違い物理的行動で対抗しないところは色々理由があるだろう。たとえば南側が戦闘爆撃機を待機させて駐韓米軍人員まで関与させた状況で、ひとまず鋭鋒を避けようという戦術的考慮が作用した可能性が高い。しかし、これで南北間の危機が解消されたと見る人は誰もいない。南北間の偶発的衝突と戦争拡大の可能性はかえって高まったと見られる。昨日のわが軍の訓練は限界が明確な冒険主義的処方だっただけのことだ。
 訓練を押し切るまでの政府と軍当局の態度を見れば、緊張を解消して安定を取り戻すのが政府の最も大きな任務という事実を忘れているという疑問まで入る。このように力による対決中心に行っては国民の不安感を決して解消できない。たとえば、ヨンピョンド射撃訓練は毎月おこなう通常の訓練だというが、今のようではこの先ずっと住民たちを待避させるほかはない。また、国民皆が戦争拡大の可能性を不安に思いながらニュース速報に神経を尖らせなければならない。危機状況が長くなるならばその波紋は私たちの社会に多様に現れるだろう。
 昨日北側が物理的対応を自制したことはひとまず幸いだ。今は南北の間で誰が先にを問い詰める必要がなく、一切の軍事行動を自制するのが切実だ。特に北側は今回の機会に態度を根本的に変えなければならない。たとえば北側が今回の局面で全面戦争と核戦争の惨禍を威嚇したことは受け入れ難い妄言だ。それと共にどのように同じ民族としての道理をいうことができようか。北側が北方境界線(NLL)問題にかんして主張することがあっても、一切の追加挑発を中断して合意精神に復帰するのが先だ.
 ヨンピョンドが世界の火薬庫のようになって関連国らが激しい外交折衝戦を行う現実も嘆かわしい。国連安保理では韓国軍の射撃訓練実施をめぐって米国・英国・フランスとロシア・中国が対抗して激論を行った。こういう状況はあたかも19世紀末、清とロシア、日本などが大韓帝国の運命を置いてああだこうだと指図した時期を連想させる。結局、韓国、北韓みずからが韓半島(朝鮮半島)状況を管理できないために関連国らの外交的干渉を招いたのだ。 韓国、北韓の当局者皆が深く反省してこそ当然だ。
 南北全部直面した危険要因と不安感が相変わらずだ。南北が力対力で対抗してはどちら側も自身が望むものを得ることはできない。国際社会での位置づけも萎縮するほかはない。両側当局が軍事的冒険主義を捨てて、緊張を解消する根源的方案を探さなければならない。両側が自制力を探すのが切実だ。そしてはやく対話に出なければならない。」[ハンギョレ]

[ハンギョレ](12月21日)[社説] ‘軍事的冒険主義’を捨てて根源的解決策探してこそ
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/454838.html
 
社説2
 「軍当局が昨日午後ヨンピョンド射撃訓練を予定通りに実施した。北韓のヨンピョンド砲撃で私たちの側の数十人の民間人・軍人が人命と財産上の被害をこうむって27日ぶりだ。当時中断された訓練を再開したわけだが、これに対抗して北韓が第2・第3の打撃を公言していたために南北間緊張が高まっている。私たちにとっては決してあってほしくない事態だが、国家主権を守るという次元で国民皆が力を一つに集める時だ。
 今回の訓練は毎年実施してきた通常的防御訓練の一環だ。これまで自衛権を守るために私たちの領土と水域中で行ってきた。そういうわけで、北韓が是非を論じるいささかの理由もなかった。それにもかかわらず、北は今回の訓練を控えて全面戦争とか核の惨禍とか言いながらあらゆる威嚇をはばからなかった。私たちの海兵2人に罪のない民間人2人まで殺傷したのも足りなくて、特有の瀬戸際戦術(崖っぷち戦術)を展開しているということだ。こういう居直りはチョンアン(天安)艦爆沈からウラニウム濃縮施設稼動に至るまで最近の北韓の一貫した態度であった。
北の挑発には断固たる自衛権行使外には代案なくて
 これは体制維持が北の最優先課題であることを新たに思い起こさせる。数十万人、あるいは数百万名の住民が飢えて死んでいくのにも何一つ動じることはなくて、核・ミサイル開発にお金を注ぎ込んだ北ではないのか。世襲独裁体制を守るためにどんな事でも犯してしまう無鉄砲形態が北韓政権の属性であるわけだ。これをあらかじめ認識して北韓の挑発習性が固定化しないように前・現政権が十分に備えるべきであった。圧倒的武力を整えたり、南北関係を周到綿密に管理したら良かったのだが、という話だ。
 もちろん、今になってそのような責任を論じること自体がつまらない。もう北がこれ以上野蛮的追加挑発をできないように国民みなが渾然一体で対応すること以外に選択の余地がないという話だ。ソン・ハクキュ民主党代表は昨日、“非正常的国家との意地の張り合い(自尊心の戦い)は賢明な行動ではない。”として、わが軍の射撃訓練を引き止めた。[追加挑発が]起こるはずがなくはないが、これは‘半分の真実’だけ入れた見識だ。北が非正常的国家であることは間違いないが、南北間の体制競争もまた、宿命的であることを否認するのは難しいのではないか。北韓が私たちの善意にうなずく返事をしないで彼らの体制維持のために挑発を日常的に行う時、断固たる自衛権行使以外に何の代案があるだろうか。
 万一、政府が射撃訓練再開を公言しても口先だけの言葉でだけ終わったとすれば、これによる後遺症もまた途方もなかっただろう。北韓の策略のとおり西海(黄海)北方境界線(NLL)が無効化される場合を想定してみよ。NLL近隣水域とヨンピョンドを含んだ西海(黄海)5島の領土を守るのに難関が造成されるのは問うまでもない。その上、キム・ジョンイル-キム・ジョンウン親子の間で政権委譲期の北は、最近、より一層冒険主義的傾向を見せている。北の威嚇に簡単に屈服するような印象を与えれば首都圏などを狙ったより大きい火遊びをしないともいえないだろう。
今こそ超党派的な安保体制を確立しなければならない時
 この際中国とロシアの北韓偏向的外交を指摘しようと思う。両国は北のヨンピョンド挑発以後、私たちが射撃訓練を再開すると公言するとすぐに外交的干渉を本格化した。中国はヨンピョンドで民間人まで殺傷した北の蛮行に対しては口も開かなかった。それと共に私たちの自制だけ要求してきた。ロシアは北のヨンピョンド挑発が批判を受けて当然だとし、一時苦言を呈した。だが、私たちが射撃訓練方針を明らかにするとすぐさま韓国大使を呼んで、国連安保理招集を要求した。
 両国のこういう態度は冷戦期の覇権本性そのままだ。自由民主主義を基盤とした統一韓国の誕生を好ましくないと思い(ありがたくないと思い)、南北分断状態の現状維持を望む内心をそっくり表わしたという点からそう言えよう。両国の仲裁が最小限の説得力を得ようとするなら、北韓の非人道的蛮行の責任から先に問い詰めなければならなかった。NLLの向こう側と南側で魚雷と大砲を撃ちまくった北とNLLの南で防御的訓練をするものを同列に置いて自制を要求するのは話にならない議論だ。中・ロが主導した安保理声明が他の理事国らの反対で失敗に終わったことは事必帰正だ。
 我が軍と政府は領土と領海・領空を守るという大原則をたてたとすればこれを強く堅持しなければならない。イ・ミョンバク(李明博)大統領が昨日、“北韓は国論が分裂した時私たちを見下す。”としたが、前もって超党派的安保態勢を確かめるべきであった。時遅しという感はあるが、もう私たちの社会のどの政派や階層も大韓民国の自衛権守護意志を揺さぶってはならない。南北間緊張が沸騰点に向かっている今こそ、超党派的な安保態勢を確立しなければならない場合であり、その時点だ。
 
(訂正:12月21日) 誤訳や脱字を訂正。
誤訳;[追加挑発が]起こるはずがなくはないが、 → 一理もないとは言えないが、

[ソウル新聞](12月21日)[社説]ヨンピョンド射撃訓練以後国論分裂があってはならない
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20101221031004

②今回の馬鹿げたヨンピョンド攻撃からひと月近くが経過したが、その背景は依然としてよくわからない。あれは、やはり権力委譲過程における"手柄づくり"という意味合いが強いのであろうか。キミルソン(金日成)は韓国戦争(朝鮮戦争)という特大の"事件"を起こした。息子のキム・ジョンイル(金正日)はもっと小粒の"プエブロ号事件"や数多くの爆破テロ、拉致事件を起こした。今年は三代目が対外的にお披露目を行ったばかりである。すっかりガタがきている"地上の楽園"の対内的引き締めのために、焼け石に水をかけたということだろうか。人間の命がコメなどよりも安価に設定されていると考えざるを得ない北韓(北朝鮮)では、長射程砲による攻撃で人が何人死のうが、反撃で自軍の兵士が何人死のうが、金氏王朝の存続のためには取るに足りない話なのであろう。

 米国に秋波を送り、核専門家を呼んでウラニウム濃縮の話を大々的に公開した北韓(北朝鮮)は、核燃料棒一万二千本を韓国に売りつける算段のようだ。武器や煙草等の闇取引で、軍資金に充てる実入りは細々とはあるにせよ、米国による金融制裁がじわじわと効いているはずである。銀行を通じた取引が困難なため、役人らが現金を鞄に入れて決済に赴き、中には鞄を持ったまま亡命したり消えてしまう者もいる、などという話もあるようだ。1ドルでも多くのカネがほしくてたまらない台所事情ではあるまいか。

 北韓(北朝鮮)のやることは秘密めかしてはいるが、カネにまつわる話は実にわかり易い。松茸商売の例から推すに、現時点で実際に存在するかどうかも定かではない一万二千本の核燃料棒も、'現金先払い、品物はあるとき渡し、ただし"支援金"の追加払いが必要'みたいな感じでがめつく集(たか)ろうとしているにちがいない。たっぷりカネをせしめて、核弾頭の小型化や"携帯型核爆弾"、核魚雷・核機雷なんかの開発を加速化したいのだろう。大見得切ってぶち上げたキミルソン生誕百年の"強盛大国"元年まで残りわずか、時間がないのだ。しかし、核燃料棒は松茸と違ってメシのおかずにも酒の肴にもならない。こんなものに1ウォンも出すべきではない。核燃料棒を国外に持ち出すなら、処理費用を北が支払うのが筋だ。

[聯合ニュース](12月21日)リチャードソン"北 対話意志見えて"(総合)
http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2010/12/21/0511000000AKR20101221103700009.HTML

松茸詐欺?

 "匂い松茸味しめじ"などという言いまわしがあるが、実際、あれを二〜三本丸焼きにして香ってくる匂いをおかずにしてもメシが食えるのではないかと、まるで落語のようなことを想像したりする。そして、自分は今年もまた松茸を食えずに師走を迎えた。

 松茸も日本では今年は豊作で、価格も下がっているのだそうだが、日本産はもちろんのこと、韓国産等の輸入松茸にさえ手が届かない。輸入松茸というと、北韓(北朝鮮)産があるが、あれは輸入停止のはずだ。しかし、韓国国内には北の松茸が出回っているようで、これにまつわるきな臭い"事件"の話が[朝鮮日報]に出ていた。以下の引用はすべて同記事より。

 ①"事件"のあらまし
 北韓(北朝鮮)と毎年100億ウォン台の交易をしてきた中堅企業経営者のパク某氏は、「昨年2月、中国丹東で北韓の対外経済機関の民族経済協力連合会(民経連)幹部から松茸事業の提案を受けた。マグネサイトと鉄鉱石など、主に地下資源を扱ってきたパク氏にとって松茸事業は初めて。(結局、韓国内の3つの会社が北側と独占契約を結び、)・・・(パク氏は)北側の要求により昨年上半期3回にわたって163万ドルを送った。だが、凶作で生産量が減って北韓と松茸搬入を1年先送りすることに合意した。」

 「(今年になって)、去る3月26日、チョンアン(天安)艦事態が炸裂しながら5月24日、政府の後続措置が出てきた。北韓に対する送金と新規貿易が全面禁止された。お金を飛ばす危機に置かれたパク氏などが抗議すると、すぐに統一部は北韓にあらかじめ与えたお金に見合った程度だけ搬入するという条件付きの承認を与えた。北韓の会社は先払い金に合わせてパク氏の会社に65tの松茸を与えることにした。去る9月、7回にわたってチョンジン(清津)港とウォンサン(元山)港を通じて松茸31tが入ってきた。」

 「ところで、以後北韓は、突然松茸供給を中断した。当時北側はパク氏に、"他の企業等はみな支援金をくれるのになぜあなたの会社はそうではないのか"と問い詰めたという。パク氏は"松茸を与えるというから北韓に船を送ったところ、半月も海上で待たされたあげく空船で戻るなど北側の不条理が激しかった"とした。 北側はお金をさらに送ってこそ松茸を与えることができるという立場である反面、パク氏は現在の北韓送金が不法なので北側の条件を聞き入れないと対抗している。パク氏は松茸34tを受け取ることができなくて10億ウォンほどの被害をこうむったという。」

 −−これまでのよしみで163万ドルを先払いし、取引成立まで1年も待ったというのは太っ腹というか、"同じ民族同士"ということで油断したのであろうか。163万ドルといえば今のレートで1ドル1055ウォンとして17億ウォン余りである。あるいは、北韓(北朝鮮)との商取引では、'現金先払い、品物はあるとき渡し、ただし"支援金"の追加払いが必要'みたいな鷹揚な商習慣になっているのであろうか。いや、これは鷹揚などという話ではなく、タカリそのものである。例の『太陽政策』と呼ばれた融和政策が華やかなりし頃、ということは、南側から北側にせっせと意味不明かつ使途不明の現金が送られていた頃、韓国の団体が向こうで何かするときには常にカネをせびられたようだ。進歩系のネット媒体が向こうでマラソン大会か何かを開催するためにドルで高額の"支援金"を支払ったという話があったと記憶する。

 ②朝鮮総連系企業の丸儲け?
 「パク氏は北韓が松茸供給を中断したのはJ社のためと語った。パク氏は、"J社は朝鮮総連の人々が国内に作った企業で、朝鮮総連最高位幹部のキム某氏が実質的な社主"と語った。実際、J社の登記簿謄本には代表理事チェ某氏と他の理事の国籍が'在日朝鮮人'と記録されている。・・・ 法務部関係者は、"国内で事業しようとする在日朝鮮人らは大部分韓国国籍を取得するが、J社は特異なケース"と、語った。」

 「パク氏は、去る8月に統一部から搬入許可を受けるとき当初独占契約した3社の他に突然Y社が含まれたが、この会社もJ社と特殊関係にある会社だと語った。J社が搬入した松茸を国内に流通させる会社、ということだ。 北側はパク氏の会社に松茸供給を中断したのとは異なり、J社には当初配分された物量20tのほかに、去る9月、80tを追加で提供した。"2007年と2008年の松茸取り引きの過程でJ社が損をしたことがあるので、これを補填するための無償供給物量"とのことだ。パク氏は、"すでに先払いまでした会社に松茸を与えない北朝鮮が、3、4年前の損失を無料で補填するというのが話になるか"としながら、"これはJ社が北朝鮮と特別な関係にある会社という事実を物語る"とした。」

 「北朝鮮が統一部提出用でJ社用に作った損失補填契約書は北朝鮮民経連に頼めば簡単に手に入れることができる偽物契約書だとパク氏は主張した。 わが政府が北朝鮮との新規貿易を制限してみたら、'損失補填'という名目を前に出して松茸を搬入してきたということだ。今年の北韓産松茸は概略200t程度が入ってきたが、このうちJ社とY社が搬入した物量は130t余りで、これらの会社の松茸販売代金は200億ウォンを上回ると推測されている。」

 J社とY社は当然ながらダンマリを決めこんでいる。「本紙はパク氏が告発したJ社とY社関係者を相手に数回接触を試みたが連結されなかった。」という文でこの記事は結ばれている。

 −−商取引にまつわるトラブルで、しかも相手は北韓(北朝鮮)である。被害を受けた方の一方的な話しか知り得ない記事ではあるが、むちゃくちゃな誇張は感じられない。保険金詐欺等の前例から推すに、むちゃくちゃなのは相手のほうであろう。組織犯罪のプロジェクトチームでも抱えているのではないかと思えるような金氏王朝なのである。200億ウォンというと、今の為替相場で1億ウォンが725万円ぐらいだから、14億5千万円ほどになる。会社の維持費や諸掛り等を引いて、日本円で最大10億円ぐらいがいわゆる"宮廷経済"の資金として流れているのだと思う。松茸の採集や積み出しの費用はあってないようなものだろう。なにしろ将軍様のお声がかりで出荷するのだ。そして、向こうに流れたカネはキム・ジョンイル(金正日)のワイン代や食い物代、3番目の息子のゲームソフト代や飲み食い代に充てられるはずだ。「松茸は北朝鮮の主要外貨稼ぎ手段でキム・ジョンイル国防委員長の秘密資金確保ルートとして知られている」。
 
[朝鮮日報](12月19日)[Why]北韓産松茸 "北・朝鮮総連 みみっちく韓国流通を掌握"
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2010/12/17/2010121701198.html

リャンガンド(両江道)

 リャンガンド(ヤンガンド)は北韓(北朝鮮)の北東部に位置し、文字通りアムノッカン(鴨緑江)とトマンガン(豆満江)の端源を擁する。第二次世界大戦後に成立した行政区であり、いわゆる"ウリナラ パルドガンサン(わが国の八道江山)"には含まれない。

 サムジヨン(三池淵)は北韓(北朝鮮)、リャンガンド(両江道)サムジヨングン(三池淵郡)にある湖で、三つの湖からなる風光明媚な一帯である。温泉も湧いている。ここはペクトゥサン(白頭山)から40kmほど離れた場所である。

 対北韓ラジオ、[開かれた北韓放送]のネット記事によれば、先月、11月25日に、ここにある軍事飛行場で特殊作戦部隊と空軍の合同訓練が行われた。軍部消息筋は“対南浸透演習だったようだ”と伝えた。

 「この軍事訓練は三池淵(サムジヨン)に駐留している空軍部隊とヤンガンド(両江道)に駐屯する第43部隊との合同訓練だった。 サムジヨンウップ(三池淵邑)から約10km程離れている軍事飛行場では戦闘機が防水布まで取りはらったまま直接動員されたという。'第43部隊'はヤンガンド地区司令部の核心部隊でキム・ジョンイル(金正日)が関心を持って数回視察したことがある。また、冬にはスキー訓練を行うといわれ、別名'スキー部隊'で通っている。」[開かれた北韓放送]

 合同演習に使われた飛行機はあの名複葉機An-2だったようだ。元々低空を飛行し、大部分が木製の機体はレーダーによる捕捉が難しいといわれる。しかも、数百メートルの長さの平地があれば普通に着陸できてしまう。そして、第10軍団傘下の第43部隊の狙撃隊、"スキー部隊"との合同演習である。

 「この消息を聞いたある空軍専門家はその飛行機は十中八九An-2だと説明した。An-2は10人程度の軍人を運ぶことができる。低空浸透機で木材と布で作った翼と胴体をしているから、レーダー電波によくかからないで騒音も少ない。燃料も少ない消費量だ。レーダー画面には小さい斑点程度の大きさで現れるから探知をやり遂げるのが容易でない。特に30m×250mの空間だけ与えられれば離着陸可能なほど空間制約を受けない。韓国ゴルフ場や若干広い平地、さらに貯水池にも浮いたまま着陸可能だという。また、他の専門家によれば、両江道にある第43狙撃部隊は北朝鮮の特殊戦兵力に該当し、スキー部隊だ。スキーを利用できる部隊が空軍と共に冬季に訓練をするということは、北韓(北朝鮮)がAn-2を利用して冬に雪が多い韓国、カンウォンド(江原道)やキョンギ(キョンギ)北部地域での浸透を準備していると把握することができると分析した。」[開かれた北韓放送]

 出身成分の低い人民はもとより、多様な中間層、さらには軍隊での栄養不良も深刻だといわれて久しい北韓(北朝鮮)である。これはもちろん、韓国や日本にいる親北・従北勢力および浸透工作員による誇張された情報かもしれないという疑念はぬぐえない。それにしても、『ぜいたくは敵だ!』、『欲しがりません、勝つまでは』という話なのだろうが、骨董品のような機体を使って本気(?)で韓国への浸透を図っているらしい話をみると、あきれるというより哀れになってくる。

 「この日、軍事飛行場には30機余りの飛行機があったが、燃料不足で訓練に参加した飛行機は2機だけだったという。この2機の飛行機は胴体が木材で形成されていてとてもみすぼらしく見えて、訓練を見守る部隊員らは“足でけっても動くようなおもちゃのような戦闘機がなぜ軍事飛行場にあるのか”という反応だったという。しかし、訓練に参加した空軍指揮官らは、"この戦闘機はとても低く飛行できて、最後に残ったものまで殺生するのに有利だ"とし、"敵らが想像もできない在来式武器で敵に不意打ちを食らわす(敵の後頭部を打つ)ことができる"と話したという。・・・また、“燃料が不足して問題ではないのか”という一部兵士たちの質問に、空軍指揮官らは、"皆分かりながらなぜそのような話をするか?"として、"私たちには良い飛行機は必要ない。核兵器があれば無敵だ。私たちは将軍様だけいらっしゃれば勝利することができる"と、答えたという。」[開かれた北韓放送]

 リャンガンドといえば、昨年6月にここの青年同盟のトップであるソル・ジョンシク第1書記(第1秘書?)が韓国に亡命した。この地方からの脱北者の話を時々ネットで見かける。ハムギョンナムド(咸鏡南道)など、韓国のテレビが直接視聴可能な地域もあるが、リャンガンドは中国と国境を接する二つの河を擁しているため、中国経由で外部の情報が流入し易いのかもしれない。保衛部がいくら締めつけようと、チュチェ思想のたわごとをいくら吹き込まれようと、自分たちの暮らすところの異常さが際立つはずである。

 An-2(AH-2 アン・ドヴァー)は終戦直後、たしか農業・林業用に開発された機体だったと記憶する。軍用機に転用されはしたが、韓国浸透作戦などという実に馬鹿げた用途に使われるのは開発者にとっても心外であろう。下らない戦争ごっこなどやめて、キミルソン(金日成)が禿山だらけにしてしまった北の山々の植林事業に使ったり、荒地と化した北の大地に草の種を撒いたりする用途に使うべきだ。今でも十分実用に耐える機体である。
 
(追記と誤字脱字の訂正:12月16日)
上の書き込みで「第10軍団」というのが出てくる。これは[開かれた北韓放送]の記事にあったものだが、[デイリーNK]によればこの軍団は最近創設されたのだそうだ。そして、その[デイリーNK]の記事は北韓軍の軍団構成や最近の動向等について詳細に伝える内容で、とても勉強になったのでリンクを追加した。
 
[デイリーNK](12月15日)"北、ヤンガンド地域に地上軍 '第10軍団'創設"
[朝鮮日報](12月14日)北住民の間で"核リュックサック担いでソウルに行けば火の海"という噂
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2010/12/15/2010121500383.html?Dep1=news&Dep2=top&Dep3=top
[開かれた北韓放送](12月9日)北韓、低空飛行機(An-2)で特殊作戦部隊対南浸透訓練進行
http://www.nkradio.org/news/4932

「スラムイーグル」

① 11月23日午後2時34分、北韓(北朝鮮)によるヨンピョンド(延坪島)攻撃の際、韓国空軍の動きが慎重過ぎるような気がしていた。たしか、午後3時40分にスウォン(水原)の空軍第10戦闘隊所属のF−15、F−16戦闘機が非常出撃したというメディアの第一報であった。だが、これは攻撃直後の不正確な情報だった。

 空軍戦闘機は「(最初の砲撃から)4分後の午後2時38分ごろから24時間の間、交代でヨンピョンド上空を飛んで合同参謀議長の指示があればいつでも空対地ミサイルを撃つ準備ができていた」[韓国日報]のだそうだ。

 やはり空軍はスクランブルをかけていた。敵の飛行機が領空を侵犯したわけでもないようだし、スクランブルという表現は適切ではなく、別の軍事用語があるのかもしれないが、4分後というのは大雑把な数字で、もう少し迅速に緊急発進しているのではないかと思う。また、どこの航空隊の戦闘機なのかもよくわからない。このあたりの情報は高度の軍事機密であろう。そして、韓国側は精密爆撃も辞さずという構えであったようだ。

 「北韓(北朝鮮)がヨンピョンドを砲撃した先月23日、韓国軍が戦闘機を飛ばしても北の海岸砲基地を爆撃しなかったのは韓米連合司令部の引き止めのためだと伝えられた。軍が"北韓(北朝鮮)の追加挑発がないものと私たち自ら判断して爆撃しなかった"と明らかにしたことと相反する内容なので波紋が予想される。
 政府高位関係者は9日、"当時、北韓(北朝鮮)の砲撃が2度も続くと、すぐに合同参謀本部が韓米連合軍司令部に戦闘機による爆撃を建議したと理解している"とし、"だが、韓米連合軍司令部が、'韓国が攻撃されたことは非常に胸が痛いが、なんとか今回一度こらえれば、この先北朝鮮を追い詰めてまともに攻略することができる'という論理で爆撃を引き止めて、結果的に選択を躊躇したと見られる"と、明らかにした。」[韓国日報]

 伝聞情報ではあるが、いずれにしろ、一触即発で少なくとも局地戦の可能性があったようである。当時、三度目の砲撃があれば敵の陣地を戦闘機のミサイルで精密爆撃したかもしれないとか、今後同様の攻撃(挑発)があれば戦闘機による報復爆撃も辞さない、といった話が事後的に出てきたが、あれは強がりや脅しなんかではなく、当時の状況を踏まえた話だったわけだ。韓国では高性能ミサイルの誘導に使うデータリンク周波数は携帯電話の周波数帯とバッティングするため、有事の際には電波統制が行われるらしいので、今後、仮に攻撃を受けて、携帯電話に不具合でも出れば精密爆撃が敢行されていると考えてよさそうだ。そんな事態は起こってほしくないが、SLAMミサイルの命中精度はかなり高い。

[韓国日報](12月10日) 米軍が爆撃止めた
ヨンピョンド砲撃当時 合同参謀の"戦闘機反撃"建議に連合司令部引き止め
http://news.hankooki.com/lpage/politics/201012/h2010121002303791040.htm

<上の記事に添付されていた表>
『23日 時間帯別 状況』
午後2時34分頃 北韓軍 第一次 150発 砲撃
午後2時37分頃  合同参謀本部 指揮統制室長、ハン・ミング合同参謀本部議長に最初の報告
  2時38分頃 空軍 KF-16戦闘機2機ヨンピョンドヘ出撃。以後、空対地ミサイルを装着したF-15K、KF-16戦闘機4機ずつが交替で24時間の間西海(黄海)上空を飛行
  2時40分頃 ハン議長、合同参謀本部地下 指揮統制室の定位置につく。以後、海兵隊司令官およびヨンピョン(延坪)部隊長らと電話で会議。"迅速で強力な対応をせよ"と指示
  2時47分頃 韓国軍 50発 対応射撃
  3時12分頃 北韓軍 第二次 20発 砲撃。韓米連合司令部 緊急会議開始(推定)
  3時25分頃 韓国軍 30発 対応射撃
  3時41分頃 両軍の砲撃が止む
  3時45分頃 対北監視体制 ウォッチコン 三段階のうち第二段階に格上げ
  4時50分頃 ハン議長、ウォルター・シャープ韓米連合司令部司令官と電話会議。連合危機管理体制 宣布検討
  7時15分頃 国連軍司令部 北韓に停戦協定違反に抗議する電話通信文を発送
  8時38分頃 シャープ司令官、監視資産の増加を米軍太平洋司令部に要請
  24日0時ごろ 韓米国防長官 電話会議
 
(訂正:12月15日) 上の表の誤記を訂正
×ハン・イング合同参謀本部議長
〇ハン・ミング合同参謀本部議長

② 緊急発進で一番乗りしたのはKF−16(F−16C/D Block 52)とのことだが、この機体はF−16の機能を改良していくうちに重量が増え、使いにくくなってると理解している。ミサイルによる地上爆撃となると、その主力はF−15であろう。
 韓国空軍が運用しているF−15は戦闘爆撃機仕様のF−15Eを韓国式に装備を高度化した派生型で、F−15K「スラムイーグル」と呼ばれている。韓国ではこれまでに何機か墜落・破損しているが、対空ミサイルはもちろん、対地・対艦ミサイルを装備したオールラウンドな戦闘爆撃機である。射程250km以上のAGM−84K SLAM−ER ATAやHarpoon Block Ⅱ、AGM−158 JASSMといった高性能ミサイルを搭載する。

「F-15K スラムイーグル(F-15K Slam Eagle)」の武装
[ウィキペディア(韓国語版)]より
* 機銃:2× 20 mm M61A1 Vulcan、510発
* 空対空ミサイル(Air-to-air Missiles)を使う場合
・8発×アムラーム(AIM-120 AMRAAM)
または
・ 4発×サイドワインダー(AIM-9X Super sidewinder)と4発×スパロウ(AIM-7 スパロウ)
・さらに610ガロン(gallons)の燃料タンク(drop tank) 2個
* 空対地ミサイル(Air-to-surface missiles)を使う場合
・ 4発×メイヴァリック(AGM-65 Maverick)と4発×サイドワインダーと4発×スパロウ
または
・ 2発× AGM-84LハープーンBlock Ⅱと4発×アムラーム
または
・ 2発× AGM-84K SLAM-ERと4発×アムラーム
または
・ 2発× AGM-130と4発×アムラーム
・ AGM-154 JSOW
・ AGM-158 JASSM
* 爆弾(bombs)、地上打撃時
・ 26発× Mark 82 bombと4発×サイドワインダー
さらに
・ 7発× Mark 84 bombと4発×アムラーム
・ 24発× CBU-87 Combined Effects Munitionと4発×サイドワインダー
さらに
・ CBU-89 Gator
・ CBU-97 Sensor Fuzed Weapon
・ CBU-103 CEM
・ CBU-104 Gator
・ CBU-105 SFW
・ 1発× GBU-10 Paveway IIと8発× GBU-12 Paveway IIと4発×アムラーム
・ 2発× GBU-10 Paveway IIと4発×アムラーム
さらに610ガロン(gallons)の燃料タンク(drop tank) 3個
・ GBU-15
・ GBU-24 Paveway III
・ GBU-27 Paveway III
・ GBU-28
・ GBU-31 JDAM
・ GBU-38 JDAM
・ GBU-39 Small Diameter Bomb
・ GBU-54 Laser JDAM

機体の一般特性
* 乗務員:2
* 機体全長(Length):19.45 m (69ft 9 inches)
* 全幅(Wingspan):13.05 m (42ft 9 inches)
* 全高(Height):5.6 m (18.5ft)
* 翼面積(Wing area):56.5 m2 (608ft2)
* 空虚荷重(Empty weight):31,634 lb (14,379 kg)
* 兵装搭載重量(Loaded weight):45,000 lb (20,411 kg)
* 最大離陸重量(Max takeoff weight):81,000 lb (36,700 kg)
* 最大兵装搭載量(Full Loaded):29,150 lb (13,205 kg)
* 空中給油方式:ブーム方式
* レーダー(Radar):AN/APG-63(V)1今後AN/APG-63(V)3アップグレード可能
* エンジン(Power plant):2×F110-GE-129(229) a/b turbofans,各29,400lbf (131 kN)の推力
* 推力対重量比(Thrust/weight):0.967 (空虚荷重+最大兵装搭載/燃料除外)

性能(巡航速度はマッハ1弱)
* 最大速度(Maximum speed):マッハ(Mach) 2.3 〜 2.5 (1,650+ mph,2,660+ km/h)
* 戦闘半径(Combat radius):1,270km
* 航続距離(Ferry range):5,700km(CFT +外部燃料タンク3個装着時) 4,445km(CFT)
   ・空対空/空対地ミサイル全部装着、最大燃料量搭載したときの航続距離(Full Loaded weight-Range):1800km
* 実用/最大上昇限度(Service ceiling):63,100 ft / 100,000 ft (ultimate)

F-15Kと関連した論議 SLAM-ER空対地ミサイル周波数問題
2005年9月、国会の国政監査過程で、空対地ミサイルSLAM-ERとF-15Kの間のデータリンクのための周波数帯域が韓国国内のPCSとIMT2000周波数帯域と重なるという問題点が公開された。混線がある場合、戦闘機で発射したミサイルを統制できないのはもちろん、標的に関する情報把握も難しくなるなど、SLAM-ERの正常な運営が不可能になる。空軍は米国ボーイング社とSLAM-ERの周波数帯域変更を協議したが、ボーイング社は1年ほどの所要期間および百万ドルの追加費用が必要だという立場を明らかにした。これにしたがって、空軍は平時空対地誘導弾訓練には周波数を使用しない方式で航空機にデータリンク送受信機と模擬訓練弾を装着する方案をポーイング側と協議することにした。

The Ice Break (氷解)

 『氷解』はマイケル・ティペットの第四作目のオペラで、1977年7月7日にコヴェントガーデンのロイヤル・オペラハウスでコリン・ディヴィスの指揮により初演された。本作は初演の指揮者に献呈された。

 原題の'The Ice Break'は河に張った氷が解けることを表し、北の地で春の訪れを告げる自然の営みなのだそうだ。本作では、父と息子の対立、黒人と白人の対立等、'conflict'(衝突、葛藤、対立)と'conciliation'(和解)がテーマになっている。

 手もとのCDは1991年に出たヴァージン盤であるが、これ以外にCDやDVDが出ているのかはよくわからない。

 三幕構成で、全曲で74分ほどの短い作品である。音程を調整したのかどうか不明だが、白人と黒人の集団乱闘場面では銃声が12発聞こえ、パトカーのサイレンが鳴り響く。テーマや筋運びはテレビ向きと思われるが、その音楽はシアターミュージックそのもので、多様な響きを楽しめる。

The Ice Break by Sir. Michael Tippett(1905-1998)
Opera in three acts
Libretto by the composer
 
出演者
レフ(Lev)−David Wilson-Johnson
 五十歳の教師、二十年間収監されて出獄し、亡命する。
ナディア(Nadia)−Heather Harper
 レフの妻、赤ん坊の息子を連れて移民した。
ユーリ(Yuri)−Sanford Sylvan
 レフとナディアの息子、移民の第二世代。
ゲイル(Gayle)−Carolann Page
 ユーリのガールフレンド、当地で生まれ育った白人。
ハンナ(Hannah)−Cynthia Clarey
 ゲイルの友人、病院務めの看護婦で黒人。
オリンピオン(Olympion)−Thomas Randle
 ハンナのボーイフレンド、黒人のチャンピオン。
ルーク(Luke)−Bonaventura Bottone
 ハンナの病院の若いインターン医師。
副署長(Lieutenant)−Donald Maxwell
 警察の副署長。
アストロン(Astron)−Christopher Robson/Sarah Walker
 サイケデリックな使者。
 
伴奏
ロンドン・シンフォニエッタ、ロンドン・シンフォニエッタ合唱団
指揮
David Atherton

[VC 7 91448-2](1991)
(1990年7月 ロンドン ヘンリー・ウッド・ホールで録音)

第一幕
場面1
空港の待合室でナディアとユーリがレフの到着を待っている。ナディアは船で亡命することになった自分の旅とレフの飛行機によるもっと穏やかな旅を比べる。彼女は彼が到着するのをあてにしてほとんど恍惚の境地にある。自らの父親を思い出せないユーリは無愛想になり、彼女に対していらいらし始める。ナディアはレフの声を聞いたように思う。
場面2
ナディアとレフの間のテレパシーはゲイルとハンナの到着によって中断される。このニ人は彼らのヒーローであるオリンピオンを歓迎するためにここに来た。ユーリは母親の行動に対して憤りを示し、ハンナがレフを政治犯だと話したことを拒絶し、レフは彼の仲間の連中と同様に踏みつけにされるままにしてきたのだと半ば本気で主張する。
場面3
オリンピオンのファンの一群が空港に押かけ、ハンナをナディアたちから引き離す。
場面4
ユーリはゲイルがオリンピオンに媚びるのをみて嫉妬する。彼女は急いでハンナやファンの群集の後を追い、ユーリは母親とともに取り残される。
場面5
ナディアは飛行機が時間どおり到着するのか心配になる。ユーリはオリンピオンのファンたちに心を奪われたままである。
場面6
ファンの一群が戻ってきて、おなじみのアメリカン・スタイルのチアリーダーによってオリンピオンの到着が告げられる。これはオリンピオンも承認している。
場面7
一人取り残されたナディアは、彼女を見つめている地味な服装の男が夫だということに突然気づく。
場面8
ナディアのちっぽけなアパートで彼女とレフは回想に浸っている。しかし、話がユーリのことに及ぶと、ナディアは取り乱してしまう。
場面9
空港の待合室をみると、オリンピオンのファンたちは歓迎の騒ぎを続けている。オリンピオンは黒人の優越性を主張しながらファンたちを率いている。自分を抑えることが出来ないまま、ユーリは苦々しくファンたちのまねをする。白人のファンと黒人のファンは別々になっている。ゲイルはオリンピオンの前で自己軽蔑にさいなまれる。彼女はオリンピオンの足元に身を投げ出し、黒人のファンたちは彼女を利用するよう彼に強く勧める。
激怒したユーリはオリンピオンに襲いかかろうとするが、殴り倒されてしまう。オリンピオンはゲイルのほうも蹴飛ばし、この場面は大混乱で終わる。
場面10
アパートではナディアとレフがユーリの振るまいについて議論している。合唱の雄叫びが遠くで高まり、ゲイルを連れたユーリが部屋に飛びこんでくる。自分の父親に初めて会ったユーリは、なぜ来たのかと苦々しく問いつめる。

第ニ幕
場面1
夜である。アパートでは、レフとナディア、ユーリ、ゲイルは自分たちの立場をはっきりと主張する。レフは若い二人を落ち着かせようとするがユーリにきっぱり拒絶される;ゲイルもまた、レフトとディアが持っている'進歩的な人間愛(liberal charity)'を拒絶する。ゲイルとユーリは外にいる白人の群集にの中に紛れこんでいく。
場面2
アパートの外では、あたかもクー・クラックス・クランの儀式のように白人たちが自らの人種的純潔性を宣告する賛歌を高らかに歌う。
場面3
街の別のところでは、オリンピオンがハンナのもとを離れて外にいる黒人たちのところへ行こうとしている。ハンナは、彼が黒人連中の統率をためらいもなく引きうけたことに異議をとなえる。
場面4
通りでは、戦列に加わるオリンピオンを黒人たちが歓迎し、自分たちがしているように彼に覆面をさせ、攻撃のポーズをとる。
場面5
ハンナは暴力の真っ只中にあって分別をとりもどすよう祈る。
場面6
ハンナの祈りが終わる前に黒人と白人の暴徒らは対決の儀式を始める。
場面7
ナディアとレフはアパートにいて、いま起こっていることに狼狽してしまい、ほとんど取り乱している。ナディアは無力感にとらわれ厭世的になっているが、レフのほうは自らの非暴力主義(pacifist principles)を疑いつつ、ユーリを探しに出かけなければいけないと感じている。
場面8
暴動で黒人と白人の双方に怪我人が出たことが確実となる。警察が到着し、群集は追い散らされる。
場面9
警察の副署長はその場を動かないよう群集に呼びかける。医師のルークはオリンピオンとゲイルが死んだと告げる。ユーリはひどく負傷した状態で見つかる。彼はユーリによって身元が確認され、救急車で護送される。
場面10
(人けのない)通りでルークに促され、ハンナのほうを向いたレフは彼女に安らぎと同情を感じる。

第三幕
場面1
ナディアは死の床にある。アパートでレフは彼女にゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』の中のヴィルヘルムと息子との和解のくだりを読んでやり、自らのユーリとの和解を待ち望んでいる。
場面2
ルークとハンナが登場し、ユーリは助かるだろうと告げる。二人はナディアに気を楽にするよう話しかけようとするが、彼女はレフだけを求める。
場面3
妻の死という差し迫った災厄と息子の大怪我とによって混乱したレフは、自信を失ってしばし取り乱してしまう。ユーリがほのめかしたように、自分が '競争から落ちこぼれた(flunked the struggle)' のかどうか疑う。ハンナは葛藤(conflict)が偏在しているのだと思う。世界はゲットー(孤立集団)に満ちているが、結果的に問題を再生産するだけだ、と。
場面4
レフとハンナはナディアにさえぎられる。ナディアは自分が子供時代に見た光景に強くとらわれている。ソリが雪に覆われた森を走り抜けるところや、河に張った氷が解けるのを思い出す。そして、死に迎えられる刹那、牧歌的な夏や河に出た人々を思い出す。レフは天国で自分を待っていてくれるようナディアに呼びかける。
場面5
場面は変わり、救世主アストロン(cult hero,Astron)に祈願する楽園探求者たちの一群を見せる。この両性具有の人物(fugure)は信者たちにメッセージを与えるが、信者たちがこびへつらうのに当惑してしまう。アストロンは彼らの正体を暴き、消えてしまう。
場面6
ルークが診察室でレフに向かって、もはやナディアは亡くなり、ユーリに対する責任をあなたが受け容れなければならないと説得する。レフは同意する。
場面7
病院でユーリはテーブルに横たわり、石膏に固められた状態から解放されることを待ち望んでいる。ハンナとルークが手術教室へユーリを運び、レフのほうはユーリを気遣いながら部屋の外で待っている。ユーリは喜びながら石膏を外される。
場面8
若者たちが病院に押かけ、再生のような春、というアストロンのメッセージを繰り返す。
("Spring come to you at the farthest in the very end of harvest."−アストロンのお告げ)
場面9
ハンナはユーリを車椅子に座らせて手術教室から連れ出す。ハンナはユーリが立ちあがるのを手伝い、ユーリはレフに会いに行く。二人は和解するが、ユーリは足元がふらついているし、ハンナもレフも楽観的になり過ぎないよう注意する。レフはゲーテの言葉を引用する。対立(conflict)と和解のサイクルは人間というものの永遠の様相(feature)なのだ、と。

Meirion Bowen (1991)によるシノプシス。若干加筆。

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