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ドニゼッティのオペラの中でも自分のお気に入りの作品である。'semiseria'ということになっていて、文字通りコミック・オペラとシリアス・オペラ(オペラ・セリア)がゴッチャになったような話である。このオペラのCDはNUOVA ERAのライヴ盤しか知らない。
仇役のテノールがロッシーニ風のベルカントアリアっぽい歌を聞かせるかと思うと、恋人たちは陰影の濃い曲で想いを歌う。下の「出演者」のところには一応声域を書いたが、女声二人はメゾソプラノとして書かれているそうで、タイトルロールのアリーナ役はソプラノからメゾソプラノまで広い音域をこなさなければならない。アリーナの恋人役はバリトンで、やはりこれも難しそうである。
お話は、フランスで書かれたリブレットをあのフェリーチェ・ロマーニがイタリア語に翻訳(翻案?)したのだそうだ。ロマーニは多くの作曲家に作品を提供した大台本作家だが、この作品はご都合主義の塊のようなところがある。インドのどこかを想定した或る王国(ゴルコンダ)でフランス人たちが繰り広げる恋愛模様である。この作品の初演が1828年で、フランスの方の舞台はそれより60年以上前らしいので、こういう話になるのは仕方ない。
Gaetano Donizetti
Alina, regina di Golconda (Alina, Queen of Golconda) (1828)
Opera semiseria in due atti di Felice Romani
出演者:
Alina : Daniela Dessi(soprano)
Florina : Adelisa Tabiadon(mezzo-soprano)
Seide : Rockwell Blake(tenor)
Volmar : Paolo Coni(baritone)
Belfiore : Andrea Martin(buffo)
Assan(Hassan) : Sergio Bertocchi(tenor)
伴奏:
Orchestra Sinfonica dell'Emilia Romagna "Arturo Toscanini"
Cooperativa "Artisti del Coro" del Teatro Regio di Parma
Maestro del Coro : Adolfo Tanzi
Antonello Allemandi
First Performance in 20th Century
Co-production with Ravenna in Festival
Ravennna, Teatro Alighieri, July 15/17, 1987.
[NUOVA ERA NE6701]
The Italian libretto was written by Felice Romani after Michel-Jean Sedaine's French libretto for Pierre-Alexandre Monsigny's ballet-heroique Aline, reine de Golconde (Paris Opera, 1766)
(英語版ウィキペディアより)
(以下はリブレットにあったシノプシス。一部意訳した。)
アリーナはプロヴァンスの田舎娘で、海賊に誘拐されて遠く離れた(インドの)ゴルコンダ王国に連れ去られる。ゴルコンダの年老いた王は彼女を愛し、二人は結婚する。やがて王は亡くなり、彼女は寡婦の女王として残される。ここまでは前置きである。
<第一幕>
ゴルコンダは王なしには存続できない。亡き王の喪が明けると、落ち着きのない奴隷や友人、王位を狙う者、王子といった思惑がらみの連中だけでなく、みんながアリーナに新しい夫を選ぶよう急き立てる。身近にはセイーデという花婿候補がいて、おそらく他の誰よりも男前で、確かに上品で豪胆な男である。しかし、アリーナは一つの記憶に縛られている。彼女は自分が今までに愛した唯一の男、フランス人の下級官吏であるエルネスト・ヴォルマーのことを忘れられない。彼女は花婿の決定をいつまでも引き延ばせたらと願っている。
宵闇の中、三発の大砲の音が聞こえ、フランスから船がやって来たことが告げられると、王の間でアリーナは運命的な名前を口に出しそうになる。フランスの使節はエルネスト・ヴォルマーと呼ばれる若者なのである。アリーナは人生が再び始まったことを知り、興奮で目が眩むほどである。
ただ一人だけがアリーナの心の内を理解している。彼女の腹心の友であり、彼女と同様に海賊に誘拐されてきたフランス人女性である。この女性もまた一人の男をフランスに残してきた。しかし、彼女の場合はベルフィオーレという名の夫で、この男とは始終議論ばかりしていた。この女性、フィオリーナは困惑している。彼女には自分が夫にまた会いたいと心から願っているのかどうか、あるいは自分がそのような再会を恐れているのかどうか、よくわからない。
いまや二人の男たちはここ、ゴルコンダに到着した。思索癖のある役人のヴォルマーは誘拐犯によって自分から引き離された若い女性を思い続けている。精力的に世界を渡り歩いている将校のベルフィオーレが一緒である。ここで物語は二重構造になっていく。一方にはインドの世界があり、男たちと女たちの対立があり、支配ヘの要求があり、宮廷というところは陰謀を企む者や間諜たちがたくさんいて、その色彩や影の中に神秘の雰囲気が漂う。セイーデは若き異邦人に対するアリーナの愛をすぐに見抜き、自らの忠実な支持者たちに革命を呼びかける。他方には、二組の恋人たちと配偶者たちがいる。なかんずく重要なのはアリーナであって、彼女はあらゆる偉大なお伽噺の通例に従って、ヴォルマーが変わらずに自分を愛しているかどうかを試すために三つのテストを受けさせる。
第一に、アリーナはヴェールで顔を隠して奴隷たちとともに現れ、ヴォルマーに自分の声を聞かせる。ベルフィオーレも、同じように現れたフィオリーナの声を聞く。ヴェールの効果は絶大であった。ヴォルマーは王女の声に魅入られてしまい、ベルフィオーレは慌ててしまう。二人の女はそれが精神的混乱の典型的な形態だと説明する。祖国を離れた土地にいる旅行者は自分の母国の言葉を聞いたような気になるというわけだ。
第二にアリーナはヴォルマーを未来の王に推戴して、宮廷内に醜聞をつくりだす。彼女は彼が拒絶してくれることを願う。再会したことに気づいていないなら、彼はかつて愛したアリーナに対して誠実であり続ける場合にだけ彼女にふさわしい男になるだろう。ヴォルマーはその推戴を断り、第一幕の幕が下りる。
<第二幕>
最後のテストは芝居がかった突飛なもので、アリーナは難破船から取りだした品物や宮廷で用意したと思われる品物を使ってプロヴァンスの小さな庭園を造り出す。5年前、彼女はその庭園でヴォルマーに出会ったのだ。彼女は、過去5年間に起きたことはすべて夢だったのだと彼に語る。ヴォルマーは俄には信じられないが、やがて愛に身を委ねる。いまや懐かしのプロヴァンスが再現された。フィオリーナもベルフィオーレにこのテストをやらせようと決心する。彼女は、彼が深酒のあげくゴルコンダの夢を見たのだと彼に思わせようとする。するとベルフィオーレは自分の運命についてみんなに泣き言を言った後、艶っぽい征服譚も交えながら懐かしそうに自分の夢を順に語る。
そうこうするうち、革命が勃発する。二人の女たちは慌てて自分たちが演じた沈黙劇の説明をし、二人の男たちに助けてくれるよう頼む。セイーデが飛び込んできてアリーナと対決する。彼は彼女を脅し、次には彼女の愛を哀願したりするが、きっぱりと拒絶されてしまう。すると、彼女を呪い、牢屋に入れてしまう。しかし、もはや革命の時すでに遅し。アリーナの王国を守るために馳せ参じたフランス人たちが、いまや強固な動機付けに駆られたヴォルマーに先導されて優勢となり、宮廷を奪還する。アリーナは皆に礼を言い、人々が示した自分への親愛の気持ちに感動する。しかし、このオペラはヴォルマーへの愛を高らかに歌う彼女の次の歌で締めくくられる。"Eri di notte il sogno, eri il pensier del di" (あなたは夜毎わたしの夢でした、あなたは日毎わたしの想いでした")。
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