李英愛研究

ネットの記事でイ・ヨンエさんに迫ります

韓国の映画

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キム・ギドクの場合は

  [世界日報](4月28日)にLJフィルム代表のイ・スンジェ氏をとりあげた記事がある。氏は1996年、あの「インシャラー」の製作のためにフランスに渡り、現地で「野生動物保護区域」の撮影をしていたキム・キドク監督に出会った。やがて、低予算芸術映画の意義を痛感していた氏は、2年後にあの「悪い女(青い大門)」をつくる。そして、これをはじめとしてその後5作にわたってキム・キドク作品を製作する。2人はパリで出会った時からうちとけ、義兄弟のような間柄であったそうだ。

  「インシャラー」はチェ・ミンスとイ・ヨンエが主演し、オール海外ロケで製作された大作である。この作品の興行的な失敗の後、イ・スンジェ代表は低予算で作家性の強い映画を世に問うたわけだ。イ・スンジェ代表が今のLJフィルムを設立し、キム・ギドク監督はLJフィルムで「受取人不明」、「悪い男」、「海岸線(コースト・ガード)」「春夏秋冬そして春」と連続4編を作る。そして、イ・シュンゼ代表がキム・ギドク監督と最後に組んだ「春夏秋冬、そして春」は米国で韓国映画として首位の興行成績を上げる。といっても2〜3百万ドルという数字であるが、トップはトップだ。こうして、韓国国内ではともかく、キム・キドク作品は海外では一定の評価を受けるに至る。キム・ギドク監督は2004年にキム・ギドク・フィルムで独立する。

  イ・スンジェ代表はキム・ギドク監督を「生まれつきの天才」と表現する。絵画的な感覚を持ちあわせているし、話を創る能力が誰よりもすぐれた監督だという。それに、シナリオ作業が終わると同時にロケハンに出るというように、手まめなことまで備えた誠実さが現在のキム・ギドクをそうあらしめた理由だと言う。しかし、キム・ギドクに対する一部の否定的見方に対しては、「人間キム・ギドクは社会的にまだ学習が足りないだけだ。いわゆる口さがない人たちがあら探しをする一方、キム監督は自分の考えをそのまま表現するだけなのだ」と言いながら、「このような特徴が映画の中に絶妙に現われる」と説明した。(同上記事より)

  うーむ、この「社会的にまだ学習が足りない」というのが気になったので、今年の新作映画「時間(Time)」を中心に検索してみた。すると、[シネ21](4月26日)に映画「時間」のレビューがあることはあった。というのは、この映画はまだ公開さていないし、試写会等も予定されていないのだ。映画評論家チョン・ソンギル氏によるレビューはかなり長文である。ざっと見るといわゆるネタバレも意に介さず綿々と映画「時間」を紹介している。しかし、途中まで読んで、それ以上読み続けられなくなった。

  チョン氏はキム・ギドク監督が「時間」を撮る前、昨年の釜山映画祭で監督に会い、次の映画を早く見たいと言った。すると監督は悲しくこう語った。「映画を作るのは難しい事ではないが、それをお見せするのは大変な事になるようです。何故ならば私はもう韓国で映画を封切りする事をあきらめたからです。もちろん試写をする事もないでしょう。もし誰かが私の映画を封切りしたければこれからはそれを輸入すれば良いです。私は封切り可否に全然気を使わないでしょう。また誰かが私の映画を見たければ外国で発売されたDVDを注文して見れば良いです。私としては本当に最善をつくしたが仕方ない事です」

  驚いた。どうしてこうなるんだ。低予算の独立系映画は韓国でも冷遇されていて、その上映にはかなりの困難が伴うということは承知していたが、一応キム・キドクは名の通った監督だ、と思うが…。記事は続く。「この言葉を皮肉ってはいけない。私は去年、彼の12番目の映画『弓』をキム・ギドクの”公式的な”要求どおり映画館へ行ってお金を出して見た。キム・ギドクは記者でも映画評論家でもお金を出して見なさいと宣言した。そしてお金を出して見た者だけが”私の映画に対してどんな言葉でも言って良い権利”を持つと付け加えた 」

  うーむ。うーむ、そんな話があったのか。それを言っちゃあ、とくに韓国ではおしまいではないか。口さがない連中は、ちょっと外国で話題になったぐらいで生意気だ、そんなら誰が見てやるもんか、ぐらいの反応であろう。そうでなくてもキム・ギドクは韓国映画界では鬼子扱いされている。韓国では、学生時代に運動圏で活動し、そういう人脈でまとまっている製作者や監督が映画人には多いし、昔から続くしきたりというものもある。だいたい、あのイム・グォンテク監督の新作「千年鶴」さえクランクインにこぎつけるまで難渋した。最近亡くなったシン・サンオク監督の遺作「冬の話」は結局国内で封切りできず、追悼番組として最近TV放送された。そういうムラ社会、いや、映画界で、人一倍うまく立ち回らなければならないのに…。なんでそういう話になったのか詳しい事情はわからないが、あまりにもおバカさんだぞ、キム・ギドク。

  チョン氏はその後、記者や仲間たちにこの映画「弓」に対する見解を聞きたくて機会がある度に単刀直入に聞いて見たが、見た人はほとんどいなかった。なかでも多くの人々がその理由として”試写会をしないから”と答えたそうだ。映画「弓」は結局、全国観客1450人しか見なかった。全国観客といっても、ただ一つの劇場で封切られた結果であった。実は、この数字は以前何かの記事で見た記憶がある。その時は、やっぱりキム・ギドク映画は人気がないなあ、なんて呑気に考えたのだった。しかし、試写会もしないぐらいだから報道関係へのPRも推して知るべしだ。

  チョン氏は[シネ21]に映画「弓」のレビューを書き、その後、キム・ギドク監督が13番目の映画「時間」を撮るという文をどこかで読む。そして、もう完成しただろうという話を聞いたものの、それを見たという人に会うことはできなかったが、何とかこの映画を見た。チョン氏はキム監督とそれほど親しいわけではなく、「彼の思いやりなしにこの映画を見ることになった」のだそうだ。そして、一人でも多くの人がこの映画を見たくなるようにこのレビューを書き、方々のブログに文があがって、あちこちのカフェで議論されて、ネット上に話題が広がって…この映画を映画館で封切るようにビジネスマンをけしかけるのが自分のするべきことだと思ったという。氏は記す。「私がこの映画のことを書く理由はただ一つだ。『時間』を見たし、この映画が立派だからだ。それ以外にどんな理由もない」

  …ここまで読んで、それ以上読み続けられなくなった。そして、3月30日に恵比寿ガーデンシネマで聞いたキム・ギドク監督の話をあらためて思い出した。あれは、いろいろ含みのある話だったのだ。自分は、映画「時間」が封切られたら韓国に行こうと思っている。しかし、上のレビューや[ハンギョレ新聞](4月25日)のコラム、[メトロ](5月11日)の記事などを見ると絶望的だ。何とかならないものか。自分にできることは無いに等しいが、それでも何かできそうなことを探さなければならない。


[メトロ](5月11日)映画「時間」に主演したハ・ジョンウの話。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=20060511091026862c3
[世界日報](4月28日)LJフィルムのイ・スンジェ代表の話
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006042813251389647
[シネ21](4月26日)チョン・ソンギル氏による映画「時間」のレビュー
http://www.cine21.com/Magazine/mag_pub_view.php?mm=005004004&mag_id=38024
[ハンギョレ新聞](4月25日)映画「時間」が国内上映をあきらめたことを伝えるコラム。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006042518134412023

  今日、4月15日15時30分ににソウル大学路マロニエ公園で韓米自由貿易協定(FTA)阻止のための大規模集会が開かれた。映画人が宣伝部隊を務めている。その様子を[韓国ヤフー]の検索で追ってみた。

  <事前の報道>
  この集会に関しては事前の告知報道がいくつかあった。以前の報道によれば国内270団体が参加する国民的な集会、とのことであった。しかし、今朝の[聯合ニュース](4月15日朝10時)をみると、「8000名余りが参加して集会を持つ」、「集会には民主労総と農民団体、韓総連、スクリーンクオーター死守映画人対策委員会(映画人対策委)など全国60余団体が集結する」。「警察は44個中隊を配置する予定」とのことである。あれ、以前の発表とえらく違うなと思って、[ニュースワイヤ](4月15日朝11時20分)が配信した映画人対策委の報道資料をみると、「現在映画を撮影中の映画人たちを除いた1000人余りの映画人」と「農民、労動者、学生、教授、医療、教育など各分野3万名余りが参加」し、集会の後午後4時30分から5時30分の時間帯に大学路から鍾路までデモ行進するという。残念ながら芸能人の文化祭はない。

  うーん。「話半分」とは言うけれども、「話四分の一」なんて聞いたこともない。まさか、映画人対策委の発表は警察の警備陣も含めた数なのか。世論がいまひとつ盛り上がらなくてあせっているのはわかるが、話をでっち上げるにしてもこれはひどい。今日のソウルはちょっと肌寒いようだ。事後の報道を見てみた。

  <事後の報道>
  事後の記事をざっと見ても[聯合ニュース]の写真報道等しか見あたらない。そして、60余団体ないし100余団体の8000名余りが参加、と記されている。あとは、「働く人の希望 民主労動党代表」の大会演説が[ニュースワイヤ]で配信されている程度だ。映画俳優アン・ソンギは午前中に故シン・サンオク監督の葬儀に参列した後このデモに参加したようだ。デモの写真を見ると赤い鉢巻き姿の人が多い。ぎっしりかたまったところをとらえているので、全体規模の想像は困難だ。[聯合ニュース]の事前の記事どおり警察は44個中隊を配置した。8000名余りの参加という数字はこの警備の規模から割り出したものと思われる。主催者側発表だとすると少なすぎるからだ。結局どれくらい参加したのかよくわからない。だが、仮に一万名以上参加、とかいう話なら他のマスコミが放っておかないはずだ。今日は土曜で配信を休んでいるところもあるので即断できないが、最大値で8000名、というところではあるまいか。

  映画人対策委の「3万名余りが参加」という予定は、飛び入りの市民などを当て込んだ数だったようだ。手すきの映画人1000名が参加、というのに期待していたのだが、これも実際に参加しているのかよくわからない。民主労総が「非正規職立法阻止」、映画人は「スクリーンクオーター縮小反対」、農民団体は「FTA反対」という具合で、各団体の主張は「ちらし寿司」の具のように並んでいるが、肝心の「銀シャリ」が少ない。事前に映画人対策委の報道資料を作成した人は民主化闘争が盛んだった頃の幻影にとらわれているのだろう。いまのところ、守旧的な理念でガチガチの運動とみた。まだまだ銀シャリ、いや、支持基盤が弱いのだ。

  <余計な感想>
  これだけ集まらないと映画人のプライドにかかわる。人気商売でメシを食っているのだ。こうなったら大物芸能人で闘争のテコ入れをするしかないだろう。例えば、ビ(Rain)、イ・ヨンエ、イ・ビョンホンの黄金トリオで公開パネル・ディスカッションをやらせる、というのはどうだろう。ビは歌手だが、ドラマや映画でも活躍中なので問題ない。この三人なら、根回しできる映画人が誰かいるだろう。「FTAはウエルビーイングの敵です」「わたしの人生の反FTA闘争」「FTAを阻止する美しい熱情」「美しい人よ たち上がれ」・・・キャッチコピーは何でもありで行く。野外に特設された舞台で、巨大スクリーンを背景に三人で反FTAの討論をして、歌の一つも歌えば申し分ない。司会はもちろん、闘う映画俳優チェ・ミンシクだ。人気トリオのファンクラブを通じて動員をかければ、中国・香港・日本その他の近隣諸国からの支持者の参加も期待できる。まあ、何を支持しているかは別にして、人が集まることは確実だ。

  映画人がいったん政治団体のお先棒を担いだ以上、後には引けない。へたに弱腰になってしまうと「変節漢」扱いされかねないからだ。映画人、がんばれ。

  <4月16日追記>
  その後の報道を見ると、いくつかの数字が報じられている。
  ・『270団体、1万7千名参加』([ハンギョレ新聞])
  ・『1万名余り参加』([oh my news])
  ・『1万名余り参加、うち6000名は農民団体』([プレシアン])
  ・『60余りの団体、数千人参加』([KBS WORLD](日本語版))

  映画人の参加は『200名程度』だったようだ([oh my news])。[ハンギョレ新聞]は主催者側の発表をそのまま流しているだけだ。この新聞の無批判な数字の扱いには今後注意しなければならない。


[プレシアン](4月16日)事後の報道。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006041614300428126 ]
[ハンギョレ新聞](4月16日)事後の報道。
[ http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/116235.html ]
[KBS WORLD](日本語版4月15日)事後の報道。
[ http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_detail.htm?No=22071 ]
[oh my news](4月15日)事後の報道。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=12&articleid=2006041521100518724&newssetid=82 ]
[聯合ニュース](4月15日19時53分)事後の報道。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006041519531671601 ]
[ニュースワイヤ](4月15日17時40分)民主労働党のブリーフィング。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=20060415174022909b3 ]
[ニュースワイヤ](4月15日朝11時20分)事前の報道。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=20060415112021498b3 ]
[聯合ニュース](4月15日朝10時)事前の報道。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006041510023586501 ]

第42回百想芸術大賞

  本日4月14日、ソウルの国立劇場ヘオルム劇場で第42回百想芸術大賞の授賞式が行われた。この賞はSBS放送や日刊スポーツ(中央日報系?)などが主催している。公式サイトの説明によれば、この芸術大賞は1965年に始まり、韓国大衆芸術の発展と芸術人の士気高揚のために制定された。去年一年間に放映または上映されたテレビ/映画部門の制作陣と出演者に授賞する国内唯一の総合芸術賞なのだそうだ。

  [中央日報]の日本語版で大々的に特集するのかと思っていたら[朝鮮日報]日本語版の方で大きく取り上げている。向こうのマスコミでは[スターニュース]や[ニューシス]、[スポーツコリア]などが写真記事をバンバン配信している。

  第42回百想芸術大賞は、映画部門の大賞は「王の男」(イ・ジュニク監督)が授賞した。その他、映画部門の最優秀男女演技賞は、『甘い人生』のイ・ビョンホン、『親切なクムジャさん』のイ・ヨンエが受賞した。映画部門の新人男女演技賞は、『王の男』のイ・ジュンギ、『親知らず』のチョン・ユミが受賞した。

  テレビ部門の大賞がMBC「わたしの名前はキム・サムスン」、最優秀男女演技賞は、『プラハの恋人』のキム・ジュヒョクと『バラ色の人生』のチェ・ジンシルが受賞した。新人男女演技賞は、『ファッション70s』のチョン・ジョンミョンと『黄金のリンゴ』のイ・ヨンアが受賞した。

  今日のイ・ヨンエはシルクの生成のブラウスに黒いロングスカートという優雅ないでたちであった。スカートは裾を絞ってあり、チマのイメージではなかった。昨年の大韓民国映画大賞の時の衣裳を垢抜けさせたような感じである。アクセサリは真珠で統一している。何でもない真珠のネックレスがとても似合っている。髪はしっかり後ろでまとめており、最近の中国での広報活動の際の髪型に準じている。

  チュッカハムニダ イ・ヨンエ シ(おめでとう、イ・ヨンエさん)。

  
[日刊スポーツ]第42回百想芸術大賞の公式サイト。
[ http://enports.joins.com/100sang/ ]
[日刊スポーツ]公式サイトのイ・ヨンエ写真の一枚。
[ http://enportssvc.joins.com/100sang/article.asp?aid=500850 ]
[スポーツ東亞](4月14日)各賞受賞者の一覧表がある。
[ http://sports.donga.com/bbs/sports.php?id=enter_hotline&no=19930 ]
[スターニュース](4月14日)写真記事。イヤリングを拾うイ・ヨンエ。左肘の傷跡のようなものが気になる。登山にでも行ったのかな。
[ http://star.moneytoday.co.kr/view/star_view.php?type=1&gisano=2006041419491659965 ]

  韓国映画人のスクリーンクオータ死守闘争は、反FTA闘争のかたちで民主労総(全国民主労働組合総連盟)などの進歩派勢力と歩調を合わせて続けられている。「1人デモ」も、開始を遅らせてキャンドル・デモと組み合わせて続けられている。ただし顔ぶれは地味である。向こうの記事を見ると、「文化侵略阻止及びスクリーンクオーター死守映画人対策委」、「スクリーンクオーター死守韓米FTA阻止文化芸術共同対策委」、「スクリーンクオーター死守と韓米FTA阻止汎国民運動本部」など、「スクリーンクオータ死守」という文言をもつ共闘会議の名前がいくつか出てくる。いずれにしても映画人は民主労総−民主労働党を母体とする反対勢力の金看板として活躍している。
  [oh my news]などによれば、4月1日には雨の中、大学路マロニエ公園で「スクリーンクオーター絶対死守と韓米FTA阻止」のためのキャンドル文化祭「土曜日夜の文化連帯祭り」という長い名前の文化祭が行われ、アン・ソンギ、パク・チュンフン、チェ・ミンシク、ハ・ジウォンなどの映画俳優も参加した。こうした文化祭は4月4日から14日まで開かれる「韓米FTA阻止のための地域巡回文化祭」として、アン・ソンギやチェ・ミンシクなどが参加し、光州、大邱、釜山などで地方巡演を続けている。映画俳優のチェ・ミンシクなどは、これに先立つ3月11日に米軍基地移転問題で緊張が高まっているピョンテク市に支援に出かけたりした。ネットの記事の検索によれば、映画人側はその一週間前に公式にピョンテクの反対闘争との連帯・共闘を打ち出している。コメと映画で共闘しているわけだから「何でもあり」だ。「反米闘争」に深入りして一歩間違うと泥沼になることは承知の上での連帯なのだろう。
  きたる4月15日(土)、民主労総、韓国労総(韓国労働組合総連盟)、環境運動連合など270団体が「韓米自由貿易協定(FTA)阻止、汎国民運動」を展開するそうだ。「FTAが締結されれば、韓国は米国の51番目の州か経済植民地になる」というのが合い言葉だ。15日の「文化連帯文化祭」には映画俳優もたくさん登場して盛り上がることだろう。
  
  話変わって、4月8日に発表された香港の第25回香港映画賞(香港アカデミー賞)では、韓国映画は最優秀アジア映画賞を取れなかった。「可可西里」という作品が受賞した。凋落を伝えられる香港映画界は最近巻き返しに意欲的である。[朝鮮日報](日本語版3月31日)によれば、香港では、映画マーケット10周年と香港国際映画祭30年と香港映画賞25年がひとつになり、3月20日から4月19日まで大々的なエンターテインメントエキスポが開かれている。そして、香港映画産業は中国にターゲットを絞って再興を模索しているようだ。
  今回エキスポを総指揮しているレイモンド・イプ香港貿易発展局次長は、香港映画産業の最大のライバルに韓国を挙げる。「香港のほうが少し国際感覚があって商業的なのが長所とすれば、韓国は映画を芸術に近づけるのが長所」と指摘し、「韓国政府が映画産業育成のため展開してきた政策を綿密に分析している」と話したそうだ。

  その韓国映画界の中国進出も活発である。[ヘラルド経済](3月29日)その他によれば、いよいよ韓国映画資本の中国進出が本格化し始めた。中国大陸へはこれまでにも、CJエンタテインメントやショバックス、MKピクチャーズが中国国内での劇場・配給事業に進出済みであった。そこへ、3月27日、ナビ・ピクチャーズ(ソ・ミンファン、キム・ソンス共同代表)が現地法人を設立したのだ。すでに米国のワーナーブラザースとチャイナフィルムなどが設立した映画製作会社はあるが、これは合資形式によるもので、今回北京に同じ名前の支社を建てたナビ・ピクチャーズは外国映画資本としては初めての現地法人となる。設立にはCJエンタテインメントも資本参加した。
  この会社の最初の作品は中国映画「結婚進化説」。価値観と文化の違いを抱えた韓国男性と中国女性の間の結婚生活を素材にした作品で、中国の有望新人監督がメガホンを取る予定だそうだ。中国で現地法人を通じて製作した映画は自国映画で分類されるから中国のスクリーンクオーター(年間240日)の適用を受けないので大規模配給にもずっと有利だ。
  そもそも、中国でスクリーンクオーターの制約のない合作映画になるためには、主人公の中で1人以上が中国俳優で中国を扱った素材でなければならないなど非常にハードルが高いそうだ。中国映画市場は人口13億人の一番広くて魅力的な市場だが、スクリーンクオーターや検閲などの対外障壁が一番高い地域でもある。ここ数年の俳優、監督などの人的交流と資本の合作段階を経て、今回現地化戦略に至ったわけである。この試みの趨勢が注目されている。

  一方、[韓国経済新聞](4月10日)その他によれば、韓国の映画製作会社LJフィルムと米国の中堅映画製作会社フォーカス・フィーチャーズ(ユニバーサルの子会社で「ブロークバックマウンテン」を製作)が合作で映画を作ることになったそうだ。李王朝最後の皇族に嫁した米国人ジュリア女史の波乱万丈の生涯を描く作品になるとのこと。
  およそ250億ウォンの制作費は韓米折半で、興行収入も折半。フォーカス・フィーチャーズとLJフィルムの米国現地法人が製作に当たる。ハリウッドの監督と俳優が演出と主役を引き受け、主として英語で演じられる。そして、事実上米国映画としてハリウッドの配給網を通じて全世界で公開される予定だ。主演の韓国人男優は韓国国内のビッグ5から選ばれるそうだ。誰になるのだろう。
  LJフィルムのイ・シュンゼ代表は、韓国映画として米国で興行収入首位のキム・ギドク監督「春夏秋冬、そして春」を製作した実績があり、今回の話につながったそうだ。これまでにも米国資本が一部投入された合作映画はあったが、世界的な配給を前提にした韓米合作はこれまでになかったようだ。

  最後に、訃報が一つ。各紙の報じるところによれば、女優で妻のチェ・ウニ(崔銀姫)さんと共に北朝鮮に拉致され、向こうで多くの映画を撮った後脱北した映画監督シン・サンオク(申相玉)氏が、11日夜ソウルの病院で亡くなった。享年80歳であった。シン監督は遺作になるはずだった「チンギス・ハーン」の製作のため、資金集めに精力的に動いていたそうだ。だが、C型肝炎が悪化して肝臓移植手術を受けた後しばらく通院治療を続け、この度帰らぬ人となった。確か、シン監督が妻のチェさんと共に映画学校を作った、という話があったと思う。あれはどうなっているのだろう。
  [OSEN](4月12日)によれば、シン監督の最後の作品「冬の話」が16日深夜にSBSTVで放映される。「冬の話」は妻の死亡で急に痴ほうにかかった老人とその老人の面倒を見る嫁の間の葛藤と悔恨を扱った映画だそうだ。痴ほうにかかった老人は予測することができない行動で嫁と葛藤を起こして死亡してしまう。死んだ後に発見された貯金通帳には老人が孫たちに与えるために1ウォン2ウォンとためたお金がそっくりそのまま残されていた。嫁がその通帳をみて悔恨に落ちこむ…という単純なストーリーながら、家族の大切さを描いた作品だそうだ。
  この作品は2002年の製作で、米国では公開したものの韓国国内では劇場公開できなかった。それをSBSが今年の春に購入したのだそうだ。内容的には「恍惚の人」を連想させる。残念ながら見ていないので映画の出来はわからない。しかし、韓国国内で上映できなかったという話には少し驚いた。ひょっとして、米国資本で作られていて「スクリーンクオータ制」に引っかかったのか…。いや、そういう話ではないだろう。
  韓国の映画界は日本式に言えば閉鎖的なムラ社会だ。例えばあのイ・チャンドン監督は2年前、文化観光部長官の時にスクリーンクオータ縮小に肯定的な発言をしてしまい、野に下ってからはほとんど家に閉じこもったままだそうだ。拉北と脱北を体験し、北朝鮮の内情を暴露するような本(『闇からの谺』)を書いたシン監督を、少なくとも若手の映画人たちは自分たちの仲間として受け容れなかったのではないか。[朝鮮日報]の写真報道を見ると「映畫監督同人會」というところが弔問を取り仕切っている。この同人会の名前は初めて知った。どういう形の葬儀になるのかわからないが、故人の冥福を祈る。


[OSEN](4月12日)「冬の話」の記事。
[ http://kr.rd.yahoo.com/search/news_tab/*http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=20060412164856978a4 ]
[韓国経済新聞](4月10日)「ジュリア・プロジェクト」の記事。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006041018153230302 ]
[スターニュース](4月5日)映画人の地域文化祭参加を伝える記事。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=20060405180444385b6 ]
[朝鮮日報](日本語版3月31日)香港映画の復興戦略を報じた記事。
[ http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/31/20060331000062.html ]
[ヘラルド経済](3月29日)「結婚進化説」の記事。
[ http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=746&articleid=2006032914152521384 ]
[oh my news](3月12日)チェ・ミンシクのピョンテク訪問を伝える記事。
[ http://news.media.daum.net/snews/society/affair/200603/12/ohmynews/v11994381.html ]

  花冷えの日が続く。昨日、強い風の吹く恵比寿ガーデンプレイスにまた行ってきた。映画「空き家(うつせみ)」である。この日、最終回の上映の後、キム・ギドク監督と行定監督のトークショーがあったのだ。何日か前の[マイデイリー]にこのイヴェントのことが出ていた。[マイデイリー]を見ていて良かった。

  前に見た時は座席の少ない方のスクリーンでの上映だった。今回は座席の多い方である。立ち見が出た。立ち見といっても通路に座るのだが、結局、250名ぐらい集まったのだろうか。女性客が多かった。前の回の上映が延びたり会場整理に念を入れたりで上映が遅れ、予告編の上映は割愛された。そして、本編が終わったのが8時50分頃。それから約1時間、トークショーとティーチインが行われた。トークショーよりはその後のティーチインの方が盛り上がった。一日経って、記憶に残っている話の要点を以下に記す。ところどころで覚え違っていると思うが、これは仕方ない。きちんとした録音からおこした記事がどこかにぶら下がるといいのだが…。

  <トークショー>
  キム監督はトレードマークの鍔長の帽子をかぶり、ダウンジャケット姿で登場した。行定監督とキム監督は仲の良い友達同士だそうだ。行定監督によれば、キム監督はロマンチストで、自然に女性の手を握ったりしても相手を納得させてしまうようなキャラクターだとのこと。また、キム・ギドクは世界中どの国でだって映画を作れる、とも語っていた。いろいろな意味にとれるが、なによりそのテーマが普遍的だということだろう。

  このトークショーは互いにヨイショ合戦が多く、お二人の人柄は伝わったが話はいまひとつであった。ただ、行定監督がキム監督の家を訪問した時の話は面白かった。キム監督が家の近くの山の上の博物館だかに行こうと言いだして、早速出かけた。そして、近道をしようということになり、道無きところを強引にかき分けて登ったというのだ。行定監督は泥だらけになりながら引っ張り上げてもらった。行定監督によれば、キム・ギドク映画の主人公と監督自身が重なってみえるのだそうだ。まさか石を腰にくくりつけていたわけではないだろうが、思いついたことを野生児のようにパーッとやってしまう人なのだろう。

  <ティーチイン>
  女性−「自分は小さい頃、夢と現実の区別がよくつかなかった。この映画は誰かの夢のようだ」
  監督−「この映画は青年の夢とも考えられるし、女(ソナ)の夢とも考えられる。さらに、女の夫の夢とも考えられる。誰の夢かは見た人が決めればよいと思う」
  −質問をした女性は自分の夢を贈ると言って監督に白い角封筒を手渡した。彼女が後で開けてくれというのでその場では開封しなかった。

  男性−[この映画を登場人物の三角関係として捉えると、陰惨な状態で始まった三人の関係は最後に三人とも笑顔を浮かべて幸せに終わる。これについてどう思うか]
  監督−「青年と女は幸せかも知れないが、夫はそうではないだろう(微笑み)。私はこの話は夫の夢だと思っている。この男は自分の妻に幸せになってほしくてこういう夢をみたのかもしれない。」
  −確かにこう発言したと思う。「この映画は誰のファンタジーか」というのは自分が質問したかったことなので、ポロッと出た感じのこの発言は参考になった。

  女性−「『悪い男』の女子大生もこの映画の女もどちらも”ソナ”という名前だが、何か関連があるのか」
  監督−「そう言われてみるとそうだ。今まで気づかなかった。自分の映画はみな関連している。試しにDVDで『悪い男』や『春夏秋冬、そして春』やこの映画を編集して混ぜ合わせても一編の映画を作れるだろう」
  −これは興味深い話だった。映像コラージュのような感覚で作れるかもしれない。

  女性−「キム監督の映画には必ず『赤』が出てくると思う。今回も木製ソファの赤いクッションが出た時にそう思った。意識してこの色を使っているのか」
  監督−「必ずしも赤い色を意識して使っているわけではない。赤以外でもあらゆる色を使う。あらゆる色を混ぜると白と黒になると思う。そして白と黒を混ぜると色はなくなると思っている」
  −これは素晴らしい比喩だ。「この世の中には貧富,貴賤、いろいろな人間がいる。あらゆる人間はつまるところ男と女に帰着する。男と女は補完しあって<無=調和のとれた存在>となる」というふうにさしあたり理解した。

  女性−「キム監督は低予算の映画を作り続けているが、今後もこの線で行くのか」
  監督−「私が作るような小さな映画はそれ自体必要なものだと思う。映画による収入はありがたいが、私にとっての1ウォンは他の人にとっては1万ウォンかもしれない。幸い日本の会社から投資していただいて「空き家」を作ることができた。今後も私の映画を支持して下さる人がいるかぎりこういう映画を作り続ける」
  −うーむ。この監督は結構山っ気が強いと思っていたが、この時の話しぶりを見るとその逆であった。お金の使い方を徹底的に突き詰め、無駄を極力排除しているのだというふうに理解した。

  女性−「『空き家』やその次の『弓』の主人公にはセリフがほとんどないが、今後もこの線で行くのか」
  監督−「確かに『空き家』や『弓』ではセリフがないが、最新作の『タイム』ではセリフがある(微笑み)。今後もどうなるかわからないが、来年になれば次の作品のことはわかるだろう」
  −この質問者は監督のリクエストで選ばれたと記憶している。確か、最後の質問を受ける段になって、監督が「『ジュンコ』さんという方がいらっしゃったら質問して下さい」という、意表をつくリクエストをしたのだ。この女性は「空き家」も「弓」も向こうで見てきたらしく、釜山映画祭でサインをもらったなどと語っていた。「来年になれば次の作品のことはわかるだろう」というのは、今年は「タイム」1作で終わりだというふうに受け取れる。

  ティーチインでは、「空き家(うつせみ)」の青年は最初、日本の男優を考えていたという話も出てきた。スケジュールの調整がつかず、結局ジェ・ヒに決まったとのこと。出資した日本の会社の意向もあったのかもしれない。しかし、この役は今となってはジェ・ヒ以外には考えられない。また、監督がフランスへ行ったことについての質問もあった。それまで自分の生き方に迷っていた監督が30歳で渡仏し、映画というものを発見して生き方が変わった、との回答であった。この話はどこかで聞いたことがある。これは韓国人女性による質問であった。この女性は韓国で独立映画の製作にかかわっているそうだが、彼女はなんと向こうでキム監督の作品を一本も見たことがなく、今回初めて見たのだそうだ。これにはちょっと驚いた。質問してみようと思っていたことがあったのだが、この話を聞いて、やめることにした。

  キム監督は今回、昨年の映画「弓」のプロモーションで来日し、昨夜のトークショーが実現したのだそうだ。そういうわけで、最新作の「タイム」についてはあまり触れなかったが、ポストプロダクションも終わって製作の最終段階に入っていると語っていた。日本で生まれ育った韓国人女優が出ているということもちらっと語っていた。最後にキム監督は、「この映画「空き家(うつせみ)」を面白いと思ったら周りの人に話して下さい。こういう美しい映画館で自分の映画が上映されて、トークショーに参加して、今夜のこと自体がまるで映画のように思えます。」というような話で締めくくった。

  最後の最後にマスコミが写真撮影をした後、キム・ギドク監督は客席の通路を突っ走って会場から姿を消した。映画の主人公のようだった。

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