李英愛研究

ネットの記事でイ・ヨンエさんに迫ります

韓国の映画

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  アン・ソンギやチェ・ミンシクら映画人が熱心に闘っている韓米FTA粉砕闘争やピョンテク(平澤)米軍基地拡張反対闘争で強く連帯し、映画人の闘争の後見人であると思われる政党、韓国左翼勢力(進歩派)の金看板、民主労働党の前職現職幹部党員が二人、公安当局に逮捕された。10月26日の朝である。この事件は現在、捜査が進行中である。まだ何も語れない。以下、事件の概要や逮捕者の経歴等、事件捜査自体について10月30日までの記事から拾った。

  <民主労働党員逮捕-10月26日>
[Redian](10月26日)「民主労動党事務副総長国情院が逮捕」
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3446
[韓国日報](10月26日)「定着スパイの疑いで逮捕・拘束された人物は何者か」
http://news.hankooki.com/lpage/society/200610/h2006102618335921950.htm

  <マスコミ各紙の報道-10月27日>
[朝鮮日報](日本語版 10月27日)<社説>「北朝鮮のスパイが白昼堂々とソウルを闊歩している」
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/27/20061027000009.html
[中央日報](10月27日)<社説>「386スパイ容疑事件の衝撃」
http://www.joins.com/article/2488544.html?ctg=2001
[連合ニュース](10月27日)<時事評論>「スパイ容疑、徹底的に捜査しなさい」
http://www.yonhapnews.co.kr/news/20061027/150800000020061027160903K3.html
[ハンギョレ](10月27日)<社説>「“386 スパイ疑惑”事件、魔女狩りを警戒する」
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/167773.html
[韓国日報](10月27日)「スパイ罪のカギは国家保安法第4条第1項の適用可否」
http://news.hankooki.com/lpage/society/200610/h2006102715170622000.htm
[世界日報](10月27日) [単独]「進歩団体幹部たちも北朝鮮要員と接触」
http://www.segye.com/Service5/ShellView.asp?TreeID=1052&PCode=0007&DataID=200610270039000653

  <広がる事件−まるで三文小説みたいだ。本の題名は「386の光と影−勝ち組vs負け組」>
[連合ニュース](10月28日)「北、5・31地方選挙介入指令」
http://www.yonhapnews.co.kr/news/20061028/020200000020061028194553K1.html
[中央日報](日本語版 10月28日)<社説>「スパイ事件の渦中にどうして国情院長更迭するのか」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=81227&servcode=100§code=110
[朝鮮日報](日本語版 10月29日)「【386スパイ】政界内部の動向・民労党運動情報を北朝鮮に報告」
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/29/20061029000018.html
[韓国日報](10月30日)「キム・スンギュ国情院長"北工作員接触事件はスパイ集団事件"」
http://news.hankooki.com/lpage/politics/200610/h2006103011230521040.htm
[朝鮮日報](日本語版 10月30日)<社説>「ついにスパイ容疑者を出した『認定民主化運動家』の虚実」
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/30/20061030000006.html

  <民主労働党の反応>
  党の中枢にいた者と現在いる者が二人も逮捕されたのだから大変だ。しかし、あくまでも党としては知らぬ存ぜぬである。だが、このご時世に昔の軍事独裁の頃にあったと言われるような無体な捜査・逮捕が行われるとは思えない。「参加政府」の天下なのだ。公安当局はそれなりの準備を経て逮捕に踏み切ったはずだ。この逮捕に対して、26日はお定まりの強硬な態度であった。死文化している国家保安法をたてにして、国情院が先頭に立ってでっち上げた民主労働党弾圧、新公安弾圧だ、というわけだ。そして、国情院の謝罪と責任者の問責、前現職党役員の釈放などを要求し、国情院の前で糾弾集会を開いたりしている。

  実は、この糾弾集会はすでに拘束されていた前中央委員を釈放しろと数日前から行われており、25日には、翌日逮捕されることになる事務副総長も参加していた。…党側も26日の段階では普通の集会やデモの逮捕者と同じような感覚で扱っていたように思える。人権派の腕利き弁護士で弁護団を組織して取り組めば簡単に釈放されると思っていたフシがある。ところが、27日に最高委員会-国会議員団連席会議を開いて、慎重かつ冷静に事態の推移を見守る、というスタンスに修正している。抗議集会などは控えて、公安当局の関連部署に事情を聞く、という話である。やはり、党の事務副総長が逮捕されたのだ。この事件は大きな広がりを予想させているし、懸案の党首脳部訪北も控えている。こうした点に配慮したのだろう。

[世界日報](10月26日)「相次いで生じる悪材料…危機の民主労働党」
http://www.segye.com/Service5/ShellView.asp?TreeID=1052&PCode=0007&DataID=200610261616000214
[韓国日報](10月26日)「衝撃の民主労働党"政治的意図ある"」
http://news.hankooki.com/lpage/politics/200610/h2006102618375421060.htm
[ハンギョレ](10月26日)民主労働党“明白な政治弾圧”と反発
http://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/167466.html
[Redian](10月27日)「クォン・ヨンギル議員団代表と国情院長との面談推進」
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3463

  <民主労働党首脳部の訪北>
  一時は公表が危ぶまれた「韓半島平和実現のための特別決議文(特別決議文)」は、最高委員による最終的判断で「遺憾(残念)」の文言を加えた形で公表された。ただし、この「特別決議文」は解釈の面では微妙である。「北の核実験」に対する遺憾(残念)なのか「米国の対北敵視政策」に対する遺憾(残念)なのか、読む人の判断に任されているようなところがある。だからというわけでもないだろうが、24日には国会議員団らが国会前で「韓半島非核化反戦平和決議大会」なるものを開いた。そして、「韓半島非核化、ひいては核保有国の核兵器減縮及び撤廃を主張して来た反核平和勢力の立地を深刻に毀損した」と批判した。これは党の「特別決議文」よりも強い批判であり、クォン・ヨンギル議員団代表の意向が反映されているそうだ。まあ、国政に参加し、日々有権者に対峙している現職議員としては自主派も平等派もないだろう。核実験を黙認または擁護しているように有権者に受けとられてはたまらない。

  こうした情勢の中、10月30日、民主労働党首脳部はかねてからの予定通り訪北の途についた。29日にムン・ソンヒョン党代表が記者会見し、「北朝鮮核実験に対する強い遺憾(残念)を表明して、追加核実験があってはいけないという立場を北側に伝達する」と語った。また、「北核問題の根本責任はアメリカにあるという力強いメッセージを伝達する」とし、「必要ならば訪米団を構成する用意もある」と付け加えた。また、ある党役員は、「平壌を訪問すれば今度のスパイ容疑事件に対して北側関係者たちに会って直接問うてみる計画だ」と言い、「2000年のキム・デジュン前大統領と金正日総書記の首脳会談当時北側は対南活動をしないと約束した事がある」と語った。…おやおや、あれ以後韓国国内で対南工作員が一人も捕まっていないような言い方である。それに、向こうで聞くといっても…。

  民主労働党訪北団は、386スパイ容疑事件以前に発表された陣容とほぼ同じメンバーである。ただ一人、事務総長だけは事務副総長が逮捕されたので参加を取りやめた。ムン代表、クォン国会議員団代表、ノ・フェチャン議員ら13名は4泊5日の予定で北京経由で平壌を訪問し、金正日総書記か金永南最高人民会議常任委員長との面談を要請している。過去の例からして、金永南委員長との面談が行われるかもしれない。

  彼らは今回の訪北に際し、『朝鮮労動党に送る南韓社会主義者たちの手紙』なる文書を携えていくそうだ。きわめて紳士的に、腫れ物に触るように核兵器の放棄を促している。中身はリンク先を参照していただきたいが、これは特に日本人が読んだら噴飯ものの作文ではないかと自分は思う。彼らが既定の事実と考える「日本の軍国主義化の動き」を話のダシに使っているからだ。何でこういう「変な」文書を用意しなければならないのだろう。

  今回の訪北に対しては、スパイ容疑事件もあるということで国情院側から待ったがかかったが、統一部が押し切る形で決着が付いた。退職が決まったイ・ジョンソク長官から民主労働党へのはなむけではないかと憶測している。いずれにせよ、今回の訪北は北の宣伝塔になるのがオチのような気がする。同行する報道記者はSBSテレビ等有力メディアから選ばれた。小さなところでは交流金またはお土産金を準備できないからだろうと邪推している。今までの例からして、「交流」と名が付くところでお金が渡されなかった例を知らないからだ。続報を待とう。

<追記:11月1日>[東亜日報](日本語版 11月1日)によると、北側の反対で韓国側の記者は同行できなかったそうだ。

[中央日報](10月31日)「『戦争起こそうと米日がしゅん動』 民労党が平壌到着声明」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=81329&servcode=200§code=200
[韓国日報](10月30)「国情院、“民主労働党訪北”に反対意見 / 統一省、苦心の末の訪北承認」
http://news.hankooki.com/lpage/politics/200610/h2006103016372221040.htm
[Redian](10月30日)「南側の民心そのまま伝達して来る」民主労働党訪北団の出発を伝える記事。
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3499
[Redian](10月30日)「核捨てて6・15精神に戻って来なさい」『朝鮮労動党に送る南韓社会主義者たちの手紙』の記事。
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3490

雑話(10月29日)

  1:[ヘラルド経済](10月24日)によれば、<ムラの看板映画祭>、釜山国際映画祭で開催されたアシアンフィルムマーケットで、イム・グォンテク監督の新作「千年鶴」がフランスに売れたらしい。その他20本の韓国映画が海外に売れたそうだ。しかし、最大の市場である日本には韓国映画が一本も売れなかったという。そりゃあそうだろう。昨年来の韓国映画の集客状況を見ると、日本で確実に知名度の高い俳優が出演する映画でなければおいそれと手を出せなくなっている。知名度が高そうな俳優が出ても苦戦しているからだ。スターのキャスティング最優先の映画作りが曲がり角に来ている。素人にもわかる。

  2:また、[ニュースエン](10月25日)によれば、10月27日に閉幕した第4回韓米FTA交渉のスクリーンクオータ関連討議で、将来的に構想されている衛星通信を介したデジタル方式の映画上映に対して、米国側から全面開放の要求が出されたという話がある。これに対しては映画人対策委が24日に声明を発表して、強烈な言葉によって鋭く斬りつけた。返す刀で文化観光部と開かれたウリ党韓国映画発展特別委員会が23日に発表した「映画産業中長期発展計画」もバッサリと切り捨てている。6000余億ウォンの予算が予定されているこの計画を「実現不可能」として全く相手にしていない。徹底的に非妥協的でとりつく島がない。この先徹底的にこじれることが予想される。

  3:一方、[連合ニュース](日本語版 10月27日)によれば、韓国の文化観光部長官とフランスの通信相が27日、ソウル市内で映画共同制作協定に署名した。今回の協定は両国が2003年5月に口頭で合意していたもので、これにより両国が共同制作した映画は自国映画とみなされるとのこと。要するに共同製作した映画はスクリーンクオータの規制を受けないですむ、ということだ。フランスは確か、自国映画に対して韓国のようにガチガチの保護政策はとっていなかったと思う。その代わり、テレビでの放映枠にやや厳しい規制をかけて、自国映画の優遇的放映を義務づけていたのではないだろうか。

  しかし、こう言っては失礼だが、それほど多くの合作映画が作られるとは思えない。フランス映画の韓国での人気はしれたものだ。だからこそ韓国の<映画ムラ>でもこの話に乗ったのだろう。また、以前、向こうの映画雑誌のアンケートの話が出てきて、韓国と聞いて思い出すものの一番がキム・ギドク監督、二番がイム・グォンテク監督、三番がAnycallだった。この二人の映画の現在の韓国での観客動員もしれたものだ。だから、現在の韓国でヒットするような<ムラの映画>を作る感覚で「海外進出」とか「花の都パリへ!」とかいっても相手にされないだろう。若干の例外はあるものの、むしろ韓国でヒットしない映画のほうが海外の観客のうけがよいからだ。

  4:ヒットといえば、何百万人も動員する大きなあぶくではなく、金魚の吐く泡ほどのヒットの話がある。鍾路のスポンジハウスで上映されている小さな映画である。日本映画「ジョゼと虎と魚たち」である。[世界日報](10月27日)によれば、この映画は2004年10月29日に封切りして、一年後にまた上映し、なんと今年が三度目の上映なのだそうだ。もちろん、韓国国内ですでにDVDも発売されている。しかし、熱血マニアが存在するらしい。二十代の女性たちである。

  この映画は、二年前に5つのスクリーンで封切りした時に3ヶ月間で4万名を越える観客を動員して、韓国国内のその後の日本インディ映画熱風を予告した作品なのだそうだ。実際にいま「熱風」が吹いているのかどうか定かではないが、「メゾンドヒミコ」等の作品が好意的に迎えられたところを見ると、日本インディ映画も固定ファンを獲得してひとつの立地を得たことは間違いないだろう。

  5:日本映画の話題で、今日の[連合ニュース](日本語版 10月29日)に、「第3回メガボックス日本映画祭」の話が出ている。11月15日から19日まで、ソウル・三成洞のメガボックスCOEXで開催されるこの映画祭のオープニング作は「電車男」と「パッチギ!」で、クロージング作は宮崎あおい主演の「ただ、君を愛してる」である。2000年から2006年までの最新作から作品を厳選した最新日本映画18作品が紹介されるそうだ。

  最後:[シネ21](10月23日)に、「韓国人が選択した韓国映画10選」が出ている。韓国映像資料院が今年上半期に発表した「韓国映画代表作100編」というものがあり、ここから選ぶ形式で9月18日から10月9日まで3週間、[シネ21]・[KMDB(韓国映画データベース)]・[サイワールド]の三カ所でオンライン投票を行った結果である。映像資料院ではこれをもとに11月2日から12日まで10日間、「韓国人が選んだ韓国映画10選映画祭」を開催するそうだ。料金は2000ウォン。記事には、選ばれた映画を映像資料院の古典映画館で上映するとあった。芸術の殿堂にある映像資料院の地下の試写室のことだろう。やや狭いが気持ちの良いホールだった。

  2万4575名が参加した投票で一番多くの支持を得た映画はパク・ジョンウォン監督の「私たちの歪んだ英雄」だった。イム・グォンテク監督の「ソビョンジェ(西便制-風の丘を越えて)」、シン・サンオク監督の「離れの客とお母さん」が2、3位となった。…膨大な韓国映画から10本選ぶとなると、一定の権威によるスクリーニングを経た今回のやり方も一案なのかもしれない。無条件にやってしまうと最近の映画しか残らないはずだし、映画祭を開けないだろう。


[連合ニュース](日本語版 10月29日)「第3回メガボックス日本映画祭」の記事。
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=082006102603900&FirstCd=05
[世界日報](10月27日)『ジョゼに会いに鐘路シネコアに行く』
http://www.segye.com/Service5/ShellView.asp?TreeID=3249&PCode=0070&DataID=200610271153001405
[連合ニュース](日本語版 10月27日)『韓仏映画共同制作協定、両国文化相が署名し締結』
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=052006102702800&FirstCd=03
[ニュースエン](10月25日)『映画人対策委、映画を身代わりにするFTA交渉に“いっそ映画人を殺しなさい”と非難』
http://www.newsen.com/news_view.php?news_uid=85876&code=100300
[ヘラルド経済](10月24日)『韓国映画、アジア最大市場の日本で危機』
http://www.heraldbiz.com/SITE/data/html_dir/2006/10/24/200610240085.asp
[シネ21](10月23日)『韓国人が選択した韓国映画10選』
http://www.cine21.com/News_Report/news_view.php?mm=001001001&mag_id=42264
[シネ21](7月24日)『韓国映像資料院選定、100本の韓国映画』
http://www.cine21.com/News_Report/news_view.php?mm=001001001&mag_id=40246

  10月9日の核実験に関して、パク・チャヌク、ボン・ジュンホ(ジュノ)、ムン・ソリら韓国映画人の多くが熱心に支持する<映画ムラの代官所>、民主労働党は独特の対応をしている。北核問題に対する党としての公式決議文を採択する過程で、党内の「軋み」が顕著に表れる事態となっている。10月15日に開かれた第6次中央委員会で「韓半島平和実現のための特別決議文」なるものを採択する予定であったが、北の核実験に対する党の立場に関して激論が交わされ、この決議文を採択することが出来なかった。

  [Redian](10月16日)によれば、この決議文には最初、「北の核実験に対して明白な遺憾(残念)の意を表する」という文言があった。これに対して一部中央委員たちが「遺憾(残念)」を「反対」に直して、「北朝鮮の追加的措置に反対する」という文言を挿入しようと修正動議を出した。ところが評決の結果、この案は在席中央委員の過半数の賛成を得られなかった。むしろ、「北の核実験に対して明白な遺憾(残念)の意を表する」という文言を「アメリカの対北敵対政策と朝米間の緊張と対決が北の核実験につながったことに対して遺憾(残念)の意を表する」という文言に変えようという修正動議が可決されてしまった。ここにきて、北朝鮮の核実験に対する明白な反対の立場を表明しなければならないと主張したムン・ソンジン中央委員などが、 ”提出された原案よりもっと後退させられた”と退場して、特別決議文を採択することができないまま中央委員会は散会した。

  うーむ。この党はどうなっているんだろう。金正日を源義経になぞらえる意図は全くないが、原案を後退させた動力は北に対する「判官贔屓」ではないかとさえ思えてくる。というのも、「反核」の立場は党綱領に明記されたこの党の「理念的な柱(はしら)」の一つである。普通に考えれば、まず北の核実験にきちんと反対し、その上で、それを招来したと彼らが考える米国の金融制裁措置を批判する、という線で決議文が構成されなければならない。韓国には日本の非核三原則のような理念的ガイドラインはなかったと思う。だが、この党を代表とする韓国の進歩派勢力がこれまで「反戦・反核」と言うとき、核兵器の開発と保有を否定し、それを使用することになる戦争に反対し、核兵器をなくしていく国際的な運動に連帯するという意志を高らかに表明していたのではないか。その意味で、この党は確か日本の反核団体とも連携して、日本の再軍備と核武装に対する警戒感を明白に主張してきたはずだ。だが、この党の中央委員の過半数を超える人々にとって、北朝鮮が核武装することは米国の悪意によるやむを得ない事態であって、米国の責任を追求するためには北に「反対」することはおろか「遺憾(残念)」の意を表明することさえ憚られる、というわけだ。これは、各中央委員が代表する地方支部や関連団体の総意を代弁した意見であろう。

  この党の内部では、遙か昔の民主化闘争以来綿々と続くNL(民族解放)派とPD(民衆民主)派の対立があるといわれる。学生運動が盛んだった頃、NL派は反米民族主義と祖国統一を前面に押し出し、PD派は韓国自身の民主的変革を優先課題として闘った。現在は党内の多数派で、しばしば「自主派」とも呼ばれるNL系列の人々にとって、今回の核実験はもしかしたら歓迎すべき慶事なのかもしれない。ネットの記事に寄せられた「党員」と称する者による書き込みの中には、核兵器は米中などの大国の専有物ではない、北朝鮮が持って何が悪い、というような乱暴な開き直りすら存在する。悲願の統一が実現すれば統一朝鮮(統一韓国?、高麗連邦共和国?)は核を保有することになるのだから一石二鳥ではないか、といった極端な話も出てくる。

  米国の対北敵視政策が今回の核実験を招来した、というのが民主労働党および進歩派勢力全般の認識である。これに乗じて敵対感情を煽る保守勢力の動きを粉砕し、日米の敵対的制裁措置に反対しながら冷静に事態の推移を見守ろう、というのが彼らの態度である。1960年代から営々と核開発を続け、1990年代以降に顕在化した北による核危機に際して、進歩派勢力がとり続けてきた態度と大筋で一致する。1994年のIAEA(国際原子力機関)からの脱退宣言のときも、2003年のNPT(核非拡散条約)からの脱退宣言のときも、先般のミサイル発射のときも、同様の態度であった。今回の事態に直面しても、総体としての認識と態度には微塵の変化も見られない。北の体制とその体制を維持する行動に対してはいっさいの批判をしない。まるで北の体制は神聖不可侵の存在なのだと言わんばかりである。おそらく、批判すれば危機を助長し戦争に結びつくという戦争直結論、または、戦争の脅威に名を借りた北朝鮮擁護論がその背景にある。

  この点に関しては、いくら勝ち目のない戦(いくさ)でも金正日を取り巻く軍部の強硬派が戦争を起こすかもしれないし、南の反動勢力がけしかけてこちらから先制攻撃するかもしれない、米国や日本が攻撃しない保障はどこにもない、むしろ米国は軍事行動で北の体制をつぶそうという野心を隠していない、というわけだ。今回の核実験に至るまでの日本側の対応について、軍国主義復活を懸念する声も韓国の進歩派言論には多い。しかし、最近の中国の動静および日中関係や米中関係を一応見た上での話だとすれば、いくら反米・反日感情が強い進歩派であっても、いささか首をかしげたくなる。鶏と卵の話ではないが、国際社会の警告にいっさい耳を貸さず強行された今回の核実験こそが、いわゆる「周辺事態(米軍が介入する武力紛争の際、自衛隊が後方地域支援をする)」も視野に入れた対応という誤った道に口実を与えてしまったし、日本における核武装肯定論にも弾みをつけていると自分は思っている。日本の反動勢力に絶好の機会を与えてしまったのは誰だ。…こう言うと、解決済みの拉致問題をしつこくほじくり返して対北敵視政策をとってきた日本にこそ責任の一端がある、という進歩派の反論が聞こえてくる。

  …話が大きくなってしまったが、肝心なのは、北朝鮮に対する認識や態度の差違を認めつつ、関係諸国が協力して「圧力と対話」によって北朝鮮のバカな動きを変えることである。だが、この当たり前のことがうまくいかないような情勢だ。とりわけ日米政府と韓国政府との温度差は著しい。韓国側は政府と与党の内輪もめなどせずにこの危機をむしろ統一の好機と捉えて、積極的に「圧力と対話」を模索するべきなのだ。対話、対話とおさまり返り、口先だけの圧力では北に何のシグナルも送れない。ましてや、根強い反米感情や判官贔屓(?)に基づく対北擁護論で圧力を否定するだけでは何も解決しない。しかし、自分はそうした対北擁護論が民主労働党の過半数の党員の総意であろうと憶測している。上で見たように、彼らを代表する過半数の中央委員の総意として特別決議文が修正されたのだから。

  民主労働党では、朝鮮社会民主党の招きに応じて10月31日から11月4日まで4泊5日の日程で指導部が平壌を訪問する予定だ。北側は当初、10月24日から4泊5日間の日程で訪北を要請したが、民主労動党側は23日から済州島で進行される韓米自由貿易協定(FTA)第4次交渉の日程を考慮してこの訪北日程とし、北側と交渉している。しかし、15日の午後2時30分から夜の12時まで続いた中央委員会は、主要案件に関しては上で見たようにお流れになってしまい、この訪北招請の件は検討できなかったそうだ。

  核実験以後、金剛山観光地へ与党ウリ党と民主労働党の国会議員3名が日帰りで赴いたことが記事になったりしている。金剛山観光は順調だし、南北経済協力は続かなければならない、という露骨なアピールである。また、本日(10月17日)から平壌では「尹伊桑音楽祭」なるものが開かれる。当初は、指揮者のあのチョン・ミョンフン(鄭明勲)ら60人が訪朝を計画していたが、北朝鮮の核実験によりチョン・ミョンフンは訪朝を取りやめた。結局、最終的に21人が音楽祭に参加するそうだ。全体の3割強もの人々が残っている。訪朝団には、元ハンギョレ新聞代表や金剛山観光の元締めである現代峨山社長らが含まれており、北朝鮮文化界の関係者らとの会談も予定されている。 北で何が起ころうと、北が何をしようと、変わりなく友好交流を続けようという人士は現在の民主労働党の過半数の人々だけではないようだ。この21人の中には北と直接の利害関係を有する人々も多いだろうが、少なからぬ人たちが民主労働党員やそのシンパかもしれないと自分は憶測している。

  一方、北朝鮮外務省スポークスマンは17日の声明で、北朝鮮の核実験実施発表を受けて国連安全保障理事会が14日に採択した制裁決議案について「わが共和国に対する宣戦布告でしかない」と公式見解を発表した。北朝鮮側は朝鮮半島の非核化を実現するための責任を果たし、「平和を願うが決して戦争を恐れず、対話を望むが対決への準備もいつでもできている」のだそうだ。

  善人なおもて往生す、いわんや悪人をや。民主労働党のみなさん、あなたがたに神のお恵みを。


[聯合ニュース](10月17日 日本語版)北朝鮮外務省スポークスマンの声明の記事。
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=142006101701500&FirstCd=06 
[聯合ニュース](10月16日 日本語版)「尹伊桑音楽祭」の記事。
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=052006101600100&FirstCd=03
[Redian](10月16日)10月15日の民主労働党中央委員会の様子を伝える記事。
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3276
[聯合ニュース](10月15日)金剛山へ国会議員が日帰りで出かけたという記事。
http://www.yonhapnews.co.kr/news/20061015/020200000020061015190118K3.html
[聯合ニュース](10月15日)北核関連主要日誌。
http://www.yonhapnews.co.kr/news/20061015/040206010020061015032647K3.html
[Redian](10月12日)民主労働党内のNL派とPD派の軋みを伝える記事。
http://www.redian.org/news/articleView.html?idxno=3241

  [ニュースエン]その他によれば、昨年公開された映画「親切なクムジャさん」が10月8日に早くも韓国でテレビ放映された。チュソク(秋夕)向けの特別放映で、これ以外にも映画「ドンマック村へようこそ」や映画「お前は私の運命」などが放映されたようだ。面白いのは、KBS2で放映された「親切なクムジャさん」とかぶる時間帯にMBCからは「ドンマック村へようこそ」が放映され、はからずもテレビ対決のかたちになったことだ。昨年、両者はほぼ同時期に封切られ、後者は前者の倍以上の観客を動員した。テレビの視聴率の方は前者が10.4%、二部に分けて放映された後者は第一部15.6%、第二部13.3%で、こちらは倍というわけにはいかないものの、やはり後者の視聴率の方が高かった。しかし、テレビ向きの絵の多い映画だったが、あの内容で10%以上の視聴率なら御の字ではないだろうか。

  「クムジャさん」が出てきたので、BoxOfficeMojoを覗いてみたら10月1日付の数字のままである。157日間で $211,667。米国でまだ上映しているとしたら、客の入りは極少数で横ばいであろう。何でこんなに長期間上映するのだろう。現在は完全な赤字上映であろう。自分はこの映画の最期まで見届けたいと思っている。もし上映し続けるとしたら、ひょっとすると、今後のことを考慮して24万ドルに達するまで大赤字覚悟で続けるのではないかと憶測している。というのも、映画「うつせみ[空き家](3-iron)」が米国で公開された際、興業成功という数字ではないものの、24万ドルを超える興行収入をあげているからだ。そしてこの二つの映画はベネチア映画祭で話題になったという共通点を持つ。

  ところで、何か目新しい映画祭はないかと思っていたら、「大韓民国青少年映画祭( www.dima.or.kr )」というのがあった。今年で6回目である。この映画祭は教育人的資源部と文化観光部、テジョン(大田)市後援で、来る10月18日から22日まで大田市立美術館で本選進出作70編ほどが上映される。といっても、「ミジャンセン短編映画祭」のようなセミプロ向きではなく、いわば純然たる素人向けの映画祭のようだ。<映画ムラ>の高札場、[韓国映画人会議]では今のところ黙殺している。ということは、かなり面白そうな映画祭である。<ムラの掟>や<ムラの人脈>などにわずらわされることなく、独創的で自由にのびのびと撮られた作品が多いのだろうと憶測している。

  この映画祭のページを覗いたら、映画人の人気投票がある。ここの投票ページには第1回から第5回まで過去の一番人気の映画人が写真付きで出ている。第1回と第2回の人気女優はあのシム・ウナで、最近はムン・グニョンである。ムン・ソリが新人女優に選ばれていたりする。元老映画人(中堅映画人)として俳優アン・ソンギが何度も選ばれている。カン・ジェギュ監督やイム・グォンテク監督が選ばれている。そして、驚いたことに、キム・ギドク監督が第4回と第5回で連続人気トップなのであった。お歳を召したキム・ギドク監督ではない。写真がある。どうなっているんだろう。[韓国日報]等を見ると、このページ以外に[paran]( tingle.paran.com )というところで投票が行われ、今年もキム監督が一番人気である。また驚いた。今年の新人男優はイ・ジュンギ、女優はムン・グニョンである。これは驚かなかった。…キム監督はテジョン近辺の出身なのか、よくわからないが、そういうことではないようだ。過去の人気映画人の顔ぶれから見て、「冗談アンケート」などというものでもなさそうだ。

  ここの投票はジャンル一覧に全部の名前をハングルで書き込むやりかたである。[paran]の方はすでに記入欄がなかったので同じ方法かどうかはわからないが、適当にクリックして終わり、というわけでもなさそうだ。韓国国内のネットユーザーの投票が大部分であろう。…そういう監督だったかなあ。キム監督の映画は、内容的にはともかく、表向きには「青少年」と結びつかない。だいたい、ほとんどR指定である。MKピクチャーズのカン・ジェギュ監督はヒットメーカーで有名だし、イム・グォンテク監督は韓国映画界の生き証人だ。しかし、こう言っては悪いが、キム・ギドク監督は韓国映画界の嫌われ者だ。…その嫌われ者とその作品をこよなく愛する自分としては、とりあえずこの結果を喜びたい。寂しいのはお前だけじゃない、とでも言うべきか、地獄で仏に会った、とでも言うべきか、いろんな意味でうれしくなった。

[大韓民国青少年映画祭]人気投票のページ。
http://www.dima.or.kr/movie/poll.html
[韓国日報](10月11日)第6回大韓民国青少年映画祭の人気投票の記事。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&articleid=2006101110513540407&newssetid=1352
[ニュースエン](10月9日)「親切なクムジャさん」テレビ放映の話題。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&articleid=20061009074253791e7&newssetid=1352

全国映画産業労働組合

  久しぶりに<映画ムラ>の様子を『韓国映画人会議』のサイトで確かめたが、目立った政治活動、すなわちデモや集会の消息は最近ほとんどない。体力勝負の街宣活動には休息期間も必要なのだろうか。まあ、映画人だから映画も作らなければならないだろうし、今はロビー活動にいそしんでいるのかもしれない。極めて不謹慎な言い方であるが、面白くない。…とはいえ、スクリーンクオータ原状回復と反FTAという掛け声は変わっていない。しかし、反平沢(ピョンテク)闘争の方はおとなしくなっている。最近は、ピョンテクの米軍基地拡張反対闘争の現地集会に映画人(例えばスクリーンクオータ文化連帯)が参加したとか、「野が泣く 反ピョンテク集会」のような集会に映画人(例えば俳優や監督)が参加したとかいう記事が出てこない。これは、「コメ」(農民)との連帯というよりは、「反米」の一点でつながった支援闘争だけに、俳優チェ・ミンシクがピョンテクに出かけたり、リュウ・スンワン監督と一緒に反対集会(文化祭)のサイン会に出たりしても、もともと無理な感じがしていた。このピョンテクへの映画人の連帯の方はどうなったのだろう。チュソク(秋夕)もじきに終わる。派手な集会やデモを期待したい。

  そもそも、ピョンテクの闘争は最近どうなっているのだろう。目立った記事を見なかった。[東亞日報](日本語版 10月3日)によれば、テチュ里では行政による強制収用が行われ、先月から空き家が撤去されている。しかし、90余りある残存民家うち、50世帯余りが居残っている。ピョンテク米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会側は徹底抗戦の構えで、政府が対話集会を開いても参加せず、非妥協的な態度を崩していないようだ。だが、在韓米軍がいよいよ韓半島(朝鮮半島)から引き始めようという時期である。現在は「反米」という錦の御旗を立てていられるが、闘争が長期化すると、特定政党や政治団体の闘争手段としての側面は変わらないとしても、いわゆる公益と地域エゴの対立の話に矮小化される危険がある。いや、それは矮小化ではなくて正常化なのかもしれないが、自分は遙か昔の三里塚の闘争を思い出している。

  ところで、かなり以前、昨年の12月に、映画産業の現場労働者が組合を作って、泣く子も黙る民主労総の傘下に入ったという記事を見た。映画の制作現場での労動基準法遵守を当面の課題として立ち上げられたのだった。あのレーバーユニオンの活動はどうなったのだろうと、ちょっと調べてみた。「全国映画産業労働組合( http://www.fkmwu.org/ )」のホームページがある。このページ、シンボルマークがフィルムを握りしめる拳である。どっかで見たような絵柄である。思わずにんまりしてしまった。『資料広場』というセクションには民主労総の過激な情宣ポスターがぶら下がっていたりする。…それはともかく、ここの書き込みや[聯合ニュース]等の報道によれば、組合側と映画製作者協会側(経営側?)との団体交渉がすでに8回行われ、7回目の交渉で一定の合意に達したらしい。

  9月上旬、両者は「一日12時間、一週間40時間の労働時間」の線で原則的に合意した。ただし、一日15時間以上とか、一週間に66時間を超過する場合はオブザーバーを立てて個々に調整すれば可能とのこと。また、勤労時間が4時間の場合30分、8時間の場合1時間の休憩時間を保障する、という内容も加えられた。また、スタッフの休日に対する規定も用意され、個別労使間合意によって1週間に一度休日が与えられ、お正月と秋夕には3日ずつ休日がある。また、メーデー(5月1日)、労組創立記念日(12月15日)なども休むことができるようになった。それに月1日の月次有給休暇も保障されるという。

  今回の合意案は、製作日程を理由に無理な撮影を強行してきた現場慣行に歯止めをかけたことに意味があるようだ。だが、映画製作の現場は工場労働のようには行かないだろうと素人ながら思ってしまう。いつから発効する話なのか定かではないが、例えばイ・ヨンエの次回作が韓国映画で、国内で撮影されるとしたら、上のガイドラインに沿った現場になるのだろうか。この合意が吉と出るか凶と出るかは興味津々である。まあ、抜け道がちゃんと用意されているようだから、何とかなるのだろう。あとは肝心要の賃金の話が残っている。

  なお、この両者は今月開催される釜山国際映画祭で公開交渉を行うのだそうだ。この話は[ノーカットニュース](10月6日)に出ているが、どちらかというと芸能ネタとして扱われている。10月16日、釜山国際映画祭期間中に全国映画産業労組がCGVチョンサンで「労働環境改善方案シンポジウム」を開催し、映画「王の男」に主演した俳優ジョン・ジンヨン(チョン・ジニョン?)や映画「マラソン」のジョン・ユンチョル監督が参加するという。このシンポジウムにはフランスとメキシコの業界労組委員長や映画製作者協会のチャ・スンゼ氏、民主労働党政策研究員モク・スジョン氏などが参加するそうだ。海の向こうのお仲間が参加しているが、ガチガチの<ムラの寄り合い>である。そして翌17日、海雲台マリオットホテルで全国映画産業労組と映画製作者協会との第9次団体交渉が公開で進行されるのだそうだ。


[ノーカットニュース](10月6日)釜山国際映画祭でのイヴェントの話。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=16&articleid=2006100614493890970&newssetid=83


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