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以下は、長野県の弁護士・毛利正道氏による論説を『非戦つうしん』から転載したものです。
http://www1.ocn.ne.jp/~mourima/hisen0-6.html
──≪転載ここから≫──
1 原告3,000名を超える名古屋を始め、札幌・仙台・栃木・東京・山梨・静岡・
名古屋・京都・大阪・岡山・熊本の裁判所で、12の裁判が起こされ、果敢に闘われ
ています(私も末席ながら山梨の裁判の代理人です)。これらは、いずれも現在の自
衛隊の合憲・違憲はさておき、「戦地イラクに武装した自衛隊を派兵し、武装米軍を
輸送することは間違いなく憲法違反」と主張しています。これは、憲法9条を守る闘
いと論理構造が似ている点で注目されます。すなわち、憲法9条を守る闘いも、自国
が攻撃された時に自衛隊が闘うことはさておき、9条が変えられると自衛隊が、自国
の防衛とは関わりのない海外でのアメリカの戦争に公然と実戦参加することになる
(現在のイラクでは自衛隊はまだ「こそこそ」しています)、これを認めることは到
底出来ない、という点が国民多数派の共通の声になることをめざしているのです。
2 これをかみ砕いて言うと、憲法9条は2項で戦力の保持を禁止していますが、
政府は現在までわが国を防衛するための必要最小限の防衛力である自衛隊は、9条2
項で持つことが禁止されている「戦力」に当たらないと主張してきています(これに
ついて多くの異論があることはさておきます)。でも、イラクでの米英軍のように実
戦参加する部隊が9条2項の「戦力」に当たらないと解釈することが不可能であるこ
とあきらかなため、2項を変えようとしているわけです。
3 ここが争点ということはなにを意味しているのでしょうか。
第1に、改憲をめざす勢力は、海外での実戦行動という狙いをあからさまにしたので
は国民多数が改憲に反対する可能性が強いため、真の狙いを隠し、「日陰者の自衛隊
に日の目を見させるための9条2項改正」とアピールします。しかし、これを理由に
9条2項を変えて(あるいは2項は変えずに3項を新設して)、「自衛のために戦力
を持てる」との条文にすれば、「自衛のために」が一人歩きし、海外での米軍との実
戦行動も「自衛のために」との口実で行うことはあまりにも明らかです。この真の狙
いを大いに広めていけば、自衛隊・自民党を認め支持している多くの国民に9条改正
反対の気持ちになってもらうことは十分可能です。
第2に、ここが争点ということは北朝鮮問題を利用した改憲論との関係でも極めて重
要です。すなわち、北朝鮮の脅威が虚像であっても実像であっても、「北朝鮮の攻撃
から自衛隊が日本を守るには改憲が必要」と心配する人には、「北朝鮮が攻めてきた
ときに日本を守ることは現在の自衛隊と憲法の下でもできる」「それでも改憲しよう
とするのは、海外の実戦行動が出来るようにするため」と説くことができるのです。
第3に、今改憲で問われているのは、日本に住む家族を守るために自衛隊が活躍する
という話ではなく、自衛隊員に「アメリカの権益のために海外に行って殺し、死ね」
と命ずることが改憲によって実現されることを許すのか否かということです。これは
要するに、自分・子・孫が犬死にすることを認めるのか否かの選択を国民に突きつけ
ていることを意味します。子どもを産み育てる女性が、とりわけ「子ども・孫を守り
ぬく」と必死になって立ち上がりつつある、その客観的基盤があるのです。
第4に、アジア諸国から見た時にも、9条改憲の問題性がよく分かります。どこの国
も自国を守るための軍隊は持っているのですから、自衛隊を認知させるための改憲な
ら反対の声も起きにくいでしょうが、他国に出かけ他国の人を殺すための改憲という
ことなら、戦争責任を無視する日本政府の姿勢と重なり、絶対に改憲を許さないとの
声が広がるはずです。他国との経済交流を通してしか生きられない日本の政府として
は、大きな痛手になります。
4 むろん、「いついかなる場合でもたとえ攻撃されたとしても非戦を貫こう、一
つのいのちも奪い、奪われないために。それが憲法9条の価値」と、この際、憲法9
条の先駆的現代的意義を大いに訴え広めることはとても大切なことです。とりわけ、
戦争体験者が高齢になったとは言えいまだ多く健在で「戦争だけはもうこりごりだ」
と次々に立ち上がっている今、このいわば絶対平和主義を国民の多くに肌身を持って
分かってもらえるチャンスです。この点から、改憲反対と立ち上がる人も決して少な
くありません。戦中全国で飛び抜けて多い「満蒙開拓団」を送り出しその半数が亡く
なった長野県で、燎原の炎のように保守層を含む幅広い9条の会が次々に結成されて
いるのは現在のところ、この面が強いと思われます。
5 しかし、それとともに、9条を守る闘いの特質が上記第3項にあり、原理的に
真の狙いさえ分かってもらえれば大多数の国民に「改憲に反対」との気持ちになって
もらえる課題であることがしっかり掴めれば、これなら我々が勝てるとの確信も持て
ますし、かつ、どんな考えの人と話しても(上記第3項の各内容で)ほとんど反論で
きますから気軽に対話できるようになります。そしてその「真の狙い」は、違法・非
道な米英軍によるイラク戦争を目の当たりにしている今、とても分かってもらいやす
くなっています。更に、人口の半数を占める女性が戦前と違って参政権を持っている
ことは想像以上に大きなパワーになるでしょう。私は「イラクのようなアメリカの違
法・非道な戦争に、自衛隊をイギリス軍のように実戦参加させるための9条改造。日
本人のいのちもイラク人のいのちも一つも奪うな」と訴えていますが、改憲勢力のな
かでの統一改憲条文策定作業の困難さも予想するなかで、「困難は、実は改憲勢力の
側にある」と実感しつつあります。
6 一人が五つも六つもの9条の会に入るほど「9条の会」を全国に無数につくる
ことをめざす「9条の会アピール賛同者を広める」運動は、この4・5項両者、すな
わち、絶対平和主義を共通にする国民、自衛隊も自民党も認め支持する国民多数派い
ずれとも互いに繋がっていき、対話し改憲から護憲に変えて、9条を守る国民を圧倒
的多数にすることをめざす壮大な闘いなのです。9条の会の運動が広がる根拠がここ
にあります。
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