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〈緊急声明〉与党が密室で協議した教育基本法「改正」案の上程に反対する
四月一二日、与党の「教育基本法改正検討会」は、
自公の間で長く対立してきた「愛国心の表記」について、合意に達したと報じられました。
それは、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する……態度を養う」
というものです。
与党は、この合意をもとに法案化し、今国会での上程、成立を目指すと言われます。
教育基本法は、戦後、日本国憲法の精神に沿い、
平和的な社会、国家を形成する主権者を育てるために、教育の大原則を定めた法律です。
教育刷新委員会の学識経験者たちが議論し、新憲法下の国会で作られました。
いま与党で合意されたのは、この準憲法的な性格をもつ基本法を、
「改正」と言いながら全面的に書き変えてしまおうとするものです。
もともと法律になじまない「愛国心」や道徳律などを書き込み、
戦前と同様、行政が国民の心に介入できるようになる恐れがたいへん強い「改正」案です。
教育は、一人一人の国民にとって、直接かかわりのある重大な問題であると同時に、
これからの日本社会を担っていく子どもたちの、知力、学力、体力、生きていく力、
そして心のあり方にもかかわり、また社会全体を変えてしまう可能性を持っています。
こうした重要な問題を、与党は一部議員だけの密室の協議で行い、
内容も議論の過程も、一切国民に知らせませんでした。
「百年の計」といわれる教育の根本原則を、
二つの政党の「寄木細工」でつくることなどありうるでしょうか。
このまま国会に上程し、数の力で成立を押し通すなど、絶対に許されないことです。
与党検討会の秘密主義は、会議の中で配布された資料や議論の内容をめぐるメモまで、
会議終了後にすべて回収するという常軌を逸したものです。
与党に持ち帰って合意を取り付けるといっても、すべて口頭という無責任さです。
このままではすべての国民はもとより、ほとんどの与党議員ですら、
教育基本法をめぐる議論から排除され、結論だけを押し付けられることになります。
私たちは、こうした密室協議で生まれた法案の上程に反対します。
教育の議論は拙速を避け、様ざまな問題を勘案しながら、
国民的な議論と合意をとりながらなされるべきだと考えます。
二〇〇六年四月一四日
喜多明人(早稲田大学教授)
小森陽一(東京大学教授)
石井小夜子(弁護士)
大内裕和(松山大学助教授)
尾木直樹(教育評論家・法政大学教授)
加藤周一(作家)
桂敬一(立正大学講師)
北沢洋子(国際問題評論家)
佐藤学(東京大学教授)
杉田敦(法政大学教授)
俵義文(子どもと教科書ネット21事務局長)
辻井喬(作家)
暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)
西原博史(早稲田大学教授)
藤田英典(国際基督教大学教授)
間宮陽介(京都大学教授)
最上敏樹(国際基督教大学教授)
毛利子来(小児科医)
山口二郎(北海道大学教授)
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