|
はじめに カウンセリングは実践に役に立たないとの声もある。状況変革の力にならないという批判だ。しかし、本当にそうであろうか?人は主体的に自らの拠って立つところを認識し、どうしたらいいかを考え、そのうえで行動していく。カウンセリング・マインドの人間尊重の精神は、実はその基盤を支えているのではないか、そういう捉え直しをしてみようということが今回の分科会のもくろみであった。
参加者の状況 高崎集会の発足から22回目を迎えた本分科会の参加者は12名、内訳は何らかの職員が5名、市民が4名、研究者教員が2名、学生1名、従来、参加者の約半数が学生だったが、今回は学生が1名だけであった。また、職員といっても多くの方が市民としての活動をされていて、その役に立てたら…との参加動機が印象的であった。今回、現地世話人が誰もいない厳しい準備状況だったが、現地長野から3名の参加をいただいたこともうれしい結果であった。
体験ワークショップ 始めに体験ワークショップを習志野市のNPO法人「ぬくもりほっとらいん」の江澤陽子さん、渡辺晴代さんの進行で実施した。
まず、シートの設問に自分の答えを書く。設問は好きな色、いま会いたい人など6問。書き終わったらそれを持って席を立ちペアになる。ペアでじゃんけんをして勝った人が設問を指定、お互いに答えを相手に伝える、そのとき自分のコメントを伝えるのがポイント。
たとえばいま会いたい人で「亡くなったおばあちゃん」、北海道に入植して、苦労してたくさんの子どもを育てた祖母の人となりを伺った。参加者のほとんどはたった一日、分科会で出会う、いわばすれ違うだけの出会いではあるけれど、そこに型どおりの自己紹介とは異なる奥行きのある出会いを体感した。しばし、お互いの話を聞き、そのうえで相手の答えをシートに書き込んで1問終了。また別な人と繰り返し、6問すべての交換が終わり約40分で終了。その後、参加者それぞれの自己紹介を参加動機も含めて行なった。
「アップルズ・ニート」親の会と共に まず初めに長野県飯田市のNPO法人カウンセリングみんなの会での活動を代表の佐々木千栄子さんに伺った。佐々木さんは長野県飯田市の社会教育委員を昨年まで7年間しておられたとのこと。子どもが高校に入学したときに通信制の大学に入学、7年かけて社会福祉士と精神保健福祉士の資格を取得した。その中でカウンセリングの重要性を感じた。
子育ての悩みを抱えたお母さんは子育て熱心な親が多い。そこで悩みを抱えてしまう。例えばわが子が「肉は食べるが魚を食べない」と真剣に悩む。そんな相談にはアドバイスをするよりも選択肢を提示し自己決定してもらうことが重要だ。このことを私は北海道浦河の『「べてるの家」の非援助論』(医学書院 2002年刊)から学んだ。またカナダ発の子育て支援プログラム「ノーバディーズ・パーフェクト」『完璧な親なんていない』(ジャニス・ウッド キャタノ著 ひとなる書房 2002年刊)に学んだことは1対1のカウンセリングよりもグループワークの有用性だ。
こういった子育ての相談を受けているうちに青年の相談が増えた。その背景には不登校の延長、就職活動の失敗、仕事の中でのうつ、広範性発達障害、精神疾患などさまざまだ。高校で引きこもり10数年家から出たことのない青年がいた。ところが歯が抜けて歯医者に行った。そこで若い歯科衛生士に出会い、これではいけないと動き出した例もあった。このように長い間待つことが必要。しかし親は耐えられない。このまま社会と離れて、親である私たちが死んだらどうなるのだろうかと…。そこでアップルズ・ニートとしては親が気持ちを話せる場所、気持ちをほぐせる場所と位置付けている。アップルズ・ニートは親の会で平成15年発足、月1回の会合を続けてきている。私は平成17年からファシリテーターとして関わっている。毎回4・5人が参加する。課題は近所の目が気になり参加しにくいということ、どうしたら自然にかかわれるようになるかを考えたい。例えば東京まで高速バスで通える青年もいる。その意味ではより広範囲なところで活動をすることも可能なのではと思っている。
カウンセリングマインドとの出会い 次に千葉県習志野市のNPO法人ぬくもりほっとらいんの吉野秀子さんにご自身の経験も含めてレポートいただいた。
始めにぬくもりほっとラインの概要をパワーポイントを使って報告いただいた。1999年ちばコープ主催で「カウンセリングマインド(傾聴)講座」が20回連続で開催されている。その後2004年傾聴電話事業ぬくもりほっとラインがスタート、週4日10時から16時まで実施している。
私は8年前に講座を受講した。当時子どもは中高生、私はイライラしていた。なぜ我が家は円満でないのか、夫が亭主関白だからか、それは私が至らないせい…とピリピリしていた。カウンセリングマインドの研修で気難しい夫と妻の話があった。自分と重なり涙が止まらなかった。感想に思わず「助けてください」と書いた。講座は講義とワークの繰り返しだった。参加して「つらかったね」と共感して聴いてもらうと、だんだん心が軽くなった。夫の気持ちを考える余裕もだんだん出てきた。私は自分の枠を押しつけて夫にイライラし、自分で自分を不自由にしていたと気付き始めた。もっと楽になりたい…そのうち卒業生でおしゃべりをしようと誘われた。普段の生活に傾聴が広がればもっと楽になると思った。
その後ぬくもりほっとラインが発足、スタッフに加わり月2回電話を取るボランティアを続けている。そこで気付いたことは自分の価値観を押し付けようとしたり、アドバイスをしようとしたり、上から目線だったり…傾聴できていない自分に気づき愕然とした。それを振り返り研修で学んできた。
私にとってぬくもりほっとラインは正直でならければならない場、児童虐待が心配されるお母さんの電話も受ける。そんな時も「親が悪い」だけでなく気持ちを聴いてあげたい。また不登校の子の家族が話をしたら楽になれる場を模索したい。
いま、ぬくもり劇団の作品が2つできている。人間関係の難しさを劇で表している。悩んでいる人に役に立たないおせっかい、意見を押し付ける、そうではなく話を聞いてあげる傾聴のモデルを分かりやすく紹介している。
こんなさまざまな活動で傾聴を広げられたらと考えているとご自身の経験も含めて力強くレポートいただいた。
|