コンスタンツ通信

ボーデン湖岸の町コンスタンツに滞在していた社会学者です。帰国のためブログは終了しました。

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17日付けの記事で、イギリスの政府科学顧問の出している「最悪のシナリオ」について紹介した()。その後私は、日本の原発問題にかかわる専門家が同じ問題についての見解を発表してはいないのかどうか、ずっと探してきた。
 
今日の午前中、ようやく信頼に値すると思われる日本の専門家の見解を知ることができた。それは、元東芝原子炉設計部長藤林徹氏がホームページで公表している見解()について、東北大学名誉教授北村晴彦氏と環境エネルギー研究所所長飯田哲也氏が私信のなかで議論を交わし、飯田氏がまとめらたものである。北村氏と飯田氏との間には若干の意見相違があるが、最終的な見解は飯田氏が自らの文責のもと、『「最悪のシナリオ」はどこまで最悪か』(2011年3月20日)という文書として公表されている。
 
その全文はこちら()で見ることができる。多少専門的部分もあるが、素人にも分かりやすいようにまとめられている。
 
その「最悪のシナリオ」のポイントを三つ挙げておくと、
 
①福島第一原発において再臨界の起こる可能性は極めて低い
②仮に再臨界が起きたとしても、その実害はチェルノブイリ事故とは比較にならないくらい小さくなる
③最悪の場合でも、首都圏や仙台のような大都市の避難勧告は避けられる
 
というものである。
 
ただし、放射能による被害に関しては、北村氏と飯田氏では意見の相違がある。北村氏が最悪の場合でも「50キロ以内」としているのに対し、飯田氏は同意していない。この問題は首都圏や仙台などの大都市圏が被害の範囲にふくまれるかどうかにかかわるので重要である。だが、飯田氏の判断でも、最悪の場合に放射される放射能は、これまでに放出されたものよりも「桁違いに大きい」とされるのみで、具体的な範囲の広さに関しては言及を避けている。
 
詳しくは、飯田氏のレポート本文を見ていただきたい。
 
 ◆◆
 
私がこの見解を信頼できると判断するのは、異なった立場にある3人の専門家の意見が対話を通じて集約されているという点である。原発問題のように「政治化」された問題に関しては、特にこの点が重要になる。
 
また、自らの責任でこの「最悪のシナリオ」をまとめた飯田氏は、以前から原発に対して極めて批判的な立場をとってきた人であり、今回の事故に関しても一貫して悲観的な見通し(私は今回のような事態の場合、適切なスタンスだと思うが)を述べられていた。したがって、この「最悪のシナリオ」も厳しい視点から判断されたものでろうと想像できる。
 
この日本の専門家による「最悪のシナリオ」は、17日付けにこのブログで紹介したイギリスの政府顧問の見解とそれほど大きな違いがない。特に藤林氏、北村氏の見解に関してはそういえる。それに対し、飯田氏は放射能被害に関してより悲観的な判断をしている。
 
 ◆◆
 
しかし、今事故現場で作業している人たちのなかからは重傷者や死者がでるであろう(藤林氏がそう書いている)。また、原発やその周辺地域の修復には長い時間がかかる。(場合によっては、チェルノブイリ型の「石棺」がつくられる可能性もあるだろう。)
 
この文書の「最悪のシナリオ」に従うならば、首都圏は大量避難こそ免れるだろうが、放射能被害の可能性に将来にわたって注意し、対策をしていかなければならないだろう。
 
原子力発電が、非常にリスクとコストの高い発電装置であることには変わりない。
 
 
【付記】
飯田氏の文書は、私が加入しているメールマガジンJMM(Japan Mail Media)のなかで紹介されていたものである。
 
 
 
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閉じる コメント(9)

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原発の状況が素人目にはまったく先が見えないので不安を抱いている人も多いと思います。

でも今回のSoziologeさんの記事を読んで安心した人も多いでしょう。

私は安心と確信とでも言いましょうか、そんなところです。

2011/3/22(火) 午後 9:33 [ 家康 ] 返信する

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初めまして。
さっそくで申し訳ないのですが、こちらの解説をどう解釈されますか?
藤林徹氏の見解とかなり違いがあると思うのですが。

実際に原発の設計に携わった元東芝・元原子炉格納容器設計者の解説
『3/17 福島原発の現状と、今後予想される危険〜後藤政志さん』
http://www.youtube.com/watch?v=etcASxPNzeU

2011/3/23(水) 午前 7:01 [ あおねこ ] 返信する

家康様、
また、ジャーナリズムやインターネットの書き手(僕もそうですが)も色々といいますから、混乱します。僕はなるべく、この問題に自分自身の「人生」(キャリア)を賭けているようなその道の専門家の意見だけを聞く様にしています。

2011/3/23(水) 午前 8:05 Soziologe 返信する

あおねこさま、
原子力情報資料室の後藤政志さんの説明はUstreamでほとんど見てきました。事故のあと連日のように記者会見を開いておられるご尽力には敬服します。
さて、後藤さんの意見は藤林さんとは違いますが、北村さんの意見と同じように再臨界の可能性はわずかだがあるといっています。しかし、再臨界での被害の大きさに関しては具体的な話をしていません。その点に関し、北村さんは、仮に再臨界の場合でもチェルノブイリよりはるかに小さいだろうと言っています。
結論として、後藤さんの見解も、北村さんの見解と矛盾はしていないと考えています。

2011/3/23(水) 午前 8:18 Soziologe 返信する

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貴重な情報、ありがとうございます。
ベディントンさん、及び飯田さんの報告、についての紹介・コメント記事、私のブログでも紹介させていただいております。

2011/3/23(水) 午前 10:30 [ hideto ] 返信する

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ご紹介くださっている専門家の見解等は、日本のマスメディア、いわゆる大新聞ではほとんど載っておりません。折も折、野菜類、原乳、
水道水などの放射能被害が大きく報道されて、首都圏や東北地方では
大問題になっておるようです。専門家からみれば、当然予測された事象だろうと思うのですが、メディアの不勉強なのかさも新しい危機発生かのような報道ぶりです。

2011/3/24(木) 午後 1:40 [ ricky ] 返信する

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追記:水道水の件は昨日のZDFでも報じられていましたので、ご存知だと思います。

2011/3/24(木) 午後 1:47 [ ricky ] 返信する

hidetoさま、
ありがとうございました。

2011/3/25(金) 午前 5:08 Soziologe 返信する

rickyさま
今回の震災報道、特に原発事故報道は、日本の大手メディアの横並び主義をよく示していたように思います。ですが今はインターネットが発達しているので、それもあまり大きな問題ではありませんでした。特に私のように、日本のテレビやラジオに直接アクセスできない人間にとってはそうです。

2011/3/25(金) 午前 5:12 Soziologe 返信する

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