コンスタンツ通信

ボーデン湖岸の町コンスタンツに滞在していた社会学者です。帰国のためブログは終了しました。

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コントロールを失った福島第一原発の惨事は、ドイツにおいても原子力発電のリスクに対する不安を強烈に喚起し、原発問題が国民規模で論争のテーマになっている。
 
今、反原発がプロテストが全国に広がっている。そのモットーは“Fukushima ist überall(どこもがフクシマだ)”。上の写真は、反原発運動が掲げているプラカード。「どこもがフクシマだ。われわれは抵抗する。世界中の全ての原子力発電所を廃止せよ!」と勇ましく書かれている。そこでは、「フクシマ」が反原発運動のシンボルになっていることがわかる。
 
世論調査でも国民の反原発の風潮が高まっていることがわかる。「原発撤廃」に賛成する意見が、昨年2010年8月の段階で62%であったものが、今月の調査では71%にあがっている。また日本のような原発事故がドイツでも起こる可能性があると答える人が71%で、ないと答える29%を大きく上回っている(ARDの「ドイッチュラント・トレント」より)。
 
週刊誌『シュピーゲル』の先週号の表紙にも、フクシマ原発の爆発の写真ととともに、「フクシマ 2011年3月12日15時36分 原子力時代の終り」という印象的なタイトルがつけられている。
 
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このような思潮の変化は、政治の世界では環境政党の緑の党にとっての追い風になっている。昨日行われたザクセン=アンハルト州の選挙で緑の党は得票率を倍に増やし(7%)、州議会に復帰した。それに対し、原発に最も積極的な自由民主党(FDP)は5%に届かず、議席を失った。
 
そして来週はコンスタンツのあるバーデン=ビュルテンベルク州でも州議会選挙が行われる。バーデン=ビュルテンベルク州は保守キリスト教民主同盟(CDU)の牙城で、同党は戦後一度も政権の座を失ったことがなかった。しかし今回の選挙ではCDUが政権から陥落し、左派の社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権が成立するという、歴史的政権交代の可能性が以前から指摘されてきた。大地震発生後、緑の党が支持率を顕著に伸ばし、最新の世論調査では支持率がSPD(22.5%)を凌ぎ、CDU(38%)に継ぐ2位(25%)に躍進している(Südkurie 2011年3月19日)。この結果がそのまま選挙でも得票率につながれば、緑の党が社会民主党と連立し、ドイツ史上はじめて緑の党が州首相の席をとる可能性が出てくる。
 
しかしまた、連邦政府の反応も早かった。メルケル首相は地震の2日後、突如原発稼働期間延長の一時停止(モラトリアム)を提案して波紋を呼んだ。
 
ドイツでは2002年に、SPDと緑の党の連立政権が2020年までの原子力発電所の段階的廃止を決定していた。しかしその後、世界的な環境政策のテーマが地球温暖化問題にシフトしていくなか、原子力発電所の許容や見直しの風潮が生まれた。そして昨年の末に、喧々諤々の論争を得たあと、現在のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とFDPの連立政権が、原子力発電所の稼働期間を8年ないし14年(平均して12年)延期することを決めたのである。だが、これには野党が強く反対しつづけた。原発停止をめぐり、与党と野党の立場は、決定的に対立することになった。
 
だが、東日本大震災の結果、このような対立構図に変化が生じた。メルケルの「モラトリアム」提案は、稼働期間延長を3ヶ月間停止し、原発の安全基準を再検討すること、そして1980年以前に建てられた7基を含む8基の原発をその間停止するというものであった。それは昨年の連邦政府が決めて法制化した、稼働期間延長という原発見直し政策からの大きな転換を示すものだったのである。そのためこの転換は、方向転換(Kehrtwende)とも呼ばれている。
 
いうまでもなく、そのような「方向転換」を促したのは福島原発での事故である。今月17日に行われた連邦議会の演説のなかで、日本での「まさに終末論的な規模」の大惨事に触れた後、メルケルは次のように語った。
 
「日本がそうであったように、いっけん不可能なものが可能になり、絶対にありえないようなことが現実になったのであれば、それは状況を変えるのです。」
 
そしてメルケルは、原発の即時撤廃は否定しながらも、「われわれの必要とするのは、見通しをもった廃止である」と述べた。稼働期間延長停止の一時停止(モラトリアム)は、「エネルギー転換を促進を促進し、可能な限り加速するために用いることができる」。そうメルケルは主張する。
 
このようなメルケルの方向転換には二つの対照的な解釈がなされている。一つは博士号をもつ物理学者であるメルケルが、福島での原発事故を見て「世界が崩壊する」ほどの衝撃を受け、原発政策の修正を決断したのだというもの。もう一つは、州議会選挙が根城押しの「スーパー選挙年」に向けてのポピュリスティックな選挙戦術であるとするものである。
 
いずれにしても、日本での震災被害のドイツにおけるインパクトの大きさを見越した、メルケルらしい機に見るに敏な決断である。ARDの世論調査によれば、稼働期間延長の停止と原発の安全性の再検査する考えに80%の人々が賛成している。メルケルの提案は、見事に世論のツボを抑えている。
 
これには産業界の一部から、連立を組む自由民主党から、また自分の政党内からも批判や懐疑論が聞かれる。また野党からは、日本の惨事を選挙目当てに手段化しているという批判、また稼働期間延長を根本的に撤回しない(単なる三ヶ月間の停止にとどまっている)ことへの批判が出されている。
 
だがドイツでは、原子力からエコ・エネルギーへの転換ということに関するエネルギー政策上の基本的合意が、政党の違いを越えて確認されたと見ることができる。今や論争のテーマは、その方法や早さについての問題に移っている。そして、そのような思潮・論調の変化へとドイツの人々を強く動機づけたものが、ほかならぬ日本の福島原発における事故だったのである。
 
現環境大臣のノルベルト・レットゲンはこう述べている。「日本での出来事から導き出される帰結は、われわれが核エネルギーからできるだけ速く脱却するために、全てを整えていかなければならないということである」()。
 
このような核エネルギーからの脱却からの動きは、ドイツに限らず世界的に広がるだろう。「フクシマ」はドイツどころではなく、世界のエネルギー政策を変えるかもしれない。
 
となると、これまで原子力に使用電力の約30%を依存してきた日本のエネルギー政策はどうなるのか。自国内で起きた大事故から何も学ばないというようなことは、なしにしたいものである。
 
 
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