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知らなかった。
10年ちょっと通っていた天王寺のジャズ喫茶『トップシンバル』が今年8月末に閉店していた。
大阪からどんどんジャズ喫茶がなくなっていって、行き場がなかった私にとって、ここはオアシスのような場所だった。
これで、ちゃんとした大阪のジャズ喫茶が絶滅したと言える。とてもショックだ。

今年は2回ほど行ったが、その後、2ヶ月ほど前に行くと、店に降りる階段が通行止めになっていた。何か都合でもあって休んでいるのだろうと思っていたが、半月ほど前に再度行くと、やはり同じ状態だった。これで、店をたたんだのではないかと悟った。

ネットで調べてみると、8月末に閉店したとのこと。
最後に行ったときは、マスター、何も言っていなかったのに…

いつも店に続く階段を下りていくと、ドアを通してジャズが聴こえてきて、入る前からウキウキしたものだ。
最近はおしゃれなジャズの店が多くなってきたが、結構な値段の食事や高級なお酒を出したりして、ジャズ好きがジャズを聴きにいくといったことから外れてしまっているように思う。
『トップシンバル』はそういう点でも良心的だった。

薄暗い店でマスターが一人、店を切り盛りしていた。
マスターの後の壁には大量のレコードがあり、リクエストすると即座にそれが出てくる。たいしたものだった。

店の人に話しかけることはしない私だが、はじめにマスターのほうから「何かリクエストは?」ときいてくれた。それ以降、行くたびに、ほぼ一曲はリクエストをきいてくれていた。
私がジャズギターを弾くことを知ったマスターが、リクエストもしていないのに、気を利かせてギターもののレコードをかけてくれたこともあった。

このマスター、ジャズについては強いこだわりがあって、変なものをリクエストしようものなら、たちどころに機嫌が悪くなる。例え、レコードがあり、かけてくれても、何となく機嫌が悪いのがわかる。
メインストリームジャズのレコードが中心で、ヴォーカルものはおいていないと言っていた。
聞くところによると、気に入らない客は追い出したりしたこともあったそうだ。
さすがマスター!

昼間は喫茶で夜になるとアルコール類も出す。ずっと前は昼間でもアルコールを出していたと、ある先輩が言っていた。
私は、前職の現役時代は阿倍野『明治屋』で飲んだ後にここに寄って、月に1〜2回、気持ちよいジャズを聴きながら、スコッチのソーダ割りを何杯も飲んで、2〜3時間くらい過ごしたが、大阪から離れ、仕事もやめて親の介護もあったので、最近は数ヶ月も間が開いてしまうことが多かった。
行っても長い時間はいられないので帰ろうとすると、「もう帰るの?」とマスターに言われたりした。

ジャズは好きだが、そんなには詳しくない私が、ここで聴いたレコードが気に入って、CD化されたものを手に入れたりもした。
いい勉強をさせてもらった。

そんなこんなで、突然のことでもあり、閉店を知らなかったということもあって、何とも心が寒い。

最近は9月に父が死に、その月末には以前紹介した阿倍野『明治屋』の為だけに「松竹海老」を作っていた灘の蔵元が廃業して、もう二度と飲めなくなり、2年以内には『明治屋』もあの場所から立ち退く。そして『トップシンバル』閉店と悲しいことが続く。
ひとつの時代が消えていこうとしているのだろう。

今さら遅いが、そんな『トップシンバル』のことを書いてみたくなって書いてみた。


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