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一日の仕事が終わる。 すでに夜は結構更けている。 いまから家に帰って飯作るのはちょい面倒だ。幸いなことに今日は外で飯を食えるくらいの懐具合。 そんなとき、つい足が向いてしまうのが、数回前にもこの欄に登場した大波止の麻寿喜。 歩きながら頭の中はいつもの美味しいシメ鯖で占められている。 空いていたカウンター席に座って。 まずビールを頼み、次いでシメ鯖を…と思ってたら、 「今日はアジのヨカとの入っとるよ」 おじさんがそういいながらネタケースを示すのだ。 どれどれと見てみると。 頭から尾ひれの先まで40センチもあろうかという大アジ。大きさからは鰹と言ってもいいくらいの代物。 そういや長崎はアジどころでもある。 アジと言えば大分の関アジが有名だが、長崎のアジもなかなかだ。特に五島列島近海の大振りのアジを一本釣りしたあと、海上生け簀で餌を与えずに数日間畜養して、身に偏在している脂身を全身に散らした「ごんあじ」(長崎市新三重漁協の柏木水産が一手に扱っている)などは相当のものだ。食べると青魚というよりも味の濃いヒラメのような、そんな上品な甘さがある。 目の前にあるのはもう少し黒みが濃い。ごんあじではないが、やはり近海天然物のマアジと見た。 「これはもうそろそろ食べ時だけん、切ろうか」 青魚なのに新しけりゃいいってモンじゃないという勧め方が、すでに長崎の青魚ッ食い御用達の店のシルシ。生け簀で泳がせたものを、掬ってすぐに切って新鮮さだけをアピールする店とは一線を画している。 そうわざわざ勧められたら断る理由はない。 「お願いします」 誘導尋問に引っかかるようにして、今日もまた頼んでしまった。 しばらくして出てきた。 皿を見たとたんに、「おー」という声が思わず漏れる。 でかい。 一切れが、つまり背びれの方から腹皮までの半身のスライスが、12、3センチほどの長さになる。大きさだけならまるで鮭のようだ。
切り方は少しだけ薄め。 身の歯ごたえがありすぎるのでそう切ったと親父さんがいう。 親父さんはそういうが、どう見ても厚くはない。そんなもんだと思って口に運んでモグッと。 すると。 予想外のグリグリッとしたアジの筋肉質の噛みごたえ。ねっとりとした固さというか、そういうテクスチャー。それに抗って噛み進むと、口蓋にすっきりとした脂や肉の旨味が広がってくる。噛めば噛むほど広がってくる。 これは、すごい。 長崎で美味しい青魚は鯖だけではなかった。 口に運ぶ。 グリグリを噛む。 シュパッと口の中に旨味が広がる。 ひとしきり旨味を楽しんだら焼酎のお湯割りを流し込む。 アルコール刺激性の甘みで、旨味をのどの奥へ。 ああ、こりゃ口福だなあ。 そうして今夜も長崎の青魚な夜は更けて行く。 〔お店メモ〕 長崎県長崎市元船町11−22 麻寿喜(ますき) 地味なところでは、豆腐の味噌漬けという一品もしみじみとうまい。豆腐の味噌漬けは熊本の五家荘(ごかのしょう・平家落人伝説があるほどの九州山地の山奥の里)のものが有名だ。そちらは保存食の意味合いもあり、味噌の味が強い。この店のはふんわりと味噌の風味が染みた長崎豆腐。長崎の豆腐は沖縄の豆腐に次いで固い。だからこのような豆腐料理がこの店でできているのだと思う。 |
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参考になりました〜☆
豆腐の味噌漬けを食べてみます。
2011/2/19(土) 午後 2:35
それは、是非。お勧めです。
2011/2/19(土) 午後 9:30 [ しんぱぱ ]