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長崎は、じつにフツーの店でも青魚が旨い。 仕事が終わった夜10時。歩いて10分の店もいいが、歩いて2分の店もまたいい。 この夜暖簾をくぐったお店は僕らの会社が入っているビルのすぐ裏。周り4つくらいのオフィスビルで働くサラリーマンをなじみ客としているような小さなお店だ。 カウンター席に座ってアタマの上にあるホワイトボードを見る。今日のお勧めが書いてある。ほとんど毎日同じ品名が並んでいるのだと思うが、左上の一画だけは書き直した跡がある。 そこには刺身や焼き魚が並ぶ。やはり魚は仕入れによって変わるのだ。 その中に「シメ鯖」めっけ。 なら頼まんと。 「シメ鯖、ください」とお願いしたら、 「はーい」といいながら少し困った顔。刺身のつまが無くなって、彩りが悪いらしい。 「そがんた、よかよか」と熊本弁で返しながら、「この店のシメ鯖はどうかなあ」と想像を巡らす。 何しろ会社のすぐま裏の(若い)おばちゃんが一人でやっているような店である(夜は女子大生のアルバイトもいるけど)。 正直、あまり期待していなかった。 「はい、おまちどーさまー」という声とともにカウンターの冷ケースの上からシメ鯖がやってくる。 「ごめんねー。彩りでバラン、いれといたー」 あの食えないプラスチックのヤツである。 まあ、そんなものが笑顔とともに彩りで添えられてくることが、まさにこの店の真骨頂だ。
で、予想以上に美しく銀色に光る皮目を上にしてきれいに並んでいるシメ鯖を、まずは一口。 むむむっ! おぬし、できるな! 別に剣法の使い手ではないが、口の中でピーチピーチッと跳ね回る鯖の筋肉とそれを噛み切るとググッと舌の上に広がる旨味、その旨味を殺さないように…いや、そっと支えるためにと思えるほど浅くつけられた酢と塩。まさに第一級のシメ鯖ではないか。 おー。これはこれは。 思わず福顔になる。 写真を見てもお分かりいただけるだろう。脂の乗り切ったピカピカの新鮮さ。 凄みを放つシメ鯖の背景にプラのバランが見えているのはご愛嬌。 こんなざっかけない小さなお店(失礼!)でも、もの凄いモノを出してくる。それが長崎の怖さであり、旨さだと再認識した夜であった。 〔お店メモ〕 長崎県長崎市万才町1−13 居酒屋「旬」 このお店、お昼ご飯もやっている。僕らサラリーマンとしては手作り感満々の煮込みハンバーグが実にいい感じ。家で下ごしらえするらしく、それを(ほんとうに若い)おばちゃんがキャリーカートで朝から運んでくるのによく遭遇する。そんなときいつも笑顔でご挨拶いただくのがまた嬉しい。当然僕もご挨拶返し。いいもんだよなあ、朝の街角で「おはよーございますっ」って挨拶を交わすの。 |
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