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昨夜(2012年4月13日)、紀尾井シンフォニエッタの定期演奏会。
いってきました! 楽しみにしていたオール・ハンガリー系のプログラム。
紀尾井シンフォニエッタ東京 第84回定期演奏会
2012年4月13日(金)開演19:00
指揮: ガーボル・タカーチ=ナジ
ヴァイオリン: バルナバーシュ・ケレメン
コンサート・ミストレス: 玉井菜採
曲目
コダーイ:夏の夕べ
ヨアヒム:ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調Op.11「ハンガリー風」
*アンコール J.S. バッハ 無伴奏パルティータ第2番から、第4曲ジーク、第3曲サラバンド
〜〜休憩〜〜
リスト:夕べの鐘、守護天使への祈り
バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント
*アンコール バルトーク 弦楽のためのディヴェルティメントより、第3楽章
どうです? このコンサート。はい、すさまじく濃厚、濃密なコンサートでした!
でも、濃密であることがタカーチさんの目的ではないはずです。
「表現すること」への飽くなき渇望と挑戦。全身全霊を傾けた表現への献身。
アンサンブルを整えるために表現を削るくらいなら、揃わなくてもいいから表現するほうに賭ける。
彼にとってはおそらく当然の、しかし確固とした揺るぎない演奏精神(=魂 Geist)なんだと思います。
それが指揮姿からありありと伝わってきます。(でも、安易に真似してはいけません!)
そのことが最も鮮烈に示されたのは、やっぱりバルトークのディヴェルティメント。
舞踏性、民謡性、抒情性(とりわけ音楽がもつ祝祭と哀悼)が演奏全体から飛び出してくる
すさまじい直截さ。強烈なアクセントを伴って始まる冒頭の刻みは、作品全体のヴィジョンを
告知するかのようにガツンと到来します。かと思えば、しなやかなフレージングの歌が広がります。
うねりを含む長い旋律のラインも、ボウイングを感じ取らせることなく、ひと連なりのフレーズとして
歌わせる。これぞヴァイオリンの名手ならではの、弦への愛情に満ちたリードです。
弦5部とも相当弾きこませますから、音響はもちろん分厚く重なりますが、
各声部いずれも、しっかりと聴きとることができます。勘所では、しっかり主役を際立たせ、
どこが音楽的なコアであるかが、はっきり示されています。細部のニュアンスや音色変化、
効果的なデュナーミクのコントロールなど、ちゃんと配慮が行き届いています。
タカーチさんの音楽は濃密ですが、たんなる大味では断じてありません。
バルトーク自身「夜の音楽」と呼んだ2楽章。漆黒の夜空が微かな光に揺らめいて
色合いを移していくように、黒い下地から淡い色彩がにじみ出てくるような音色変化。
実に美しかったです。また、夜の静寂をかき乱すような強烈なアクセントは、悲しみの
慟哭を思わせ、最弱音の震えの連続と長大なクレッシェンドで限界に達する切迫感は
「きれいごと」ではない美しさです。
そして3楽章。思わず指揮者の足踏みも鳴り響いてしまうほど、躍動感にみちた舞曲。
圧倒的な迫力ですが、アクセントの付け外しは実によく吟味されていてスゴイのひと言!
これこそ本場の伝統でしょうし、しかもバルトークの盟友だった名ヴァイオリニスト、
セーケイに薫陶をうけたタカーチさんの賜物でしょう。こうしたひとつひとつのスパイスが、
何とも「お国訛り」っぽいイントネーションをもたらします。
弦5部のトップとトゥッティの掛け合いで進む合奏協奏曲スタイルは、とにかく愉快。
コンマスの玉井菜採さんは、キリッとした明晰なアーティキュレーションと美しい音色で
バルトーク独特の野趣と色彩を醸し出し、チェロの河野文昭さんとの掛け合いも見事。
本当に、素晴らしいバルトークでした。
長くなりましたが、もう一言。
ケレメン君のヨアヒム! 畏れ入りました。圧巻。驚異的なテクニックと感性。
左手も右手も、ヴァイオリンを存分に弾きこなすことにおいては、この上ないでしょう。
こんなに弾けるヴァイオリニストは、他に思い浮かばないかも。
この、無用なほどに音が多くて、細かくて、面倒くさい曲を、弾き飛ばしてごまかすことをせず、
あらゆる細部まで全部弾ききる真っすぐな度胸と潔さ。すごい。あんたはえらい!
そしてまたタカーチさんも、ソリストに遠慮なくがっぷり四つ。しっかり付けてます。
3楽章のコーダは、怒涛のアッチェレ!ここは、ソロもオケも雪崩れ込み。
でも、クリアな発音はいっさいぼやけない。あっぱれ!
アンコールは、なに弾くかなと思ったらバッハの無伴奏パルティータ2番から、
ジークとサラバンド。コンチェルトと同じニ短調。ちゃんとわきまえてます!
東条さんは「ロマ風」のバッハだったと仰ってますが、そんなことはありません。
むしろバロックの文法をしっかりと踏まえた正統的なものです。即興的な装飾も
センスがよい上に、きわめて自然で理に適ってます。ジークのリズムもバッチリ。
サラバンドでの和声の配色もよくよく吟味され、解釈はとても知的でさえあります。
確かに感興豊かなバッハですが、バロックへの造詣の深さは、チェンバリストの
お母様ゆずりのものでしょう。
ケレメン君は、ちょっとリーゼントっぽい天然パーマと、お決まりの「長ラン」姿、
そして一回見たら忘れられない鮮烈なステージゆえに、色物っぽく見えがちですが、
非常に楽譜に忠実な、バランス感覚に長けた演奏家です。これからますます楽しみね。
はぁ。楽しかった。本日の2日目も行きたいくらい!
タカーチさん、ケレメンさん、紀尾井シンフォニエッタのみなさん、ありがとう!
指揮者、ソリストともに、ぜひまた来演してください!
みそ
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