リサ・バティアシュヴィリ

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私にとって、この秋から冬にかけての大きな喜びは、まさしく、
リサ・バティアシュヴィリの新譜、チャイコフスキーとシベリウスの協奏曲集を聴くことでした。
毎日のように、聴き惚れていました。聴くたびに、何とも言えない幸福感にうっとりしてしまいます。

リサさんのヴァイオリンは、その深い音楽的理解にしても、ボウイングやフィンガリングの
自在なテクニックにしても、あまりにも事も無げに表現されていくので、ともすると、
その凄さが「自然」であるように聴こえてきます。しかしその桁違いのクオリティは、
私の場合、聴くたびに驚嘆の度を増していくのです。

再録音のシベリウス、初録音のチャイコフスキー、
いずれも、私にとってすでに掛け替えのないものになりました。

今回のパートナーは、ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ。
リサさんの音楽性とバレンボイムのそれがマッチするとはあまり思えず、
少し心配しておりましたが、ティーレマンとのブラームスのときと同様、
想像以上によく噛み合っていました。
チャイコもシベリウスも、ソリストのテンポ感、フレージングに丁寧に寄り添ってます。
SKBのサウンドは分厚く、重量感は満点。また歌劇場オケだけあって、響きはゴージャス。
究極の「合わせもの」を日々演奏している集団だけに、テンポにせよ、音程にせよ、
ハーモニーにせよ、互いによく聴き合って、集まるべきところにきちんと集まる。
そのアンサンブル能力は見事と言うほかありません。そしてオケだけになると、
盛り癖があるのは、いかにもバレンボイムらしい(笑)。

彼女のレコーディングは、今後も「巨匠」との共演になるのでしょう。レーベルの意向で。
当然、巨匠にも自身の経験、音楽観、作品理解、そして個人的な趣味があります。
自我の塊のような芸術家同士の、抜き差しならぬ「対決」が展開されるに違いない。
時には決死の綱引きがあり、時には信じがたいほどの一体感が生まれます。
彼らが繰り広げる激しい摩擦、燃焼と科学反応もまた、演奏芸術の醍醐味ですね。

シベリウスについて。
サカリ・オラモ指揮フィンランド放響との初録音から10年足らず。
あれも素晴らしい演奏だっただけに、今回、再録と知って驚きました。
でも、ここ数年の彼女のシベリウスを聴いていると、確かに進境著しいものがあり、
彼女としてもきっと、ある種の確信を得て、再録音を望んだのではないかと思います。
音楽的な構えの拡大と共に、彫りは一層深まり、ひたすら本質へ切り込むさまは圧巻です。
大きな音楽でありつつ、細部の彫琢は精密。聴き終わると、「アーメン」と唱和したい気分。
「げに、かくあるべし」と。同曲の録音史上、最高峰だと思います。
オラモ盤の引き締まった響きとキレの良さ、そしてバレンボイム盤での濃密な響きとスケール、
両方とも魅力に満ちたシベリウスです。比べて愉しむのもよいですね。
ついでに言えば、前回はストラド、今回はグァルネリ・デル・ジェスと、演奏楽器が異なります。
はっきり個性の違いが現れています。高音部のダイヤモンドのような輝きは前者の、
低音部の厚み、太さ、まろやかさ、人の声のような安心感は後者の最大の強みですね。

さあ、チャイコフスキー。
徹頭徹尾、歌い抜く。その一途さに、胸を打たれます。と同時に、
演奏はとてもナラティブな運びを見せています。物語の朗読のよう。歌と語り。その合一。

ですから、一音一音、一弓一弓、多彩な色合いとニュアンスを宿しながら、
どこもかしこも見事なフレージングで歌い上げていくと同時に、その音色の変化や
イントネーションは、より大きなコンテクストの中にすっぽりと収められています。
曲全体の大きなヴィジョンが見失われることは絶対にありませんが、
それは、建築的なコンポジションというより、文学的なコンテクストによる造形です。

どの楽章も、テンポの設定、設計が絶妙ですが、その組み立ては、
歌と語りが情感豊かに流れていくための〈呼吸〉と結びついているようです。
例えば1楽章、ソロ・ヴァイオリンのカデンツ風の導入から第1主題の提示へ。
作曲家が付した幾重ものスラーの意味を丁寧に汲み取り、小さな起伏で息を整えつつ、
導入句全体を完全にひとつの流れに収めていきます。続く第1主題の提示も同じ。
切々と歌いながら和声的な緊張と緩和を繰り返し、それらを大きなラインとして
連綿と紡ぎだしていきます。こうした歌と語りによる練り上げを繰り返しながら、
一息一息の呼吸の深さ、長さ、強さ、しなやかさが、どんどん拡大してゆく。
自在な緩急/強弱によって、〈時間〉のナラティヴな流れは伸縮を繰り返し、
ひとつひとつの言葉は意味=方向づけられ、やがて長大な物語に編み上がる。

その証は、展開部、カデンツ、再現部へと音楽的な深度を増していく点にあります。
難儀な提示部を経た後の展開部は、往年の巨匠も今日一線で活躍する演奏家も、
突然機械的になってしまったり、単なる技巧的処理の連続となってしまいがちです。
しかしリサさんの演奏は、展開部以降も、その歌と語りが一段と真に迫っていきます。
こういう演奏は簡単なようで、決して容易ではありません。まさに類稀なものです。

続く2楽章。これを聴いて、何か言い添えることなど、私には思い浮かびません。
歌と語りの醍醐味は、ここに極まります。
3楽章は一転、歌と踊りですね。リズム感、テンポの運び、もう抜群です!
アウアーのカット版を演奏していますが、この選択も含めて、私には文句なし。

リサ・バティアシュヴィリのチャイコフスキーは、大小無限の美しい弧を描く。
歌と語りの呼吸は、ささやかな休息に刹那、胸を緩めても、そこに留まることなく、
大きな物語を紡ぎ出すべく、終曲の彼方に向かっていく。
ロシアの平原を、どこまでも吹き抜けていく風のように、音楽は小節線を越えていく。

いのちを与えるのは、息だ。

1楽章の再現部の中に、この作品の白眉がある。
ほんの3小節、時間にしてわずか15秒ほど。プネウマがそっと撫でる野の花は、
明日には萎れ、枯れてしまうかもしれない。でも今日、それを美しく装ったのは、
ロシアの大地である。
こんなに愛おしく、慈しみ深く、小さな音符たちを祝福する演奏を私は知らない。
このCDは、そこを聴くだけでも、至福の喜びがある。私はそう確信してます。

みそ



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リサ・バティアシュビリのバッハ。
これが、彼女のバッハなのね。 それは美しく、素敵だ。
柔和で、優しさに溢れ、あたたかい光が注がれるような穏やかさがあります。

彼女のバッハは、モダンとかピリオドとか、そういう話じゃなくなっています。
もちろん、その演奏スタイルは、モダンの伝統の延長上にあり、ピリオドからは遠いです。
楽器、弦、ピッチは言うまでもなく、そこかしこに美しくかかるヴィブラートも、
アーティキュレーションも、フレージングも、モダンの演奏で育った人には、
懐かしく、心地よく、からだに馴染みきったもの、耳に沁み入るものばかり。

確かに、軽やかさ、推進力、粒立ちの良い明晰な発音、柔軟な抑揚と収縮を耳にすれば、
「ピリオド革命」の豊かな実りが、彼女の演奏にも流れ込んでいる気がしなくもない。
でも、やっぱり違う。モダンとピリオドの折衷でもないし、「いいとこどり」ということでもない。
これは彼女のバッハであり、固有の輝きを放っていて、彼女にとってもそれが大事だったはず。

たとえばリサさんのアーティキュレーションにも、長音短音の弾き分けや上下弓の変化よる抑揚を
聴きとることができます。しかし彼女にとっては、そう弾くことが至上命題なのではなく、また意識して
やっているようにも聴こえません。むしろ、最も大切にされていることは、ひとまとまりのフレーズを
彼女にとって最も音楽的と思われるように歌うこと、そう、フレージングにあります。
だから時に、唖然とするような美しいレガートが弧を描き、可愛い音符たちがお行儀よく並んでます。
一音一音の粒立ちが消えてしまうことなく。
音の一つ一つは、いずれもソノリティが高く、滑舌はとても明晰です。鉤爪を立てたり、
無声音的な破裂は摩擦もほとんどありません (a-Mollのソナタの終楽章以外は)。
エレガントでありながら、音楽が常に小気味よく前進するのは、クリアな発声と多彩な音色変化によって、
フレーズが自在に呼吸しているからでしょう。だから、フーガなどにおいても、対話的な多声構造を
ことさら顕示しなくても、しっかりその造形が浮かび上がってきます。

それにしても、これだけヴィブラートをふんだんにかけながら (場所と種類はよく吟味されていますが)、
ノンヴィブとはまた違った、息をのむような透明感を出せるって、いったいどういうことなのかしらね。
こんなに音程が正確で、和声が美しく、それらを崩すことなくむしろ輝きを増すヴィブラートをかけられるの、
本当にすごい。「ああ、ヴィブラートっていいなぁ」と心底思ってしまう。

正直に告白すると、リサさんのこのバッハをはじめて聴いたとき、
「ああ彼女らしい。彼女ならぜったいこう弾くよね」という深い共感とともに、
「あまり、目を見張る、耳をそばだてる、知的な意味で興奮するバッハではない」ことに、
ちょっとショックを受けてしまった面もありました。
そのことをうちの家族につぶやいたら、「そんなの、リサは端から求めてないよ」と言われ、
「まあ、そうだよね・・・」と思い直し(?)、繰り返し聴いてきました。
だって、いつ聴いたって、あまりに心地いいし、聴けば聴くほど、すべてがちゃんと「ある」
ように思われるんだもの。それは光と同じで、すべてが充溢しているのに、
それこそが真の叡智なのに、そんなことはさておいて、日向ぼっこは心地よいのだ。

みそ

【収録情報】
J.S.バッハ:
1. オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調 BWV.1060a
2. カンタータ第156番『わが片足は墓穴にありて』 ヘ長調 BWV.156〜シンフォニア
3. ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042
4. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 BWV.1003

C.P.E.バッハ:
5. ヴァイオリン、フルートと通奏低音のためのトリオ・ソナタ 変ロ短調 Wq.143

J.S.バッハ:
6. マタイ受難曲 BWV.244から『憐れみ給え、わが神よ』

 リサ・バティアシュヴィリ(ヴァイオリン)
 フランソワ・ルルー(オーボエ:1、オーボエ・ダモーレ:6)
 エマニュエル・パユ(フルート:5)
 セバスチャン・クリンガー(チェロ:5)
 ペーター・コフラー(チェンバロ:5)
 バイエルン放送室内管弦楽団(1,2,3,6)
 ラドスワフ・ショルツ(コンサートマスター:1,2,3,6)

 録音時期:2013年12月(1-3)、2014年1月(4,5)
 録音場所:グリューンヴァルト、アウグスト・エファーディング・ホール(1-3) 
                ミュンヘン、ヒンメルハート教会(4,5)
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ヴァイオリニスト、リサ・バティアシュヴィリさんの2014年日本ツアー。
2月13日のニューヨーク・フィルとのショスタコ1番を皮切りに、
14日、浜離宮でのリサイタル(日本音楽財団主催、招待客のみ)、
そして15日、待望の一般向け初リサイタル in 名古屋・電気文化会館。

大雪を蹴散らして駆けつけた名古屋リサイタルは、本当に幸せな時間でした!
ピアニストは、アナ・チュマチェンコ一門を支えるミュンヘン音大教授の占部由美子さん

シューベルト:ソナチネ 第2番 イ短調 D385
シューベルト:華麗なロンド ロ短調 D895
        〜休憩〜
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調 op.30-2

<アンコール曲>
ブラームス:ハンガリー舞曲集 第2番 ニ短調
クライスラー:愛の哀しみ

当初の予定では、ソナチネの後、演奏される予定だった
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 BWV.1003が、
リサさんの体調不良を理由に、キャンセルとなりました。
具体的な理由はもちろん明かされていませんが、
ショスタコを聴きに行かれた何人かの方から、「あれが原因じゃない?」という
「思い当たるフシ」を小耳に挟みました。私は聴いてないので、わかりませんが。

ともあれ、リサさんのバッハ、興味津津だったので、ちょっぴり残念でしたが、
本当に体調不良なのかしら?と思うほど圧倒的な燃焼度のリサイタルは、
「ああ、終わらないで〜」と悲しくなっちゃうほど、豊かな時間となりました。

アナ先生をはじめ、あそこのお弟子さんの多くがシューベルトを得意とすることは
よく知っていますが、リサさんのシューベルトは、正直、想像を絶していました!
ソナチネにせよ、ロンドにせよ、まずは聴き手の心を掴んで離さないフレージングのセンス。
そして、それを美しく装う抜群の音程感覚と和声感。ほんと、すべての音から豊かな倍音が
鳴ってるんじゃないかと思うほど、驚異的な音の光彩。いったい何なんでしょう!
そこから立ちのぼるのは、限りなく人の声に近づいたヴァイオリンによるリートの調べ。
自由自在のボウ・コントロールと、きめ細かい変化に富むヴィブラートの賜物。
最近はノン・ヴィブのシューベルト演奏もよく耳にするようになりましたが、
「ああ、ヴィブラートっていいなぁ」って心底思えるのって、本当に幸せですね。
また、極上のしなやかさを誇るボウイングは、ヴァイオリン演奏の真骨頂ですね。

ふと、アナ先生がある公開レッスンで仰っていたことを思い出します。
「ヴィブラートによって、弦を覚醒させるのです!例えが適切でないかもしれませんが、
ちょうど弦の粒子に核分裂を起こすように!」 あの言葉の神髄は、師匠から弟子へ、
しっかり受け継がれているのですね! 

もうひとつ、シューベルトを聴いていてつくづく感じたのは、演奏全体の統一感とスケールの大きさ。
めくるめく曲想の転換、調性の転換があいつぐシューベルトですが、各々のキャラクターが実
細やかに表現されつつも、全体を通してひとつの大きなドラマが造形されるのです。
ごく自然な流れの中で、緩急や強弱をほどよく加減し、無理なく受け渡されていくフレーズ。
その連なりの結果、非常にスケールの大きな起承転結が生み出されるのです。

シューベルトのヴァイオリン作品には、出版時にソナチネと勝手に名付けられた経緯が象徴するように、
可憐で甘やかで、繊細な佳曲という印象が付きまといがちですが、その一方で、迸るような力強さや
スケールが備わっていることを改めて感じさせてくれる演奏でした。

その点で、後半に演奏されたベートーヴェンとの相性がとても良かったです。
ベートーヴェンも、その全体構成の揺るぎなさと各楽章の描き分けが見事でした。
1,2楽章は気持ち速めのテンポ設定だったように思います。
1楽章の切迫するような諸主題の展開を、がっちり手綱を締めて捌いていく一方、
2楽章は、しっとり歌いながらも、感傷に耽溺せず、むしろ足取りのよい運びで冗長さを排します。
一転、リズミックな3楽章と、あの異形とも言うべき終楽章は、比較的落ち着いたテンポ設定で、
前のめりに突っ込んでいかないように、しっかりとコントロールされていました。

いつもながら、リサさんのリズム感の良さには、感心してしまいます。
安定した拍節の律動に支えられながら、リズムが活き活きと躍動しているので、
ことさらスピード違反をしなくても、音楽は心地よく疾駆します!

もちろん、占部さんのピアノも素晴らしいかったです。
シューベルトにおける親密な対話も、ベートーヴェンにおける対等な組み合いも見事でした。
特にベートーヴェンでは、バス声部がとても雄弁に聴こえてきて、盤石な基礎が、
立体的なソナタの構築に寄与していました。
なお、今回のリサイタルでは、ピアノを閉めて(半開で)演奏していました。
体調不良?のリサさんとのバランスを考慮してのことだったと思います。
バランスは最適だったと思います。

もうひとこと、アンコールにも触れなくては。
ハンガリー舞曲。絶品!超〜うまかった!唖然。 
リズム感、音程、フレージング、非の打ちどころがなし。ああ、もう一回聴きたい!
「愛の哀しみ」も同様。 楽譜見て弾いてたのがちょっと可笑しかったね。

またハンガリー舞曲では、ここ一番、楽器の本領がよく顕われていました!
リサさんが昨年春ごろから使い始めたグァルネリ・デル・ジェス(1739年)。
今回はじめて生で聴けることに、ワクワクしていました。
低音部のパワフルな響きが魅力のデル・ジェスですが、リサさんのは、
むしろ甘みやまろやかさがあって、高音部の柔らかさも魅力的でした。
ストラドのようなシルキーな肌理と輝きとは、確かに異なりますが、
ストラド的な要素も含んでいる、素晴らしい名器だったように思います。
「パスキエ先生のデル・ジェスなんかもそうだよね」、と家人が言っていました。
なるほど、そうかも。
そんなデル・ジェスは、ハンガリー舞曲で「らしさ」炸裂! わぉ!

と、長々書いてしまいました。
リサ・バティアシュヴィリ。この人の音楽は、余計なことをせずに真っすぐ核心に向かいます。
そこに立ちのぼるのは、これぞアナリーゼのお手本!と思わせる圧倒的な説得力を湛えつつ、
説教臭さは微塵もなく、作為を感じさせることもなく、まるで「自然に」流れる歌と語りなのです。
こんな演奏をする人って、ほかにいるかしら? 
これぞ最高難度であり、彼女にしかできない至芸であり、個性の真なる輝きなのだ!

みそ


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リサ・バティアシュヴィリさんの新譜、ブラームス・ヴァイオリン協奏曲。
このCDの発売告知が出たときにも、ひと騒ぎしてしまったのですが、
やっぱりちゃんと聴いた感想を書かなくっちゃ! では参るぞ!!

【収録情報】
1. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.77
2. C.シューマン:ピアノとヴァイオリンのための3つのロマンス op.22

 リサ・バティアシヴィリ(ヴァイオリン)
 アリス=紗良・オット(ピアノ:2)
 シュターツカペレ・ドレスデン(1)
 クリスティアン・ティーレマン(指揮:1)

 録音時期:2012年6月、他
 録音方式:ステレオ(デジタル)

さて当CD でのリサさんのブラームスは、N響定期での演奏や、動画で視聴できる
フィンランド放響との演奏と、基本的に同じアプローチです(まあ当たり前か・・・)。
だから、みその感想も当然、それらの感想と似ちゃうのですが、
今回はライヴではなくセッション録音だし、ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデンとの
共演でもありますから、その辺のことを踏まえて、ちょっと感想を書いてみます。

まずは何といっても、非常に美しいです。全体を通して。月並みですが・・・。
抜群の音程感覚を誇るオケと、非常に繊細な和声感をもつティーレマンをバックに、
リサさんのブラームスは、和声的な美しさが放射しています。
ヴァイオリンとの相性抜群のニ長調(1楽章と3楽章)も、弾きやすい調性ではないけど、
哀愁ただよう響きが引き立つヘ長調(2楽章)も、それぞれ固有の美しさが実感できます。
うるうる・・・。とろけますね。
(なお、オケもソロも、音程の取り方が気持ち高めな感じがしますが、どうかしら。
たぶん、明るくて輝かしいドレスデン流儀のサウンドに合わせた形なのかな。

一方、構成や展開の面では、提示部はとても丁寧に演奏されています。
でも、1楽章のテンポ自体は、けっこう速めで、ちょっとびっくり。
サカリ・オラモ率いるフィンランド放響との共演と比較すると面白いです。
オラモによる骨格のはっきりした楷書体の趣きと異なり、ティーレマン=ドレスデンの
トゥッティは、厚みはあるけど重くなく、響きも明朗、流れも流麗。しなやかです。
そのうえで、オケもソロも、昂揚感や迫力がみなぎるライヴとはひと味違い、
音楽の基本要素が出揃う提示部を、ひとつひとつじっくり楽譜から汲み取っていきます。
とても誠実で忠実な演奏。だからといって流れが各駅停車になることなく、とてもスムーズ。
なお、第2主題が出てくると、実に柔らかな減速とともに、しっとりと歌い上げていきます。
こういう緩急のつけ方は、ほんとうにリサさん、うまいですね。見事です。

さて、展開部に入っていくと、音楽はよりダイナミックに動き出します。
提示部で出揃ったさまざまなモチーフは、ブラームスの緻密な変形と再構成によって
情熱的に展開していきますが、正確なアナリーゼと抒情ゆたかな歌い口で、
とても燃焼度の高いクライマックスにつながっていきます。
ここでは、かなり思い切ったデュナーミクもアゴーギクも見られ、大胆かつ繊細。
ティーレマン=ドレスデンとともに、究極のピアニッシモを愉しんでるかのよう。
カデンツァ後のコーダは、あまりの美しさに言葉がありません・・・。うっとり。

カデンツァはブゾーニ版。みそは絶対ヨアヒム版がいいと思ってたのに・・・。
だって、リサさんのヨアヒム版、めっちゃ巧いじゃん。
しかも今回の録音では、日本音楽財団からストラディヴァリ「ヨアヒム」(1715年)が
特別に貸与されたそうですから、なおのことヨアヒム版が聴きたかったなぁ・・・。
カップリングだって、クララ・シューマンのロマンスなんだからさ。
ブゾーニ好きのティーレマンの意向だったのかな?
来週のドレスデン定期は、ポリーニをソリストに迎え、ブゾーニ+ブラームス・プロ!)

ともあれ、ティーレマン=ドレスデンは、とても献身的にソロにつけていて、安心しました。
トゥッティだけのときに、妙なアッチェレとか、楽譜にはない休符というか溜めをつけたり
してますけど、まあそれぐらいは、クリスティアンのしたいようにしなはれ。 許す!

2楽章、3楽章は、もう文句なく素晴らしいので、割愛。
以前のブログに書いたとおり。もちろん輪をかけて、素晴らしいです!

クララ・シューマンのロマンスについてもひと言。
この曲、まだうまく消化できない・・・・。何度聴いても。 
最近では、けっこういい曲かなって思うようになってきたけど。う〜む。
しかもヴァイオリンとピアノ、アンサンブルとしてやや噛み合ってません・・・。
もうちょっと聴き慣れれば、もうすこし曲の良さが分かるようになるのかしら?

最後の最後。
まず録音ですが、ブラームスはドレスデン聖ルカ教会にて。
それもあってか、あるいは編集上の味付けなのか、ソロのエコーが強すぎる気がします。
なんだか、遠くで演奏してる感じがするし、しかも音の輪郭がぼやけるので、正直、
あまり好きになれません。

ストラド「ヨアヒム」ですが、これは財団が長い間、庄司紗矢香さんに貸与していた楽器ですね。
この楽器、けっこう繊細さんですね。肌理の細かい高音は、気品があって魅力的だけど、
ちょっと神経質なところもあるのかな? まあ、それこそ名ストラドの証なのでしょうけれど。
もちろん、ドレスデンのサウンドと「ヨアヒム」の音色は、たしかに良くマッチしてるし、
リサさんのような、しなやかなブラームスには、適役だったんじゃないかと思います。

結局、長くなっちゃいました。
でも、リサさんのように、至極真っ当でありながら、どこもかしかも音楽的な演奏って、
ほんとうに嬉しいですね。ありがとうございました。大事に聴き続けます!

みそ
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うまいなぁ〜! なんというヴァイオリン♪
リサ・バティアシヴィリさんのサン=サーンスのソナタ。

このCDは、昨年12月ですからちょうど1年ほど前に行われた、
日本音楽財団のリサイタルのライヴ録音。

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サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタって、正直、どうも好きになれない曲なんです。
端的に、あんまりいい曲に思えなくてね・・・。

でも1年前、リサさんの演奏を聴いて、びっくり。
もうあまりの素晴らしさに、お口がポカ〜ン! そして心はうっとり♪
はじめてサン=サーンスのソナタがいい曲に聴こえたよ!

そして、このCDを聴くたびに、あの日の感動が蘇ってきます。
昨夜、久しぶりに聴いて、またまた感動しちゃって、思わずブログに
書いてしまいました。

でも、このCD、非売品なの・・・。
というか、この財団主催のコンサート自体、関係者向けのクローズド。
もったいないね・・・。聴きたい人、たくさんいるはずなのに、
リサさん、めったにリサイタルしないし・・・。

なお、ピアノは、アナ・チュマチェンコ先生のデュオ・パートナーで、
チュマチェンコ・クラスのピアニストでもある占部由美子さん。
リサさんとの息のあったアンサンブル、素晴らしいです。

みそ

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