|
11月10日付の朝日新聞夕刊に、音楽評論家の伊東信宏さんが、ウィーン・フィル来日公演について 短評を出しておられました。今回、公演に同行した若手指揮者の注目株、アンドリス・ネルソンスさん
のことを絶賛しておられましたね。
ネルソンスさんは、1978年生まれということで、まだ30代前半ですが、旧ソ連のラトヴィア生まれ、
同郷の巨匠マリス・ヤンソンスのお弟子さん。うちのブログでも以前、ヴァイオリニストの
バイバ・スクリデさんとのチャイコフスキーのCDについて取り上げました。
注目している指揮者ですが、伊東さんがそこまで絶賛しているのには驚いちゃった。
我が家には、スクリデさんとのCDと、もう1枚、アラベラ・シュタインバッハーさんとの
ベルク&ベートーヴェンの協奏曲CDしかありませんが、後者を改めて聴きなおしています。
オーケストラはWDR交響楽団(旧ケルン放送交響楽団)。
このCDを聴くと、シュタインバッハーさんもネルソンスさんも、その能力の高さがすぐわかります。
でも、ちょっとずつ方向性というかテイストがずれてるんです。それは、聴きようによっては面白さ
なんだろうけど、違和感を感じちゃうと、やっぱりなんかヘン・・・と思うかもしれない。
シュタインバッハーさんのヴァイオリンはとにかく明るく、迷いがなく、屈託がなく、素直でまっすぐ。
亡くなられたお父様に捧げられたベルクのコンチェルトも、素晴らしい集中力と高い技術で迫真の
名演となっていますが、沈鬱さとは無縁の、爽快ささえ漂うベルクになってます。
一方、ネルソンスさんは、この曲のもつ暗澹たる雰囲気やかすかな光明みたいなものへの
意識は伝わってきますが、ベルクの多彩な語法と素材をしっかり描きたいという意気込みが
やや空回っていて、収拾できてません。即物的と言えばそうだし、とっちらかってると言えばそう。
ベートーヴェンでは、ネルソンス君は、とても立派なべートーヴェン像。堅牢としていて、
ソロと一緒にしなやかに歌うというより、どっしり構えた重量感。そしてWDRの重心の低さ。
一方、アラベラさんのソロは、これまた朗らかで伸びやかで、衒いなく、晴れやか。
細かいパーツから大きなフレージングまで、たっぷり歌ってますが、重くありません。
だから、ソロとオケ、ちょっと噛み合ってません。
でも、繰り返しますが、このCD、シュタインバッハーさんとネルソンスさんのタラントの大きさは
とてもよく伝わってきます。ソロ、指揮者、オケ、三者三様の個性がぶつかり合って、綱引きが
おこるのは当たり前。だからこそ面白いのだし、音楽的な駆け引きであれば、一期一会の
化学反応が起こることも楽しみのひとつ。 これも、そんなCDの1枚かな? どうかしら。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 音楽
- >
- 音楽レビュー



