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わぁ、久しぶりのブログ更新!ごぶさたです。
いま来日中の素晴らしいヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァさん。
今週は東京で、デュオ・パートナー、ピアニストのセドリック・ティベルギアンさんと
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会があります。楽しみ〜♪
そこで、ベートーヴェンじゃありませんが、先日発売されたシューベルト作品全集
を聴いてみました!
【収録情報】
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品全集 CD1
・ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 D.384(ソナチネ) ・ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 D.385(ソナチネ) ・ヴァイオリン・ソナタ第3番ト短調 D.408(ソナチネ) CD2 ・ヴァイオリン・ソナタ第4番イ長調 D.574(デュオ)
・ロンド ロ短調 D.895 ・幻想曲 ハ長調 D.934 ・私の挨拶を D.741 アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン) セドリック・ティベルギアン(ピアノ) アリーナさん、うまいわぁ。たしかに。
演奏は、細部まで丁寧に、よく歌い、よく語っています。
控えめのヴィブラート、ダイナミクス・レンジも狭めに設定し、
長音と短音をきちんと弾き分けつつも、それをゆるやかにつなげて、
ひと息の長いレガート性のフレージングに収めています。
ようするに、“ピリオド・アプローチ”に準じたスタイルですね。
モダンの機能性をフルに活かした、卓越したコントロール!
こうなると、よく似たアプローチのイザベル・ファウスト盤や、
バロック・ヴァイオリン界から、アンドルー・マンゼ盤などと聴き比べると楽しいね。
たとえば、ヴィブラートの抑制は、ファウストよりも、アリーナさんの方が徹底してる。
ファウストは、中・高音域の長音に、思ったよりもしっかりヴィブラートをかけて、
音にやわらかいヴァイブレーションを作り出しています。
でもアリーナさんは、禁欲的と思うほど最小限。
デュナーミクに関しても、“ソナチネ”3曲では、めったにフォルテが出てこないほど
メゾ領域に留まっていて、要所要所で、美しいピアニシモや繊細なデクレッシェンドが
出てきます。確かに、えもいわれぬ雰囲気が出ています。
以上のようなスタイルが、アリーナさんの今回のシューベルトの基本線のようです。
なので、CD2では、いくぶん押し出しの強い演奏になっていますが、
CD1の“ソナチネ”3曲を聴くと、ふと思ってしまう。「あれれ、ちょっと、地味すぎない?」
色味がちょっと足りないような・・・・。
録音上のお化粧があまりないことも、そう感じさせる理由かもしれません。
ファウスト盤やマンゼ盤には、多めのエコーを施し、余韻をこしらえてます。
アリーナ盤にそういう操作はあまりない。でも、たぶん原因はそれだけではない。
ひとつは、表現上、弱音に頼りすぎていて、響きがちょっと刹那的です。
音の表情が薄くなっていて、艶や潤いが乏しくなってしまった面があります。
もちろん、それは、今回の意識的・意図的なコンセプトなのかもしれない。
CDジャケットが象徴的に示しているように、田舎の夜の川辺のような、
月明かりの下の寂寥とした孤独感。
確かに、その種の質感は存分に表現されています。
ハイ・ポジションをあえて控えめに、極力下に降りて、飾り気を排し、率直さを音に出す。
基本的にイン・テンポで、淡々と夜風が通りすぎるように、さらっと流していく。
ただ、その方向性で失うものは、シューベルトの真骨頂、極上の和声美でしょう。
ときどき疑問に感じていたことがあります。
「モーツァルトのソナタだと、ピリオド・アプローチとの相性がけっこう良いのに、
どうしてシューベルトだと、なにかしっくりこないなぁ、と思うことが多いのだろう?」と。
マンマの指摘がすごく腑に落ちたので、ちょっと受け売り。
①シューベルトの演奏では、より声楽的な響きが必要で、人の声がもつ自然なヴァイブレーション、
豊かな倍音を、どう楽器で醸し出せるかのかという、重要な課題がある。
②細かい転調が魅力のシューベルトでは、音色が減ってしまうと、それができなくなるという、
これまた大変重大な問題がある。
ふむふむ。じゃあ試しに、このへんについて、ファウストはどう対応してるのか?
よく聴くと、意外にも、かなり積極的にヴィブラートをかけて、色を補っています。
また、実に細かなテンポ・コントロールで、転調時の色彩や陰影を巧みに変えています。
ヴィブラートという点では、アリーナやファウストよりさらに少ないマンゼはどうしてるのか?
まずそもそも、全体的な演奏テンポをやや遅めに設定し、そのうえでファウスト以上に
大小さまざまなテンポ調節を行いながら、緩急をしっかりつけて、めくるめく転調の妙味を
表現しています。そのやり口がいいねぇ。音楽への愛情たっぷりで。脱帽!
あと、ファウストもマンゼも、音型やリズムの要所要所に軽くアクセントを施したりして、
音の輪郭を際立たせて、上手に流れにメリハリをつけています。
とりわけマンゼにおいては、弓の上下動の変化や、運弓の勢いなどを利用して、
ドイツ・リートにおける子音の発音・発声に似た質感を出しています。
今回のアリーナさんのシューベルトでは、
音色による和声表現、転調に伴う色彩の移行が、意外なほどそっけないの。
和声面では、ティベルギアンのピアノに救われる時が多いのです。
みそ
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