クラシック音楽

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全24ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

イメージ 1

真の美しさを湛えた、格調高いアンサンブル。
とびきりの演奏家たちによる天衣無縫のモーツァルト。
確かな技術とイマジネーションで、幻想の襞に分け入るブリテン。

N響首席オーボエ奏者 青山聖樹さんの最新CDは、
モーツァルトやブリテンのオーボエ四重奏曲を中核に据えた室内楽アルバム。

しかしその醍醐味を堪能するには、それなりの舌を、耳を要します
濃い味付けばかりで疲れ切った舌では、繊細な香りを取り逃がします。
音楽も同じこと。語りの強度は静けさの深さと双子なのですから。

アンサンブルのパートナーは、ヴァイオリンの玉井菜採、ヴィオラの大野かおる、
チェロの河野文昭。4人は、フルーティストの金昌国氏率いるアンサンブルof
トウキョウのメンバー。青山さんが全幅の信頼を寄せる、勝手知ったる盟友との
共演は、極上のアンサンブルに結実しています。

青山聖樹&アンサンブルofトウキョウ
  青山聖樹 (オーボエ&コール・アングレ)
  玉井菜採 (ヴァイオリン)
  大野かおる (ヴィオラ)
  河野文昭 (チェロ)

収録曲:
J.C.バッハ:オーボエ四重奏曲 変ロ長調
M.ハイドン:ディヴェルティメント ハ長調 P.98
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
ブリテン:幻想曲(オーボエと弦楽トリオのための)作品2
モーツァルト:アダージョ K.580a 

あまりにも素晴らしいので、私は毎日のように聴いています。
2016年に発表された新譜CDの、とりわけ室内楽部門における最高レベルの
名盤であると確信しています。格調の高さと趣味の良さを兼ね備えた、
これほどの演奏芸術は、世界中探しても、そうそう見つかるものではありません。

でも正直に申し上げると、1点だけ、ひどく残念に思っていることがあります。
録音のバランスです。オーボエと弦楽三重奏のバランス。
オーボエががっちり前に出ていて、弦三部はすっかり後ろに配置されています。
これは、本当に“モッタイナイ”編集だと言わざるをえません。

室内楽作品集とはいえ青山さんのCDですから、オーボエを中心に音響設計を
するのは、当然のことかもしれません。またこのCDに限らず、オーボエであれ
フルートであれ、管と弦楽アンサンブルの室内楽は、管にとって心地よい音色と、
弦にとって心地よい音色がどうしても異なってしまうため、調整困難になります。
そういうことを考えると、致し方ない面もあるわけですが、これだけくっきりと
オーボエと弦三部の前後配置が際立つと、どうしても気になってしまいます。
音楽がどうしても1対3に分離し、オーボエだけが格別雄弁に聴こえてしまう
嫌いが拭いきれません。最初の2曲はまだ耐えられますが、モーツァルト、
ブリテンになると、さすがに、ちょっぴり残念な気持ちになってしまいます。
青山さんのオーボエは文句なく素晴らしいですし、オーボエ・ファンにはそれで
良しかもしれませんが、室内楽アンサンブルとしてこのCDを愉しむとなるとね。

とはいえ・・・。
そうなると、弦三部はいかにも「控えめ」で、「出しゃばらず」といった印象に
落ち着いてしまうかもしれませんが、演奏を丁寧に聴くと、そんな軽はずみな感想
ではとても語れない、信じられないほど濃密なアンサンブルが、まるで事も無げに繰り広げられていることに、こういう録音バランスからでさえ、伝わってくるのです。

だから、モッタイナイと申しているのです!
4人が一体となって生み出している、実に有機的な音楽的対話を、より存分に
届けてくれる録音設定になっていたら、どんなに素晴らしいCDになっただろう!
玉井・大野・河野の弦三部ある限り、オーボエの音をマスクしてしまうような
懸念は、絶対にあり得ないはず。私はアンサンブルofトウキョウのコンサートで
何度となくこの4人のアンサンブルを聴いてきましたが、断言できるもの!

モーツァルトにしても、ブリテンにしても、他の設定を想像できないほど
絶妙のテンポ設定で、受け渡しも合いの手もどれもこれも最高のタイミング。
完璧といってよいほどイメージが共有されたフレージング。管弦を質的な差を
越えて調和が生み出される音色とハーモニー。これらは、この4人だからこそ
可能になった室内楽の醍醐味。それをもっとダイレクトに伝えてくれる録音に
なっていたら、どんなに素晴らしいだろうか。そうと思わずにいられません。

ブリテンについてひと言付け加えるなら、この「オーボエと弦楽三重奏のための
ファンタジー」は、弦三部の音楽的な充実が圧倒的で、私には弦三部が主であり、楽想の変化は常に弦三部が主導しているように思われます。
オーボエは、その上に乗って戯れるように歌い、語り、そして沈黙する―。
だからブリテンで弦三部を後ろに引っ込めてしまっては、アンバランスな印象が
濃くなってしまいます。極めて完成度の高い演奏に仕上がっているだけに、
やっぱりモッタイナイ・・・。

それでも、私はこのCDを多くの皆さまに、強くお薦めしたい。
とりわけ音楽家を目指す若い人たちに。
オーボエの学生さんであれ、ヴァイオリンであれ、ヴィオラ、チェロであれ、
ぜひスコアを手にとり、すべてを掬い取る覚悟で、各パートを耳を傾けてほしい。
この名手カルテットが、互いを聴きながら、それぞれどんなことをしているのか。
彼らがごく当たり前のように、事も無げにやっていることのひとつひとつが、
室内楽の真骨頂につながる一歩一歩なのだと、必ずや確信するはずです。

みそ


イメージ 1


紀尾井シンフォニエッタ東京としては、最後の定期公演。
私は2日目に行ってきました。

紀尾井シンフォニエッタ東京 第105回定期演奏会
2016年6月18日(土) 開演:14時
リーダー(指揮者なし): アントン・バラホフスキー(Vn)
  リュドミラ・ミンニバエヴァ(Vn)(ペルト作品)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Orch)

ブリッジ:弦楽オーケストラのための組曲
ペルト:タブラ・ラサ
ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調Op.22

アンコール マスカーニ: 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

「神は細部に宿る」。
そんな言葉が浮かんできた演奏会。

バイエルン放送交響楽団のコンサートマスターであり、
紀尾井シンフォニエッタでもコンサートマスターを務める、
アントン・バラホフスキー。彼をリーダーに指揮なしプログラム。

今回の公演のために、いったいどれほど綿密なリハーサルを行ったのだろう。
指揮なしプログラムの場合、メンバーがいろいろ意見交換しながら築き上げて
いくのでしょうが、その一方で、コンサートマスターの示す方向性が決定的に
重要になるはずです。

KSTの弦セクションのアンサンブル能力の高さは、皆さんよくご存じのはず。
私も当日、期待して足を運びましたが、想像をはるかに超えていました。
全身で演奏をリードするアントンの姿を見ていると、そして舞台から立ち上って
くる音楽を聴いていると、「ああ、アントンらしいなあ」と思うとともに、メンバーの
半端ない団結力に、圧倒されるばかりです。
それにしても、ステージ上のバラホフスキーさんは、とても美しいですね。
音楽への全き献身に溢れています。それが全員へ清らかに波及しています。

さて今回、最初のフランク・ブリッジからアンコールのマスカーニまで、
とにかく、やっていることが実に細かい!信じられないほどに。
でも、音楽の流れはごく自然。人工的な操作を感じさせず、機械的になる
瞬間は微塵もない。絶妙のテンポ感で、音楽はつねに柔らかく息づいます。
ひとつひとつフレージングが磨き抜かれ、美しいハーモニーが作られていく。
音色の統一感も素晴らしい。どれもこれも趣味が良いのだから、言うことなし。
声部のバランスもよく、重たくなることなくテンポ感を決めているバス声部も、
過度に出しゃばることもないけれど充実した内声部も、よく機能しています。
今回セカンドの頭に座ったのは、「タブラ・ラサ」で第2ソロを務めたアントン夫人、
リュドミラ・ミンニバエヴァさん。臨機応変な強調性と凛とした潔さ。
音は夫より良いかも。

それで一曲目。ブリッジは天国で涙を流して喜んでいたに違いない!
既存の録音を色々聴いてみましたが、どれもこれもぱっとしない演奏ばかり。
(ごめんなさい)。作品ができて百余年。東京の室内オケがこんなにも格調高く、
そして克明に各キャラクターを描き切ってくれたことに、感激したでしょう。

ミニマルな音列の中で極小の差異が生滅するペルト「タブラ・ラサ」も、
旋律美の宝庫でありつつ、似たフレーズにも細かい変化を描き込んでいる
ドヴォルザーク「弦楽セレナード」も、演奏のアプローチは一貫しています。

あらゆる声部の、一つ一つの音符休符にいたるまで、細大漏らさず丁寧に
意味づけしていこうとする、その徹底さ。よくこんな気の遠くなるような作業を
したものだと、感心の溜息が出ます。
あえて作業という言葉を使ったけれど、創造性/想像性の発露の裏側に、
とてつもなく地道で地味な作業が続いていることを思うと、ちょっと恐いでしょ?
だって、私がうっとりしていた心地よさは、演奏家たちのヒリヒリ疲弊するような、
まさしく身を削るような、細かい準備に支えられているのだから。(おそらく)
(メンバーの皆さんが、とても楽しくリハーサルしていたと信じたい・・・。)

細部へ、細部へと入っていくことは、ときに危険を伴うことです。
迷宮の中で見通しを失い、大きなヴィジョンが見えなくなることもある。
すべてを拾い上げ、すべてに等しい存在価値を与えようとすると、
何が表で、何が裏なのか、分からなくなる。前後、上下、主従といった対比が
解消され、立体感を失い、音楽はかえって平べったくなり、リアリティを失う。
細部に寄生して、死へ誘うのは悪魔かもしれない・・・。
(でもこういう極限の準備を、アントンはいつもヤンソンスの下でやっているの
だろうなと思ったりもしました。)

祝福あれ。今回宿ったのは神のほうだ。
細部の細部まで、一切を充填したのは、神の《プネウマ》である!!
アントンとメンバー全員の「プロフェッショナリズムの聖性」に脱帽。

それでは、来年春からの新生・紀尾井ホール室内管弦楽団を、
心待ちにしています

みそ










イメージ 1

土曜日の定期2日目を聴いてきました。
素晴らしかったです。ちょっと感想を。

紀尾井シンフォニエッタ東京 第104回定期演奏会
4月23日(土) 14:00開演  紀尾井ホール
トレヴァー・ピノック(指揮)
イモジェン・クーパー(ピアノ)  
紀尾井シンフォニエッタ東京(オーケストラ)
 (コンサート・ミストレス 玉井菜採)

フォーレ:組曲「マスクとベルガマスク」Op.112
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58
ハイドン:交響曲第103番変ホ長調Hob.1-103「太鼓連打」
***************************
アンコール 
シューベルト:劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」より第3幕間奏曲

チェンバロ奏者で、古楽オーケストラ「イングリッシュ・コンサート」を創設し
牽引してきたピノックさん。紀尾井との共演は、2度の定期でモーツァルト・プロ
昨年のホール開館20周年記念コンサートでバッハ『ロ短調ミサ』、そして4度目の
今回は、フォーレ、ベートーヴェン、ハイドンの名曲たち。

最初は、ピノックさんがフォーレ?と思いましたが、確かに考えてみますと、
イタリア古典劇に由来する劇音楽の組曲ですから、内容や形式からして、
むしろマエストロの得意分野というべきでしょう。実際、序曲が始まるや否や、
この公演が素晴らしいものになるだろうと確信できるものでした。

色彩豊かで、キラキラと輝き、リズムも溌剌としたフォーレ。
音楽はじつにいいテンポ感で、自然に流れていきます。
地中海の春風が柔らかく頬をなでるような心地よさ。一瞬にしてホールの
空気が変わります。しなやかな弦に、艶やかな木管。瑞々しいサウンドと
バランスが絶妙のハーモニー。メヌエットはメヌエットらしく、ガヴォットは
ガヴォットらしく、キャラクターのイメージがしっかり掴まれ、各曲の個性が
自然に立ち現れてきます。これがピノックさんのアプローチ。
小柄なマエストロが指揮台の上で、きびきび躍動し、実に愉しそうでした。

次はベートーヴェン。
イギリスの名ピアニスト、イモジェン・クーパーさんをお迎えして、第4協奏曲。
クーパーさんのソロは、じっくりとしたテンポで、ひとつひとつのフレーズを
慈しみながら、ふんわりとハーモニーで包んでいく、そんな演奏。
壮麗な「皇帝」コンチェルトと比較して、たおやかな旋律が美しい4番は、
女性的なイメージで捉えられることもありますが、とんでもない「イカれた」曲。
1楽章の和声の推移、2楽章のソロとオケのパラレル・ワールド、
3楽章のぶっ飛んだリズム。当時の観客は度肝を抜かれたに違いない。

クーパーさんの演奏は、音楽の枠組みをしっかり捕まえて、響きの輪郭を
明確に打ち出すという点では、やや不足もありましたが、飾らず気取らず、
フレーズの自然な流れを大事にしながら、ひとつひとつ丁寧に歌っていく。
その演奏には、彼女の人間性が溢れていました。

またオケも一丸となって、ソリストをサポート。充実し切っていました。
その美しき象徴が、第1楽章冒頭部。ピアノソロによるト長調の主題提示、
それをオーケストラがロ長調で引き取って入ってくる、この曲の〈いのち〉。
そこを、第1ヴァイオリンは、何とアップ・ボウで入ってきました!
この上なくしなやかで、優しく、共感に満ちた応答。ソリストが醸し出した、
母の抱擁のごとき柔らかい空気感を、見事なまでにそのまま引き取って、
肌理とぬくもりを先へつなげていく。清らかで静謐な弦の美しかったこと!
アップで始めるなんて! ナイス・アイディア。わたし、初めて見ました。
玉井コンマスの弓づけかな。こんな繊細な心配りで、ソリストに満腔の
共感を寄せるオーケストラに拍手。

後半はハイドン「太鼓連打」。
ピノックさんはここでも、しっかりとキャラクターのイメージをつかみながら、
音楽の流れはどこまでも自然であること、それを信条とするアプローチです。
キリッと小粋に引き締まったリズム感と絶妙なテンポ感。
しっかりとバスから組みあげたハーモニーの美しさ。
すべてを自然に感じさせるために、入念に練成されたフレージング。
粒立ちのよい一音一音の発音はとてもクリア。それが流れるように連なっていく。
これぞ、ピノックさんの音楽づくり、その真骨頂でしょう。
ちょっとしたユーモアの遊びはあっても、山っ気のある仰々しい抑揚や誇張は
一切なし。それでいて、どの楽章もどの楽想も、味わい十分。お見事。

それにしても、巧いアンサンブルです。
柔軟性とキレ、明晰さ、躍動感、バランスのとれたハーモニー。
そして繊細なピアニシモから強奏時の鳴りの良さまで、感心しきりです。
力まずに豊かなサウンドを作り出せるのですから、最高に心地よい昂揚感に
酔いしれてしまいました。(ごめんなさい、ちょっと金管は例外・・・。)

マエストロ良し、ソリスト良し、オケ良し、プログラム良し。
音楽への溢れる愛と献身がホールに満ち満ちた午後。
アンコールで再び劇音楽に戻り、役者ぞろいの名舞台はお開きとなりました。

みそ


イメージ 1

今回の定期は、紀尾井2度目の客演となるマエストロ・タカーチが
どんなメンデルスゾーン「宗教改革」を聴かせてくれるかが注目でしたね。
でも、私のお目当ては、アントン・バラホフスキーさんのチャイコフスキーでした。

2015年9月12日(土) 紀尾井シンフォニエッタ東京 第101回定期演奏会

ガーボル・タカーチ=ナジ(指揮)
アントン・バラホフスキー (ヴァイオリン)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Orch)

ベートーヴェン:劇音楽「シュテファン王」序曲Op.117
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲二長Op.35
   アンコール:チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より
          第2幕レンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」
 *************************************************           
メンデルスゾーン:交響曲第5番二長調Op.107「宗教改革」
  アンコール:ペルト:フラトレス

アントン・バラホフスキー。
ロシア(旧ソ連)・ノヴォシビルスク生まれ。バイエルン放響第1コンサートマスター。
紀尾井にはたびたび客演コンマスとして登壇し、今2015-16年シーズンから
正式にコンサートマスターのおひとりとなられました。

バイエルンでの演奏であれ、紀尾井での客演であれ、
彼の音楽に対する献身ぶりがひしひし伝わってくる演奏の姿。
今回は、お披露目的な感じで、コンチェルトのソリストとして登場。
ただ、ソリスティックな演奏とは異なる、しかし充実し切った
味わい深いチャイコフスキーでした

オケの前奏が始まり、そのゆったりとしたテンポ設定に、
早くもソリストからのメッセージが感じられます。
「これはヴィルトゥオーゾな技巧をひけらかすコンチェルトではない」と。
チャイコフスキーはゆっくり弾く方がよほど難しいのに、
「あえていばらの道を・・・」と思いつつ、期待が膨らみます。

ソロの登場。第1主題へとつながる序奏部。
落ち着いた詩情。吟味されたフレージングはニュアンスに富み、
どこに頂点があり、どんな呼吸で歌われ、どんな色合いで移ろうのか、
しっかりと音楽的なメッセージが伝わってきます。
こうして、はっきりと演奏ヴィジョンが提示されると、その後は、
一貫してアプローチにブレがありませんでした。

大きくテンポを動かすことをぜず、全楽章の統一感を保ちながら、
その中で一つ一つのフレージングを吟味し、自らの語り口によって、
作曲家の思いに、コトバを与えていく。

「どんなフレージングなのか」。彼の関心はつねにそこに向かっている。

随所で新鮮、個性的。それでいて説得力もある。
聴き慣れたチャイコフスキーなのに、今まで見たことのない角度から捉えた
ポートレートが浮かび上がってくる。そんな驚きと発見。勉強にもなる。
それらは、もちろん彼の音楽的な理解から来るものですが、
その底にロシアの伝統が、確たるものとして、しっかりと流れている。

フレージングへの徹底したこだわりが、音楽を窮屈なものにすることなく、
太く大きな流れの中で、ひとつひとつのキャラクターが描かれている。
そして、常にdanceableなテンポ感から、バレエ的な興趣が伝わってくる。
ああ、これぞロシアのチャイコフスキー!という感じ。

オイストラフからルボツキーへ、そしてバラホフスキーへ。
受け継がれる伝統と、ひとりの個として立つ音楽家のインスピレーション。
その美しき合一。そこに立ち合える幸せ。ありがとう。アントン!
あなたのチャイコフスキーは素晴らしかった! 


タカーチ指揮の「宗教改革」も、ひとこと。
タカーチさん。わたし大好き。そしていい演奏でした。
彼もまた、アントンと同じく、“フレージング・マニア”。
そしてまた、統一感のある音楽的な流れを大切にします。
ミクロな描き込みによって音楽を停滞させない。
第2楽章のテンポ感など、絶妙でした。

また室内オケのシェフをしているだけあり、バランスのとり方も心得ています。
チェロを外に出してバスの輪郭をはっきりさせたのは正解だったと思います。
ただ、その分ヴィオラの存在が薄まってしまったのは、悩ましかったですね。

第1と第2ヴァイオリンが非常に緊密に連動して仕事を分かち合うので、
内声はヴィオラがほぼ単独で担わなくてはなりません。そこが弱いと、
やっぱり全体のハーモニーに影響するし、この曲の構築的な部分での
バランスが崩れてしまいます。そこが、ちょっともったいなかったです。

木管群は、一列目のお姉さま方が、もう少し存分に語ってくれたら、
なお良かったと思います。まさに「フレージング」ですね!
二列目のお爺さま(失礼!)は、気を吐いていらっしゃいました。
音はちょっとヤバかったですが(これまた失礼!)。
とにかく水谷さんのファゴットの素晴らしさが際立っておりました。
金管は、一番ホルン、とても良かったですね。

最後のコラール、まさに最後の最後。
あれはマエストロの振りまちがいかしら?
和音が混ざり合ってしまい、〈不協和の揺らぎ〉を通り抜けての着地。
聖霊に酔ってしまいましたか? 感極まった末のご愛嬌ね。
それも良しとしましょ。タカーチさんらしくって。

タカーチさん、また来てね。アントン、これからも期待してるね。

みそ


イメージ 1


行ってきました。
紀尾井シンフォニエッタ東京第100回定期演奏会。

2015年7月4日(土)
セミョーン・ビシュコフ(指揮),
ライナー・ホーネック (ヴァイオリン) ,
マキシミリアン・ホルヌング(チェロ), 
紀尾井シンフォニエッタ東京(Orch)
 (コンサート・マスター: アントン・バラホフスキー)

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 KV492
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調 Op.102 
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 Op
.92 

うん。さすがだったね。ビシュコフ。
明快、明晰。すべてにおいて絶妙なテンポ感。
特別変わったことは何もしない。正攻法で真っ当。
当たり前のようでいて簡単ではない、確かな手腕。
感服しました!

ベートーヴェン。
テンポ設定、声部のバランス、和声の組み立て、
リズムの分節、フレージング、デュナーミクの管理、
ひとつひとつ丁寧で的確。いいリハーサルだったに違いない!
フォルテとフォルテシモもしっかり分けて、
感情のままに煽り立てたりしない。そういう落ち着きもいい。
だらしなく大味になることもなく、響きは引き締まり、
十分なボリュームに達しても、決して重くはなりません。
どんな時もしっかりと様式感が伝わる明晰さが心地よいね。

それは、ブラームスでも同じ。
1楽章の冒頭第1主題の長短短のフレーズも、
荒っぽくがなりたてず、その3音に柔軟な起伏を作り出す
こういうデリケートな心遣い、すてきじゃない?
甘ったるくないけれど、ブラームスの繊細なロマンティシズムが
瞬時に伝わります。オケパートに関しては、ここで勝負あり!

ソロのおふたり。
チェロのホルヌングさん。音が素晴らしい。
全く力まずに、あれだけ幅広いダイナミクス・レンジを
自在に表現できるのは、ソリストとして圧倒的な強みですね。
よく歌い、とても音楽的。
もちろん、もっと歳を重ねて、経験も豊かになれば、
さらに味わい深いチェロになるのでしょう。

というのも、ブラームスのドッペル、かなり恐い曲。
ヴァイオリンもチェロも、ソロの2人はダブルばっかりで、
ソリストの和声感が、すっかり露わになってしまいます。
ホルヌングさんのチェロは、いつだって余裕綽々で、
窮屈なところは微塵もないけれど、和声的な味わいという点では、
もう一歩という感じだったかしら。

一方、真逆だったのが、ホーネックさんのヴァイオリン。
当代随一のコンサートマスター、その渾身のソロは、
ソリスティックなスケール感から言えば、もう一声。
一番ボリュームが欲しいところで頂点が来ないもどかしさ。
それが惜しいところでしたが、ひとつひとつのフレーズは、
凄みを感じさせる説得力。ダブルも入念で、じつに味わい深い和声。
さすがでした。ホーネックさん。

ということで、記念すべき100回定期に相応しい、
素晴らしいコンサートだったと思います。
特に、バラホフスキーと玉井さんがファーストを引っ張り
セカンドの頭には野口さんがしっかりアンカーとなっている
ヴァイオリンセクションの充実は、見事というほかないです。
本当に惜しいのは、木管カルテットのアンサンブル・・・。
アインザッツが合わないし、音量も音色も気持ちよく合わない。
これは残念の極み。常設オケじゃないから、致し方ない面も
あろうかと思いますが・・・。ほんと惜しい。
あとティンパニ。もう・・・。プンプン。

最後の数行は余計だけど、せっかくの素晴らしいコンサート
だったので、書かずにはいられませんでした。

ともあれ、ビシュコフさん、また来てくれないかな。

みそ




全24ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.
miso
miso
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

標準グループ

登録されていません

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事