短編

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あとがき

長々とお読み頂けました方には、心からお礼申上げます。
皆様のご想像に添えましたでしょうか?
この話の舞台は、私が暮らしている土地の等身大です。


東京駅までは僅か一時間でありながら、
主要な交通手段であるJRの駅から、ホンの少し外れている為に、
昔ながらの農村地帯がそのまま残されている、長閑で平和な寒村であります。
高台の神崎の家からの眺めは、我が家からの眺めを書きました。


開発から取り残され、若者は都会へ出て行き、
少子高齢化の波の直撃を受け、
日々疲弊の一途を辿る農村地帯の姿は、物語の話そのままです。
噂話に明け暮れる、無邪気で暢気な姿もそのままです。
物語の主人公神崎の深い嘆息と慨嘆は、私の思いを重ねました。


誠のようなひたすら人が良いだけの人物でありながら、切れると怖い。
そんな人もどこかにいそうな気がしています。

この作り話でありますが、
大筋は僅か3日で書き上げました。
眼下で行われている暗渠工事を見て、フト思いつき、
出だしと結末を先に書き上げ、間を埋めながら仕上げました。
連載でUPするたび、
削除・加筆を繰り返しながら、
なんとか結末へと繋げることが出来ました。


途中皆様の鋭い推理、逞しい想像力や、アイディアに
もっと捻りを利かせるべきか迷いもありましたが、
当初の構想どおりとさせて頂きました。



私は本当は自分で書くより、読むほうが好きです。
面倒くさがり屋で、飽きっぽい。
緻密に書き上げてゆく根気がないのです。
この作り話も途中で一寸飽きました。
歌子の無責任ぶりをもっと強調すればよかったなぁと
反省しています。


後から後悔するんですねぇ。この性格。
時間を置いて読み返すとき、きっと又赤面の後悔に身悶えるのかなぁ。
皆様、お付き合い本当にありがとう御座いました。
お粗末さまでありました。 

「アラ!よっと、一丁上がり !」これは独り言であります。「笑」

暗渠【最終回】

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誠さん、歌子と一体何があった?
歌子!お前は何をした?
我侭な歌子はきっと誠が耐え難いような事を言ったのだろうか。
おとなしい誠が切れるような酷いことでもしたのだろうか。
誠の立場がどんなものであったかは、想像が付く。


実の娘である歌子が、やれ汚い、やれ臭い、やれ早く死んで欲しいと言いたい放題の愚痴を並べる傍で、文句も言わずに介護をやり遂げた誠だ。

<俺はアンタを裁きたくない!裁くのは俺じゃない!
歌子を殺っちまった後の3年間、アンタはあの家でどんな思いで暮らしていた?
俺はアンタの秘密を知っちまった。アンタもそれに気付いたことだろう。
これからアンタは、拭い去れない重い秘密と恐怖に耐え続けねばならない。
アンタのその苦しみだけで裁きは充分じゃないか。俺は裁きたくない!>


<誠さん、俺は何も見なかったことにする。アンタはあの我侭な歌子に良く辛抱したよ。
俺には真似の出来ないこともした。黙って元気で暮らしていけ!>


地区の結束こそが、一番重要なことだと誰よりも強く思いながら、
最も身近な人に、なんの救いの手も差し伸べられなかった後悔が神崎を呻かせた。
自分は女達の噂話にも、男達の下卑た馬鹿笑いにも加わりはしなかったが、
ただの傍観者でいただけのことだ。
傍観者に過ぎなかったこの俺が、誰を裁ける!
そんな資格は俺にはない。


神崎は仏間の仏壇に線香を一本供えると、
キツク瞼を閉じ、手を合わせた。

「行夫さんと一緒になりたかった」

歌子の顔が目に浮かぶ。
歌子の眠る場所を、他ならぬこの自分が探り当ててしまった皮肉な巡り合わせも、
歌子の怨念に導かれたような気さえしてくる。


<歌子!成仏しろ!お前の霊は俺が弔ってやる。
お前の眠っているあの場所には、ハスでも植えることにするよ。
蓮は極楽浄土の花だ。お前は花の下で黙って静かに眠り続けろ!>



秘密の重さに苦しみつつも、神崎は一人でそれに耐え、
一ヶ月過ぎには又、田植えの季節が巡って来た。
誠が暗渠を築いた田に稲苗は植えず、珠代の不審げな目線を跳ね除けて、知り合いから分けて貰った大賀ハスの蓮根をところどころに植えた。



夏が来て見事なハスの花が開いてくれる事を神崎は思い描いてみる。
見事な花が開いたら、歌子は俺のこの【秘密の封印】を許してくれたと思うことにしょう。
もし開かなかったら・・・・その時のことは又その時に考えればよい。
重い秘密を持て余す神崎の心は、決定を蓮の開花に委ねた事で、少しだけ軽くなったような気がしている。
お盆が近づく頃には答えが出るはずだった。



来年は無理でも、いつの日か歌子の眠るあの水田が一面ハスの花で満たされ、高台の自分の庭からその花を愛でる日が来る事を、神崎は日々祈り続けている。
歌子の息子、薫が家に戻った時には、
自分は親代わりの本気で、薫に向き合っていこうとも誓うのだった。

【完】
http://www.city.hashima.gifu.jp/ivent_bosyu/kankou/ivent_taigahasu.htm

暗渠【18】

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電話はたった四度の呼び出し音で受話器が取られた。
心臓がズキンと跳ね上がった気がした。

「もしもし」

声は誠の声に間違いない。

「誠さんかい?俺だよ。神崎だ」

「神崎さん!」

誠は正直に連絡の取れる間違いのない番号を自分に伝えていた。
安堵はしたものの、神崎は後に続ける言葉が見つからない。
暗渠を掘り返したのと同じで、電話もまた単に誠が本当の番号を自分に伝えたのかどうかを確かめたい。それしかなかったのである。
何を話そうとまでは考えていなかった。
何を言うべきか?
何か言わねば・・・言葉は出ない。
長い長い沈黙が続いた。
受話器の向こう側では、誠も又ひっそりと沈黙を保っている。


息詰まるような長い沈黙の後、

「神崎さん!」

耐えかねたような誠の声がそう呼びかけた。

「・・・・」

更に沈黙が続く。

誠は「神崎さん!」その後にどんな言葉を続けるつもりだろう。

「・・・・・」

「神崎さん!」

「誠さん、用は何もないんだ」

「・・・・」

用は何もないと言いながらも、神崎は受話器を置かなかった。



再び長い沈黙が続いた。

「神崎さん!」擦れた声で又誠が叫んだ。

「・・・・・」

「神崎さん!」

誠の声には焦りと緊迫の色が加わった。


沈黙はこれが限界だった。その先を誠に言わせてはならない。自分は聞いてはならない。

「いや、用はないんだ。何も言わなくていい。元気で居てくれ!」

神崎は誠の声を待たずに受話器を置いた。



誠は間違いなく何かを感じ取ったはずだ。
自分に本当の連絡先を告げたのは、あるいはこんな日が来る事を密かに覚悟していたのだろうか。
神崎は電話が通じたことに、誠が自分に寄せた信頼と誠実さを見たような気がする。
律儀な誠らしいとも思った。
菊枝ばあさんを車椅子に乗せ、ショートステイや・デイサービスの迎えの車に送っていた誠。

「大変だなぁ・・」

声を掛けると、気弱そうな細い目で曖昧な笑顔を返した誠。
綺麗に洗濯し、キチンと整えた着替えの風呂敷包みを、迎えのヘルパーに手渡していた姿が目に浮かぶ。歌子がいた時も、介護のほとんどを誠が背負っていたのだ。


夫婦ふたり暮らしの神崎も、
もし、妻の珠代があんな風になったら、自分に誠の真似ができるだろうか?
いや、出来ようと、出来なかろうと、現実がたち現われたら、
人は逃げ出す訳にも、放り出すわけにも行かないのだ。
自分もきっと必死でそれを支え続けるのだろうか。
深い深い嘆息が漏れた。



再びテーブルに向うと茶碗に酒を注ぎ、
ブルっと身震いしながらぐ〜〜〜っと一気に飲み干した。

暗渠 【17】

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玄関の戸が引かれる音がする。
珠代が帰って来たのだろう。
珠代はスーパーの買い物から戻ったのだろう。両手に大きなレジ袋を提げて、
真っ直ぐ茶の間にやって来た。

「なぁに?お父さん、もう飲んでるの?」と神崎の顔は見ずに声を掛ける。

「ああ・・一寸寒くてな」

「あら、ヤダ、風邪でも引くんじゃないの?」

神崎は返事をしなかった。
珠代に「オイ!」と呼びかけてしまうと、その後には、見てしまった暗渠の秘密が口から飛び出しそうで、神崎は珠代との会話が恐ろしかった。


<どうすればいい? どうすればいい?>

珠代に一言口を開けば、「警察に行って!」答えは聞かずとも判っている。


誠はあの馬鹿な歌子に良く耐えていた。
田代の家はあの誠が居たから、爺さんも婆さんも無事にあの世へ旅立てたのだ。
誠の何が間違ったというのだ。
暴いても暗渠の底に眠っている歌子はもう戻らない。
どうすべきか?
俺は何をしたら良い?


誰かに答えて欲しかった。
しかし、相手が誰であれ、神崎が答えを問うた時点で誠の人生は終わる。
鳥肌はいつまでたっても、去らない。

「どうしたら良い?どうすべきか?」

神崎の頭の中にはそれしかなかった。


その夜、妻の珠代は黙りこくって酒を飲み続ける神崎を横目に、そそくさと食事を済ませた後、

「お父さん、寒気がするなら早く寝た方がいいわよ」

そう言い置いて、
公民館のカラオケの練習に出かけていった。


神崎は珠代が居なくなった部屋でポツネンと酒を飲み続けながら、
ふと誠の電話番号を回してみようかと思い立った。
誠は自分にだけ連絡先の電話番号を残している。
果たして、本当に連絡が取れる番号なのか?
好奇心に打ち負かされたように番号を押した。

暗渠【16】

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鍬は止めて、又スコップに持ち替えバケツで泥を掻き出し、上の泥を必死に掬い上げていった。
そうやって土を払って行った所で、なにやら丸いものが見える。
丸いものが見えた時点で、神崎の心臓は口から飛び出しそうな強い動悸を打ち始めた。
思い切ってその丸いものに手を掛け引っ張ってみる。
するとゴキッと言うように丸いものは引き上げられた。


見た瞬間、神崎の腰は抜けた。
這うようにして田のクロまで辿り着くと、その場に倒れ込んで肩で大きく息を吸い込んだものの、ムゥ〜〜と心臓が突きあがるような吐き気に襲われ、
急いでゴムの手袋を引き剥がすと、思わず口を覆い、片手で心臓を激しく叩いた。


=何と云うことだ!好奇心だけで始めてしまったこの作業。
まさか本当の事になるなんて=
神崎はその時初めて、もしもの結果については、自分は何も考えて居なかった事に気がついた。
神崎が考えた=ひょっとして?=は、
同時にまさかそんなことはある訳がないでもあったのだ。
もしやの思いは、まさかに支えられたものに過ぎなかった。
神崎は秘密を探りあててしまった後悔で愕然とした。


しかし、胸の動悸が次第に治まってくると、この事実を一体どうすれば良いのかと云う問題に突き当たる。
とりあえず、人に気付かれない前に、ボールのような丸いものは元の位置に放り込んで必死に泥を掛け捲った。


泥で何も見えなくなった事を確認して、
夢中でその場を離れて来た。


=なんと云うことだ! 一体どうすればいい? 警察に言うべきか?=
重い秘密を抱え込んでしまった激しい後悔で、奥歯がガチガチ鳴った。


家に着くなり、泥に汚れた作業着を毟り取るように庭に投げ捨て、
一直線に浴室に飛び込み、頭からシャワーを浴びてブルブル震えた。
3月下旬のこの季節、シャワーは体までは温めてくれない。
鳥肌を立てたまま台所に直行して、一升瓶から注いだ茶碗酒を、立て続けに二杯一気飲みした。
興奮は酒によっても鎮まりはしなかった。
茶の間のコタツにへたり込み、
更に酒を煽り続けた。

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