ここから本文です

神雅のつぶやき、

目指せ!1週間1回以上更新!

書庫過去の投稿日別表示

全1ページ

[1]

1話-白虎 1

『10枚百円』

 観光客向けの高めの値段の安い煎餅を、鹿は美味しそうに食べた。

 神鶴白虎《カミヅルハクト》は鹿に煎餅をあげながら、ただボーっと眺めていた。

 ここは産まれ育った都の隣の、とある公園。

 なんども訪れたここには、相変わらず多くの鹿が闊歩している。

 今さら特に驚くべき事もなく、とりあえず保護動物であるこの鹿の腹は満たされることはあるのだろうか、と実験してみている。

 果たして、宇宙のような食欲は限界が見えず、先に小遣いをはたいて買った煎餅が切れそうだ。

「おぉーい、ビャッコ!お前はもう少しこう…楽しそうに遊べないのか?」

 急に後ろから肩を組んできた馴れ馴れしい男は神鶴赤雉《セキジ》。『ビャッコ』とは俺のあだ名だ。

 コイツと俺は一応親類で幼い頃からつるんでいる、いわゆる幼なじみだ。

 『一応』というのは、いったい何親等離れているのか俺は知らないが、ただ俺は宗家で、赤雉《セキジ》は分家だからだ。

 今日は赤雉《セキジ》が道場を持ち、その初給料で旅行に行くと言うので、連いて来た。

「アカネを見習えよ。あんなに楽しそうにしてくれてるじゃないか」

 見た先には少女が一人、鹿に囲まれていた。

 赤雉《セキジ》の実妹である赤猫《アカネ》は鹿に囲まれて楽しそうに、というよりあれは…

「ちょ、大丈夫か?」

 白虎《ハクト》は素早く駆け寄ると、赤猫《アカネ》の周りにいた鹿を追い払い、助け出した。

「はぁ、はぁ」

 赤猫《アカネ》は荒れた息を落ち着けると、言葉を紡いだ。

「ビャッコ…。もし私が助からなかった時は、同じ墓で眠らせて?」

「なぁ〜に、アホな事言ってんだ?すこしスカートがかじられただけじゃないか」

 どうやら餌をあげている最中に囲まれ、その催促する鹿にやられたらしい、スカートには鹿の唾液がベットリと着いていた。

 戦いは場の空気をすべて飲み込んだ。

 怒りの感情もまた飲み込む。

 そうしなければ勝てる相手ではないと解ったから、こそ。

 俺たちと莉凰《マオ》の間合いは、わずか8メートル。

 災厄の空が部屋を照らしだし、夜中というのによく見渡せた。

 その距離は飛び道具の間合いで、クナイにはうってつけなものだ。

 江茉《エマ》の長刀を持ってしても同じだろう。

 莉凰《マオ》は始めからそれを狙っていたのかもしれない、ゆったりとしかし隙を見せず新たなクナイを創り出した。

 両手に1本ずつ、2本。

 やがて、それは増えて5本を超える頃、そのクナイをお手玉の様に投げ始めた。

 手品ように増えていくクナイは、気付けば9本になっていた。

 あの全てで同時に狙われては避けるのはもちろん、防ぎ切るのも不可能だろう。

 さっきの一撃から、もし受けてしまえばただではすまない。

 であれば、方法は1つ。

 一撃も受ける前に莉凰《マオ》を止める。

 俺の内功を持ってすれば、もしかしたら可能だろう・・・いや、だっただろう。

 負傷した今、いくら痛みを消しているとは言え、最高の速度は出ない。

「・・・私が、先に行く」

 そんな俺の様子に気付いた江茉《エマ》が呟く。

「だがエマじゃ、間を詰める前にやらるぞ・・・?」

「第5支『辰』隊長の実力、なめないでくれる?ハヤトには負けちゃうけど、私だって内功くらい出来るわよ」

 外功を極めた第5支隊の隊長である江茉《エマ》であれば、内功もある程度できるかもしれない。

 それこそ俺に勝たずとも劣らない、クナイに反応できる程度は。

 だが飛び込んだら、無事では済まない。

 確実に結果を出さなければ。

(こんな危険な事は一度だけにしよう・・・)

 おそらくこれが、俺たち2人に与えられた唯一無二の勝機だ。

 内功を使った攻場脚でも、間合いを詰めるには3歩はかかる。

 その時《タイミング》を見極めながら、俺も呼吸を整えた。

全1ページ

[1]

ブログバナー

ゆにこん
ゆにこん
男性 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1
2 3 4 5 6
7
8
9 10 11 12
13
14
15
16 17
18
19
20
21
22
23
24
25 26
27
28
29
30 31

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

検索 検索
友だち(5)
  • シャッフル
  • 亮
  • kotyo
  • 黒凰白銀
  • はい?
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る
本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事