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だが、それよりも。
「心得童子《こころえのどうじ》ってどういう意味なんだっ!?このユウナギの術の名か?」
「なんだ・・・まだ気付かんのかい?」
俺の質問に八代《ヤシロ》はさも当然のように答える。
「いくら『天災』と呼ばれたユウナギとて、外界にここまで精密で精巧な写し身を作るんは不可能。されど、『魔の体』を媒介にして擬似的に、とはいえ可能にするとは恐れいらいね」
「『魔の体』・・・だと?」
「その体を提供している魔こそ『心得童子《こころえのどうじ》』。この世の調整とあの世への使者もいっぺんに兼ねておる」
異界への門番を行っている魔の体を用いて、影の夕凪《ユウナギ》を形作っているらしい。
「渡世に必要な『世界での役目を終えた』とゆう資格、そいで『世界を越えられる』とゆう資質を見極めるておるんだけんど・・・お前らはそれを認められたんだ」
「・・・小僧が偉そうに。いや、いつの間にか偉くなったのか?」
八代《ヤシロ》がそう説明すると、偽るのをやめたように夕凪《ユウナギ》の影の口調がガラッと変わった。
「ふふふ・・・そう、俺は『ユウナギ』じゃねぇ。俺はユウナギに『力』を借りる代わりに、アイツの意思の一部を宿してやってたんだ。後は・・・」
夕凪《ユウナギ》の影を纏った心得童子《こころえのどうじ》は石碑に歩み寄ると、さもそこにはじめからあったかのように空間を『開いた』。
「コレがユウナギの言っていた『渡世の方法』だ。後をどうするかは自分で選べ」
それはまさしく『光の門』。
中から溢れ出る光が、部屋をさらに明るく包み込む。
光の奥はどこまでも深く、先は見えない。
童子は全ての役目を終え『門』の脇に座り込んだ。
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