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「――それで、俺たちを探してたのはどうしてなんだ?」
そういえばまだ話の根本理由を聞いていなかった、と話を戻す。
「えっと――ご存じだと思いますが、この世界で『武術』って珍しいんです」
「…知ってる」
この世界では、武術ばかりでなく発展しすぎた科学と魔法のせいで『格闘技』の一切が必要なくなってしまっている。
そのため、トレジャーの全体から見ても未曾有のフロントアタッカー(接近戦闘員)不足なのだった。
接近戦闘を行うのは、もの好きか、変わり者――つまり俺たちのような渡世人だけである。
「なので、もしよろしければ、わたしに接近戦を教えてもらえないでしょうか?」
「おぅ、いいぞ。教えてやる――って、なんだって??」
もともと師範をやっていた性なのか、予想外の言葉につい乗ってしまった。やはり――俺に向いていた仕事だったのかもしれない。
しかし、少女。しかも、子供。その上、この世界で。教えてもいいが、を受け止めきれるとは思えない。
「その――ダメでしょうか…?」
「いや、ダメ、ではないが――」
子供というのは突拍子のないことを言うことは知っているが、この子供は本当に突拍子がない。
もしかして、それを言うためだけに見ず知らずの俺たちのもとへ駆けつけてきたのだろうか。もしそうだとしたら、とんでもない行動力だ。
「フユちゃん。格闘を習いたいって気持ちは良くわかったわ。必ず教えてあげる。でも――」
「――でも?」
さっきから江茉《エマ》はちらちらとのぞき見ている方向にはひとつの時計があった。
「私たち、これからトレジャーの仕事に行くところなの。帰ってきてからでもいい?」
「「――あっ!」」
そういえば、俺たちは仕事の待ち合わせに行くところだったんだ――。すっかりいろいろな事があって忘れていた。
その時計の針は、待ち合わせの時間より大きく遅れていることを指し示していた。
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