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神雅のつぶやき、

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書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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 『災厄』の後、神雅流はこれ以上ないほど衰弱した。

 十二支会の隊長もその半数、6人が殉職。

 急遽、その後釜を生き残った人員から選出されたが、まとまりはなく部隊として成り立たなかった。

 乱れた神雅流をまとめ復興させるのは夕凪だと期待されたが、その当人もまた災厄から帰ってこなかった。

 その捜索は宗家も出張り、大掛かりなものになった。

 夕凪に関する物はすべて押収され、調べつくされた。

 ここまでして見つかったものは『あの時』の封印術だけだった。

 しかし宗家は早々と捜索を打ち切り、宗家は『夕凪は死亡した』と発表したのだった。

 だが、分家に納得するものはいなかった。
 
 なぜなら、封印術や呪術など長期に続く術であっても、術者が死亡すると解けてしまう、はずなのだ。

 だがこの技は『生きて』いた。つまり、夕凪が生きている事にほかならない。

 だから、宗家の協力を得られなくなった後でも、分家だけで捜査は続いた。

 しかし宗家は、これ以上探す事は神雅流全体の士気を下げる、として禁止した。

 まだ諦めがつかない分家だったが、これには従うしかなかった。

 だが、それでも夕凪が死んでいない事を信じ、1人になっても捜査を続けた。

 理由はひとつ、兄が『旅に出る』と言ったから。

 そのうち宗家からも、分家からも孤立することになっても。

「・・・にいさん」

 探し疲れ、声も枯れた少年はある場所にたどり着いた。

 兄が残した道場、その裏にある藪の中の試合場。

 その試合場の真ん中に寝転がり、あの光が飛んでいった空を眺めた。

 そして、1つの決意をした。

 あの光のように高みを目指して、ただ強くなろう、と。

 そのとき、夕凪はわずか13歳。

 若くして鴉に目覚め、十二支会入りを果たした。

 そして、宗家の人間でも難しい、技の開発もたやすく行った。

 だから、時期十二支会統主・『子』の隊長は夕凪、と考えられた。

 だが、分家である夕凪を統主にする事に反対する者は多かった。

 その反対派の代表はもっぱら宗家。

 分家が統主になれば、実質的な道場の運営の権利を失う。

 それを恐れたのだ。

 そこで宗家は急遽、当時の統主の孫である江茉が、時期統主だと提示した。

 だがこの時、江茉はまだ鴉に開眼していなかった。

 そのためこの決定は宗家の横暴だという分家と、長く続いていた宗家との抗争を表面化させてしまった。

 そんな時に神雅の一族が統治する町を襲った『災厄』。

 それは4年に1度に訪れる、如月の閏日に起きる天災。

 だが、そもそもこれを沈めるために、都からこの土地を渡された神雅とって、『災厄』は珍しいモノではなかった。

 来る事は予測しており、ただ沈静化し終わるはずだった。

 しかし、分裂した神雅に互いに争い合い、沈めるのに時間がかかった。

 そして被害は拡大した。

 かつてないほどの激しい戦いは、多くの犠牲者を出した。

 十二支会の隊長とその隊員、そして避難を遅れた町の人々。

 その尊い犠牲により、一族同士の抗争もまた治まった。

 気が付くと、川のほとりにいた。

 昨日、兄と行った森のある山が真っ赤に燃えている。

 火は町の方まで延びて、消える。

 その繰り返し。

 そこは今、まさに戦場と化していた。

 時より上がる閃光は、その戦いの激しさを物語っていた。

 上空は異様に暗黒のオーロラが揺れていた。

 その景色からは美しい、という感情は感じない。

 あるのはただ恐怖だった。

「ユウナギ!ユウナギはいないかっ!」

 どこかで兄を探す声が、聞こえる。

「おい!ユウナギはこっちにきてないか!?」

 叔父が俺の襟首をつかみ、詰め寄った。

 だが、夕凪《ユウナギ》がここにいるはずはない。

 あの中で戦っているのだから。

「くそっ!あいつ、どこへ行ったんだ!『災厄』の最中に持ち場を離れやがって!!」

 どんな仕事でも確実にこなす夕凪《ユウナギ》に限って、それはないはずだ。

 悪態をつきながら町のほうに戻っていく叔父を見送っていると突如、山から光の柱が突如上がった。

 その光に誰もが振り向くほどだった。

 夕方の日差しのように全てを包み込む。

「・・・なんなんだ!あれは!?」

 天高く延びる光はどこまでも、どこまでも昇っていった。

 そこにいた全ての人がそれが消えるまで、見上げていた。

「だが1つだけ・・・心残りがあるんだ」

 それは恐らく初めて聞いた、兄の弱音だった。

「な〜に?ぼくにできる事なら、手伝うよ!?」

「お前の事だ」

 それは唯一の気遣いだっただろう。

「どういう事?」

「お前は弱い。肉体的にも、精神的にも・・・しかし今回を逃せば、次は4年後。それまで待っていられない」

 立ち上がった夕凪は森の出口、町の方を望む。

 そこは俺たちが『帰る』場所。俺たちの家。家族で暮らした場所。

「ハヤト、強くなれ。だが、自身を見失うな」

 それは忠告だったのだろうか。

「もし、見失いそうなときはエマを頼るんだぞ」

 当時の宗家と分家の溝は、今以上に大きかった。

 特に、夕凪はその才能ゆえ、宗家からは嫌われていた。

 なのに、そこで出てきた宗家の嫡子の名前。

「えっ!?なんで、エマ?」

 この時、その言葉を理解するには、俺は幼すぎた。

 だがそれ以上、詳しく教えてくれなかった。

「さあ、帰ろうか」

「ぼくもなれる?」

「あぁ、お前ならきっとなれるとも」

 今日も2人で修行をしたあと、任務で赤城山にある石碑へやって来た。

「じゃあさじゃあさ、あしたもなんか教えてよ!?ね、いいでしょ?」

 当時はまだ分家の道場が少なく、宗家の道場に分家が入門する事はできなかった。

 だから、俺はもっぱら夕凪に神雅流の基本を教わった。

「明日、か・・・」

 夕凪は呟いた。

「良いか、ハヤト。よく聞くんだ」

「なに?にいさん」

 身長差のある弟に目線を合わせるため、その場にしゃがみこむ。

「俺は明日、しばらく旅に出る」

「こんどは、どこに行くの?」

 突然の告白に驚いたが、それは今まで何度もあったこと。

 長くともひと月も経たないうちに帰ってきていたので、この時も心配はしていなかった。

「場所はわからない。ただ遠く、長いものになるだろう」

 しかし、このときの目には2つのモノが写っていた。

 1つは、弟・迅人。

 そして、もう1つは・・・

「ん、わかった。最近は家事もできるようになったし、ちょっと長くても大丈夫だよ?」

 当時の俺はその言葉の真意を測る事はできなかった。

 だが、今もこうして思い出す。

 その目はどこか遠くを見ていた事を。

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