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神雅のつぶやき、

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書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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 分家には伝えられることはない秘技を江茉《エマ》は語ってくれた。

「『鴉』は氣を変換する技・・・自分の氣を技として利用するのに使われるのが一般的なんだけど、他人に流し込むことで、相手の『氣』を無理矢理変える事ができるのよ」

 つまり、江茉《エマ》は氣を流し込み、自身の鴉で莉凰《マオ》の『鵬』を水に変えたのだ。

「だがしかし、それには相手より『氣』の扱いに長けてなきゃいけねぇし、神鶴の『鵬』にまで効く確証はなかった」

 ずっと背後で傍観していた夕凪の影は、いつの間にか歩み寄って語った。

「そんな不確実で抗いがたい運命でも、それを乗り越える力と勇気。それさえあれば、この先の『世界』でもやっていけるな・・・」

「なるほど・・・それが『心得童子《こころえのどうじ》』としての結論かぃ?」

 影に言葉を重ねたのは突然、神社に入ってきた人物であった。

「どうして、爺さんがここにっ!?」

 朝焼けに逆光で照らし出された祖父・八代《ヤシロ》に驚きを隠し切れなかった。

「・・・いゃね。今年は不安分子が多かったんで、来ちまったぃね。とりあいず・・・・」

 祖父は方言の混じる言葉でしゃべりながら歩み寄ると「良くやった」と二人の肩を優しく叩いた。

「もしかして、アレも爺さまが・・・?」

 そう言って見た先には、莉凰《マオ》との戦いで初めて隙を作った刀が、床に突き刺さっていた。

 戦いの最中に聞こえた鳥の鳴き声は、この刀の飛ぶ音だったのだろう。

 そんな技はただ1つ、『投武《トウブ》』のみ。

 神雅流の基礎となる技を作り上げた人物とはいえ、戦いの最中のタイミング・狙いの精密さは、神雅現総主の実力が衰えていない事を教えられた。

「やった・・・のか?」

 常識を大きく外れた存在を相手にして勝てたことに、しばらく呆然と立ち尽くしていた。

「エマ!」

 刺されて倒れた江茉《エマ》を思い出し、駆け寄った。

 だが、俺の心配をよそに、江茉《エマ》は自ら起き上がる。

「ちょ・・・起き上がって大丈夫なのか?」

 道着は破け、液体が滴っているが、傷はたいした事はなさそうだ。

「・・・っ!じろじろ見ないでよ!!」

 恥じらいながら、着崩れた道着を直す。

「その・・・ありがと・・・傷は大丈夫よ」

 莉凰《マオ》をロープで縛り、俺たちは自身の怪我の手当てをはじめた。

「そういえば・・・戦いの最後、マオのクナイが溶けたんだが・・・何かやったんか?」

「・・・え?」

 マオの『鵬』が水になり溶けたのことを思い出して、沈黙を壊すために軽い気持ちで聞いてみた。

「いや・・・教えられないモノなら、答えなくていいんだが」

「・・・ううん、大丈夫。」

 本家だけに伝わる秘伝の技も多い、だから無理強いするつもりはなかったのだが。

「あれはね・・・あれこそ『鴉』の真の技」

「はああああぁぁぁぁ!!!!」

 立っているのもやっとの状況で放つ、ガードを破る追撃の一手。

「この死にぞこないがぁっ!」

 だが莉凰《マオ》も俺の追撃に気が付き、体をひねりその一撃を避けようとする。

 同時に反撃を行うクナイを作られはじめ、鵬によって氣が収束していく。

 それはさすが一支隊、といえる反応だった。

「くっ!」

 これは避けられない。

 そして、耐えられない。

(今度こそ、これまでかっ!?)

 その時、避けようとした莉凰《マオ》は中途半端な体勢のまま止まった。

「なぁにっ?」

 完成したクナイも形を保てなくなり『水』と化して溶けてなくなった。

 俺はもう歩みを止めない。

 止まる時は全てが終わった時、そう決めたから。

「とぉっっっっっかんっ!!!!!」

 さらに気合いを入れた一撃は、ガードの上から敵を吹き飛ばした。

「そっ!・・・げぶっ!」

 そのまま、壁に叩き付けられた莉凰《マオ》は断末魔のような声を上げ、沈黙した。

「おおおぉぉぉぉぉっ!!」

 俺は雄たけびを上げながら、莉凰《マオ》との間合いを詰める。

 まさに捨て身の一撃、これしかない。

 この一撃が届く頃には俺の命は、ニセモノの夕凪《ユウナギ》によって狩られるだろう。

 今、逃げようと思えば、逃げられたと思う。

 夕凪《ユウナギ》への道を諦め、莉凰《マオ》のいう通り『災厄』に戻りさえすれば。

 だが、江茉《エマ》を助けるためには、これ以外の方法はなかった。

「神雅流体術奥義・破城拳っ!」

 ニセモノの刀を無視し、莉凰《マオ》の間合いに潜り込み技を繰り出す。

 しかし、その解りきった一撃でガードされる。

 そして出来た一瞬は、刀を振り下ろすには十分な時間だ。

 迫り来る刀は俺を切り裂き、江茉《エマ》の様に床に沈む。

「なんなのっ!!!?」

 ・・・ハズだった。

 キーッ!

 その音と共に、莉凰《マオ》のうしろ、入り口の横の壁に亀裂が入る。

 亀裂は大きくなり扉を破り、一本の刀が飛び出した。

 ニセモノは飛び来る刀から主人を守るため身を呈して・・・消滅する。

 それは、始めて生じた莉凰《マオ》の隙だった。

「え・・・?」

 それは背後にいる、『真実』の夕凪《ユウナギ》の影からだった。

 このままいけば、逃げる事もできず、このままでは確実にやられるだろう。

 しかし、夕凪《ユウナギ》はいつも通り、それ以上の事は答えてはくれない。

 なにか作戦があるのだろうか・・・?

 だが、夕凪《ユウナギ》に限って、意味のないことはなかった。

 俺はこの言葉を信じる、しかない。

(だがまあ、江茉《エマ》と一緒なら、このまま死んでも良いかもしれない)

 そんな諦めにも似た感情を抱きつつも、俺は絶対の自信に満ちている莉凰《マオ》との間合いを詰めていった。

(もちろん、ただで殺されるつもりはない。どうにかして一矢報いてやる)

 江茉《エマ》だけは助ける。

 それだけを胸に秘めて。

 キーッ!

 朝焼けが遥かかなたの空を照らし始めたのか、さきほどから鳥の鳴き声が聞こえる。

 あと2歩。

 江茉《エマ》以上の内功の使い手と自負する、俺にとってそれはあっという間の距離だ。

「ハヤトを迎撃しなさい」

 鵬で創られたニセモノの夕凪《ユウナギ》は莉凰《マオ》の命令通り動き、手に持つ刀を振り上げた。

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