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神雅のつぶやき、

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書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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 ビチャ・・・

 嫌な音と共に、江茉《エマ》は倒れた。

「くっ・・・う・・・」

 意識はあるようだが、すでに戦闘は出来ないだろう。

 莉凰《マオ》の実力は俺の、俺たちの予想を大きく超えていた。

 その第3の腕はしだいに莉凰《マオ》の体を離れ、懐かしい人物の姿になった。

 後ろの影と元を同じ夕凪《ユウナギ》、その人であった。

「・・・そういう事か」

 俺の中で矛盾に感じていたことが晴れた。

 白虎《ハクト》は「殺戮者がユウナギと名乗った」と言っていた。

 莉凰《マオ》は「自分が殺戮を行った」と白状した。

 もし、莉凰《マオ》が夕凪《ユウナギ》と名乗ったとしたら、なぜいままで正体がばれなかったのか。

 だが、神鶴の『鵬』によって分身を、変わり身を創れるのであれば。

 しかし、それは同時に脅威以外の何者でもなかった。

(万策、尽きた、か・・・)

 江茉《エマ》に出来なかった事を、俺がヤれるのか・・・?

 それは果てしなくゼロに近い。

 このままでは逃げる事もできず、このままでは確実に殺されるだろう。

 駆け出した時の勢いはしだいに失われていき、すでに止まる寸前だった。

「そのまま、駆け抜けろ」

 莉凰《マオ》の手に残ったクナイは残り1本、俺ははやくも駆け出した。

 ここまでくれば、2人のどちらかが辿り着ける。

 少しでも早く、終わるように。

 これ以上、江茉《エマ》に危険なことを任せてはおけない。

「こっちだっ!マオ!」

 だから、動き出したことをわざわざ教えるたのかもしれない。

「ちぃっ!」

 そんな思わくをしってか知らずか、莉凰《マオ》は作られた最後のクナイを俺に向けて投げた。

「これで終わりよっ!」

 間合いを詰めた江茉《エマ》はその隙を逃さず、さっき折れた水映月の刃を右手に振りかぶる。

 ヒュッ!

 当然、俺に向かい飛んで来るクナイだが、それをなんなく叩き落とす。

 だがまさしく決着の瞬間だと思われた、その時だった。

 ガイッ!

 莉凰《マオ》の脇腹に切りかかった江茉《エマ》だが、刃が服に触れる瞬間『なにか』に止められる。

「なんでっ!?」

 それは腕。

 いや、莉凰《マオ》の肩から延びる第3の腕がにぎる刀が江茉《エマ》の刃を防いだのだ。

「エマっ!」

 危険を知らせるために叫ぶが、すでに遅かった。

 折れた刃の間合いは、あの第3の腕が握る刀の間合い。

 不敵な笑みを浮かべる莉凰《マオ》はその刀を振るった。

 完全に隙をつかれ防ぐ事もできない江茉《エマ》は体を切り裂かれ、その場に崩れ落ちた。

 それはまさしく嵐の前の静寂、だった。

 『時』はいつも突然、しかし必ずやって来る。

 氣を読んで、期を読んだ江茉《エマ》は飛び出した。

 合図もなくその機会を悟らないように、それは開始された。

「なかなか、だけど遅いわぁ・・・」

 莉凰《マオ》もまた恐ろしく早い反応で再び9本のクナイを放った。

「やっ!」

 ガィンッ!

 1本目―長刀・水映月によって防いだ。

 江茉《エマ》の反射神経は内功によって十分に強化されており、問題ないようだ。

「あらぁ?意外とやるわねぇ・・・じゃぁ、これはどぅ?」

 2本目も的確に防ぐ。

 そして3本目を防いだ時、しかしその的確な防御が仇となったのか、水映月の刀身にヒビが入った。

 それが目に見える形となったの4本目。

 ガギッ!

 クナイを防いだ時、ヒビは縦断し、刀身は砕け散った。

「えっ・・・」

 長年の相棒であった刀が折れ呆然とするが、一瞬で立ち直り来る5本目を残った柄で弾いた。

(くそっ!)

 こんな状況でも、俺はただ見守るしかないのが口惜しかった。

 俺が動けるのは全てが終わった後か、江茉《エマ》が莉凰《マオ》を止めてから、だ。

「まだっ!」

 6本目のクナイは折れた刀を投げて相殺した。

 武器を失ったことで、さらに多く踏み込まなくてはならないだろう。

 ふっ!

 江茉《エマ》がさらに内功を練る呼吸の音だけが聞こえる。

 だが今度は2本同時だった。

 7本目は鋼の手甲で防ぎ、8本目は左手で叩き落とした。

 あと1歩。

 戦いは場の空気をすべて飲み込んだ。

 怒りの感情もまた飲み込む。

 そうしなければ勝てる相手ではないと解ったから、こそ。

 俺たちと莉凰《マオ》の間合いは、わずか8メートル。

 災厄の空が部屋を照らしだし、夜中というのによく見渡せた。

 その距離は飛び道具の間合いで、クナイにはうってつけなものだ。

 江茉《エマ》の長刀を持ってしても同じだろう。

 莉凰《マオ》は始めからそれを狙っていたのかもしれない、ゆったりとしかし隙を見せず新たなクナイを創り出した。

 両手に1本ずつ、2本。

 やがて、それは増えて5本を超える頃、そのクナイをお手玉の様に投げ始めた。

 手品ように増えていくクナイは、気付けば9本になっていた。

 あの全てで同時に狙われては避けるのはもちろん、防ぎ切るのも不可能だろう。

 さっきの一撃から、もし受けてしまえばただではすまない。

 であれば、方法は1つ。

 一撃も受ける前に莉凰《マオ》を止める。

 俺の内功を持ってすれば、もしかしたら可能だろう・・・いや、だっただろう。

 負傷した今、いくら痛みを消しているとは言え、最高の速度は出ない。

「・・・私が、先に行く」

 そんな俺の様子に気付いた江茉《エマ》が呟く。

「だがエマじゃ、間を詰める前にやらるぞ・・・?」

「第5支『辰』隊長の実力、なめないでくれる?ハヤトには負けちゃうけど、私だって内功くらい出来るわよ」

 外功を極めた第5支隊の隊長である江茉《エマ》であれば、内功もある程度できるかもしれない。

 それこそ俺に勝たずとも劣らない、クナイに反応できる程度は。

 だが飛び込んだら、無事では済まない。

 確実に結果を出さなければ。

(こんな危険な事は一度だけにしよう・・・)

 おそらくこれが、俺たち2人に与えられた唯一無二の勝機だ。

 内功を使った攻場脚でも、間合いを詰めるには3歩はかかる。

 その時《タイミング》を見極めながら、俺も呼吸を整えた。

「ふふふ・・・そういえば『生き残り』と戦ったんだっけねぇ?」

「・・・生き残り?」

 そういえば、道場破り・白虎《ハクト》の一族は壊滅させられた、と言ってたっけ。

「一年前に粛正に行った時、面白そうだったからちょっと、もらったのよぉ」

 もらった?

 それはどういうこと、と考えてひとつの答えが導き出された。

「お前、まさか・・・神鶴一族に行われた違法な『粛清』に関与してた、のか・・・?」

「超能力の解析には、たくさんの人が必要だったわ・・・」

 そう言って再び作られたのは9本のクナイだった。

 慧眼《エゲン》を持っているのだから記憶するのは簡単だが、よそ者相手に協力者などいないだろう。

 では、どうやって盗んだのか・・・?

 思いつく方法は1つ。

 さっき夕凪《ユウナギ》が言っていた慧眼《エゲン》による『サンプリング』。

 だが、それを行われた人はどうなるといっていただろうか?

「・・・だけど、この力の礎になれたのなら彼らも本望だったんじゃないのぉ? 」

 つまり、多くの住民を、なんの関係のない人を、己の欲求を満たすためだけに『殺した』というのか。

「っ!ふざけるな!エマ、あいつをぶっとばすぞ!」

「うん、刀の錆にしよう!」

 それは純粋な怒り、混じるものはなにもなかった。

 江茉《エマ》もそれを曲げる事は出来ないと、思ったからこそ立ち上がり、鞘から水映月《スイエイゲツ》を抜く。

「そう。じゃあ、おとなしく死んでねぇ?」

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