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神雅のつぶやき、

目指せ!1週間1回以上更新!

書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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「それ・・・?」

 あちこちに散らばったクナイを再び見ると、瞬間それは風に流され"空気"になった。

「西京を守る神鶴流。その秘伝の技―『鵬《ホウ》』」

 その名前は知らなかった。

 ただ、見たことがあった。

 『氣』は液体や気体のようなもので、それ単体では大した攻撃力を持たない。

 だから『呼吸法』で自身を創り、内功や外功にして使うのが常識。

 そのため、完成させるには遅延が生じる。

 だが、その遅延を無くす方法は存在する。

 それが『超能力』。

 その1つが神雅の『鴉』だ。

 性質を変化させるだけ、だから体外に発氣《ハッキ》するだけで創れるのだ。

 しかし、だからこそ直接攻撃的な付加効果のある『火』などでもなければ、攻撃には利用しにくい。

 だが、もう1つの『それ』は違う。

 氣を放出するだけで、水が氷になるように形を成し、物理的なダメージを与えられるようになる。

「それにしても、神鶴《カミヅル》って・・・」

「・・・・・・っ!」

 もう1つクナイは、俺の足にしっかりと刺さっていた。

「ちょ・・・大丈夫なんっ!?」

「この程度どうと言う事は、ない」

 スーっ、ハァ・・・スーっ、ハァ・・・

 呼吸を整える。

 それは『呼吸法』と呼ばれる氣のコントロール方法。

 氣を練り、内功を体中に巡らせることによって、痛みなど一時的に忘れるができる。

 カラン・・・

 足に刺さったクナイを引き抜いて投げ捨てた。

「さっきは誤魔化されちまったが、もう一度聞く」

 その投げ捨てたクナイを見ていた夕凪《ユウナギ》の影は再び口を開いた。

「なぜ、お前が"それ"を使える?4年前はそんな術、会得していなかったと思うがな?」

 神雅流の道着の右袖が長いのは、手で隠し持った武器やその動きを敵に把握させないため、とされている。

 江茉《エマ》は「邪魔だから」とたくし上げてしまっているが、暗器の使い手には重宝される。

 だが、今回のそれは『見えなかった』でなく『なかった』。

 俺が捉えたのは飛んで来た、クナイだけだった。

 数は9つ。

 そのうちの1つが俺を、もう1つが江茉《エマ》を確実に狙っていた。

 それらは莉凰《マオ》が黙ってからコンマ数秒の出来事。

「・・・くっ!」

 俺は腕を、体全体を使って伸ばす。

 ガインッ!

 金属同士がぶつかる音が響く。

 カラン・・・と、江茉《エマ》の足元には、さっきのクナイが転がった。

「・・・ハヤト?」

 江茉《エマ》は不意のクナイに完全に反応できていなかった。

 内功に特化していたからこそ反応できたのだ。

 だから俺はまず、江茉《エマ》を狙っていたクナイを叩き落す事を優先した。

「ちょっと、何やってるん!?」

 突然の出来事に、しかし冷静を取り繕いながら駆け寄ってきた。

「何、って・・・。俺より実力が上のエマが怪我したら、どうしようもできなくなるじゃないか・・・」

「だからって・・・あんたが傷ついたら、意味ないじゃない!」

 痛みを耐え顔が歪むのが自分で解った。

「そっかぁ・・・それは困ったわねぇ。8年かけた計画が、水の泡になっちゃうじゃない?」

「8年・・・?」

 それは俺が、思い続けた年数。

 夕凪《ユウナギ》が消えてから、流れた年数。

 歩み寄るのにかかった年数。

「私が異界を知ったのも8年前でねぇ。でも、その時はユウナギに邪魔されちゃった」

 私もまだ若かったわねぇ、と莉凰《マオ》はほくそ笑む。

「石碑がいつの間にか封印されてねぇ。本当に出鼻をくじかれたわぁ。それから解呪する方法を探したけど結局見つからなかった・・・でも今日になってやっと解けたわぁ、あなたのお陰でね?」

 俺はこいつの手の上で転がされていた、というのか。

「だから感謝しているわ。でもあなた達はもう用済み」

 それは、開戦の宣告だったのだろうか。

 前動作、と呼べるモノはなかった。

「『氣』の根源である『魂』に触れること。そこには全ての記憶と人の記録がある。だが、それには決定的な欠点がある」

「・・・欠点?」

 五眼が希少なのは開眼の率も以上に熟練度の違いこそあれど、その『能力の完成度』が高いからだ。

 一般的な『鴉』が術に使用しにくいのに対して、五眼はそれだけで術として完成している。

 その五眼の慧眼《エゲン》になんの欠点があると言うのだろうか・・・?

「術に触れているわけじゃないからな・・・余分な情報が多く、そこから必要なモノのみを探すのは難しい」

 つまり、必要以上の情報が必要な情報を解らなくしているのだろう。

「そうねぇ。だから慧眼《エゲン》の力を使ってサンプリング―すなわち、複数の人間の『魂』に触れて、その『共通』の部分を見つければ良いのよぉ」

「違うな。この方法の一番の欠点は」

 付け加えるように言った莉凰《マオ》の言葉を夕凪《ユウナギ》は切った。

「それは『魂』を触れられた人間が『死ぬ』ことだ」

 死ぬ・・・?

 つまり、殺さなければ『力』を得られない・・・?

「『複数の能力』―そのためにいったい何人を犠牲にしたというんだ!?」

「そうねぇ。100人位までは数えてたんだけどぉ・・・ごめんなさい、最近は数えるのやめちゃったわ」

「自身の知識欲のために犠牲もいとわない。それがコイツの正体だ」

 冷静に思い出そうとする莉凰《マオ》の態度に怒りすら覚えた。

「でも、神雅がやってた事を真似しただけよぉ?」

「・・・神雅がやってた事だと・・・?」

 その答えは、最悪の考えしか思い浮かばない。

「知らない業《技》を手に入れて、新たな業《技》を作り出す・・・それが神雅そして神雅流でしょぉ?」

「くぅっ・・・」

 夕凪《ユウナギ》の日記で真実を知っていた俺たちは、その言葉は反論できなかった。

 異界へ人間を送る研究。

 異界の人間を探る研究。

 それらの結果、作り出されたのが数々の神雅流の奥義。

 それが神雅のやっていたことであり、そのためには人体実験も行っていたらしい。

 だから、莉凰《マオ》のその言葉を認めざるを得なかった。

「だが、なぜ・・・そこまでの『力』を持ちながら、異界にこだわるんだ?」

「『力』を持っているからこそよぉ。そこだったら、私の『力』を極められるかも知れないじゃない?こんな小さい国の機関により、その方が楽しいと思わないかしらぁ?」

 莉凰《マオ》はうっとりするように語った。

 こいつは、帝のスパイであるにも関わらず、それすらも裏切るのか。

 そして、そこでもさらなる犠牲者を増やすと言うのだろうか。

「そんな事のために、異界には行かせない!」

 知識欲や探究心は、誰もが一度は必ず持つものだ。

 だが、今の俺には恐怖と怒りしか感じなかった。

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