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神雅のつぶやき、

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書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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 長い階段を、2人で登った。

 その不安も2人なら乗り越えられると、どこかに吹き飛ばされた。

 どれだけ駆け上っただろうか、徐々に目的の神社が姿を現した。

 ここまでこれた事も奇跡だが、一番の奇跡はアカギ山を守っている十二支会の誰にも会わなかったことだろう。

 だが、ここからは1支隊が守る地域。

 許可のない侵入は誰であれ、攻撃されてもおかしくない。

 なにしろ、ここはアカギ山の頂上に立つ神社、その名も『アカギ山神社』。

 表向きにはこの国を統治していた歴代の帝を祭っていたものだが、事実は赤城の神つまり『大百足』を祀っているのである。

 その歴史は古く、神雅がこの土地にやってきたときには、すでにあったといわれている。

 とは言え、神社自体は古いモノではない。

 4年前、雨風にさらされていた石碑を保護するため、新しく建て直された。

 かつて、ユウナギと行ったあの『石碑』は今、祭殿にある。

「なつかしい、な・・・」

 祭殿の闇よりも暗い影で覆われた石碑が目の前にある。

 それは夕凪《ユウナギ》の封印術が、いまだに生きている証拠でもある。

 本家はなんども解呪しようと試みたが敵わず、いまだに放ってあるのだ。

「ねぇハヤト。これ、じゃないん?」

「どれだ?」

 石碑を調べていた、江茉《エマ》の指差す先をみると、日記にあった鎖のと同じ模様がそこにも描かれていた。

 日記に書かれていたことが確かなら、今こそ解呪することが出来る。

「エマ、目を閉じてろ」

 その模様に手のひらを近付ける。

 ピタッ・・・

 石の感覚が、冷たい。

「キャッ!」

 それに触れると同時、石碑は江茉《エマ》が悲鳴を上げるほどの激しく発光した。

 光はしばらくして納まったが、光により出来た影は納まるどころか広がっていった。

 淡く光る石碑をよそに、影は集約し形を成した。

「ちがう・・・」

「え・・・?」

「ユウさんを追うのは『夢』じゃなかったん?今考えるのは『どうするか』じゃなくて『どうしたいか』じゃないん?」

 諦めかけた俺に、江茉《エマ》は聞く。

 それは俺の真意を探るものだった。

「ハヤトはどうしたいん?」

 確かに辿りつくのは『難しい』かもしれない。

 だが、心はすでに決まっている。でなければ、ここまで来なかっただろう。

「俺は兄さんを・・・ユウナギを追いたい!」

 その言葉を聞き、よし、と手を打つ。

「仕方ないわね。私も連いてくわよ」

 まだ不安が残るが、本家の江茉《エマ》がいれば、戦略はぐっと増える。

 それは救い以外のなにものでもなかった。だが、

「いや、お前は連いてくるべきじゃない」

 それを江茉《エマ》に頼むことは、どうしても出来なかった。

「・・・どういう事?」

「これ以上、エマに迷惑をかけたくない。だから、ここからは俺に関わるな!」

 それは本心だった。

 ここからは『掟』に触れることになるだろう。

 死ぬ事さえあるかもしれない。

 だから、どうしても巻き込みたくはなかった。

「・・・っ!」

 江茉《エマ》は俺の言葉を聞くと、口をきつく結ぶ。

 だが、その口はすぐに開かれた。

「私は、あんまり器用じゃない。ハヤトの気持ちだって解らない!」

 まるで怒っているかのように強い言葉だった、しかしその目に浮かぶのは『悲しみ』だった。

「でも、ユウさんを追ってたハヤトの姿を見て、強くなろうと思った!分家との溝を無くす、それで少しでも役に立てるなら・・・そう思った!それなのに」

 幼馴染の俺でさえエマのこんな表情を見た事なかった。

「それなのにユウさんの事は勝手に諦めるし、大切な事も勝手に決めるし・・・『関わるな』!?」

 その両目には光るものがあった。

「最初は確かにユウさんに頼まれてサポートをしてた。でも、私は決して『迷惑』だなんて思ったことなんて1度もないわよ!!もう少し私を頼っても良いじゃないん!?」

 夕凪《ユウナギ》が『失踪』する直前、江茉《エマ》に俺のことを頼んでいった事も書いてあった。

 だが、ここまでしつこく関わってきたのは、『それだけ』ではなかったのだろう。

 それは人を避けてきた俺には、理解しがたい事。

「勝手にしろ・・・」

 しかし、俺もとっくの昔に、理解していたのかもしれない、大切な存在を。

 俺は、その心に触れる事が出来たのだろうか。

「うんっ!」

 大人びている江茉《エマ》が年相応の笑顔を見せた。

 俺は階段を踏み出した。

 その後に江茉《エマ》がついて来ることを確認しながら。

 階段を1段1段確実に登った。

 真実に向って、やっと。

 異界の存在、魔の正体、夕凪《ユウナギ》の行き先、そして神雅の秘密。

 江茉《エマ》もそれらに驚きを隠せないようだ。

「そんな事が・・・」

「あぁ。そして『災厄』が起きた、と」

 それは全て、夕凪《ユウナギ》が調べてた事。

 日記に書かれていた内容。

 神雅には常識から外れたものが多々あるが、それらがよもや『異界』と関係があるなんて。

「でも・・・大丈夫なん?」

「何が、だ?」

 江茉《エマ》は日記を閉じ、投げて返した。

「この山門の鳥居付近は私の担当地域。だけどこの上には私より強い十二支会が4人もいるのよ?」

 心得童子《ココロエノドウジ》の石碑――昔、夕凪《ユウナギ》と一緒に行った石碑の周辺は1支隊が待ち構えている。

 確かに、江茉《エマ》の言う事は一理も二理もある。

 ここまで俺は「行けば何とかなる」としか考えてなかった。

 だが、いくら俺も隊長とはいえ、1支隊に12支隊が勝てるほど、実力主義の十二支会は甘くはない。

 第1支隊隊長、流山莉凰《ナガレヤママオ》。

 その名前も夕凪《ユウナギ》の日記に書いてあった。

 『要注意人物』、ブラックリストの欄だが。

 どんなに注意しようと、自分の担当地区に入り込んだモノを見過ごすほど、あまくはない。

 流山莉凰《ナガレヤママオ》はあまり姿を現さないため、その実力は未知数だ。

 どうすればその区域に入れるか考えたが、答えは出なかった。

「たしかに・・・難しい、な・・・」

 夜の町中を走った。

 ただ北へ、北へ。

 景色はまるで走馬燈のように流れていく。

 途中いくつもの鬼と人の屍骸、壊された建物が夢幻でないことを物語る。

 アカギ山神社は山頂付近の沼の湖畔にある。

(ここで、やっと半分か、)

 山門となる鳥居の前へとやってきた俺は一度、息を整えた。

 ここまでは比較的平地だったが、ここからは本格的山道になる。

「後はこの階段を登るだけ・・・」

 鳥居の先にあるのは数千段にもおよぶ石段だ。

 アカギ山神社までは参拝者のために長い階段が整備されており、獣道を行く必要はなく迷うこともない。

 いや、むしろ鬱蒼と木々が生い茂った山は『災厄』の今、鬼と魔の巣窟になっているだろう。

 だったら、正面突破が最も安全と言える。

「よし、行こう!」

 俺は何度目かになる気合いを入れ、鳥居をくぐる。

 シュっ・・・

 その時、風を斬る音がした。

 斬撃を転がることで避けた俺の視線の先に立っていたのは、見慣れた少女だった。

「・・・エマか、」

「ハヤト・・・どうして!?持ち場はずっと南でしょ、何でこんな所まで来t・・・」

 長刀・水映月《スイエイゲツ》を収めながら問うが、言葉はなくなってしまった。

「ユウさんの居場所が・・・解ったん?」

 迅人《ハヤト》がどうしてここにいるのか。

 どうしてここまで来たのか。

 その全てを、少年の目が語っていた。

「解ったのね!?」

 江茉《エマ》は強く、詰め寄ってきた。

「あ、ああ・・・」

 こうなってしまった江茉《エマ》を止める事出来ないと、昔から知っている。

 だからこそ彼女ならばと、夕凪《ユウナギ》の日記に書かれていた事を静かに話し始めた。

 最後3つ目は『世界を渡る』ことだ。

 俺を追うのならば、世界を捨てろ。

 それは容易なことではないから、覚悟しろ。

 そして、その一歩を踏み出すのなら、アカギ山にある心得童子《ココロエノドウジ》の石碑へ行け。

 あれがあるから、魔がこの町から出現し、鬼が闊歩する。

 あれがあるから、神雅流は成長し、運命が廻った。

 石碑はこの世とあの世の境界にして、異界への門なんだ。

 4年に1度、『災厄』の時にのみ開かれる門をくぐれば、世界を渡ることができるだろう。

 しかし今、石碑は封印してある。

 異界へ渡れば力を、財を得られると誤解した輩がいたからな。

 これを解く方法はあえて書かないが、日記の解呪したお前ならば可能だろう。

 さあ、これで俺がお前に伝えるべき事は終わった。

 後はお前の判断に、勇気にゆだねよう。

 そして、それを決めたときには最大の賞賛をしてやろう。

 だが、注意は怠るな。

 碑石の力を狙う輩は外部ではない、神雅流内部の者だ。

 いつ、どのような手段で狡猾に確実に狙っているか。

 特に、十二支会で碑石周辺にいる奴がいたら、悪巧みしているに違いない。

 どんなにうわべを装おうとも、決して信用してはいけない。

 まあ、まだ言い足りないことはあるが、これで俺がお前に伝えたい事は終わりにしよう。

 あとの話は、会ってゆっくり話せば良いだろう。

 少しでも早く、ハヤトが俺を追ってくるのを、楽しみに待ってるぞ。

(夕凪《ユウナギ》の日記 メモ欄より)

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