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神雅のつぶやき、

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書庫.SS-序楽章-

本編【UNiV.SchicksalSymphonie】――ユナイヴ.シックザールシンフォニー

兄・夕凪《ユウナギ》を探すため、弟の迅人《ハヤト》と従兄妹の江茉《エマ》が異界を旅し2人の成長を描くバトルアクション・ファンタジー。

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 全てが終わると、外はすっかり夕方になっていた。

 屋敷の裏にあるアカギ山は、夕日に焼かれて真っ赤に燃えている。

 処分の結果は、有罪。

 『十二支会からの脱退』そして『神雅流からの追放』が決まった。

 それは予想した通り。

 いや若干、違うか。

「あさっての日が昇るまで、追放を先送りにする」

 『執行猶予』

 それは思ってもいなかった。

 だがそれは今、考えると予想できた事だ。

 明日は4年に1度やってくる閏日、『災厄』の日なのだから。

 日付が変わるのと同じ頃、次の日が昇るまで、数多くの『鬼』がこの町を襲う天災。

 それを討伐し鎮圧するのは、大昔から行ってきた伝統行事ともいえる仕事だ。

 この仕事をするために大昔の殿様から、神雅は今の土地を与えられたと聞いている。

 だが、町民の誰も『鬼』の存在は知らない。

 鬼は誰の目にも触れる前に、処分するのが掟。

 だから『災厄』に参戦できるのも十二支会以上、実力者のみとなる。

 人数を絞るのだから実力の認められる者であれば、1人でも多くの手が必要なのだ。

 町民は遠く安全な場所に退去させられ、「何らかの『事件』が起こった」としか知らされない。

 つい半年前まではそちら側であった俺にとって、始めての『災厄』だ。

 だから『執行猶予』といえ、遅くとも明日の夜には出て行かなければならない。

 それに、『災厄』の最中に死ぬかもしれない。

「アカギの山も今宵が限り、か」

 かつてそう言って、この土地を去った人物の気持ちが解る気がした。

 さまざまな事を考えた。

 夕凪《ユウナギ》のこと、日記のこと、『家族』のこと、そして江茉《エマ》のこと。

 考えている内に、いつの間にか着いていた。

 目の前にある、神雅の家紋『烏と百足』が描かれたフスマの奥が集会場になっている。

「第12支隊・『亥』のハヤト。入る!」

 声を出してもう一度、覚悟を決めて中に入る。

 集会場は座布団が左右5対並んでいおり、すでにそれぞれ十二支会の隊長が座っていた。

 空いているのは手前の1つのみ。

 おそらくここに「座れ」という事だろう。

 前方の『辰』の席には江茉《エマ》の姿もあり、その変わらない様子を見て少なからず安堵できた。

「遅い!みな、暇じゃないんだ!さっさと始めるぞ」

 いつまでも座らない迅人《ハヤト》の様子に、第2支隊『丑』の隊長である副統主が口調を荒立てた。

「まあまあ、いいじゃない。『その時』を少しでも先送りにしたい、気持ちを察してあげて?」

 その声は並んだ席ののさらに奥、スダレの掛かっている上座から。

 スダレで姿は見えないが、そこに座れるのは十二支会の統主だけ、と決まっている。

 第1支隊『子』の流山莉凰《ナガレヤママオ》だ。

「・・・それでは、シンガハヤトの処分を言渡す!」

 完全に座ったのを確認した副総主は、処分の言渡しを開始した。

 声は門を超え、庭の中まで響き渡った。

 しばらくすると巨大な門が開き、出てきたのは屋敷に使える庭師だった。

「ハヤト様、お待ちしておりました・・・皆さま待ってますのでお早く」

 勝手知ったるヒトの家、とはこういう事を言うのだろう。

 昔、夕凪《ユウナギ》の一件以前、まだ宗家とたがっていなかった頃は、良くここで遊んでいた。

 そのため、庭から家の中まで良く知っていた。

 『迷い』はしない。

 だから、すぐ集会の部屋に向かった。

「・・・なんだ?」

 しかし、そんな迅人《ハヤト》の後をついて来た人物がいた。

「コレを・・・お受けとりください」

 それは先ほどの庭師だった。

 そう言って手渡されたのは、一冊の手帳だった。

「なんだこれは?」

「8年前、ユウナギ様からお預かりしていた物です」

 硬く金具で封がしており中身を見ることは出来なかったが、どうやら日記のようだ。

「日記か?」

「いつか、『こんな日』が来たら、お渡しするように仰せつかっていました」

 夕凪《ユウナギ》の持ち物は、すべて宗家に押収されたハズだ。

「どうして、これだけ・・・」

 無事だったのか?

 と、言おうとして気付いた。

(そうか・・・)

 今の宗家は分家しか目を向けていない。

 同じく、分家は宗家しか見ていない。

 互いに互いの『粗』を探して。

 しかし彼は神雅流にいて、神雅でない者。

 だから、宗家の目を掻い潜れたのだろう。

 だが、それを守り抜けたのは、この庭師のおかげ。

 夕凪《ユウナギ》はこうなる事も、誰が『家族』だったのか見抜いていた。

(大きな借りが出来てしまったな・・・)

 それが返せない事だとは解っていた。

「アリガトな」

 唯一、返せるのは『感謝』の言葉しかなかった。

「ハヤト様への刑が、少しでも軽くなる事を祈っています」

 そう言い残し、庭師は立ち去った。

 俺には『力』がなかった。

 だれが『家族』かを見抜く力も。

 だが、こんな身近にいたとは。

 なぜ今まで彼らを、頼らなかったのだろう。

 そんな自分を、恨まずにはいられなかった。

 今、目の前に巨大な門が立ちはだかっていた。

 ここは神雅が統治する町の最北端、山の南麓にある宗家の屋敷。

 つまり江茉《エマ》の家だ。

 家にいた俺に召集がかかったのは、千和《チノワ》が帰って程なくの事。

 『緊急召集』

 その用件は解っている。

 神鶴との私闘について処分されるのだろう。

 処分は宗家・江茉《エマ》にけしかけた一軒もあり、確実に有罪。

 どんな罰を与えられるのか。

 十二支会は確実に降ろされるだろう。

 最悪、打ち首。

「これまでか・・・」

 以前、ここに訪れたのは十二支会に入会した時。

 つい半年前だ。

 わずかな在任期間。

 何も出来なかった。

 やりたい事はもうない、と言ったら嘘になる。

 した事といえば、門下生の指導のみ。

 それすら十分に果たせたとは言えない。

 夕凪《ユウナギ》の一件以来、分家からも完全に孤立していた。

 唯一思ってくれていた、江茉《エマ》の心も踏みにじってしまった。

 俺に失うものは、もう何にもない。

「・・・よし。行こう!」

 だが今は、千和《チノワ》にもらった『言葉』で腹を決めた。

「十二支会『亥』のハヤト。ここに参った!」

 門に向かって叫ぶ。

「あっ、あたしじゃなくって。姉さんに言ってあげてよ」

 突然の謝罪に、千和は珍しく戸惑った。

「じゃあ、もう行くね」

「・・・どこへ?」

 それを呼び止めずにはいられなかった。

 かつての夕凪と同じ目をしていたから。

「まだ、もう1人。姉さんにお願いされた人がいるの」

 それが誰だか知らない。だが、心当たりはあった。

「それって、もしかしてカミヅ「兄さん!」

 その言葉に俺の言葉はかき消されてしまった。

「さっきも言ったけど・・・あたしには宗家とか分家とか関係ない。『だから』こそ、家が作ってしまった溝は埋めなきゃいけない・・・違う?」

 強い『意志』。その前には、ただ沈黙しかなかった。

「・・・じゃあね。お大事なさい」

 そう言い残し、千和は出て行った。

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