上山信一の『見えないものを見よう』

未来は誰にもわからない。しかし洞察を深めれば、現実が変えられるかもしれない

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今日は、大阪府市が合同主催する副首都推進会議。
この会議では知事と市長の両方が出席され、大阪が副首都になるための条件整備を討議する。
今日は中間まとめの前の第5回会議。中間まとめの方向性として、わたしは以下の図を出した。
すなわち、
①危機管理の視点から、東京以外に首都機能を担える拠点都市が必要
②それに最もふさわしいのは大阪である(西日本の拠点性)
③しかし、今の大阪にはわずかに足りないものがある。例えば関西空港は24時間稼働の国際空港だがアクセス鉄道が遅い。消防や大学が府市に分かれており、非効率。統合して機能強化が必要。
④その他足りないハード、ソフトのインフラがまだまだある
と。
この③④に関連して、今日は府立大学と市立大学を統合再編してできる新大学の構想の具体案を出した。
目玉は、シンクタンク機能と技術インキュベーション機能。
前者は特に、パブリックヘルス、スマートシティの分野で。後者はバイオエンジニアリング、データマネジメントが中心。いずれも横文字だが、全国最大の公立大学として大阪府市、企業と連携すれば従来の大学にはない強みが発揮できる分野である。
今回の分析も府市と両大学、そして外部委員が合同調査をしてまとめた。資料はマッキンゼー方式である。
大阪府市の情報公開は、オンブズマン調査で全国一位だけあって、その日のうちに会議資料がアップされてる。会議は当然公開でネットでも中継された。

 都政改革本部を手伝うことになり、しばしば「たいへんですねぇ―」と同情されます。しかし、私は28歳の時からもう30年も改革ばかりやってきました。企業、公的機関それぞれ40くらいにかかわってきました。なので、改革は日常です。今回も淡々と実務的に取り組みます(といいつつ想定外の困難に直面し、きっと苦しむわけですが・・)。
  今までやった改革のうち大掛かりかつ5年以上にわたるものはそれぞれ5つくらいあります。企業は重くて古くて巨大なものばかり。公的機関では大阪府や大阪市などが大変でした。
 公的機関の改革は収益向上が目的ではないので企業コンサルティングよりも難しい。私も政府、自治体のほか財団や大学、美術館、病院、動物園、公営バスや地下鉄も経営評価をしましたが、企業改革よりもはるかに大変でした。
 国連海事大学(スエ―デンのマルメにある)の評価と改革提案では、デンマーク、英国、スエ―デン、日本の4か国の合同調査チームで仕事をしましたが大学の使命を巡って激論が続き、厳しくもあり楽しい作業でした。

○改革の成功条件

 さて改革も経験する数を重ねるとだんだんと早い段階で成功への道筋が見えるようになります。
 たとえば多くの経営コンサルタントは、社長と小一時間も話しただけで「うーん、この社長はまだ本気でないな」とか「この二代目オーナーは、もうすごい逸材。若いけど絶対化けるなあー」とか気が付くようです。知事や市町村長についても同じです
 成功する改革の基本は、
①提言を実行できる経営者(首長)がいること
②ものごとが動くタイミングであること
の2つが絶対条件です。

○都庁のREADINESS
 さて都庁はどうか。①は申し分ない。小池知事は、私が今まであった政治家の中でもダントツにセンスのよいリーダー、経営者です。
②もいい。劇的な選挙でしたし、改革に向けての都民の圧倒的期待が見えた。しかも時間はなく、オリンピックでお尻が切られている。のんびり改革というわけにはいかない。

○情報の公開こそ最大のパワー

 さて、都庁の場合、もうひとつ極めて重要な条件があります。情報公開の徹底です。これは、組織を動かすテコになります
 いい話も悪い話も情報公開されるとなると組織に自浄作用が働きます。いい話は公表されると高く評価され、励みになります。まずい話も公表して謝罪、反省し、てしまえば、あとは改善すればいい。
 ちなみに万が一、プライバシー保護や秘密保持の必要などの理由なしに事実や数字を都民に公開できないという部門がでてきたらどうするか。関係した人たち全員が懲戒対象になるのは当然ですが、調査報告書に「○○部は△△の金額の内訳は公表できない(あるいは、なくした)と回答した」と報告書に明記するしかないでしょう。誰にもミスや勘違いはあり得ます。しかし、あまりに「なくした」「忘れた」というのが多い場合は、その部門の仕事のレベルが低いと言わざるを得ない。管理運営体制の見直しやルール変更、組織改編などが必要になるかもしれません。
 このように情報公開は組織にとって虫干しのような効果がある。お日様に当てるといやなにおいや虫が消えていく。あれに似た作用です。

だから、都庁改革のコツは、ひたすら情報公開を徹底していくことにつきます。

○改革の成果を紹介する2冊の本

 さて、改革の成果ですが、企業の場合、守秘義務や対競合の作戦の都合上、開示できません。しかし、行政機関の場合は、情報公開の原則があってやった内容や成果が公開できます。

 そこで、私は昨年、大阪府と大阪市の08年から15年までの7年間の改革の成果を検証した本を出しました。

 『検証・大阪維新改革』(ぎょうせい)です。
 
 この本は、有名な都構想や二重行政、橋下さんの話ではなく、大阪府と大阪市がどういう改革をやったのか、事業分野別に書いてあります。
 バスの赤字が年間50億から6億にまで激減した秘密や地下鉄がお客様を増やし、運賃値下げに至った物語、あるいは地味な補助金の見直しの舞台裏や教育予算の拡充、図書館の改革の話など様々。大きなものから小さなものまで各分野の改革のドラマが、事実と数字で記述してあります。

 ここで使った手法は公的機関ではどこでも使えます。都政改革でもこの手法は使えるでしょう。

 実は、大阪市はその前の05-07年の関市長の時代にも改革を経験しました。それは「関市政改革」と呼ばれています。(大阪では「橋下前」を紀元前と呼びますが、大阪年号で紀元前2,3年の話です(笑))。
 
 私はこの関改革もプロデュースしたのですが、その手法をまとめた本が『行政の経営分析―大阪市の挑戦』(時事通信社)です。ここでは上の本では収録していない公営住宅や広報・広聴、区画整理事業、下水事業などの分析の手法と結果を紹介しています。
(なお、本に掲載できなかったものも含めた経営分析の対象事業67個の分析成果が大阪市役所のHPに掲載されています

 ちなみにこの本の著者は、「上山信一+大阪市役所」となっています。つまり、職員の皆さんと分析をして、本も一緒に書いたのです。
 都庁改革でも、職員の方々と一緒にこういう成果本が出せるようになりたいものです。
 マッキンゼー方式で中央卸売市場を調査した報告書があります。
 これは05年から07年にかけて大阪市役所が当時の関市長を本部長として「市政改革本部」を置き、わたしが本部員(非常勤、のちに市政改革推進会議の委員長)となって調査した時の報告書です。
 当時の大阪市は、今の東京都とそっくりでした。税金の無駄遣いが次々と露呈し、一部の議員の狼藉ぶりも報道されました。
 そんな中で中央卸売市場の建て替え建設費を巡る疑惑が明るみに出ました。
 全国の中央卸売市場は自治体が建て、運営していますが年々、取扱量がどんどん減っています(当時の数字では東京も大阪も年率マイナス4%ずつ減少)。産地からスーパーの物流センターに直行する荷物が増えているからです。
 そんな中、大阪市は老朽化した市場を現地で建て替えた。しかし建設費が途中でどんどん膨れ上がったのです。
 小池さんが「オリパラ費用が一丁、二兆と膨れ上がる。お豆腐じゃあるまいし」とおっしゃった、あれと同じ構図です。やれ想定外の作業が発生しただの安全対策を強化しただのいろいろな理屈で税金が消えていく・・。

 市政改革本部ができたのは、建設工事が終わったあとでしたが、さっそく事業分析をし、今後改善策を考えた。もちろん途中経過も結果も全部情報公開をしました。驚いたのは、「蛍光灯一本の取り換えに3人もの職員がくる」といった仲卸業者の証言。それらをヒントに調べていくとすさまじい過剰人員、過剰コストの実態がわかったのです。もちろん担当局も問題意識はあった。それで途中からは一緒に合理化計画をたてました。

 その時の分析調査レポートが先ほどのマッキンゼー方式の調査書です。
(ただし、これは私とマッキンゼーの元コンサルタント2名が確か当時は2万円程度の日当でせっせと東京から出張し、職員の皆さんに手伝ってもらってやった簡易分析です。マッキンゼーが企業に出す報告書はこれよりもっと精緻で大掛かりなものです)

 その2年後、大阪府でも橋下改革が始まり、私は改革本部で職員と一緒に府の中央卸売市場の事業分析をしました。その報告書がこれです。


 結果は大阪市とそっくりでした。やっぱり需要がどんどん減っている。過剰投資は禁物で合理化が必須。おまけに大阪の場合、市と府のそれぞれが「中央卸売市場」を経営している。

 結果を見ながら橋下徹氏としみじみ、「こんなこと続けてたら大阪は破産しますよねー。あれもこれも施設は何でも府立と市立の二つあって、たいていどっちも赤字。府と市は統合しないと未来は絶対ないよねぇ」と語り合った。
 しかし、すでに二つの卸売市場は投資が終わった施設ですから両方使い続けるしかない。そこで大阪府は民間委託に切り替え、合理化しました。
 さて、築地の豊洲移転はどうか。昨日、顧問になったばかりでまだ何もわからない。
 しかし、公開資料や報道を見ると、かつての大阪中央卸売市場と同じ問題が起きていると思われます。

 だから「都民ファースト」の知事がいったん立ち止まろうとおっしゃるのは当然でしょう。
 大阪市と同じく、当初の予定の3倍もの建設費がかかっている。税金の無駄遣いが起きている可能性は高いし、安全性の懸念もあるらしい。

 情報公開がろくにされていないので何とも言えませんが、その隠ぺい体質だけでも怪しい・・。
 役所には役所の言い分があり、公表されていない難しい事情もあるに違いありません。豊洲移転も巨額の建設費も議会が同意してきたわけです。
 
 しかし、失敗も含めて都民に情報公開をすべきです。そして、一緒に悩むしかない。そのうえで今更ながら、現実にできる軌道修正策があればそれをやるしかない。それがなければ既定の路線のままということになるでしょうが、もしもそうなるにしても徹底的な情報公開が必要でしょう。

 情報公開は魔女狩りではない。誰かを批判するのではなく、どうしてこうなってしまったのか、組織や運営の仕組みのあり方を見直すべきです。
 優秀な都庁官僚たち、規則にのっとった仕事のやり方、議会での真摯な議論・・それをやってきたはずなのになぜ、こうなってしまったのか。
 監視してこなかった過去の知事と議員の責任は重いと思いますが、そんな知事や議員を選んだ都民も反省すべきです。また職員も、議員も、情報公開を要求してこなかったマスコミも反省する必要がある・・ということになりそうな予感がします(あくまで予感でしかないですが)。
 
大阪より12年遅れで始まった東京都の改革――すべては情報公開から
(日経BPガバメントテクノロジーへの寄稿原稿より)
 小池知事の就任で東京都の改革が始まった。選挙戦から保守の分裂、無党派の支
持、劇場型選挙などの要素をとらえ、大阪の維新改革との類似性を指摘する向きが
あった。実のところはどうか。掘り下げて考えてみたい。

●ともに保守が分裂し、造反組が正規軍を撃墜

 都知事選は、確かに2011年・15年の大阪ダブル選挙に似ていた。大阪維新も小池
陣営も、ともに成長戦略を重視し、政策・主張が近い。緑色のテーマやガラス張り
の街宣車もそっくりだった。しかし最も似た点は保守の分裂の構図だろう。無党派
の勝利といえば、従来は革新が保守を破るパターンだった(滋賀県の嘉田氏など)。
ところが大阪でも都知事選でも、保守内の革新勢力(造反組)が“古い保守”の自公
連合(正規軍)を破った。

●ともに「厚遇問題」が引き金

 都知事選では「二代連続で知事が辞めた政治とカネの問題」が是正課題とよく報じ
られた。これは間違っていないが、人々の関心事は税金の使われ方だった。つまり公
用車で湯河原に通い、豪華な海外出張を繰り返し、かつ開き直る舛添知事(当時)に
対する怒りではなかったのか。つまり税金を使う為政者側の感覚のずれが都民の怒り
を買った。

 さて大阪の場合はどうか。橋下知事の前任の太田知事は不祥事でやめたわけではな
い。しかし、知事選(2008年2月)の前の3年間、大阪市は「職員厚遇問題」で揺れに
揺れた。府庁内でも裏金問題が発覚した。橋下知事への期待やその後の大阪維新への
継続的な高い支持の根っこには、2004〜05年にかけて噴出した大阪市役所の職員厚遇
問題への激しい怒りの記憶があった。

 大阪市役所ではヤミ残業に加え、制服と称して税金で背広を買い、OBにヤミ年金ま
で払っていた。またバスの運転手に年間1300万円の給与が払われるなど、不透明な労
使関係に由来する不審事が噴出した。筆者はそれを究明する委員会(福利厚生問題等
改革委員会)の委員として実態解明と再発防止策の作成を担当したが、当時の市民と
報道機関の怒りはすさまじかった。

 (参考情報)大阪市福利厚生制度等改革委員会のページ
  http://spwww.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/page/0000013155.html

 この点において今の東京都民は12年前の大阪市民と似ているといえよう。だから
都民は「ブラックボックス」の解明、情報公開を訴える小池氏を支持した。

●最大の課題は情報公開

 行政改革を成功させるうえで最も重要なことは「情報公開」である。いつどこで誰
が何を決め、どういう理由でどこの業者に決まったのか。事業の目的は何か、成果は
何か。こうした基本が常に公開されると、不正・不適切な事象も無駄遣いも抑止され
る。また、そもそも納税者には知る権利がある。

 例えば東京都では建物と土地で合計約5800億円もの費用をかけて豊洲の東京ガスの
工場跡地に築地市場が移転する。しかし土壌汚染地の洗浄代をなぜ買い主の都が負担
したのか、なぜ建物建設費が当初予定の3倍にもなったのか、謎が多い。オリンピッ
クも同様である。なぜ開催費用が当初の3000億円から7000億円になり、さらには1兆
円、そして2兆円に膨れ上がるのか。なぜ都が当初の合意に反し、仮設施設の建設費
の一部を負担するのか。謎だらけである。

 大阪の場合は財政危機の中、なけなしの税金が職員の厚遇に使われていた。その
実態が福利厚生問題等改革委員会によって解明された。東京でも知事は都政改革本
部を置き、オリンピックの費用の調査や情報公開のあり方を見直すという。

 市民(都民)の怒りに対して素直に情報公開で応える、という意味で、今から12年
前の大阪市役所の改革と同じことが東京でも始まりつつある。大阪ではその3年後、2008年から大阪維新による一連の政策の見直しが始まった。東京でも見直しのテーマはオリンピックパラリンピックからいろいろな政策にどんどん広がっていくだろう。

 知事はまずは選挙で約束した、情報公開に対する市民(都民)のささやかな疑問に応えるべきだろう。それがやがて業務改革につながり、さらに大きな改革のうねりや政策の刷新に発展していく。
 豊かであるがゆえに東京都は改革が遅れていた。大阪に遅れること約12年・・・。やっと覚醒しつつある東京都の都政改革に期待したい。

大阪府と大阪市の改革の内容と成果を記した書籍『検証 大阪維新改革』(ぎょうせい刊、上山信一・紀田馨共著)が2015年11月1日に刊行されました。

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