新宿 家主(見習い)メイのつぶやき

家主業とは無関係なことばかり・・・かも。

投資信託(銀行テラー日誌)

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銀行テラー時代の経験を元に書いてみました。
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<イラスト>
http://ju-goya.com/

■春の出来事(番外編)■

「え〜。新人、来ないんですか?」
突然、A先輩の声が聞こえた。

「ああ、うちは小さい店舗だからね。」
課長が※検印をしながら答える。
(※検印というのは、課長等の役職者の確認・承認印のこと。)

「つまんない。今年こそ、かっこいい新人が入ってくると思ったのに!」
「Aさん、“かっこいい新人”ということは、男性社員を期待していました?」
O先輩が淡々と質問する。

「当然よ!もう、このお店の男性社員って暑苦しい人ばかりじゃない!?だから、爽やかな新人男性社員も必要よ!」
妙に力の入った発言だ。

“微妙にセクハラ発言!?”と思いつつ、聞いていると営業の男性Mさんが口を挟んだ。

「俺って、暑苦しいか?」
「え、自覚症状ないの?」
「う。」
Mさんが言葉につまっている。

その反応に、A先輩の声が調子づいた。
「大体ね、この前もお客様が“暑苦しい男って嫌い!”とか言うから、私が代わりに投資信託を説明してあげたんだからね。」
「そうでした。」
Mさんが肩をすくめる。
もはや、Mさん、完敗といった感。


先日のこと。
50代半ばの女性のお客様が、「投資信託に興味があるから説明してほしい」と来店した。
高級そうな服を着て、みるからに裕福そうな印象だ。
しかし、間の悪いことに、繁忙期のさらに忙しい時間帯。
テラーは誰も投資信託の説明をする余裕がなかった。

そんな中、店内に残っていたMさんが見かねて接客を買ってでたのだ。
なのに、「暑苦しい男って嫌い!」というお客様の一言で、あっけなくA先輩に交替。

よく話を聞くと、
「以前、別の金融機関Z社で男性営業社員の口車に乗せられて騙されたことがある。だから、男性不信に陥った」
とのこと。

“本当かなぁ?”と思いつつ、“投資信託に興味がある。”という言葉には惹かれた。
投資信託をセールスする絶好のチャンスだからだ。
でも、結局、A先輩は投資信託の説明のみをして、セールスはしなかったようだ。

閉店後、A先輩に聞いてみた。
「先輩、今日のお客様にセールスをしなかったんですか?」
「ええ。」
「なんでですか?お客様自らセールスを希望されていたんですよね?」
「そうなんだけどね。“騙された”とか、他社の悪口を言っていたのが気になってね。」
「え、他社から資金を移して頂くチャンスじゃないですか?」
「うん。でも、他社の不信感が拭いきれていないのに、当店に資金を移して頂いても、また、同じことが起こる可能性があると思わない?」
「はぁ。」
“前向きなA先輩らしくない発言だ”
なんとなく、釈然としない。
「要するに、仮に当店のお客様になったとするでしょ?」
「はい。」
「時間が経つと、また別の金融機関で、今度は当店の悪口を言うんじゃないかと思って。」「そうですかね。」
「だって、Z社の営業社員が“騙す”なんてするかしら?」
「するかもしれませんよ。」と言いつつ、自信がなくなる。
Z社は大手金融機関の一つだ。
社内研修制度もしっかりしていて、金融知識だけでなく、特に接客対応力に力をいれている、という評判だ。
問題になるような事件があった、ということも聞かない。

素朴な質問をしてみる。
「では、新規のお客様をあきらめるんですか?」
「そうじゃなくて、時間をかけて当店を知って頂く必要があるかもしれない、ということよ。」
黙っていると、A先輩が言葉を続けた。
「いくら新規のお客様をたくさん集めても、定着して頂かないと意味がないでしょ?」
“たしかに。”
「大丈夫よ。また、お越し頂けるとおっしゃっていたもの。時間をかけた分、当店の末永いフアンになって頂けるお客様が増えるんだから。」
と言いながら、A先輩は“ご来店のお礼状”を、桜模様の便箋にしたためていた。


〔本日は、ご来店頂きましてありがとうございました。
春日和が続きますね。ご趣味はお散歩とのことでしたが、もうお花見は行かれましたか?
お散歩がてら、当店にもまた、お立ち寄り頂けることを心よりお待ちもうしております。A〕


■完■

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ちなみに、私が本当にお客様にお手紙を書いたときは、
「コンプライアンス部へ通さないとダメだ!」と怒られちゃいました。
既に出しちゃったんだけど・・・。(苦笑)
現在は、金融商品販売法も施行され、
このような季節のお手紙を出すのも厳しいでしょうね。。

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■苺のショートケーキ編■

「WBC野球見ました?日本が世界一ですよ!」
「見たわよ。感動したわ。」
いつものように、A先輩の軽やかな会話が聞こえてきた。
A先輩は結構、声が大きい。
比較的空いている店内に響き渡っている。

「最近、日本のスポーツ界が活躍していますよね?トリノオリンピックでは、フィギュアスケートが金メダルでしたし。」
「ええ、そうよね。フィギュアスケートもきれいだったわねぇ。長生きって、するものね。」
60代半ば位の女性のお客様が、茶目っ気まじりの笑顔で応じる。
「そうですよね。」
“え!?そんな相槌でいいの?長生きって言ってたけど・・・?”
私の些細な不安をよそに、A先輩の言葉が続いた。

「そういう風に今、日本に注目が集まっているんですよ。ですから、お客様も日本に投資している投資信託に注目してみてはいかがでしょうか?」
「そうね。私も日本を見直してみようかしら。」

“・・・さすが、先輩。”

A先輩の会話はいつも世間話から始まる。
なのに、いつの間にか資産運用の話になっているのだ。
それでも、お客様は楽しそう。

今度は、右側からO先輩の声が聞こえてきた。
「昨年の解散総選挙以来、外国勢が日本株に注目していましてね。」
「そうらしいねぇ。」

お客様は、50代半ばの男性。二人とも、真剣だ。
「少し調整などもありまして、株価が落ち着いていたようですけど・・・。」
「ああ、一時期、ちょっと下がったよね。」
「お客様はこの後、どうなるとお考えですか?」
「景気の低迷が長かったからね。上がってほしいねぇ。いや、上がるでしょう!」
お客様が握りこぶしを作って、笑顔で力強く断言した。
「では、日本株に投資している投資信託はいかがでしょうか?」

“O先輩も頑張っている。”

私の席の左はA先輩、右はO先輩の席。
ときどき、ローテーションで席替えもあるけど、いつも私は真ん中になる。
“新米に何かあった時は、すぐに手助けできるように”との配慮らしい。
両隣に良いお手本がある。それにしても、A先輩とO先輩は対象的だ。
ノリの良いA先輩と実直なO先輩。
どちらかというと、明るいA先輩は女性のお客様に人気があり、理論派のO先輩は男性のお客様に人気がある気がする。
二人とも、このお店の看板テラーだ。

“いいなぁ、先輩みたいに接客ができるようになりたいなぁ。”
投資信託のパンフレットを読んで自習をしつつ、両隣の先輩方のセールスの様子を盗み見ている。
見ていると簡単そうなんだけど、これが結構、難しい。

一昨日も失敗した。

公共料金を納めに来ただけのお客様に「投資信託にご興味は?」と話しかけてみた。
結果、「早く(公共料金の)手続きをしてちょうだい!」と声を荒げて怒られ終了。
大変お急ぎのご様子だったので、お怒りはごもっともだ。
お怒りはごもっともだけど、やっぱり怒られると声をかける勇気が萎える。
MMFの契約以来、お客様に投資信託の話をする機会すら出来ない。
“一日も早く、株式投信を扱って一人前になりたい。”という焦りから、お急ぎのお客様にまでも声をかけてしまったのだ。

“どうしよう。そういえば、今朝の朝礼で「今日はロープレするからな」って、課長が言ってたっけ。”

先ほどのお客様の契約手続きを済ませた、A先輩に聞いてみる。
「先輩。“ロープレ”って何ですか?」
「“ロープレ”、“ロールプレイング”の略よ。課長がお客様役になって、投資信託の模擬セールスをするのよ。」
「え?課長に投資信託をセールスするんですか?」
「そうそう。」
「どの商品をセールスすればいいんですか?」
「何でもいいのよ。私はいつも値動きの派手な商品を売りつけてるけどね。」
A先輩がいたずらっぽい目で笑った。

「なんだか、言い込められそうで不安です。」
気分が重くなる。

「大丈夫よ。模擬なんだから。いつも扱っていない商品をセールスすればいいのよ。」
「はぁ。」
“いつも扱っていない商品ばかりだけど、やっぱり不安。”

夕礼後、
「“ロープレ”するから集まれ。」
課長の掛け声で“ロープレ”が始まった。

まずは、A先輩から。
課長が席に座る。
「いらっしゃいませ。」
「ああ、実は投資信託という商品に興味があるんだけど。」
「初めてでいらっしゃいますか?」
A先輩がまじめに応対する。
「実は、株はやったことがあるんだけどね。投資信託は初めてなんだ。」

一瞬、A先輩の表情に笑みが浮かんだ。
「では“世界エマージング株式(愛称:派手好み)”なんていかがでしょう?」
「・・・え?」
“課長が絶句した。”
「株式のように派手な値動きの商品がお好みのお客様には、ぜひ試して頂きたい商品です。では、パンフレットをお渡ししますので、勉強してきてくださいね。」
「・・・。」
言葉を失っている課長に構うことなく、笑いながら先輩が席から立ち上がった。
「はい、終了。次の方、どうぞ。」

「まいったな。ま、Aさんはベテランだもんな。」
課長も苦笑い。

“え〜。何も勉強できなかった。”
A先輩のロープレを参考にしようと思っていた目算が外れた。

課長は、みんなを見渡すとO先輩に声をかけた。
「次は、Oさんね。」
「はい。課長、真面目にやってくださいね。」
「分かった。分かった。」

O先輩のロープレが始まった。
「いらっしゃいませ。今日はいかがいたしましょうか?」
「どうしようかねぇ〜。」
課長が頭を抱えて悩んでいるフリをする。
「課長!」
いつも課長は、真面目なO先輩をからかう。
「ああ、資産運用なんていうのをね、やってみたくてね。」
「資産運用でございますか。」
「そうそう、4×3=12〜じゃなくて、運用ね。」
“さぶっ。”
一瞬、沈黙が起きたが、課長は楽しそうだ。

そんな課長を無視しながらも、O先輩は淡々とセールス、手続きまで済ませて終了。

いよいよ自分の番だ。
「い、いらっしゃいませ。」
A先輩やO先輩を見ていても、さすがに自分の番だと緊張する。
「ああ、投資信託って商品があるって聞いたんだけど、説明してくれる?」
“マニュアルどおりだ。”

日中、読んでいた“ロープレ・マニュアル集”に載っていた台詞だ。ちょっと安心。
「はい。こちらの図をご覧ください。投資信託というのは、まず投資家のお金をひとまとめにします。そうすると大きな資金が集まりますので、それを債券や株式等に投資するという仕組みです。」
一生懸命、資料を使いながら説明。

「どんな特徴があるの?」
課長は、やっぱりマニュアルどおりに話を進めてくれている。
「はい。3つの特徴があります。1つめは、少額でも投資ができること。2つめは、運用をプロの専門家にお任せできること。3つめは、分散投資ができていること。“分散投資”というのは、色々な投資対象に分けて投資がされることによって、比較的安定的な運用を行えることをいいます。」
「へぇ、そうなんだ。で、実際にはどんな商品があるの?」

用意していた“日本債券オープン(愛称:分配金大好き)”のパンフレットを提示する。
「こちらの商品はいかがでしょうか?最近は、分配金を好まれる方が多く、こういった商品が人気を集めています。」
「もう少し、詳しく説明してくれるかな?」
「はい。」
その後、課長に促されるままに商品説明を終え、契約を済ませて終了。
“終わった〜。”
実際に販売した訳ではないけど、達成感。

気づくと、投資信託セールスへの不安も解消している。

帰り道、先輩たちとカフェに寄った。
「今日のロープレ、緊張しました。」
店に入りながら、先輩に話しかける。

「そうね。でも、投資信託セールスの不安は解消したんじゃない?」
“当たってる。”
「はい。でも、マニュアルどおりでしたから、実際に使えるかどうかは・・・。」
「今日のロープレでは基本を確認できたから、もう大丈夫よ。」
と言いながら、A先輩はショーケースのケーキを眺める。
「どれにしようかな〜。迷った時は、基本の定番に戻りましょう。苺のショートケーキでいいよね?」
「苺のショートケーキが定番なの?」
O先輩の突っ込みにも関らず、全員で苺のショートケーキを食べることになった。

<続く・・・と思う。>

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※当然、フィクションです。
※文中にでてくる商品名等は適当です。万が一、似たような商品名があっても関係ありません。同じ商品名があったら・・・。ごめんなさい。
あと、時代設定は2004年頃です。

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■チーズケーキ編■

「投資信託500万。」
おずおずと自分の目標を言った。

課長が意外そうな顔で答える。
「お、いよいよやる気になったかな?ま、頑張ってくれ。」

“とうとう言ってしまった。”

実績もないのに目標を上げるのはかなり勇気がいる。
勇気というよりも、無謀もしくは、厚顔無知とでもいうのではないだろうか。
しかし、昨日、先輩と約束をした手前、仕方ない。

「目標500万?すっごいね〜。」
現金を装填しながら、A先輩が話しかけてきた。

「え?昨日、先輩が言ったじゃないですか!?」
「そうだったかしら?」
「そうですよ〜。」
しらを切る先輩に半べそになりかけつつ訴える。

「なぁんてね。冗談よ。で、どの商品を提案する予定なの?」
「どの商品って・・・、投資信託商品ってよく分からないんです。」
「分からなかったら提案できないわね。」
先輩は、少しあきれ気味だ。
“だから、無理だって言ったのに!”

間をおいて、先輩がパンフレットを次々と机の上に並べ始めた。
「じゃあ、とりあえず、MMFと債券型ファンドを押さえましょ。えっと、パンフレットはこれとこれね。MMFはね、うちでは3種類扱っているの。違いは分かる?」

「・・・会社が違います。」
“単純すぎたかしら?”

しかし、意に反して、先輩は好反応だ。
「そうそう。運用会社が違うのよね。お客様の中には、運用会社のイメージで商品を選択する方もいらっしゃるから、結構、重要なポイントね。あとは運用実績を質問されるわね。」
「運用実績ですか?運用実績って、何ですか?」
「えっと、預貯金とかの利息みたいなものね。確定ではないところが違うけど。一週間毎に実績が公表されているのよ。ああ、これを持っていると便利よ。」
と言いつつ、先輩はMMFの運用実績一覧表をくれた。
扱っている3社のMMFの運用実績が載っている。

「これがあると便利ですね。でも、これだと実績の差が明らかですから、お客様は偏ってしまうじゃないですか?」
「だから、運用会社は頑張らないとね。」
「あ、なるほど。」
“でも、セールスするには・・・?”

そうこうするうちに、開店。
“あ〜債券型ファンドについて聞きそびれた。
ま、いっかどうせ今日も売れないだろうし。”

今日はあまり、混んでいない。

“ピンポーン、オマタセイタシマシタ。ジュウサンバンノオキャクサマ。”

機械の呼び出し音で40代半ばの女性のお客様が現れた。

「いらっしゃいませ。」
「定期預金をしたいのよね。」
「ありがとうございます。では、何年でお預かりいたしましょうか?」

と言いながら、定期預金の利率一覧をすばやく、提示。
しかし、お客様は浮かない様子だ。

「もう少し短い期間のものはないのかしら?」
「一番短いものですと1ヶ月からありますが、ただいまキャンペーンをしていまして、3年以上お預け頂くと上乗せ金利がつきます。いかがでしょうか?」
「1ヶ月・・・。中途半端ね。2〜3ヶ月位、運用したいお金があるのよね。」

“MMF!”

「お客様、投資信託はご存知ですか?」
「聞いたことがあるわね。どんな商品?」
「ちょうど、2〜3ヶ月お金を運用するのには、“MMF”という商品がいかがかとは思うのですが・・・。」

ちらっとお客様の反応をうかがう。興味がある様子だ。

「“MMF”ね。」
「はい。主に高利回りの公社債で運用をしておりまして、日々決算を行っておりますので、いつでも解約が可能です。30日未満は1万口につき10円、信託財産留保額という解約手数料のようなものがかかります。でも、お客様の場合は2〜3ヶ月運用をご希望でしたよね。30日以上運用すれば、信託財産留保額はかかりません。」
MMFのパンフレットに目を走らせながら、一気に説明をする。
“えっと、あと言うべきことは・・・。あ、信託報酬。”
「運用中のコストとしては、他に信託報酬がかかります。」

「シンタクホウシュウって何?」
「運用は、運用のプロにおまかせしていますよね。ですから、プロに支払ったりする費用です。」
「運用中に費用がかかるの?」
「はい。でも、定期預金の場合でも中途解約すると中途解約利率が適用になり利率が低くなりますよね?」
「ああ、そうね。でどの位で運用してくれるの?」
“先輩の言ってたとおりだ!過去の実績は・・・。”
今朝、先輩にもらった、3社のMMFの運用実績一覧表をお見せする。

「当行では、3種類のMMFを扱っていますが、過去1週間の実績はこんな感じです。」
「あら?X証券会社の商品もあるの?」
X証券は、一番実績の低いMMFだ。

「はい。現在の実績はあまり良くないですけど。」
「知り合いがX証券で働いているのよ。そのMMFにするわ。」
そういうなり、お客様は紙袋から札束を取り出した。

“1つ、2つ、3つ、3,000万!”

「お店の開業資金なのよ。蓄えた分や借りた分とか、大切に使わなきゃと思って。」

「あ、ありがとうございます。」
その後、再度、商品説明を行って契約成立。

その日の夕礼。

「今日の成績は?」
いつもどおり課長が聞いてきた。

「えっと・・・。」
“MMFなんだけど・・・。”

「3,000万ですよ!すっご〜い!」
A先輩が後押ししてくれた。

「お、そうか。よかったな。でも、株式投信じゃないとな。」
課長はあっさりしている。

“株式投信を扱ってこそ、一人前。”
それは分っている。
でも、今日は初めて投資信託が売れた日。ちょっと嬉しい。

夕礼後、A先輩がチーズケーキを持ってきた。
「課長がみんなに差し入れだって。あなたが、初めて投資信託が売れたお祝いよ、きっと。」
「課長、ごちそうさまです。」
「おお、次は株式投信だな。」

“う〜ん。手ごわい”

「課長!じゃあ、株式投信扱えたら、帝国ホテルのディナーですね!よ〜し頑張ろう!」
“先輩ってすごい!”
尊敬が増したのは言うまでもない。

<続く・・・と思う。>

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MMFなんて今、セールスしているのでしょうか・・・。
でも、窓販が始まった頃は立派な投資信託実績でした。懐かしいな♪(笑)

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【チョコレートケーキ編】

「投資信託100万円。」
「それは、少ないんじゃないか?」

朝の朝礼中。
課長の視線が痛い。

「いや・・・でも・・・。」

聞かなくても、課長の言いたい事は分かっている。
“投資信託500万”と言えば済むのだ。分かっているけど、自信がない。
次第に目線を落としてしまう。

「投資信託3000万!彼女の分も私が取りますから。」

突然、背後から自信に満ちた声が聞こえた。
 “!?”
思わず声の主である、A先輩を振り返る。
“大丈夫よ。”
視線が合うなり、A先輩がこっそりささやく。
待ち構えていたかのように、課長に満面の笑みが浮かんだ。

「そうだよ。そうこなくっちゃ!みんなもAさんを見習いなさい。
じゃあ、これで、朝礼を終わりにする。各自持ち場に戻るように。」

“なんとか無事に終わった。”ほっと胸をなで下ろす。

 毎朝の朝礼では、各自の目標を言うのが日課だ。
セールス実績のない自分には、これが結構、精神的苦痛でもある。
“店頭テラーになって、1ヶ月は、投資信託100万の目標で許してもらえるだろう。”と甘く考えていたが、2週間目にして、今朝の事態になってしまったのである。

機械に現金を装填しながら、A先輩に話しかける。

「先輩。今朝はありがとうございました。」
「え?何が?それにしても、課長も意地悪よね。テラーに出て、まだ1週間しか経っていないのに“投資信託100万じゃ少ない”なんてね。ま、気にしないで頑張ろ。」
「でも、本当に自信がないんです。」声が小さくなる。

ガー!ガガーッ!ピー!!!

瞬間、先輩の機械が嫌な音を立てて止まった。
「あ〜!現金がジャムっちゃった!最悪!話は後でね。早くしないとお店が開いちゃう!」
結局、先輩の機械が直る間もなく、お客様が来店し、先輩はその対応にも追われていた。



夕刻。
終礼の時間では、各自が実績を聞かれる。

「今日の実績は?」

重たい気分になりつつも、おずおずと答える。

「ありません。」

「君、テラーになって何日経ってると・・。」

課長の語調がきつくなる。
その時、A先輩の明るい声が課長の言葉をさえぎった。

「課長〜!私、5,000万ですよ。すごいでしょ?ね?」

先輩の笑顔につられて、課長の表情もほころぶ。

「いやぁ。Aさんは本当にいつもすばらしいね。それじゃ今日はこれで終わりにする。ああ、そうそう来週は“ロープレ”をするから各自練習しておくように。以上。おつかれさま。」

A先輩のやや強引な報告で、終礼は無事に終わった。

会社の帰り道。

「ケーキ食べたいよね?お茶して帰ろうよ。」

駅まで一緒になったA先輩にお茶に誘われ、おいしいケーキで有名な喫茶店に入った。

「先輩、ノルマってどうすればいいんでしょう?」
席に座るなり、それまで聞きたかった質問をしてみた。

「ノルマなんて、適当に言えばいいのよ。」
コーヒーに砂糖を入れながら、A先輩が答える。

「と言われても、全く自信がないんです。だから、“ノルマ”がきつくて。」

「あら、私も自信なんてないわよ。“ノルマ”なんて儀式みたいなものだと思ってるし。」

「本当ですか?」

意外な言葉に驚いて、聞きかえす。

「そうよ。だいたい、“ノルマ”なんて考えてたら、お客様に失礼でしょ?」
“確かに。お客様に失礼かも。”
先輩の言葉に、目から鱗が落ちるような感覚を覚える。
「でも、先輩はすごいですよね。一日、1,000万は確実じゃないですか。今日だって、ゆうに越えていましたよね。いつもどうやって投資信託をセールスしているのですか?」

「どうやって、って言われてもね。これ、チョコかしら?」
ふと見ると、先輩の視線はケーキに釘付けだ。ケーキに乗った飾りをつついている。

 チョコに負けじ、と質問を続ける。
「例えば、今日はどうしたんですか?」

先輩が笑いながら、答えた。
「ああ、あれね。予約があったのよ。“明日、1,000万投資信託購入したいからよろしく”っていうのが、3件。だから、“大丈夫よ”って言ったじゃない。」

「じゃあ、残りは?」

「お客様が“買いたい”っておっしゃるから、説明してセールスしたのよ。」
A先輩はあっさり言い切って、ケーキの飾りを口にした。
「やっぱりチョコだわ。う〜ん、おいしい。あら、食べないの?」

自分は、ケーキどころではない。
それよりも、先輩のセールス方法に掴み所がないのに困惑。

思わず、率直な言葉が漏れた。
「私、セールス能力がないのでしょうか?」

とたんに先輩が真顔で質問してきた。
「投資信託、興味ない?」

「そんなことはないですけど。」

「今日は何をしたの?」

「投資信託はとれませんでした。」
“そんなこと、重ねがさね聞かなくったって・・・。”

「そうじゃなくて、お客様の何の手続きをしたの?」

「“定期書換”ばかりです。」
自然と声のトーンが下がる。

“定期書換”は、獲得ポイントにはならない。銀行にとっては、増減がないからだ。
しかも、今日は、20万円の書き換えにきた女性のお客様に、強引にねだられ、サランラップを5本も渡してしまい、課長に“元を考えろ”と怒られた。ついてない・・・。

「あら、いいチャンスじゃない。」

意外な反応。
「なんでですか?」

「だって、“定期書換”ということは、お客様に“資産運用をしたい”という意思があるでしょ?そこで、投資信託を提案すればいいんじゃない?お客様も選択肢が広がって、喜ばれると思うわよ。」

「本当に“投資信託”を喜ぶんですか?元本保証じゃないのに?」

「それは、お客様のご判断しだいよ。まずは、提案をしてみないと、ね?ケーキだって、一つより二つ。種類が多い方が嬉しいでしょ?」

「ええ。まぁ。」

その言葉に、先輩の調子は更にエスカレートした。
「じゃあ、明日のノルマは“1,000万”で言ってみよう!」

「無理ですよ。まだ、1件もとってないんですよ!」
必死に抵抗する。

「じゃあ、500万ね。決まり!」
抵抗むなしく、私のノルマは“500万”になっていた。

その日、“実は、A先輩って、課長よりも鬼?”
とささやかな疑惑を抱いたのは、言うまでもない。

<続く・・・と思う。>


-------------------------------------
以前、
「投資信託に関係した話で、地銀のテラー(←窓口の人のこと)向けの話を書いてみては?」
とすすめられて、書いてみたものです。
お読みいただければ幸いです。

『銀行テラーは女性が多い→甘いもの好き!?→題名にケーキの名前をつけてみよう・・・♪』
という単純な発想から、初回は“チョコレートケーキ”になりました。(笑)

※他でも掲載したので、お読みいただいた方もいらっしゃるかもしれないです。
その方は、再読、ありがとうございます。
就活中の学生さんから、
「銀行窓口で働くのが楽しみです」
と言っていただいたことが嬉しかったので、ここでも掲載しようと思います♪

ただし、「就職先として、銀行をおすすめしたものではありません」ので、悪しからず。。
私は退職しちゃったので何もいえません。(苦笑)
 
※あと、登場人物の名前は募集中。名前を考えるの苦手です。。。

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