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<前回の続き>
ではなぜ、理想的な理想主義時代=1920年代を経て、また世界は大戦の惨禍に見舞われたのでしょうか?
それは理想主義にも限界があったこと、
むしろそれが理想主義最大の欠点だったことを露呈してしまったのです。
さて、理想主義の欠点とは何なのでしょうか?
1920年代を例にとれば、それは経済不況でした。
すなわち1929年に始まった世界恐慌が理想主義を完全に打ち砕きます。
まず国家間の貿易額の減少はWillsonian Triadの一角である「自由貿易」の概念を破壊しました。
植民地を多く持つ英国、フランスなどの国々は需要を、諸外国ではなく植民地に求めます。
これはブロック経済と呼ばれ、ブロック内での貿易、つまり需要と供給を満たすわけです。
アメリカは国内の産業の保護と育成、そして失業者対策に全力を注ぎ込みます、つまり孤立主義です。
もうこの時点で欧州とアメリカの需要は激減したわけです。
ということで経済ブロックを作れない、植民地を持たない国々は自力で国内産業を復興するか、
もしくは植民地を確保して消費先を見つけるしかなくなりました。
例にとれば日本ですね。
当時の感覚でいえば、アメリカとアジアが日本の経済生命線(輸出品消費地)でしょう。
しかし、アメリカは国内生産・国内消費の孤立主義。
東南アジアはイギリス、フランス、アメリカ、オランダの植民地。
残された内戦状態の中国と満州に、日本は消費地を求めます。
そして1931年の満州事変に続く日本の大陸進出が起こるわけですが、
「理想主義」と「ウィルソンの14か条」からすると、重要課題である「軍縮」も破られるわけです。
Willsonian Triadのもう1つ、
「思想的偏りの無い民主主義(Liberal Democracy)」も危機を迎えます。
それは第一次大戦中、ロシアに出現した「ボルシェビズム(共産主義)」と
1920年代、イタリアで起こった「ファシズム(国家社会主義)」です。
これらの「民主主義を下敷きとした理想主義」とは違って、
「共産主義を下敷きとした世界平和」を掲げるソ連の出現や
「現実主義の傍流ともいえる国家社会主義」などの
「違う方程式(Willsonian Triadとは違う)での世界平和を目指す思想や、
国際間のルールを重視しない思想の出現」は
まさに理想主義の存在価値を消してしまうものでした。
このような思想の普及は1930年代を軍拡と戦争の10年にします。
1929年に始まった大恐慌(経済不況)は連鎖的に「理想主義」のルールを崩壊させていきました。
そして、それが「理想主義」の目指す「世界平和」への方程式
「自由貿易(Free Trade)」+「思想的偏りの無い民主主義(Liberal Democracy)」=「平和」
を、有名無実かさせて、世界をもう一度世界を「現実主義」に押し戻してしまうわけです。
続く
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