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2009年元旦を島根で迎えた。 島根にある松江城天守は、江戸時代初期建造と言われ、和歌山県にある1130年創建の根来寺大塔と同じように分厚い板で守られている。それは、分厚い板と表現すべきか、丸太を長方形に切り出したと言うべきなのか、そんな重厚な造りである。 松江城天守 根来寺大塔 松江城内の小さな売店で「松江藩の財政危機を救え」という60ページほどの小冊子が販売されていました。 松江松平藩は、元禄(1688-1704)バブルがはじけた頃から財政が逼迫してきます。江戸時代というと私たちは、平穏な日々が260年間続いた時代であったというような幻想を抱きがちですが、決してそんな平穏な日々が続いた時代ではありませんでした。 南條範夫著「大名廃絶録」には、こんな事がかかれております。 廃絶政策を大観すると初期において厳しく後期においてゆるやかである。前期をほぼ五代綱吉までと、それ以降に分けてみると、家康の開幕から綱吉時代の終わりまでの百五年間に、除封削封百九十一家であるのに対して、六代家宣以降慶喜退職までの百六十年間に、わずか四十六家である。戦争がなくなった江戸時代、まず必要だったのは、リストラです。150年間に191家が何らかの処分を受けて廃藩や領地を削られていると言うことです。それは、戦争の時代が終わって、新しい平穏な時代が訪れ、必要以上に多い武士が大転換を迫られた時代だったのです。1701年に起こった赤穂浪士の討ち入りで有名な江戸城松の廊下の殺傷沙汰もそんな時代を背景にしています。「武士道とは死ぬことと見つけたり」という句で有名な「葉隠」は、1716年頃肥前国鍋島藩藩士、山本常朝によって世に出ます。「武士道とは死ぬことと見つけたり」という句は、武士の勇ましさを誇張しますが、実際はそんな勇ましい話ではなく、戦国時代に命をかけて戦った武士達が平和な世の中でいかに生きていくべきかという方向転換を示した書物です。死ぬつもりで政務にあたるのだという、それまで本当に命をかけて戦った武士の誇りを政務に当てはめて、武士道精神の再構築を提案した書物なのです。 すでに財政が逼迫していた松江松平藩にさらなる試練が起こったのが、1731年の享保の大飢饉です。本来30万俵以上あがる年貢が13万5千俵に激減しているそうです。家中には、「半知」という給与50%カット。町人には増税。1731年に3歳で家督相続した宗衍は、藩政改革に取り組み、「趣向方」という改革派を作ります。「趣向方」とは、アイディア・企画というような意味だそうです。 でなにをしたかというと。 まず、資金集め。集めた資金を「泉府方」が融資を行います。「義田方」は、長期年貢の一括先納で免税証書を発行し資金を調達。「新田方」は、新田開発予定分の年貢先納めで、免税を約束し資金調達。これらの政策は、在郷富裕層と連携し、出資者には名字帯刀・合羽御免などの優遇政策を実施。 つぎは、専売事業の確立。「木苗方」は商品作物の研究普及。木綿・煙草・はぜ蝋・薬用人参など後世の産業を作り出します。「木実方」は、ハゼの実からロウソクを作ります。「鉄方」はタタラ製鉄の流通管理。「釜甑方」は、鋳物を製造販売。その他「人参方」「銭方」「新川方」。 そして最後は、藩校「文明館」の設置に代表される文教政策。 歴史小説だと、これで藩政が立ち直ってめでたしめでたしと締めくくられるところでしょうが、現実はそんなに甘くない。10年足らずの間に挫折してしまいます。もともと大赤字のところに無理な投資をつづけて債務超過に陥ります。とどめに、1759年の宝暦の飢饉。さらに1760年に幕府から比叡山延暦寺の修復工事を命じられます。「家中は給与を残らず返上。雑賀町は軒並み空屋、城の厩には馬が一頭もいない。町や村は何度も臨時課税が行われ、人の命にかかる大変な事態となった。」と朝日千助安定著「秘書」に書かれているそうです。 |
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こんにちは、大変勉強になりました。傑作
朝日文左衛門 「元禄御畳奉行の日記」 (中公新書 (740)) [新書]
はお読みですか?
お読みでしたらアップをリクエスト
2011/7/16(土) 午前 9:32
お久しぶりです。
「元禄御畳奉行の日記」は、読みましたが、残念ながらリクエストにすぐにお答えできるほど多能ではありません。(^_^;)
2011/7/16(土) 午後 10:02
お城勤めの身ながら、大変勉強になりました。「若」の塩見にござりまする。これからも勉強のため、見学させていただきまする。よろしくお願いいたしまする。
2011/7/24(日) 午前 6:15 [ m-waka ]
つい最近、名古屋に行きましたが、なんだか飲み屋さんだけが元気で、庶民はみんなしょぼくれているような気がしましたが。
不動産もよくないし、食べ物屋さん、一般の食堂なんかもうガラガラな感じでした。
2011/8/12(金) 午後 11:43 [ ぜ ]