カロリーベースの食料自給率を計算して発表しているのは日本だけ。他の国が採用しないのは、この数値に意味がないからです。 カロリーベースの食料自給率は、食品工場やレストランチェーンなどでの廃棄分も含んだ供給カロリーを分母に、一人当たりの国産供給カロリーを分子にして計算されています。また、自給自足的な農家が作る米などは国産供給カロリーには含まれず、家畜などには飼料の国産自給率を乗じて計算されています。これでは、健康に生活していくための食料がどのくらい自給できているのかという実状はわかりません。 この計算式を使うと、仮に輸入がゼロになれば、自給率は自動的に100%になります。国産の生産量の増減とさえ関係ありませんし、豊さとも無縁の指標です。 今、日本ではこのカロリーベースによる食料自給率を向上させるための政策が進められています。食料自給率向上を錦の御旗にして計上された「総合対策費」は2009年度の予算で約3025億円。この額は2007年の65億円から倍々ゲームで増え続け、2010年には8000億円の大台に達しています。食料自給率は農水省が大きな予算を獲得するための「ヒット商品」といえるのです。 カロリーベースの食料自給率を向上させるには、輸出入や国内の農業生産を意図的にコントロールする「統制経済」が行われるので、害毒が大きいといえます。国や行政が栽培する作物の種類や量まで縛り上げる自給率向上政策があるために、農家が市場のニーズに応じて工夫や努力するチャンスが奪われている側面があるのです。これでは、農業経営の活力がスポイルされるばかりでなく、消費者は選択の機会を奪われます。 生産額ベースで計算すると、食料自給率は69%。日本の食料自給率は「安全保障」を脅かすほど低くはないし、日本の農業は世界に誇れる強さがあります。ところが、農水省が自分たちの利権を守るためとしか思えない、場当たり的で無意味な食料自給率向上政策を行っているせいで、日本の消費者は損をしているということです。 |
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