元・天津駐在員が送るエッセイ

中国と日本、それをつなぐ言語について、一緒に考えましょう。

大躍進・文革

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大躍進の孤児

物に憑かれたような怖い顔で母ちゃんが僕の左耳をつかんで耳朶(たぶ)に鋏を入れた。激痛と滴る血に驚いた僕は「疼死了、媽媽不要剪」(痛いよ、母ちゃん切らないで)と泣き叫ぶ。血だらけの左の耳朶は断ち切られてはいなかったが、意を決した母ちゃんは逡巡することなく、次に僕の右耳をつかんで一気に耳朶を切り落とした。 

恐ろしい話ですが、フィクションではないようです。


Nikkei Business NB online に書かれた、北村 豊(きたむら ゆたか)さんのレポートの冒頭です。

ネット上には、いろいろな中国に関する情報が載っておりますが、中国と長く付き合っている私にとって
あまり、新鮮で興味を引く内容の物はありませんが、北村さんが書かれる内容は、中国を深く考察されており、それにも関わらず、これまで知らなかったような新鮮な情報が多いので、いつも読んでおります。


大躍進の後に、大飢饉が有ったことは、このブログでも紹介しましたが、その飢饉を乗り切るために上海周辺の農村では、上海では、まだ食料があるというので、幼い子供を上海に捨てたそうです。それは、ただ単に口減らしをするという事ではなく、いつか合えることを願って。しかし、いつか会うためには、目印が必要であり、その為に自分の子供の耳たぶを切ったり、家畜用の焼き印を押したり、入れ墨をしたりしたそうです。


なんともやるせない話ではありますが、日本人だったら、どうでしょう?
多分日本人なら、親子一緒に死ぬ道を選ぶのでは、ないでしょうか?
そして、それが悲しい美談として言い伝えられる。

しかし、中国では、どんなに、醜い行為であろうと、生き続ける道を選ぶ。
それが、日本と中国の根本的な違いのように思えて成りません。

兄弟 余華

仕事も一段落して、少し落ち着いてきましたので、また、書き始めようともいます。
今後とも、よろしくお願いします。

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ようやく読み終わりました。

ある人から何で兄弟というタイトルなのだろうと言う質問がありました。

その時は、なんでそうなのか、私にも、分かりませんでしたが、読み終わって何となくわかった気がします。

この小説は、文革の前頃から始まり、つい最近の2002年頃までの話なのですが、そこには、中国の移り変わりが、いろいろな人々の人生を通して書かれております。

文革の時代は、大変暗く恐ろしく抑圧された時代であり、人の批判によって、いきなり罪人になり、何をされても、殺されてさえも何も言えない。そのようなあまりにも非人間的な時代でした。

そして文革が終わり、社会は、改革に向かい始めます。
一気に全ての自由が流れ込みますが、その流れの中で、ほんの一握りの人は、その流れに乗って大金持ちに成ることができます。そのお金を使って、社会の全てを自由に動かす事ができるのです。

しかし、一方でほとんどの人が、その流れにのれずに、以前の安定した生活すら保障されず、極貧の生活を強いられ、とまどう事になります。そんな極貧の生活の中で、健全な精神が奪われ、人を騙す事を覚え、お金の為なら何でもするような風潮が生まれてきます。


なぜ、兄弟というタイトルにしたのか?


この兄弟という文字で、中国人民全体を表そうとしたのではないかと、私には思えました。

主人公の 李光頭、そしてその義理の兄弟の 宋鋼。

彼ら二人の父親は、文革中に地主という罪を着せられ、挙げ句の果てには、殴り殺されます。
母は、頭痛の治療で上海に病院に入院しておりますが、父が地主という罪を着せられて殺された事すら知りません。

兄弟二人で、恐怖におびえながら苦労を共にします。

二人が仕事を始めた頃、街一番の美人、林紅の取り合いになり、二人は絶縁する事になります。
背が低く、粗野な李光頭。背が高く、文学が好きな宋綱。
林紅は、宋綱を選び、二人は、幸せな結婚生活をおくります。
対する李光頭は、落ちぶれていきます。

しかし、皮肉な物で、李光頭は、改革と共に大金持ちになり、宋綱は、職を失い、肉体労働で、体を悪くし、外地にでて、露天で、人を騙して商売をする事を覚えますが、それでも大した稼ぎはありません。

1年宋綱を待ち続けた、林紅は、ある時、李光頭に優しくされ、彼を見直します。
ある日、李光頭に強引に関係を持たされますが、その肉体的な強さと、経済的な余裕に関係を続けて行きます。

宋綱が街に戻ってみると、林紅が、弟の李光頭と関係を持っていることを知り、自分の不甲斐なさと失望の内に自殺をしてしまいます。

李光頭と林紅は、わかれますが、林紅は、それから人がかわり、最後には、売春宿の女将さんになります。


一般大衆の代表が、宋綱。
お金持ちに成る人たちの代表が、李光頭。
そして、それを眺めている女性の代表が、林紅。

文革から、改革とあまりにも急激な社会変化の中でとまどう人々。
以前は、貧相であるが、落ち着いた社会が、急激にとげとげしくなり、人々の心をゆがませてゆく。
そこには、余華さんの中国に対する憂いが十分に表現されているように感じました。

兄弟 余華

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余華さんの<兄弟>を読み出しております。

以前、<活着><許三観売血記>を読んだ事は、書きましたが、それらの小説より、かなりおもしろい小説になっております。最新の小説なので、だんだん余華さんの作家としての腕が上がってきたのか、中国が開放されてきたので、私たち先進国の感覚に合ってきたのかな?なんて思いながら読んでます。

主人公の李光頭(十五才)が、女子トイレを覗くところから始まります。
覗くと行っても、隙間から覗くような可愛いのぞき方ではありません。

男子トイレの穴の中に頭をつっこんで、下から覗くのです。

そして、李光頭は、5つのおしりを見ます。
痩せたお尻、太ったお尻、そして、最も、ふっくらして丸いお尻。
その丸いお尻を、もっと詳しく見ようとしたところ、後から入ってきた男に捕まってしまいます。

後で、分かるのですが、一番丸いお尻が、なんと彼が住んでいる街で一番可愛い林紅のお尻だったのです。

捕まった当初は、みんなから馬鹿にされるのですが、街中の男のあこがれ「林紅」のお尻をみたのですから、その後、裏で、いろいろな男から、その内容を教えてくれと密かに聞かれます。
かれは、その都度、一番高い「三鮮面」を要求します。
そうやって、普通は1月に1回しか食べれない、三鮮面を三十数杯食べることができます。

文革時代の記述もあり、<活着>より、詳細で、もっとグロテスクに書かれており、かなり緊張感があります。
全体的に、笑いあり、涙あり、感情を揺さぶる良い小説になっているようです。
まだ、半分くらいしか、よんでおりませんが...

許三観売血記 余華

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<許三観売血記> 読み終わりました。


<活着>の時より、余華さん成長したな!って感じです。

<活着>は、最後の最後まで苦しみ抜きます。
読んだ後も、なんか寒々しい感じがしました。

<許三観売血記>は、ハッピーエンドで、
少し暖かい感じがする小説です。
最後は、「うるうる」(心温まる感じの)って来ました。


物語は、やはり、解放から文革が終るくらいまででしょうか?活着とは、違ってあまり時代背景は、強烈ではありません。

主人公、許三観が人生の難関に会う度に血売ってお金を稼ぎ、難関を乗り切って行きます。
その妻、許玉蘭との第一子が、なんと自分の子でない事がわかり、それからその第一子を巡りいろいろな争いが起こります。

最初は、また中国の品のない争いか!という感じでしたが、夫婦が一緒に苦労を共にするにつれ、2人の間に、だんだん暖かい感情がうまれてくるのが、読んでいる私にも伝わってくるようでした。

厳しい時代から本当に、文革が終わって幸せな時代に変わっていくのが、時代背景でなく、彼ら二人の感情から伝わってくるような小説です。

次は、<兄弟>に挑戦の予定です。

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1968年12月22日「知識青年は農村で、貧しい農民による再教育が必要」とする毛沢東の指示が人民日報で発表。背景には、1966年に紅衛兵が登場して以来、学生たちは学校へ行かず、中学・高校の卒業生は進学も就職もせず「革命運動」に熱中。その為、1968年7月に運動の停止、下放運動を展開。結果、1978年までにおよそ2000万人が下放された。

中国の小さなお針子は、そのような状況を再現した映画です。二人のお金持ちのボンボンが、田舎に行って再教育を受ける。良い面は、確かに有ったようです。今までしたことがないような労働をさせられます。しかし、その中でもやはり禁止されている外国の文学を読みあさる。

余談ですが、活着を書いた余華さんのブログにも映画を見漁ったという記述があり、知識的な青年というのは、知識欲を満足させるために、かなり苦労をしたようです。今日の日本のように情報が溢れている状況とは対照的です。
http://blog.sina.com.cn/u/467a3227010007m0

そのような状況の中で、一人の可愛いお針子(女性)と知り合います。その女の子は、無知で字も読めない。その子に恋した二人が、その娘に外国文学を読んであげるのですが、その娘は、目覚めて、村を出て行きます。

その娘のお爺ちゃんは、裁縫ができるのですが、その村では、大変な技術者のように扱われているのが滑稽にうつりました。私が最初に中国に行ったときに、車の運転手が、やはり技術者のように大変大切にされており、「お師匠さん」というような呼び方で呼ばれていたのを思い出しました。

私が、知り合った中国人から聞いた話は、そんなに切ない、清々しい話ではありませんでしたので、このストーリーに多少懐疑的な感じも受けます。

青春映画、ラブストーリーとしてみれば、甘酸っぱい感じのする良い映画でした。
しかし、中国の映画は、すこし淡泊すぎて、少し物足りなさを感じるのも事実です。
そういう意味では、事実に近いのかもしれません。

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