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「国民の義務を一つ加えて四大義務にするわ。勤労、教育、納税、そして、絶望よ!」
本谷有希子の芝居 「幸せ 最高 ありがとう マジで!」 はそのタイトルに反して、ある家族の心の傷をえぐり、そしてその心の傷を負う者同士がさらに傷つけあう、という一見残酷な物語だ。
家族で経営しているとある新聞店に一人の女がやってくる。その女は、新聞店の店主の愛人であることを妻に告げる。店主はそのとき不在だったため、妻や家族はそのことを黙殺しようとする。だが、その話を聞いていた住み込みバイトの娘は、自室に愛人を招きいれ、詳しい話を聞こうとする。そこで分かったのは、愛人を名乗る女は全くの狂言で、住み込みバイトの娘が店主と関係を持っていたという事実だった。バイト娘はそのショックから自傷行為を繰り返していた。それを見た愛人を名乗る女は、「そんな事では生ぬるい。家庭を崩壊させてやれ。」とバイト娘をそそのかす。その気になったバイト娘は、家族のもとに乗り込み、関係をぶちまける。その行為が化学反応を起こし、店主、妻、息子、娘共に抱えている心の傷をえぐり合い、家族は崩壊に向かう。だが、それぞれの心の傷をさらけ出した後は妙に晴れがましい気分になり、、最後は団結して愛人を名乗る女を倒す、のではなくて誕生日を祝う(愛人を名乗る女は誕生日だからそういった不条理な行為に及んだか??)。家庭を崩壊させようと乗り込んできた愛人を名乗る女は不思議な気分になる。
僕は、この作品に本谷有希子の優しさを見たのだった。この「優しさに飢えた優しげな時代」で、その優しさは本当の優しさなのか?ただの責任回避ではないのか?「そのままでいいんだよ。」、「ナンバーワンよりオンリーワン」なんていう言葉の空々しさを本谷有希子は理解している。それであるがゆえに、絶望を描くのだ。絶望がなければ希望なんてない。自分をごまかすな。オンリーワンだなんて欺瞞だ!自分のような存在なんて腐るほどいるんだ。自分なんてちっぽけでどうでもいい存在なんだ。そこに気づけ、そしてそれを認めよ。認めた瞬間に、それは自分の責任じゃないし、同じように思っている人間が沢山いることがわかるだろう。そしてその相手をいたわること、それこそが共感であり、そこに希望が生まれるのだ。本谷はそれを分かっていて、この作品でそれを示したのだ。
なんだか最近の優しげだけど少しも優しくない風潮にイライラしていたんだ。こういう作品が出てきてくれて嬉しいよ。ていうか僕が気づいてなかっただけか。
あ、そうそう、本谷有希子は演出もやってるんだね。そんなことも知らずに偉そうなこと書いてちょっと恥ずかしいよ。演出自体は非常にオーソドックス。この役者にこのストーリーをやらせるんだったらこんなものかな。とはいえ、もちろんレベルは高いけどね。言葉巧みなこの作品、千秋楽辺りにもう一度観たいね。
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愛人の女も狂言の女も許して愛せたら最高だと思います。
自分にその許容量が欲しい・・・・
役者はどんな人たちでしたか?
2008/10/22(水) 午後 7:21
NAOさん、奥さんも笑って許してあげてる風を装って内面には狂気が宿っていました。達観するのは難しいですね。
役者さんですが、主役の狂言女が永作、新聞店主が梶原善、息子役が近藤公園、娘が前田亜季、奥様役と愛人役の名前は忘れてしまいました。永作のぶっ飛びキャラも実力派脇役陣があって際立ってました。ちょっとキャラ的に娘が弱かったかな?梶原&近藤の安定感は抜群です!
2008/10/22(水) 午後 8:41
ほほぉ〜とっても興味をそそる内容ですな☆観てみたい!!
人間ってきっと辛い事がある分人に優しくなれるんだよね。
そんな優しさが本当の優しさなんぢゃないでしょうか??
私もそんな優しさを持てるような人間でいたいですね☆
役者さんのレベルも高そうですね〜!!やっぱり観てみたい!!
2008/10/22(水) 午後 11:53 [ - ]
ピーチさん、そうなんですよね〜、自分自身が経験してないと、共感じゃなくて同情になっちゃいますから。まずは自分の弱さを認めるとこからスタートしたいです。
北海道公演ないかもしれませんが、DVDでぜひご覧ください!
2008/10/23(木) 午前 6:47
「優しげだけど少しも優しくない風潮にイライラ」してるんですね。
この舞台を優しいと思わせる本谷さんは偉いなぁ。
2転3転色々個人の主張が正当化されて面白い展開、最期の合唱でまとめちゃうんですから納得するしかない舞台でした。
2008/10/26(日) 午後 5:22 [ ヒカル ]
はじめまして。ブログ検索から来ました!
どん底を味わったからこそ、小さな希望もありがたく見える。
なんとなくわかる気がします☆
TB、いただきまーす!
2008/10/26(日) 午後 11:00 [ やぎ☆あお ]
ヒカルさん、ご訪問&コメありがとうございます。
最近何故か物事をはっきり言わない風潮があるので、このお芝居はそれに対する批判かな、と解釈しました。
おっしゃる通りあれだけ散らばった世界を最後に強引にまとめあげたのは見事だと思いました。そちらのブログにも遊びに行きます。
2008/10/27(月) 午前 7:29
やぎあおさん、ご訪問&コメありがとうございます。
あのお芝居は現代の優しげな風潮に対する批判だと思いました。やぎあおさんの感想も拝見にうかがいますね。
TBありがとうございます!
2008/10/27(月) 午前 7:32