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*写真は本文中のテスたちの職場"Odyssey(オデッセイ)"の入り口脇で、著者撮影。一番右は私本人。私を除いてみんなhold up(ホールダップ:強盗)の被害にあった経験あり。制服の違いは派遣元の会社の違いのため。
「最低!! 今日、バスに乗ってるとき、強盗の一味に、買ったばっかりのカメラつきの携帯盗まれちゃッた」
第一声から、音楽CDショップで知り合った旧友テスはやりどころのない怒りを僕にぶつけてきた。
テスのお姉さんは日本人と結婚して日本に住んでおり、そのお姉さんからつい先日電話をもらったばかりだったのだ。
ちょっとご無沙汰していたので、ちょっとご機嫌伺いのつもりで、お店の方に電話してみたら、こんな具合である。
彼女は、有名レコードメーカーの社員で、Odyssey(オデッセイ)というこれまた有名な音楽CDショップで働いている。ショップでの販売・在庫管理が彼女の仕事だ。私がフィリピンに始めて住み始めた1993年からの付き合いで、最も古いフィリピン人の友だちの1人だ。
テスはさらにまくし立てた。
「仕事が終わって、いつものバスに乗ると、10人くらいの男たちが乗り込んできて、『ホールドアップだ。騒ぐな。おとなしく金目のものを出せば、危害は加えない。今から俺たちの仲間が席を回るから、金・時計・さいふ・アクセサリー・携帯電話など金目のものは何でも差し出せ。仲間の持ってる袋の中に入れるんだ。変な気を起こすと命をもらうぞ』といってピストルとナイフをちらつかせながら言うもんだから、私って本当に私ついてない、と思って泣けてきちゃったわよ。だって強盗に遭うの2回目なのよ。少しでも被害を減らそうと思って、大きな額のお札はハイヒールの中にさっと移し変えて、携帯を恥ずかしいんだけど、パンティの中に入れて、それなり精一杯努力したんだけどね。だってカメラつきの携帯は14,000ペソ(約3万円)もしたんだから・・・・」
そこで、テスは悔し涙がこみ上げてきたらしく、声を詰まらせ一瞬絶句。それにしても、14,000ペソ(約3万円)とは大変な大金。彼女の月給が9,000ペソであるとつい先日聞いたばかりだった。携帯ひとつが月給以上もするなんて何たる物価のアンバランス!!
そして私は尋ねた。
「それで、額の大きなお札と、買ったばかりの携帯は何を逃れたの?」
テスは、こらえていたものが押さえきれなくなって泣き出した。私は電話越しに彼女の涙が収まるのを数分待たざるを得なかった。電話代がもったいないなんて、彼女の気持ちを思うととっても言えない。
ようやく涙が収まって、彼女が事件の顛末を話し始めた。
「結局、ハイヒールの中のお札は靴を脱がされて取られちゃうし、パンティの中に入れた携帯も簡単なボディチェックをされてすぐ見つかって取られちゃうし、『お前は怪しい』なんて言われて、IDの入ったハンドバッグも全部、持ち物は一切合財取られちゃったのよ・・・」
また、彼女が泣き出した。そして涙が収まると彼女は自分なりの分析を始めた。
「そう、毎年どんなに眠くても、必ず12月16日から24日まで毎日、simbang gabi(シムバン・ガビ)には行ってたんだけど、今日は仕事で疲れてて行かなかったの。だから、罰を受けたたんだわ。明日からは絶対に行かなくちゃ」
彼女の祈りの内容はわかっている。例年の『今年こそは彼氏ができますように』だけでなく、明日のミサからは『もう強盗に遭いませんように』というお祈りも加わるはずである。
新人深い彼女に素敵な彼氏と平和な日常と人並みの幸せが訪れるように祈るばかりだ。
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