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今日はいささか個人的なお話をさせていただきます。私のインターネット・チャットで知り合った彼女は、新卒で、目下休職中。マスコミ専攻でなかなか頭脳明晰な女性です。
中々仕事が見つからず、自分の学費を出すなどいろいろ支援してくれた年上の兄弟や、おじさん・おばさんに一日も早く恩返ししなければと、かなりあせっていたことろに、古い友人から台湾の工場で現場ラインの仕事を紹介され、台湾での仕事の決心をほぼ固めてから、私に「1年だけ台湾で仕事をいいか」というメールを1週間ほど前に送ってきました。
まだ、私たちは夫婦ではありません。彼女の人生にとやかく言う権利はないのですが、私は
「できれば行ってほしくないなあ」
と言いました。
かといって、私は彼女の大家族を支援できるわけもなく、また過去に高い授業料を支払った経験からも、彼女との恋愛関係においては絶対経済支援はしない、と言う主義を貫いていました。それで、1も2もなく、彼女の親・兄弟・おじさん・おばさんなどお世話になった人への恩返しの強い思いを尊重して、快く賛成して、1年待つことにしました。そして、彼女は3月上旬に台湾に旅立ちます。
彼女の私に対する愛情が本物かどうかを測るためもあって、『1年分の彼女の賃金を自分が出してあげる』という提案も試みにしてみましたが、
「あなたの気持ちはうれしいけど、これは私の家族の問題だから、あなたには迷惑かけたくないわ」
と彼女はかたくなに拒絶しました。
このひとことはうれしかったですね。私はもともと彼女の愛に関しては一度も疑ったことはなく、また、交際当初からの主義にしたがって、1ペソだって経済的支援は行っていません。
台湾と言えば、先日教員試験に合格しながら台湾行きを余儀なく割れた友だちの話をしましたが、私としては「また、台湾か?:Taiwan na naman!」と言う感じです。もっとも私は台湾に対してなんら偏見を持っているものではないことをお断り異しておきたいと思います。ただ、優秀な頭脳が、才能発揮するための受け皿(働き口)がフィリピン国内になく、どんどん海外に流出してしまうことを残念に思っているだけなのです。
その彼女、御年20歳。家族・親戚・兄弟の期待を一身に担って、兄弟の中ではただ1人、大学に行かせてもらいました。なかなかきれいな声の持ち主で、しゃべりもなめらか、大学在学中から、地元のラジオのパーソナリティとしてスカウトされたくらいなのですが、学業と両立しないということでラジオのオファーは断ってしまいました。私からみると、大学での型どおりの勉強より、ラジオ番組を持つ経験の中で学ぶものの方がよっぽど大きいと思ったのですが、大学を出ていないまわりの親戚はまず大学の卒業証書が第一と考え、彼女はその意見に従ったと言うわけです。
それはさておき、その20年間、勉強一筋、全人生で彼氏がいたことは一度もありません。もちろんデートの経験もなし。ごくごく普通のフィリピーナとしての倫理観を強く植えつけられた女の子です。もちろん、結婚するまでは性的な交渉なんて絶対ダメ。私がちょっと冗談でHな話をしたら、いきなりブチッと携帯を切られてしまったこともありました。
彼女が、新しい写真を送ってくれると言うので、
「写真の裏にキスマークをつけてくれる」
と頼んだら、そんな『はしたないこと!』、と機嫌を損ねてまたブチッ。
たしなみ深いフィリピーナであることは分かっていましたが、機嫌を損ねちゃいけないと、電話でもかなり気を使っていました。
そんな彼女が最近は随分と変わりました。やはり気持ちが熟してきたのでしょうか? 結婚話などをしていて、
「日本サイドのビザの発給がきびしくなってきて、書類が全部そろっていても最低6ヶ月、長ければ一年以上かかるらしいよ。でも、フィリピン人の妻になる人が妊娠していると発給が早くなるらしいんだ」
と私が言うと、彼女は出し抜けに
「じゃ私早く妊娠しなきゃ」
と言ったのにはすごく驚きました。
妊娠しているとビザの発給が早くなるなんていうのは、当てにならない筋から聞いた単なる噂話なんですが、
「婚前交渉(日本では死語ですよね)なんて絶対ダメ。とんでもない罪だから」
と言っていた彼女が一転して、
「あなたの子供なら、いつでも生む心の準備はできてるわ」
と態度が激変したからです。
そんな彼女にもうひとつの変化が現れました。
電話で話していると、急に彼女が寡黙になって、次の瞬間、すすり泣きの声が聞こえてくるのです。
私は感受性の強い、伝統的なたしなみ深いフィリピン撫子としてのモラルを持った彼女に、また何か自分が、癇に障ることや、傷つけるようなことを言ってしまったかなあ、と思って
「どうしたの? また、僕が何が悪いこといったかなあ?」
と言うと、
「いいえ(Hindi)」
としか答えず、今度は泣きじゃくり始めました。私はしばらく黙って聞いているしかありませんでした。彼女の泣き声が少し落ち着いたところで
「なんか悪いこと言ったんなら言ってね。もう言わないから。何で泣いてるのか教えて」
と繰り返し尋ねると、
「あなたが恋しくて仕方がないのよ:Nami-miss kita, sobra(ナミミス キタ ソーブラ)」
だと・・・
なるほど、私は納得しました。純粋に愛するフィリピーナの愛情ってこれくらいストレートでシンプルなものなのですね。電話している先の彼女の涙は、今では毎回のこととなりました。やはり私も若干のフェミニストですから、女性を泣かせることには心が痛みます。でも、この手の涙にはようやく少しなれて、最近は
「また、これだもん("Ayan ka na naman!:アヤン カ ナ ナマン)」
と言う心のゆとりができてきました。
愛情があって結婚した日比カップルのフィリピン人の若妻たちが、自分のフィリピンへの一時帰国や旦那さんとのしばしの別れで涙を流すのは結構当たり前のことだったんですね。
台湾行きが決まってからは、彼女の電話中の涙はさらにエスカレートして、話を始めて1分もしないうちにすすり泣きが始まります。私が試みで
「もう君を苦しめたくないから、電話かけるのは止めようね:Ayaw ko ng pahirapan ka. Kaya di na kita tatawagan uli.(アーヤウ コ ナン パヒラーパン カ。カヤッ ディ ナ キタ タータワガン ウリッ)」
と言ってみたら、
「ダメーーーー:Huwag(フワッグ)」
と言ってさらに激しく泣き出してしまいました。それ以来、意地悪な実験はもうやめました。
フィリピン人の涙、と言えば、私の彼女の涙は本物だと思います(これでだまされたりしたら、それも運命だとあきらめます)が、概してフィリピン人は直情型で、センチメンタルな国民性なので、男女ともにちょっとしたことで、ボロボロ涙を流します。特に同情を引いて経済支援を引き出すためのフィリピン人女性の涙には何度となく、そう演技に見合った『演技代』を貢いでしまったこともありました。
その点、日本人、特に男性は、人前で涙を見せることは恥ずかしいことという伝統的な概念がまだ生きているせいか、涙をコントロールする、特に涙をこらえる場面が多いように思います。
だからこそ、日比の涙の意味の違いを余計に考えてしまうんですよね。
みなさんの身近のフィリピン人の恋人・配偶者の方々の場合はいかがですか?
* これまた余談なのですが、私たちの『恋人記念日』は2月14日なんです。だから余計に趣向を凝らして頑張らない徒と思っています。
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