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三日間ほど神戸に行っておりました。 というのも、半強制的な有無を言わさぬお誘いによって、僕はまたしてもある団体の定期旅行に参加することと相成りまして。 今回は前回よりも若干お若い年齢層の人たちではありますが、名所めぐりや美味しいもの目当ての小規模団体旅行です。 『旅行は一人、最悪でも二人まで』。という考えを持ってここまで育ってきた僕にとっては、やはりあまり気乗りのするものではありませんでした。 ですが、『楽しくないより楽しい方がいいに決まっている』哲学に則って、僕はある計画を立てました。 神戸といえば、「ナガサワ文具センター」という老舗の文房具店がある町でありまして、なんとかしてそこに行ってやろうと決心したのです。 『旅行は行き当たりばったりなもの』。という考えも持ってここまで成長してしまった僕にとっては、出発前から現地での行き先を決めるという行為はいささか違和感を覚えるものではありましたけれども、それが文房具店ともなると話はガラッと変わってきます。 調べてみると、ナガサワ文具センターは僕が泊まることになっているホテルのすぐ近くではないですか。 気乗りしない旅行が一転、すこぶる気乗り旅行になってしまいました。 無事神戸に着きますと、チェック・イン時にマジシャンのようなしなやかさを発揮して一人部屋を獲得し、荷物を解きながら、はて、と考えました。 というのも、文具店に行くにはなんとか理由をつけて団体旅行の団体行動から一人抜け出なければならないからであります。 皆は神戸の美味しいものや名所めぐりが目的で来ていますから、「いやぁ、神戸の異人館街は素晴らしいところですなぁ。じゃ、次は文房具屋に行きましょう!」などと言って皆に豆鉄砲を食らわすわけにはいきません。 残念ながら僕以外の人たちにとって、文具店というところが旅行に来てまで訪れるような魅惑的な場所ではないということくらいわかっておるのです。 というわけで、僕はこの旅行の幹事役的立場におられる方の部屋をノックしました。 「すみません。旅行参加者の塩野崎といいますが、ちょっと靴下を忘れてしまったのでこれから靴下を買いに行ってこようと思います。ある程度の時間を要すると思われますので、私のことはあまりお気になさらずにどうぞ神戸観光をなさってください」 「あ、そうですか。でも靴下なら観光の途中でコンビニで買えるんじゃないですか?」 「いえ、誠にお恥ずかしいのですが、実は私、靴下に関しては幼少期から若干のこだわりを持っておりまして、某メーカーの某シリーズの靴下しか穿かないことに決めておるのです。どうにもそれしか私の両足にしっくりとこないわけなのでありまして。これからこの近くの百貨店及び靴下ショップをくまなく回ってそれを探す所存でございます」 「でもせっかく来たんだからみんなと一緒に楽しく観光しないと・・・。靴下なんかどうでもいいんじゃないですか?」 「ええ、私もぜひ皆さんと一緒に観光したいと思って神戸までやって来たのですが、いかんせんこればかりはどうしようもなく、誠に残念ではありますが」 「うーんそうですか。・・・じゃあ、わかりました。夕食のときには合流できますよね?」 「Oh I think so」 「えっ?」 「いえ、はい。夕食はご一緒させてください」 丸っきりのウソをついてしまいました。 僕は靴下なんかにこだわりなどまったくありません。それどころか、およそ靴下というものが嫌いで一年を通してほとんど穿きません。 でも、そんな僕のノー・ソックスの足元を幹事役の人に晒すことによって、このウソは信憑性を増したと思います。 まあ、彼は「なんやこいつ、持ってくるどころか穿いてくるのも忘れたんかい?アホか」みたいな顔をしておられましたが。 そして、ウソをついてしまったことへの僅かな罪悪感を覚えつつ、素足のまま喜び勇んでナガサワ文具センターにぴゅーっと走っていきました。 ナガサワ文具センターは、本店が三宮駅そばのジュンク堂書店ビルの三階にありまして、フロアーのほぼ半分が文房具で埋めつくされております。 鉛筆やノートやなんやかんやが溢れんばかりに陳列されてあるんです。 ・・・楽園ですな。ここは楽園でありますよ。 となりでカラフルなシステム手帳を選んでいた若い女性に、「楽園ですね」と言うと、彼女は「コーヒーと思って飲んだらしょう油だった!」みたいな顔をして去っていきました。 そしてその後三時間に渡って、僕は至福のときを過ごしたのです。 筆記具売り場の前で佇み、ノート・コーナーをじっと眺め、棚に並んだファイルたちのご機嫌を伺い、「おっ、ペンじゃ〜ん。消しゴムじゃ〜ん」かなんか言いながら、お店の隅々まで鑑賞して回りました。 これは文具好きでない方にはいささか奇行と思われてしまうかもしれませんが、わかりやすく解説いたしますと、たとえば上野の国立西洋美術館でクロード・モネの「睡蓮」や「並木道」、それからポール・ゴーガンの「海辺に立つブルターニュの二少女」なんかを鑑賞するのとだいたい同じ感覚なのでありますよ。 もちろん、鑑賞するだけでなく、購入もいたしました。 旅行中ということもあって僕は気持ちが大きくなっていたようで、けっこうな額の文房具を買ってしまいました。 月末にはクレジット・カード他、あらゆる種類の、まるで身を削るような支払いが控えているというのに・・・。 ま、でも後のことはこの際よしといたしましょう。僕は大いに満足してその後は通り沿いのコーヒー・ショップでMサイズの美味しいコーヒーを啜りつつ、ずいぶんと長いこと戦利品の文房具をたちを眺めておりました。 すると九時過ぎでしょうか、めったに鳴ることのない僕の携帯電話がブルブルと震えだしまして、応答してみると旅行の幹事役の人でありました。 これから皆で神戸牛ステーキを食べに行くから一緒に来なさいとのこと。 気がつくと僕のお腹もすこぶる減っておりました。 連れて行かれたお店は、客が座る目の前の鉄板上で調理をしてくれるタイプのステーキ・ハウスでして、「特選神戸牛サーロインステーキ200g」というものをいただきました。 これはとても美味しいのでしょうけど、悲しいかな僕はああいった高級食材料理はどうにも体質に合わないらしく、皆が絶賛しておった「お口の中で溶けちゃう〜」感覚にどうにも馴染めません。鍋の底に残っていたようなミネストローネ・スープや、付け合せのしめじとズッキーニのバター炒めみたいなやつのほうが美味しいようだな、と思ってしまいました。 ですが、もちろんそんなことは口には出さず、いっぱしの食通を気取ってウンウン頷きながらステーキを食べておったわけですが。 カット・オレンジは用意できないということでしたのでデザートは辞退し、「コーヒーか紅茶がつきます。アイスもあります」のアイスじゃないコーヒーをいただき、恐ろしいくらいに満腹になったところでホテルに戻りました。 少し疲れてしまったようです。 バスタブに湯がたまるのをじっと見つめ、買った文房具をベッドに広げてニヤニヤしながら、僕は眠りについたのであります。 まあ、だいたいそんな神戸の一日目だったです。 もしかすると、二日目に続く―――
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楽しい旅行のようですね。文房具店というのがshionozakiさんらしくて微笑ましいです。たくさん文具を買えて良かったね。2日目も期待してます☆
2007/12/1(土) 午後 11:08 [ ささ鳴き娘 ]
素敵な旅行になりましたね^^♪また戦利品公開してくださいね〜〜♪・・・神戸牛が食べてみたいむ〜でした(笑)私も二日目待ってます^^
2007/12/2(日) 午前 0:56 [ ☆☆☆ ]
ヤシンタです。お帰りなさい。ナガサワ文具センターに是非ご一緒したかったですね。文具記事の更新もお待ちしてます♪神戸は村上春樹的聖地でもありますな。神戸牛もご一緒したかったです。
2007/12/2(日) 午前 9:27 [ xox*a*cat*ox ]
ささ鳴き娘さん、こんばんわ!予定より多くの文房具を買ってしまいました♪おかげで今月はあと6000円で過ごさなければなりません(笑)。うそみたいですが、ホントなのですよ♪今日はレタスを食べました・・・。
2007/12/3(月) 午前 0:55 [ 塩野崎バード ]
む〜さん、こんばんわ!思いがけず楽しい旅行になりました。神戸牛は、ううむ、でしたね(笑)。きっとおいしいのですよ。4480円もするやつを食べたのです。でも僕には2280円のやつの方がちょうどよかったようです。かたいやつね♪
2007/12/3(月) 午前 0:55 [ 塩野崎バード ]
ヤシンタさん、こんばんわ!ただいま戻りました。ヤシンタさんが一緒だったらもっと楽しかっただろうなぁ。今度藤井大丸セントラルに行きましょう!村上さんは神戸の人でしたね(関西弁のことわざの短いお話でおもしろいのがありますね)。文房具に気をとられて忘れていました♪文具記事もがんばります(with another peges♪)。神戸牛よりモスバーガーのほうがおいしいからそっちに行きましょうよ(笑)。
2007/12/3(月) 午前 0:56 [ 塩野崎バード ]
ワタシも同感ですヨ。あ、ぃや、はだしがスキって話ですヨ。はだしで靴を履いたあとのアノ匂い・・・も、けっこースキだったりするのです。ナハハ
2007/12/3(月) 午前 11:11 [ - ]
文房具っていうと思い出すのは、昔、ミュンヘンの (ミュンヘン? なんかカッコイイですね(+_+) )有名な文具店で鉛筆を買いました。 ふつうサイズより二回り、いやもっと四回りくらいと言ったほうがいいかも知れません、ビッグサイズの万年筆のキャップに負けないくらいのとにかく太い鉛筆で、それがなめらかな三角柱の形になっているんです。
案外書きやすくて実用的で、メルヘンっぽくもあり、気に入って使っていました。
これを亡くしてしまい、日本の文具店にも輸入品としてあるのではないかと探した時期もあったのですが、どこにも置いていませんでした。
はたと、いまはネットの時代でした! 諦めていましたが、この記事を拝見して、探してみようと思います。
神戸はわたしの地元でもあります、ナガサワ文具センターのフロアに、わたしも佇んでみたくなりました。
2007/12/3(月) 午後 2:18
神戸に行ってらしたんですね〜♪それにしてもおもしろい!一人部屋を獲得したり、一人で文房具店を巡られる塩野崎さんは、しなやかすぎます(^^)これは是非続きが読みたいです。期待していいですか?
あっ、私もサイパン旅行記を書き始めました。例によって‘ためにためる続きもの’になる予定ですが、どうぞお越し下さいませ。
2007/12/3(月) 午後 10:42
これはフィクションか?ノンフィクションか? もしくはノンフィクションに若干脚色したものか?
いずれにせよ続きが楽しみじゃw
2007/12/5(水) 午後 10:21
blackbirdさん、こんばんわ。お、好きですか!ハダシ。いいですよねぇ。僕は思うのですが、靴下なんて邪悪なものがあるがために、人間は地球のほんとの暖かさを忘れて、ひいてはオゾン層が破壊され続けているのですよ。・・・おっと、それはなんていうか、その、「禁断のアロマ」でありますな。ナハハハ。
2007/12/7(金) 午後 8:09 [ 塩野崎バード ]
luckyさん、こんばんわ。ミュンヘンでありますか。ドイツは文房具好きにとっては聖地のような場所なのです。僕はあこがれてしまいます♪三角の太い鉛筆というと、ドイツですからLYRAのこれあたりですかね?→http://bundoki.com/?pid=5454011
三角の太い鉛筆は書き方鉛筆として使われるようです。とても持ちやすいのですよね。
おお、神戸はluckyさんのふるさとでありました!でも、luckyさんに
はナガサワ文具センターよりも、ミュンヘンの街角の方がお似合いになるような気がいたします♪
2007/12/7(金) 午後 8:10 [ 塩野崎バード ]
サイパンさん、こんばんわ!そうなんです、神戸に行っておりました。でも神戸らしいことは何ひとつしませんでしたね(笑)。楽しんでいただけて嬉しいです。サイパンさんに言われたら、僕は続きを書いてしまいます。さっそくノートを広げて書き始めます(笑)。サイパンさんの旅行記も楽しみです!
2007/12/7(金) 午後 8:10 [ 塩野崎バード ]
たるるさん、こんばんわ。まぎれもないノンフィクションでありますよ♪ただひとつ、システム手帳を選んでいた女性に声をかけたのはウソをついてしまいました。すいません。ホントは声じゃなくて鼻息だったのです。苦々しい顔して去って行ったのはホントです(笑)。続きもノンフィクションでがんばります!
2007/12/7(金) 午後 8:11 [ 塩野崎バード ]
どうもありがとうございます。
んーちょっとちがいますねー
10ミリより太いです、12、3ミリはありました。 長さもあって、20センチくらいかな、標準より長いです。
艶のある塗装がしてあって、カラフルな無地です。
わたしは赤い色と緑色とを買いました(それぞれ無地)。
最近は、ファイルなどの文具は100均で買うことありますよ(笑)。
100均とミュンヘンの街角と〜 両方好きなluckyです〜
2007/12/8(土) 午後 7:10
luckyさん、こんばんわ。おっと、違いましたかぁ。もっと太くて長いのですね(12.3ミリって、これまた笑)。やはりドイツにしか売ってないやつだったのでしょうか。なんだか僕もほしくなってきてしまいました・・・。
luckyさんも100円均一ショップをご利用になるのですか?ちょっと意外な感じがいたします♪僕はまえに100円均一ショップで消しゴムを買ったら、となり町の文房具屋で同じ消しゴムが95円で売っていたことがあり、ショックでそれ以来100円均一ショップはあまり行っていないです(笑)。
2007/12/10(月) 午後 8:44 [ 塩野崎バード ]